ある程度、独自解釈も含まれてますのでご了承ください。
基軸世界の説明回です
イッセーside
「……知ってる天井だな」
目を覚ますと我が家のベッドのうえにいた。近くにはスースーと可愛らしい寝息を立てるミッテルトの姿がある。看病してくれたんだな。俺はそれが嬉しくなり、ミッテルトの髪をそっとかきあげた。
「むにゃ……いっせー?」
「おう」
「ふわあ、おはようっす」
ミッテルトは起きるやいなや、部長達に報告に行った。するとドタドタドタドタと凄まじい音が響き……
「イッセー!」
「イッセー君!」
「先輩!」
「無事か! イッセー!」
「イッセー君!」
皆で思い切り俺に抱きついてきた! 部長と朱乃さんのおっぱいが俺に当たってる! ヤバイ! 幸せすぎて気を失うかもしれない!
「本当に……よかった……」
「三日も起きないから心配したのよ……」
「だから大丈夫だって言ったじゃないっすか。……まあ、うちも心配してたんすけど」
部長と朱乃さんが潤んだ瞳で言う。どうやら相当心配かけたようだな。……ていうか、三日? 何でそんなに寝てたんだ? 頭が霞がかっていて思い出せない……えっと、確か……。
「お? お目覚めかぃ、おっぱいドラゴン」
「やあ、兵藤一誠」
「……ヴァ―リに美猴にアーサー?」
ん? なんでこいつらが家にいるの……いや、待てよ。確か、ロキと一緒に戦うにあたって共同戦線を組んだんだっけ? 寝ぼけて頭が働いてねえや。
「お兄ちゃんっ!」
「うおっ!?」
考え込んでいた俺にセラが思い切り抱きついてきた。ただでさえ魔王級の戦力を持つセラが強く抱きしめてるため、かなり痛い。なんかミシミシいってるし……。
「ごめんなさい。お兄ちゃん……私のせいで……」
「え?」
その言葉で俺は少し思い出してきた。そうだ。確か、覇龍を使ったあとにセラと同族の奴が現れて、セラを連れ去ろうとしたんだっけ? セラは自分のせいで俺達が余計に傷付いたと思ってるのかもしれない。
俺はため息をつきながら、セラの頭を優しく撫でた。
「……お兄ちゃん?」
「気にするなよセラ。別に誰もお前のせいだなんて思ってないんだからよ」
「で、でも、私のせいで、お兄ちゃんが……お父さんとお母さんにも迷惑かけちゃって……皆気にしないでっていうけど……」
セラはポツポツと呟きながら、涙を流す。アイツラ確か、父さん母さんと一緒にいたセラを襲撃したんだったな。それを気にしているんだろうな。
「……でも、セラが二人を守ってくれたんだろ? 二人も無事なんだったら、それでいいじゃん」
二人は今、この家にいるのは感じ取れるし、傷らしい傷も負ってない。聞いた話によると、自分が目的とわかった時点で、セラがついていく代わりにトーカを含めた三人に手出ししないようにと交渉したらしい。
「父さんと母さんを守ってくれてありがとな、セラ」
「うぅ……お兄ちゃん……」
俺の言葉にセラは啼泣する。相当気にしてたんだな。まあ、無理もないか。
セラ自身、自分の正体もわかってなかったみたいだし、本人からしても相当混乱したはずだ。そんな状況の中、本当によくやってくれたよ。
俺は抱きつきながら嗚咽するセラに微笑ましいものを感じ、抱き返した。
「あ、あの、赤龍帝さんですか?」
「ん?」
頃合いを見て、ヴァ―リ達の後ろからもう一人、アーサーによく似た魔力の少女が現れた。確か、以前シャルバと戦った時にも見た子だな。魔法使いが被るとんがり帽子にマント。いかにも魔法使いといった風貌だ。女の子はニッコリ笑顔で俺に微笑むと、深々と頭を下げてきた。
「初めまして。私はルフェイ。ルフェイ・ペンドラゴンです。アーサーの妹で、ヴァ―リチームに属しています。以後、お見知りおきを」
やっぱりアーサーの妹か。どうやら旧魔王の副官級はありそうだし、なかなか強そうではあるな。
ルフェイは爛々と目を輝かせながら、俺に視線を送っている。それを見て、ミッテルトは少し呆れているようだ。
「……この娘、『おっぱいドラゴン』のファンらしいんすよ。毎週見てるんですって」
「あ、そうなんだ」
「は、はい。あの……差し支えないようでしたら、握手とサインを……」
「ああ、別にいいよ」
「やったー!」
そうか。この娘も『おっぱいドラゴン』のファンなのか。
「イッセー兄様!」
「え? ミリキャス!?」
次に入ってきたのは部長の甥っ子ミリキャスだ。この子は以前、冥界に行った時に俺を兄と呼ぶようになり、今もたまにメールでやり取りするくらいの交流をしている。
え? 何でこの子がここにいるの?
