〈選抜レース〉
まだ担当トレーナーが決まっていないウマ娘がトレーナーにアピールをする機会でもある。原作では年に数回とあるが今作では年に4回と決まっている。
開催月は1月、4月、7月、10月となっていて3か月スパンになっている。
この設定は作者がRTA計測開始の日にちをルーレットで決めようとしたがなんか変なタイミングになりそうというどうでもいい理由から作られた悲しき設定である。同時に今後2度と出てくることがないであろう忘れても何にも問題のない設定でもある。
フラッシュと担当になり早数か月。季節は夏になりフラッシュのメイクデビュー、すなわちデビュー戦の日が10月11日に決定し、練習にも今まで以上に力を入れだした。そんなある日、練習を終えトレーナー室でミーティングをしていた。こうして練習終わりに明日のスケジュールを決めるのが日課だ。
「では明日は休日・・ということでよろしいんですか?」
「ああ、いいぞ。ここ最近練習詰めだったからな。たまには羽を広げて、英気を養うのも重要だからな」
「ではお言葉に甘えて・・・トレーナさん。明日・・・デートをしませんか?」
驚いた。まさかフラッシュの口からデート・・・それも俺とだなんて・・・。フラッシュからデートなんて言葉を聞くのは別の誰かと行くときに相談役じゃないとないと思ってた。
「本当に俺でいいのか?」
それかあれだろうか。デートの練習的な?フラッシュにしては言葉足らずだね。
「トレーナーさんとが・・・いいです///」
えっ何その反応・・・。なんで顔真っ赤にして言うの?
確かに別名婚活会場トレセン学園。地方だろうが中央だろうが専属トレーナーと担当の恋愛が多い。そういや今度お世話になった先輩の結婚式あるんだよな・・・ご祝儀・・・。
で、俺26だよ?もうおじさんだよね・・・?自分で言っててつらいな。
とにかくこれは・・・俺のことが好きなの?・・・いや、フラッシュも初心な乙女だ。きっとデートに行くなんて経験が初めてだから恥ずかしがっているんだろうそうだろうそうに決まっているそうあってくださいそうあれ。
「あの・・・トレーナーさん・・・お返事を・・・」
告白かよ!俺が状況に困惑しているとフラッシュが急かす。涙目上目使いは反則だろ!・・・まあ・・・いっかこの際。どうせ行けば楽しくてそんな考えどこかに吹っ飛ぶよ。
そうして思考停止した俺はフラッシュにOKにの返答をする。
「ああ、一緒に行こうな。でもいいのか?俺にデートの経験はないぞ?」
そう。俺は生まれてこの方女子とお出かけした経験などない。俺と関わると不幸が来るだのなんだの言われてそもそも女子とまともに話したことすらな。何なら男子ともない・・・。うっ・・・塩水が。
「まあ・・・トレーナーさんの初めて、ごちそうさまです。それにしても・・・トレーナーさん、今までデートの経験ないんですか?トレーナーさんならそういう経験ありそうなんですが・・・」
「いや~。生憎ね。昔から人が俺の周りによってこないんだよね~」
「それは・・・どうして?」
「よく俺と関わると不幸になる~って言われて。ったく俺は間が悪いだけなのに」
「でもこの前たづなさんに何かで怒られてましたよね?」
「あれは偶然。OK?」
1か月ほど前、フラッシュの練習の準備をしていたら人参畑からやってきたモグラにターフを荒らされたのだ。その時に俺が追いかけたからとたづなさんに怒られたのだ。一応あれこれ説明をしたらすいませんと謝られたし特に罰とかなかったからセーフ。
「それを運が悪いというのですが・・・。ではとりあえず明日はデート。ということで。時間はいつものトレーニングと同じ時刻で。場所は校門前でいいですか?」
「ああ、問題ないぞ」
その後、俺たちはデートプランを話し合った。どこに行きたいや、何を買いたいなどそれぞれの希望をできる限り詰め込んだものが出来上がった。それが完成する頃にはもう日は落ち、夏と言えど肌寒くなってきた。俺がフラッシュに寮へ戻るのを提案しようとした時、フラッシュから質問が投げかけられた。
「あ、そうです。トレーナーさん、何かそうって運が悪くなったきっかけみたいなのってありますか?」
