〈チームアンタレス〉
主人公がフラッシュの担当になる前までサブトレーナーとして勤めていたチーム。
いつもおっさん臭くておちゃらけているがトレーニングの時には的確な指導をするメイントレーナーのもとで15人ほどのウマ娘が切磋琢磨し合っている。
現状、作者自身の頭の中にはマチカネフクキタルしか明確に決まったメンバーはいないが今後増える可能性もある。
名前の由来は一等星の1つでさそり座の中でも一番明るい星のアンタレス。幸運を呼ぶ星として知られており、チーム設立時は誰も怪我のないようにという願いを込めてこの名がつけられた。
これを書いているうちになぜかフクキタルが主人公の作品が浮かんできたがしばらくは書く余裕がないのでプロット止まりである。もし読みたかったら感想にでも書いておいてください。(露骨なコメント稼ぎ)
どうも、最近京成杯を制したエイシンフラッシュ、のトレーナーです。今は俺がチームアンタレスのサブトレーナーの時のチームメンバー、フクちゃんことマチカネフクキタルと再会を果たし近況報告をしています。
「最近の師匠はどう?また酒飲みすぎて奥さんが乗り込んできてない?」
「最近はないですね~。逆に、貴方がチームを離れてからはあまり飲んでいるというのを聞きませんね。酒飲み相手がいなくなったのか、それとも仕事が忙しくなってそんな暇はなくなったのか。どちらにしても以前ほどお酒を飲んでいるわけではないのでいいのではないかと思います。ところでサブトレーナーさん。そろそろお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「ん~、ダメ。にしてもそうか、俺がいないと寂しいのか・・・。また今度余裕が出来たら一緒に酒飲みに行くって伝えておいて」
だが俺も俺でフラッシュという担当がいる。急性アル中でぽっくりなんてのは洒落にならないので量は控えめにしておこう。
「分かりました。多分トレーナーさんもそれを聞いたら大喜びしますよ。貴方の担当の方が活躍されてるとうっとうしいくらいドヤってきますから。それでサブトレーナーさん、そろそろ・・・」
まさか俺があの担当トレーナーを育てたなんてノリをやっているとは思わなかった。ただあの人はこう・・・おっさん臭さが普段は駄々洩れでもトレーニングの時は真面目なんだよな。俺もそんな人だから弟子入りしたわけだが。
「まだダメね~「もう我慢できませんツッコませてください!」
うるっさ!鼓膜が破れそうになるから耳元で大声で叫ぶのはやめてもらいたい。特にフクちゃんは声が人一倍大きいのだから。
「どうして貴方は首から上だけなのですか!そして、どうしてそんなに顔が腫れているのですか!」
フクちゃんのツッコミはその通りであった。今の俺は廊下の床から頭だけが生え、さらに唯一フクちゃんから見えている顔は靴で踏まれたかのように赤い足跡が顔中に張り付いており、痛みのせいか顔全体が腫れていた。こんな状態、普通ならば目でピーナッツを噛んでいる人を見ることくらいお目にかかれないだろう。
「・・・隠しきれないか・・・」
「隠せるとでも?!」
「いいだろう、話すと長くなるが、こうなった理由を話す。あれは今から3か月・・・いや、2時間ほど前だったか。まあいい、俺にとってはつい先ほどの出来事だが・・・フクちゃんにとっては、回想上の出来事だ」
「そのノリ私分からないです。というか・・・分かる人いるのですか?」
2時間ほど前、俺は下の階の廊下を歩いていたんだ。今日のフラッシュ・・・担当の娘のメニューを考えながらね。そしたらさ・・・
「バクシーン!!!!」
謎の叫び声と共に前方から猛スピードでウマ娘が突っ走ってきたのよ。で、考え事してた俺は避けれる訳も無くそのまま追突。俺は親指と人差し指と小指を伸ばした例のポーズしながら吹っ飛んで天というかこの床を突き破ってこの有様というわけさ。
「全然長くないじゃないですか。要はいつもの追突事故じゃないですか。トラックや自動車がウマ娘に代わっただけで。にしても、なるほど。道理でこの事故現場にバクシンオーさんがいるんですね」
今まで触れていなかったがフクちゃんの言う通り俺の後ろにはサクラバクシンオーがうつむきながら座っている。何度か君は悪くないからそこまで落ち込まなくても大丈夫だよと言っているのだが一向に調子が戻らない。優しい娘だ。責任感も強い。いいリーダーシップを発揮しそうではないか。
「そういうこと。というか、そろそろトレーニング行った方がいいんじゃな「いえそれより先にそのお顔の跡を教えてください」
「鋭いなフクちゃんは。占いじゃなくて探偵をおすすめしようか?」
「もう将来の伴侶と神社継ぐのを決めているので無理ですね」
「そうか・・・彼とか・・・」
この彼というのはいつか本人の口から語られるだろう。・・・多分。