「君が倒れた後、リアスも消耗が激しかったらしく、気を失ってしまってね……それで、ミリキャスも心配してお見舞いにきたというわけさ。リアスはもちろん、君も無事に目覚めて何よりだよ」
「……その様子を見るに、体力は回復したみたいですね、兵藤君」
「サーゼクスさん……グレイフィアさんに会長も……」
そう言いながら、入ってきたのはサーゼクスさん。後ろにはグレイフィアさんと会長が控えている。
部長も倒れていたのか……まあ、部長相当無理してたからな。アーシアの治癒があったとはいえ、ずっと気を張り詰めてたし、無理もないか。俺自身、かなり心配かけてしまったみたいだな。
「それに、僕達もイッセー君には聞きたいことがあるからね」
……この人も今回の件は全て把握済みか。まあ、どの道話すつもりだし、サーゼクスさんとグレイフィアさんなら問題はないか。
「おっ、起きたかイッセー」
アザゼル先生が入ってくる。その後ろにはロスヴァイセさんの姿が見える。……あれ?
「ロスヴァイセさん、悪魔になってません?」
「あ、わかりますか」
俺はロスヴァイセさんの魔力の質が悪魔のものに変わってるのを見て少し驚いていた。オーディンの爺さんの付き人であるこの人がなんでいきなり悪魔になってるの?
尋ねてみると、ロスヴァイセさんは何やら涙を流し、泣き始めた。ど、どうしたんですか!?
「うぅぅぅぅっ! 酷い! オーディン樣ったら、私を置いていくなんて!」
お、置いていく? もしかしてこの人……オーディンの爺さんに置いていかれたの? 聞いた話によると、オーディンの爺さんはあの後ロキのいざこざやらの対処のため、一端北欧に戻ることとなり、ロスヴァイセさんを置いてそのままスタスタと行ってしまったらしい。今頃爺さんもロスヴァイセさんが居ないことに気付いてるとは思うけど、特に何も言ってこないってことは、ここに置いても問題ないとか思ってるのかもな……。
「リストラ! これ、リストラよね! 私、あんなにオーディン様のために頑張ったのに、日本に置いていかれるなんて! どうせ私は仕事ができない女よ! 処女よ! 彼氏いない歴=年齢ですよ!」
完全に自棄っぱちだな。まあ、気持ちはわかるけど……。まあ、そんな感じでしばらくずっと泣き叫んでたらしく、それを見かねた部長が自分の眷属にならないかと提案したのだそうだ。
「福利厚生もヴァルハラより充実してるし、財政面も含めて将来の安心度が高いので、思い切って悪魔に転生したんです。どうぞ、これからもよろしくお願いいたします」
「と、いうわけで、私────リアス・グレモリー最後の“
へ~、俺が眠ってる間にそんな事があったんだな。
……そこで俺は段々記憶がハッキリしてきて、何故寝ているのかを思い出した。そうだ。俺、疲労でぶっ倒れたんだっけ。流石にあそこで“禁手”を使うのはいささか無理があったか。まあ、あの時は焦ってたし、俺が倒れてもルミナスさん含む超越者の方々が多かったから、大丈夫と判断したのもあるんだけど……。
「……あれ? ミッテルト、ルミナスさんとかカレラさんとかはどうしたんだ?」
そういえば、基軸世界からこちらの世界に応援に駆けつけてくれた方々の姿が見られない。ジウとかはどうやらまだここにいるみたいだけど、少なくとも、俺の万能感知の範囲内にルミナスさん達は存在していない。向こうの世界に帰ったのか?