時計をチラと見るとまだ寮に帰る予定の時刻まで20分くらいある。プラン作成に集中してたから気づかなかったけどいつもミーティングに結構時間かけてるんだな。練習メニューの時間まで綿密に決めてるからそりゃそうか。
「だから俺は運が悪い訳じゃ・・・。まあいいや。俺が運が悪くなったきっかけ?特に思い当たるのは・・・あ~あれがあるな。でも・・・いいのか?大して面白くないぞ?」
「それでもいいんです。是非話してください」
「じゃあ・・・。あれは、俺がまだ小学生になったばかりの頃、夏に実家で花火を見てたんだよ。おっきな花火大会でさ、うちがマンションの5階くらいにあったもんでいつもベランダから眺めてたんだよね。で、その年の花火大会の時にベランダの手すりから身を乗り出して見てたんだよ。そうしたら頭にカラスが乗ってきてさ~」
「ちょっと待ってください。・・・カラス・・・ですか?」
「そ、カラス。カラスが頭に乗ってさ。そん時はもうテンパったよ。わーわー言って焦ってさ。で、そのままベランダから落っこちちゃったの。今なら全然余裕だけど流石に小学生の、それもまだ体が丈夫じゃない時だったもんでもう大変よ。ただ運がよかったのはそのカラスが下敷きになって俺が大きな怪我しなかったことかな。下敷きになっちゃったカラスには申し訳ないけど。それでも夏休みの間丸々入院してたんだけどね・・・」
そこまで話し終えてフラッシュの方を見ると虚空を見つめていた。なぜだろう・・・フラッシュの後ろに宇宙が見えた気がする。
「フラッシュ~。お~い」
「はっ!すいません、お話し中に・・・」
「いや、それはいいんだけど・・・、どうしたの?」
「いえ・・・その・・・トレーナーさんのお話があまりにも凄すぎて・・・」
「いやそりゃあ普通の人生生きてれば聞かないワードだもんな。頭にカラスが乗ってマンションから落ちたなんて」
実際夏休み明けにそれをクラスメートに言ったらそれから相手にされなくなったからな。
「おっと、そろそろ寮に帰る時間じゃないのか?」
「え!?もうそんな時間!それでは失礼します。今日はありがとうございました。トレーナーさんのこと、知れて楽しかったです。また明日、お願いしますね」
飛び切りの笑顔で言った後、フラッシュは寮に帰っていった。
「・・・デートの服買いに行かなきゃ」
明日が期限の書類の存在を完全に忘れ、俺はユニク〇に向かった。
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トレーナーさんと初めてのデートをしてから数か月が経ち、3週間に1回のペースでデートに行くようになった私たち。ファルコンさんによれば日本では男女は告白というものをしてからお付き合いなさるようです。つまり私とトレーナーさんはまだ付き合っていないということになります。もっと精進しなくてはなりません。
っと、いけません。今日は私のメイクデビュー。今はレースに集中しなくては。
練習量ならかなりの量をこなしてきた。それにトレーナーさんがいつも、私にあった最善のトレーニングを用意してきてくれた。量、質、共に万全。負ける理由は、どこにもありません。
「フラッシュ!」
「トレーナーさん」
トレーナーさんが私の応援に来てくださったようです。
「フラッシュ、君なら勝てる。頑張って」
「はい!行ってきます」
「ああ、行っておいで」
彼の方を見て頷き、私はターフへと足を進めた。
メイクデビューの結果は3馬身差の1着。上々の出だしといったところでしょう。
「お疲れ、フラッシュ!」
私がターフから控室に戻っているとトレーナーさんが来てくださいました。私のために来てくれたと思うと少し照れちゃいますね・・・。こほん、こういう時に冷静さを欠いてはいけません。冷静に・・・冷静に・・・。
「凄いじゃないかフラッシュ!おめでとう!」
「ふぇ!?」
ととととトレーナーさん!?なんで抱き着いてッ!あっ・・・トレーナーさんの体温・・・私よりちょっと低いけど安心する。
ではなくて!私が臭っていないか心配です。一応日頃から気遣ってはいますがやはりレースの後では・・・。
そうでもなくて!トレーナーさんのことですから勢い余ってのことでしょうけど・・・嬉しいんですけど抱き着くのは2人きりの時とかの方が・・・。
「とれっとれなーさんん!?」
さらに私の頭をなでて・・ふぁ、ふぁあああああ!