それで、俺がこの顔になった原因か。生まれた時からだから文句言われても・・・あはい、真面目に話します。
さっき床を突き破った所まで話しただろう?そこからの続きなんだが・・・突き破った先には何故か偶然偶々ナリタタイシンのスカートの真下だったんだよ。
フクちゃんゴミを見るような目やめて、確かに俺が悪いけど偶然だし何より何も見てない。
まあそのナリタタイシンが俺にスカート見られた、って言って俺の顔踏んだんだよ、何度も。正直な話、俺はこれが当然の反応だし、向こうに悪いところは1ミリもないと思ってる。だって思春期の女の子だよ?スカートの下に人がいたら蹴り飛ばすでしょ。ただ、流石にウマ娘の脚力でやられたら普通の人は首が飛んでってるだろうけど。
「サブトレーナーさんだから生きてるのは当然だとは思いますが普通なら5回ほどは死んでいますね」
「でも流石に手加減はされてたっぽいよ」
「して、そのタイシンさんはどちらに?」
「彼女なら担当トレーナーさんと一緒に俺の救助頼みに行ったよ。今は下で俺の引っこ抜き作業してる」
なのでさっきから足がぐいぐいと引っ張られているのだ。ただ頭がすっぽりはまっているので床が丸ごと崩れなきゃ無理な気がするが。
『メリ』
あっ・・・。
「フクちゃん、バクシンオー連れてここから離れて。それと、また校内であったらよろしく。チームのみんなにも伝えておいて」
「分かりました。それではまた」
「師匠にもまた今度缶ビール持っていきますって言っておいて~!」
流石はよく鍛えられているウマ娘だ。あっという間に見えなくなってしまった。
その時、床が外れ俺が下の階に落ちる。なんとそこにはたづなさんがいた。
「あはは・・・、どうも」
「トレーナーさん、事情は把握しておりますし今回もあなたに責任はないことは重々理解はしていますが言わせてください。どうしてあなたはそんなに厄介ごとに巻き込まれるのですか。こっちの負担も考えてください」
「ホント・・・申し訳ありません」
「とりあえず、この前のようにターフなどの整備が比較的しやすいのならまだしも今回は校舎の廊下という修理に多額の費用と時間がかかるのでしばらくはあなたの給料を減給・・・という形になると思いますがそれで構わないですか?本当はあなたにこんなこと言いたくないのですが額が額ですので・・・」
「最低限の生活費さえ貰えればいくらでも」
俺がお金を使うのは生活費とフラッシュとのデートに使う時しかない。高月給なこともあってサブトレーナー時代にかなりの貯金はしてあるのでデートのたびに高い指輪なんかをねだられない限りは大丈夫だ。
今日は3月27日。俺の担当フラッシュの誕生日だ。繰り返す、誕生日だ。そう、フラッシュがこの世に生を受けた記念すべき日であり俺と出会う予定が決まった日でもある。こんなにも喜ばしく素晴らしい日なのだから全世界の生き物が祝うべき日であるべきだ。
ここはトレーニング室。今日はさっき言って通りフラッシュの誕生日なのでトレーニングをせずフラッシュのお願いをなんでも聞き入れるつもりだ。
「こんにちは、トレーナーさん」
お、噂をすればなんとやら。フラッシュがトレーナー室に入ってきた。
「こんにちはフラッシュ。お誕生日おめでとう。ささ、座って座って」
「ありがとうございます。あの・・・それで・・・はしたないかもですがお願い事を・・・」
実は1週間ほど前にフラッシュに誕生日にしてほしいことなどを考えておくように言っておいたのだ。それなりに期限がないと思いつかないこともあるだろうし。
「何がいいフラッシュ。なんでも言ってくれ、今日の俺は君のためにだけある存在だ」
ちょっと客観的に見たら大分やばいことを口走っている自覚はある。俺自身、どうしてこんなにフラッシュに入れ込んだのかあまり分かっていない。ただ、フラッシュに告白され、彼氏彼女の関係になってからはより一層入れ込んでいるのは確かだ。
「もう、トレーナーさんはすぐ調子に乗るんですから///」
「話が逸れてしまいましたね。その・・・お願いなんですが・・・今日、トレーナーさんのお宅に泊まってもよろしいでしょうか?」
・・・そう来たか~。普通にデート位を予想していたのだがそれを軽々と越えられた。
「ちょっと汚いかもだが別に構わないぞ」
男の部屋故に多少散らかっているがそこは何とか目を瞑ってほしい。「それでは、お邪魔します」
そして俺たちは外泊届を届けるためにトレーナー室の後にした。
その後、外泊届を出して荷造りをしたら再び校門で会おうとフラッシュと一旦別れトレーナー室に荷物を取りに行く。
「にしてもまさか俺の家に来るとはな~」
彼氏になって半年、日を重ねるごとにフラッシュは俺への愛が増していくし俺もフラッシュに入れ込むようになっていった。告白された当初の俺の予想は大きく外れることになったがこれも悪くはないだろう。