「ああ、カレラ様とウルティマ様は観光に行ったっす。日本のことを前々から知りたがっていたみたいっすからね」
なるほど……あの二人はリムルの故郷である日本に行ってみたいと以前から言っていたからな。今頃日本観光満喫してるのだろうな。
聞くと、ルミナスさんは黒歌と一緒に前回行けなかった場所を案内してもらってるらしい。シルビアさんはオーディンの爺さんと少し話があるらしく、ロキの後始末がてら、北欧神話の領域に行き、帝国勢はバーニィが故郷のアメリカへ。ジウがトーカやティアマットさんと一緒にこの家の警護をしてるとのこと。ミニッツさんとカリギュリオさんは仕事が忙しいため一足先に帝国に戻ったんだと。……お疲れさまです。
「……でも、皆さんまだ“基軸世界”についてはあんまり話してないんっすよね。ぽっとでの自分が話すよりかは、イッセーの口から聞いたほうが信用できるだろうって……」
「そう。その件でお前に訊きたいんだよ、イッセー」
俺の言葉とともにアザゼル先生が一転して真剣な顔となり、俺の前に座った。見ると、他の皆も俺に目線を向けている。
「……自慢じゃないが、俺たちはかなり長く生きた存在だ。天使としても堕天使としても、永らくこの世界を監視していたつもりだ。だが、“原初の悪魔”に“始原の天使”、神を生み出した“創造神”……あの闘いはそんな俺を持ってしても始めて聞く話ばかりだった。あの後直ぐにお前が落ちちまったから聞きそびれたが……話、聞かせてもらってもいいか?」
「俺も興味がある。約束通り、話してもらおうか」
アザゼル先生とヴァーリの言葉に俺は頷く。
今この場にいるのは……オカルト研究部の面々にイリナ、ソーナ会長、ヴァ―リチーム、アザゼル先生、サーゼクスさんにグレイフィアさん、そしてミリキャスか。まあ、話しても問題のない面子ではあるかな。オカルト研究部はもとより、ヴァ―リチームは数日接してみて信頼できるとは思う。少なくとも約束は守るだろう。ミリキャスもしっかりした子だし、分別もついている。他所に漏らすことはないはずだ。
俺は、ここにいる皆に全てを話すことを決意するのだった。
「……わかってます。約束は守りますよ」
俺はベッドに座り、皆を見据え、基軸世界のことを語りだした。
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木場side
「今から二年前……俺からすれば、十五年前にもなるか」
「じゅ、十五年?」
いきなりの発言に僕は混乱する。十五年前だと、イッセー君がまだ赤子位の歳のはずだ。それに、二年前? 一体どういうことなんだ? そんな僕の混乱を察してか、イッセー君は気不味そうに頭を掻いた。
「……まあ、そこは取り敢えず置いといて、当時俺は裏山に行く途中で、魔素溜まりから成る世界の歪みに巻き込まれ、こことは違う異世界……全ての世界の軸となる“基軸世界”に迷い込みました」
基軸世界……カグチ達やイッセー君達が度々口にしていた言葉……それは文字通り、こことは違う“異世界”の話だったってことか?
「全ての世界の軸……それは、“冥界”や“天界”……ってことか?」
「いえ。それらの世界は層みたいに地球と重なる形で存在してる異空間。この場合の世界っていうのは、地球のような惑星に近いものですね」
その言葉に僕達は目を見開く。それって、地球みたいな星が他にいくつもあるってことなのか!?