『掛かっているかもしれません。一息付けるといいのですが』
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その後、冷静になったトレーナーがフラッシュに土下座の勢いで謝ったり、それに対しフラッシュがあっさりと許し毎度やってくださいとお願いしたりゴールドシップがタツノオトシゴを差し入れに持ってきたりなど紆余曲折あり、ウイニングライブを迎えた。
どうでもいいことだがサブトレーナー時代からのポリシーで彼は最前列で応援したい派だ。他にも彼の師匠は最後列で親ヅラするのが楽しいなど、ウイニングライブの見方は人それぞれだ。ただ一つ言えるのは、ウマ娘とそのファン、互いがいなければ成り立たないこれはレースに匹敵するほどの盛り上がりを見せる催しだということだ。
明かりが一度落ち、周囲が静かになる。ファンファーレが鳴り響き、ウイニングライブ用の曲、『Make debut!』が流れる。
『ウオオオオオオ!』
会場は、熱気に包まれた。
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「ウイニングライブお疲れ様」
ウイニングライブを終え帰りの仕度をしたフラッシュに温かいお茶の缶を渡す。デビュー戦で勝利を収められる娘などそうそういない。やはりフラッシュは俺の想像を凌駕するようなウマ娘になるだろう。
「トレーナーさん・・・こちらへ・・・」
「?」
差し出したお茶を受け取ったフラッシュは俺を控室に招き入れた。
「どうしたんだフラッ・・・」
中に入り、フラッシュに用件を聞こうとした時、フラッシュがこちらに抱き着いてきた。
「トレーナーさん、私は貴方のことが好きです。私と、お付き合いしていただけますか?」
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「トレーナーさん?」
!?いかん、あまりの衝撃に思考が飛んでた。
「えっと・・・え?」
「ですから、貴方とお付き合いしたいのです」
????????
あれ?俺告白されるレベルでフラッシュからの好感度あったっけ?
だって・・・お節介だっただろうけど選抜レースまで雀の涙程サポートして、あとは専属トレーナーを普通にやってた・・・。あれええええ?
・・・いや待て。フラッシュは今高校2年生。恋に恋するお年頃だ。それにトレセンにいる男なんて職員なんかしかいないだろう。で、その中で最も接点がある俺のことが気になるのは仕方がない。うん。・・・自分で言うの気持ち悪いな。
とにかく!まあそういう勘違いとかだろう。後半年ぐらいすればいつの間にかなくなってるさ。そう、かくいう俺も高校時代は一番接点のあった保健室の先生と付き合えたらな~なんて考えたもんだ。あ、そうか。学校の先生・・・まあトレーナーも近いもんだろ。そんな立場との禁断の恋なんて少女漫画だとよくあるシチュじゃないか(多分)。それにさっきも言ったけど恐らくは勘違い。半年すれば飽きるだろう。あちらから自然に離れていく形になればそんなにわだかまりはできないはず。
教育者としてどうなんだとか倫理的にまずいなどという意見が俺の中にあるがまあ・・・生徒の望みとかやりたいこととか極力叶えて幸せな青春を送ってほしいっていうのが俺の気持ちだし・・・ここは・・・
「ああ、いいよ。フラッシュ、俺の彼女になってくれ」
それを聞いたフラッシュは驚き、喜び、少し照れ。
「よろしくお願いします。Ich liede dich、トレーナーさん」
フラッシュがより俺の方にくっついてくる。すかさず俺もフラッシュの体を己の両腕で包み込んだ。
【エイシンフラッシュ 交際 計測開始から271日】
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あれ?ここは・・・それに私は一体・・・。え?トレーナーさんの顔が近っ・・・。
「ああ、いいよ。フラッシュ、俺の彼女になってくれ」
え?えええええええ!?え?彼女!?なんで?いや・・・ええ!?
き、記憶を辿らねば。どうしてこうなったのかを今すぐに・・・。ええっと確かレースを終えて控室に戻るところでトレーナーさんに抱き着かれて・・・それから・・・確か・・・ウイニングライブが・・・あ、トレーナーさんがいました。そしてその後にお化粧などを整えて・・・トレーナーさんを・・・。
私ったら何をしているのでしょう!トレーナーさんに抱き着かれて頭をなでてもらえたのが嬉しくてその勢いのまましばらく過ごして最終的には告白!?こんなの全くスケジュールにありません!私たちが付き合うのは私が引退した後なのに!
・・・ですがOKを貰えたのでしたよね。ふふっ・・・彼女///嬉しすぎて空を飛べてしまいそうです。予定は狂ってしまいましたがこれはこれでいでしょう。
では改めてトレーナさんに愛の言葉を伝えなくては。・・・ちょっと恥ずかしいですね///
そして私はふっと息を吐き、
「よろしくお願いします。Ich liede dich、トレーナーさん」
彼に今できる最大限の愛情を伝えた。
デート描写はどうした。だって?いや、自分人生でデート行ったことないから無理よ無理
ちなみにこれは10話前後で完結する予定です。今年中に終わるかな?