一応来客用の布団はあるし今日は帰る途中に今日の夕食の食材とケーキを買って帰ろう。寮の方ではもう誕生日パーティーは行ったらしい。というかウマ娘は生まれる時期が早くて1月、遅くて6月とある程度固まっており、特に2,3,4月に密集しているため週ごとにまとめて誕生日パーティーを行うらしい。
「さて、行くか」
トレーナー室から我が家に持っていくものはそこまでないのであっという間に荷造りが終わった。フラッシュの方は時間がかかるだろうしゆっくり行くとしよう。
再びフラッシュと合流した俺はおうちデートするには早すぎる時間を埋めるために普通のデートをした。ただデートと言ってもショッピングモールで夕食用の食材とケーキ屋でケーキを買うことくらいだったが。そうしてデートを楽しみ、ちょうど日が沈むころになったので電車を使って帰・・・
「あ~、帰宅ラッシュか~」
いつもは終電間際に帰っていたのですっかり失念していた。しかも今日は心なしか人が多い。電車に乗れない。
「それなら歩いて帰りましょう。大丈夫です、今日の予定はトレーナーさんとおうちデートとしか決めてないのでどう過ごすかは自由ですよ」
「そっか、ちょっと遅くなっちゃうけどいい?」
「いいですよ、貴方とこうして歩くのも・・・私は大好きですから」
「じゃあ・・・はい」
俺が差し出した手をフラッシュが取り一緒に帰る。ここ最近、フラッシュがかなり柔軟な対応をとれるようになってきた。こうして他人の成長を感じられることもトレーナーという職業のやりがいの一つだ。
いくら季節は春とはいえまだまだ夜は寒い。だから手をつないでいたのがいつの間にか腕を絡めてしまうのも仕方のないことなのだろう。人肌の温かさというのもやはり悪くはないものだ。
こうして歩くこと20分ほど、トレセン学園のある府中市からお隣、三鷹市に移っていた。就職当時、トレセン学園付近にあるトレーナー寮に入ることも考えたのだが大学時代から住んでいるこの家を出ることに抵抗を感じ結局住み続けた。そんな我が家に今、帰ってきた。
「いらっしゃい、フラッシュ。ここが俺の家だよ」
そして俺は笑顔でフラッシュを招き入れた。
~~~~~~
「それじゃあフラッシュ、改めましてお誕生日おめでとう。はい、これプレゼント」
トレーナーさんが作ってくださった夕食をいただき、今度は私の誕生日パーティーになりました。早速、トレーナーさんから祝福のお言葉と紙袋に入ったプレゼントを頂いちゃいました。去年も一応祝ってはいただいたのですが私がトレーナーさんと話すことに照れてしまってしっかりとはやっていませんでした。が、今年はもう既に付き合っている関係。こうしてトレーナーさんのお宅で2人きりをパーティーだって出来ちゃいます。
「ありがとうございます。これは・・・何が入っているのでしょう?」
「開けてみて」
トレーナーさんに言われるまま紙袋を開けてみます。ガサゴソと音を立てて紙袋から取り出してみると・・・
「これは・・・泡立て器・・・ですか?」
紙袋の中には泡立て器が入っていました。それにこれ・・・見たところだとかなりいい物ですね。軽くて回しやすいですし持ち手も握りやすいような形状に作られていますね。
「フラッシュってよくお菓子を作るでしょ?だからその時によく使う調理器具って何だろうな~って考えたら真っ先にこれが浮かんでさ。ちゃんといい物を選んで買ってきたからよかったら使ってね」
「ありがとうございます。大切に使わせてもらいますね」
ああ、やはり私はこの人を心から好きなんですね。こうして私に、時には私以外の誰かのために全力で取り組んでくれる。この優しさが私は好きだ。ただ・・・私以外の誰かに貴方の優しさが向けられてしまうのはちょっと複雑なんですけどね。
「よし、それじゃあそろそろケーキでも食べよっか」
~~~~~~
「どう?美味しい?」
俺はモンブランを口に入れるフラッシュを眺めながら質問する。
「ふぁい・・・甘いですが後味がスッキリしていてとても食べ応えのある1品ですね」
食べたケーキの感想を細かに述べる。満足気に語る様子を見て買ってよかったと思う。
ケーキはショートケーキ、チョコレートケーキ、ミルクレープとモンブラン。
1切れを4種買い色んな味を楽しめるようにしようとフラッシュに選んでもらった。
俺もケーキを頂こうと思いフォークを手に取ろうと・・・
「フラッシュ?」
俺のフォークをフラッシュが取り、ケーキを1口サイズに切ってこちらの口元に運んでくる。
「と、トレーナーさん・・・あーん///」
どこからそんなことを覚えたのか、あーんをしてきたフラッシュ。俺はそのフォークを迷わず咥える。
口いっぱいに甘みが広がり、そのすぐ後に栗特有の風味が広がる。うまーい!