「ああ、その通りだ。そして、それらの世界は全て、一匹のドラゴンが創り出したモノでもある」
「ドラゴン……だって?」
イッセー君の言葉にヴァーリが反応する。この星をドラゴンが創り出した……正直、信じられない気持ちで一杯だ。でも、イッセー君はそんな僕達の困惑を他所に話を続ける。
「……地球を含む、すべての世界を創り出した“創造神”とも称される最強の竜……その名を“星王竜”ヴェルダナーヴァ。全ての世界は、このドラゴンから始まったんだ」
曰く、ヴェルダナーヴァは全知全能の力を持つ存在だったのだという。全知全能とは、全にして一……言い換えれば、ヴェルダナーヴァ以外のものは存在しないという状態。
ヴェルダナーヴァはその状態を嫌い、自ら全知全能を手放すことで、数多の“世界”を創造したのだという。
「静寂を嫌って世界を産み出す……オーフィスとは真逆だな」
「ええ。そんなヴェルダナーヴァが最初に作った世界こそ、“基軸世界”。故に、基軸世界はあらゆる世界の軸として機能してるんです」
故に基軸世界に綻びができると、稀に異世界へと通じる次元の歪みが生まれるらしい。イッセー君も、その歪みに巻き込まれて、基軸世界に迷い込んでしまったのだそうだ。
その後もヴェルダナーヴァは多様性を求め、あらゆる種族を創造したという。
自らを補佐する存在である七柱の“天使族”。その影より派生した七柱の“悪魔族”。大地の化身たる“巨人族”の狂王。惑星の管理者たる“妖精族”の女王。文明を築き、繁栄させる“吸血鬼族”の神祖。これらの種族は皆、ヴェルダナーヴァが作り上げたのだということを……。
「……吸血鬼が、文明を繁栄させる種族だと?」
「ええ。元々吸血鬼は、今の人類みたいな役割を期待されて作られたんですよ」
吸血鬼は長い寿命に高い知能を持ち、限りなく完璧に近い力を持つ。だけど、吸血鬼は夜にしか生きられない。故に、真に文明の繁栄をさせるには足らなかったのだという。
……そして、最後に生まれたのが人間。基軸世界で人間が生まれたことで、連動して他の世界にも同じく人類が繁栄するようになった。
「……とまあ、基軸世界についてはこんなもんですかね。────話を戻しますが、俺はひょんなことからその基軸世界に偶然迷い込んでしまいました。最初は本当に驚きましたよ。だって、エロ本探しに来たら、いつの間にか見知らぬ森にいて、化け物にもわんさか襲われましたからね……」
イッセー君は遠い目をしながら懐かしそうに呟く。どうやら相当酷い目にあったみたいだね。
「……そして、俺は後にその世界の魔王となる“リムル・テンペスト”に出会いました」
未知の怪物に襲われ、死にそうになった時、彼を助けたのがそのリムル・テンペストという存在なのだという。
彼は見知らぬ人間であるイッセー君を歓迎し、自らが治める国に迎え入れてくれたらしい。
何でもそのリムルって人も、元々は地球出身であり、同じ境遇のイッセー君を放ってはおけなかったのだという。
「リムル……やはり聞かない名だが、魔王というからには、そいつも悪魔なのか?」
「あ、いえ。向こうの世界では魔王っていうのは、“悪魔の王”じゃなくて、“魔に属する者の王”って感じですからね」
曰く、基軸世界に魔王は八人おり、魔王達が世界の均衡を担う立場にあるのだという。
原初の悪魔にして最も古き魔王であり、最凶の魔王“
ヴェルダナーヴァと人間の間に生まれた娘にして、その力を受け継いだ最恐の魔王“
迷宮の主にして精霊たちの頂点に立つ女王“
太古の悪神にして、破壊の神とも称される巨人の狂王“
堕天した始原の天使の一角にして眠りを司る双剣の剣士“
神祖の娘にして誇り高き吸血鬼の女王“
元人間の勇者現魔王という異色の経歴を持つ剣王“
「そして、俺の恩人にして実力、勢力、共に魔王随一と言われる最強の大魔王“
星にも匹敵する力……にわかには信じられない。でも、イッセー君のあの力や、あの時蟲の女王みたいな存在と戦っていたルミナスさんの力を目の当たりにすれば、嫌でも信じざるを得ないな。
「なるほど。確かにあの強さなら納得だな。原初の悪魔だっていう二人があれ程慕ってるんだ。そのリムルとかいうのが規格外ってのはよくわかるぜ」
アザゼル先生の言うとおり、原初の悪魔の強さはあの時見たからわかっているつもりだ。神クラスの怪物すら苦も無く倒すほどの悪魔……そんな人たちが仕えている人が弱いわけがない。もしかしたら、“超越者”と称されるサーゼクス様よりも強いのかもしれないね。
「私からも質問させていただきます。あの場にいた人間たちは何者なのですか?」
次に問いかけたのは、ヴァ―リチームのアーサーだ。彼はもとより、人間でありながら、僕をも上回る力を有している。だからこそ、同じ人間でありながら、子フェンリルや量産型の龍王をいとも容易く一蹴したあの人たちに興味を持っているみたいだ。
────そして、それはイッセー君にも同じことが言える。あの人たちの強さはイッセー君とも関連してるかもしれない。イッセー君は本来敵であるアーサーの質問についても詳しく答えてくれた。
「ジウ達か。彼らは帝国の人間たちだよ。“ナスカ・ナムリウム・ウルメリア東方連合統一帝国”────人間の強者達が多く集う大国。彼らはそこの上位者であり、“仙人”や“聖人”に覚醒した存在でもある」
「仙人? 聖人?」
イッセー君曰く、人間は“進化”する。
基軸世界のように、大気中に魔力が多く含まれている世界では、人間はその力を取り込み、コッチの世界の悪魔にも負けない力を振るうのだと言う。
そんな人間が一定の修練を積み、力を蓄えると、人間から“仙人”という種族に至る。仙人になると、寿命も数百年から千年くらいにまで伸び、コッチの世界で言うところの“最上級悪魔”や“魔王”にも匹敵する力を出せるらしい。
そして、その仙人が更に強くなると“聖人”に覚醒する。聖人は“精神生命体”という存在に至った人間であり、魔王を遥かに超える力を手にすることができるうえ、寿命という概念からも解き放たれ、例外もあるものの、基本的には殺されない限り、死ぬことはないのだという。
「なるほど……合点がいった。それであの強さか……。じゃあ、イッセーも……」
「ええ。もちろん俺も“聖人”に至ってますよ」
なるほど……だから、イッセー君は
「まあ、その更に上の“神人”や、別枠で“勇者”っていうのも存在するけど、話がズレそうだから割愛するな」
そう締めくくるイッセー君を見ながら、小猫ちゃんは何やら考え込むように瞠目し、やがて手を上げた。
「……私も気になることがあります」
「ん? なんだい、小猫ちゃん?」
「先輩やメロウが言っていた“ユニークスキル”という力……あれは、何なんですか?」
ユニークスキル……小猫ちゃんと朱乃さんのお母さんが使っていた力だったね。確か、コカビエルもそのような力を持っていると言っていた気がする。あの力は堕天使の力でも、神器の力でもなかった……。あまりの情報量の多さに頭から抜け落ちていたけど、あの力は一体……。
「“スキル”というのは、“特殊現象発動システム”とも言うべきもので、修練や“界渡り”によって獲得する力さ」
“スキル”とは、魔物や人間が所有する特殊能力のことであり、部長の滅びの魔力も広義の意味ではスキルに属するらしい。イッセー君によると、“スキル”は修練や強い意志、種族特性などにより手に入れることもでき、その性能によって“コモンスキル”や“エクストラスキル”など、様々なものに分かれているという。
「その中でも、一段強力なのが“ユニークスキル”。英雄と称される者のみが獲得するとされていて、自らの願望そのものが形となったものなんだ」