「これ美味しいな」
「///そんなに目を輝かせて言わなくてもいいじゃないですか///」
顔をまだ赤らめながら、口元に手を添えくすくすとフラッシュが笑う。
俺はそんなに子供っぽく映っていたのか。
「じゃあ次は何食べる?今度は俺があーんする番だからね」
「///は、恥ずかしいからやめてくださいよ///」
「ほらほら~可愛いヤツめ~」
今度はショートケーキをフラッシュの口元に持っていく。
「か、かわっ///」
照れて口が開いた瞬間、ケーキを口の中に入れてあげる。するとフラッシュは観念したようにケーキを咀嚼し、味を確かめるように表情をころころ変える。
この後、延々と食べさせ合い過ごした。結果普通に食べるより3倍くらいの時間はかかってしまったが甘いいい時間を過ごせた。
「そろそろ就寝の時刻ですね」
風呂も入り、ソファでのんびり過ごしていた時にフラッシュが言った。
「もうそんな時間か。今日はフラッシュがベッド使って。俺は布団で寝るから。・・・どうしたの?」
フラッシュが頬を膨らませながらこちらを睨む。
「もしかして布団の方がいいとか?」
「そうではありません。同じ布団で寝たいんです」
フラッシュは恥ずかしげもなくさらりと言う。
・・・え?
「え?」
「え?ではありません。貴方と、一緒のベッドで寝たいと言っているんです」
どうしてフラッシュはこういった爆弾発言をぽろっというのか。あーんを恥ずかしがって同衾を恥ずかしがらないのはなぜなのか。これも文化の違いなのだろうか。・・・いやドイツでも婚前の男女が同衾するなんて流石に卑しすぎるでしょ。
「あの・・・トレーナーさん?」
「ちょっと待って」
同衾。柔らかい言い方をすれば添い寝。いくらウマ娘とトレーナー間の恋愛に対しおおらかなわが校と言っても流石に同衾はまずい・・・かもしれない。いや社会的に考えればかもしれないも何もない、アウトだ。これが学園にばれたらどんな罰が飛んでくるか。それも俺だけではなくフラッシュにも。フラッシュは現在皐月賞を控えている。その様なタイミングで罰則は回避したい。
「・・・フラッシュ、俺まだ仕事が残ってるから先にね「トレーナーさん今日のために仕事全部終わらせたって昨日言ってましたよね?」
何やってんだ俺ええ!
吐く嘘が思いつかないため正直に断ろう。
「ふ、フラッシュさん。君今自分が何しようか分かってるんだよね?年頃の女の子がそうそう同衾なんてしちゃダメだよ?」
「大丈夫です、トレーナーさんなら私に手を出したりしないって分かってますから。それにもし万が一手を出されても・・・私は一向に構わないので///」
構って。
照れながら俺に謎の告白をするフラッシュを尻目に俺の頭はパンクしかけていた。
「そりゃあ勿論手なんて出さないけどさ・・・。学園にばれたらどうするのさ」
「でしたら、2人だけの秘密ということにしておきましょう。ばれなければ罰則はありません」
ちょっとだけ悪い顔をして言うフラッシュ。確かにそうなんだが・・・う~ん。
「いつからそんな悪い娘になっちゃったの?」
「ふふっ、いつからでしょうね?」
そう言いながらフラッシュは両手で口元を隠しながら笑う、可愛い。
そうじゃない、言いくるめかけられているこの状況をどうにかしなくては・・・。
「大丈夫です、ただ一緒に寝るだけですから」
それを耳元で囁かれた瞬間、俺の脳みそはオーバーフローを起こした。ありていに言うと堕ちた。
気づいた時には俺はフラッシュを抱き枕にしながら寝ていた。フラッシュは静かに寝息を立てていた。可愛かった。
【同衾RTA 計測開始から437日】
今回はいくつか小ネタを入れてみました。これを同級生に言ったら伝わらなくてジェネレーションギャップを強く感じました。これだから最近の若者は()
今回はフラッシュサイドの描写が極端に少なかったですね
そもそも前半にフラッシュが出てこない。誕生日回とは何だったのか
エイシンフラッシュ、誕生日おめでとう
今年の皐月賞、オニャンコポンの活躍期待して観戦します
今回もご拝読ありがとうございました
次回もよろしくお願いします