だからこそ、その性能は千差万別。イッセー君のように、解析に特化するものもあれば、ミッテルトさんのように支援に特化するものもある。
一度戦ったからよくわかる。“
僕がそう考えていると、イッセー君は更に話を続ける。
「……そして、そのユニークスキルを遥かに凌駕した力を持つのが“
イッセー君曰く、究極能力とはヴェルダナーヴァが産み出した管理者権限とも言うべき権能であり、世界の理や法則そのものに干渉することができる力なのだという。この究極能力は自らの魂を文字通り究極と呼べる領域にまで高めた者のみが習得できるらしく、ユニークスキル以下のスキルとは比べ物にならないほどの力を有しているみたいだ。
「故に、例外もあるものの、究極能力の持ち主には、同じ究極能力の持ち主でなければ基本的に勝てないとされているんだ。何しろ、あれはその気になれば世界そのものを改変するほどの力を持ってるからな……」
「それはとんでもねえな…………で、イッセーもそれを持ってるわけか?」
「はい。俺の究極能力は“
イッセー君の究極能力“
イッセー君はその後も話した。
魔王になる前のリムル・テンペスト様に拾われ、彼の街で過ごしたこと。
敵国のスパイとして送り込まれたミッテルトさんと出会い、助けたこと。
創造神の弟である“暴風竜”ヴェルドラ様に弟子入したこと。
リムル・テンペスト様が魔王に至ったあとも彼と共に歩んだこと。
「そして、十三年の月日が流れ、ついにこの世界に戻る方法が発見されて、俺はこうしてこの世界に戻ってきたんですよ……あとは、まあ皆の知ってる通りかな?」
「「「「「··············」」」」」
皆言葉も出ない。僕達が考えていたよりも、遥かに壮大な話だ。
イッセー君はここまで話し終えると、僕達と向かい合い、頭を下げる。それを見たミッテルトさんも、同じく頭を下げた。
「ちょ、イッセー、ミッテルト。なにを……」
「ゴメン、皆」
部長の困惑を他所にイッセー君は僕達に向かって謝罪をする。
「皆に隠し事をするのはよくないってわかってた。本当は何度も話そうって思ってた。でも、話すことで皆の俺を見る目が変わってしまうかもしれない。それが怖かったんだ。本当にゴメン」
「本当にゴメンっす!」
「イッセー君……ミッテルトさん……」
イッセー君達の謝罪に僕は言葉を失う。
……確かに信じられないような話ばかりだったし、イッセー君の気持ちはわからなくもない。
……でも、この話で僕達のイッセー君を見る目が変わるなんて思われるのは心外だ。そう思ったのは僕だけではないみたいだ。
「……心配しすぎよ。確かに、信じられない話ばかりだし、聞いててすごく驚いたわ。でも、それでイッセーを見る目が変わるなんてある筈ないじゃない。イッセーもミッテルトも私にとって、大切な家族よ」
部長の言葉に皆が微笑んで頷いた。
「ええ。私にとってイッセー君はイッセー君で、ミッテルトちゃんはミッテルトちゃんですわ。聖人がどうとか、そんなの関係ない。イッセー君は私の恩人で大切な人。ミッテルトちゃんも私にとって妹のような存在。どちらも私にとって大切な人ですわ」
「私はお二人にどんな過去があったとしてもお二人のことが大好きです! 私の大切なお友達で家族です!」
「……イッセー先輩は優しい先輩で、ミッテルトちゃんも大事な友達です。見方が変わるなんて、ありえません」
「僕も先輩方のことは大好きですぅ!」
「ああ、私にとっても二人は二人でしかない。私のかけがえのない友達だ!」
「私にとってもイッセー君は大切な幼馴染みだし、ミッテルトさんも大切な友達よ! 聖人がどうとか関係ないわ!」
朱乃さんにアーシアちゃん。小猫ちゃんにギャスパー君にゼノヴィアさんにイリナさん。皆がイッセー君に気持ちを伝える。僕も、素直な気持ちを二人に伝えなくてはならない。
「イッセー君、ミッテルトさん。僕達は仲間だ。例え何があっても、それは変わらない。そんな心配しなくていいんだよ」
僕達の言葉にイッセー君とミッテルトさんは目を見合わせる。やがて、二人は僕達の言葉に笑顔を持って応えた。
「……ありがとな。皆」
「ありがとっす!」
****************************
「さてと、じゃあ次はカグチ達について話してもらうぜ」
アザゼル先生の言葉に僕達は再び話を聞く姿勢に戻す。
「わかってます。まあ、アイツラについて知ってるのは僅かですけどね」
イッセー君はそれを確認すると、自分の知ってることを話しだした。
「アイツラはヴェルダナーヴァが創り出した文明人の祖たる吸血鬼の神祖“トワイライト・バレンタイン”の弟子達です」
「トワイライト・バレンタイン……」
サーゼクス様がその名を呟く。
イッセー君によると、吸血鬼の神祖たるトワイライトはヴェルダナーヴァ様の手により、文明を繁栄させるために作られた存在だ。
それ故に彼は、吸血鬼以外にも様々な種を作り出した。
鬼やゴブリンの祖である“
「カグチやメロウも、トワイライトによって産み出された“祖”というべき古き存在なんですよ。その力は少なくとも、並の神を遥かに上回るものでしょうね」
「なるほど……となると、そのトワイライトの目的が気になるな。イッセー、お前はなにか知ってるか?」
「いえ、流石にそこまでは……「奴の目的なら妾が説明してやろう」」
イッセー君の言葉と同時に誰かが声を上げた。
声のする方向を見ると、そこには天照大御神様とゴシックロリィタを纏った銀髪少女。そして、その後ろに控える黒歌さんの姿があった。
「ルミナスさん!」
この人が、“
「……貴女が異世界の魔王ですか」
「うむ。そちはこの世界の魔王じゃな」
「ええ。初めまして。サーゼクス・ルシファーと申します」
「ルミナスじゃ。異世界とはいえ、貴様も魔王であるのなら敬称は不要じゃ。楽にするが良い」
ルミナス様はそう言うと、どこからか豪華な装飾のソファーを出し、優雅に腰掛け、紅茶に口づける。
その所作の一つ一つから気品が感じ取れる。それでいて、隙が一切見当たらない。
「……じゃあ、早速聞かせてもらおうか。その神祖とやらの目的を……」
アザゼル先生は本題に入るように促すと、ルミナス様は紅茶を飲み干し、目を鋭くする。
「……奴は、ヴェルダナーヴァに文明人の祖として作られた存在じゃ。故に、完璧な種族を作ることに囚われておる」
ルミナス様曰く、神祖トワイライトは神が認める完璧な種族を作ることに執心していたらしく、数多の種族を産み出したのだという。ここまではイッセー君も話していたけど、此処から先の話は想像を絶するものだった。トワイライトは自ら産み出した種族から、さらなる種族を作り出そうと、交配と実験を何度も繰り返したらしい。完璧な種族を作る。その目的のためなら、トワイライトはどんな犠牲も厭わなかったのだという。
「奴のせいで、人類も吸血鬼も何度も滅亡の危機を迎えた。妾達の世界に残る厄災も、元を正せば奴の行いが原因であるというものも多い」
だからこそ、ルミナス様は自らの父親であるトワイライトを討とうとしたのだと語る。
ルミナス様は不意打ちを持ってトワイライトを弑した……筈だったのだと。
「……じゃが、奴は生きてこの地に隠れ潜んでおったのじゃ。数人の高弟を率いてのう……」
神祖はこの世界に潜み、密かに勢力を広げていた。旧魔王派やコカビエルの使っていた“結晶”も神祖が作り出したものだという。
「なるほど……つまり、その「完璧な種族」を作り出すという目標が変わっていない、と仮定すれば、奴らの目的は……」
「……この世界を滅ぼし、新たなる種族の苗床にする……といったところでしょうね。相変わらずマッドな人だ……」
天照大御神様の言葉に静寂が応える。
新たなる敵とその途方もない目標に僕達はただ、息を呑むことしかできなかった。