トレセン学園について
正式名称は日本ウマ娘トレーニングセンター学園
全国各地にあるがこの作品では府中にあるトレセン学園を指す
中等部3年、高等部3年、そして大学部4年がある
大学部へはトゥウィンクルシリーズが終わっていない者、ドリームリーグに出るものが進学する
既にトゥウィンクルシリーズを終え、引退している者は別の大学に進学することを勧められる(学費が・・・)
この設定がないと高校生と結婚をするという倫理観置き去りステークスが開催されてしまう
だから、扱いが大学生になるこの設定が必要があったんですね
あの夏合宿からさらに季節は巡り、新しい年が来た。
だが、そんなおめでたいはずの時期のはずだが俺の頭の中では一つの問題が渦巻いていた。
「何がそんなに君を不安にさせるんだ・・・フラッシュ・・・」
エイシンフラッシュは結局菊花賞に出ることは叶わず、切り替えるために出たジャパンカップでは8着、続く有マ記念でも7着と振るわない成績になってしまった。これらの振るわない成績にフラッシュが焦りを感じているのが手に取るように分かった。まさかダービーの時の勝因になった勝利への渇望がこのような形で悪影響を及ぼすとは思わなかった。
だが一向に状態は改善しないのだ。何せ有マ以降、フラッシュ自身が俺に気持ちを伝えてくれないのだ。以前はダービーについての思いや、両親への尊敬、はたまた日頃の友人についてなど、多くを語ってくれた。だが最近はそれがめっきりなくなっていしまっい、あまり会話することの無い契約当初のような状態に戻ってしまったのだ。
「・・・本人に聞くしかないか・・・」
いくつか推測可能な理由はあるが本人が話さない限りは動きようがない。
俺は、今日のミーティングの時に話すことにした。
「お疲れ様です、トレーナーさん。では、明日の予定を決めましょう」
覇気のない、力の抜けた声でミーティングの開始を宣言するフラッシュ。やはり無理をしているのだろうか。
「待って!」
その声を遮って俺の意志を伝えようとする。
「!?」
「明日の予定もいいけど・・・君の体調や精神的な不安を教えてほしいな」
諭すように話しかけ様子を見る。
「無理はしなくていいんだ。ゆっくり、ゆっくり」
「・・・貴方にはすべてお見通しですね。・・・本当は、私から言うつもりでした。ですが、なかなか切り出せなくて・・・。両親が、天皇賞・秋に来てくださるのは、トレーナーさんにもお伝えしましたよね」
「ああ」
有マ記念の後、フラッシュの下に彼女の両親から一報が来た。『来年の10月後半、レースを観に行く』と。その時期には丁度、天皇賞・秋があるので現状俺らは天皇賞・秋に重点を置いている。もちろん、他のレースも手を抜く気はないが。
「・・・私の世代は・・・これまで以上に強豪揃いなのも・・・トレーナーさんは分かっていますよね」
突如、不安を募らせた口調に変わる。
「もちろんだ」
『史上最高のメンバーで行われたダービー』
彼女が勝った日本ダービーはそう称えられ程、彼女の世代の選手の平均値は間違いなく高い。
「・・・だから・・・なんです。もしこのまま、強豪相手にレースを続けてしまえば・・・確実に私は消耗しきってしまう。もしそんな状態で天皇賞・秋に出て、酷い結果を両親に見せてしまっては・・・私は・・・耐えられない・・・」
話しているうちにどんどん表情が崩れ、今にも泣きそうな声で思いを吐露するフラッシュに、俺は声を掛けれなかった。
「すー、ふぅー。・・・ですのでトレーナーさん。目標とするレースの変更を提案・・・いえ、要求します」
溢れんばかりの気持ちを無理矢理押し込め、意地でも平静を繕って語るフラッシュの覚悟に俺は思わず涙を流しそうになる。
「・・・天皇賞・秋以外のG1レースを目標から外し、G2,G3への出走を希望します」
聞くことを拒みたくなってしまう。彼女が挫折し、希望を捨ててしまったその言葉が重く心に突き刺さり、崩れ落ちるようにして椅子に座る。
「それは・・・君の本心か?」
ようやく言葉を絞り出し、核心を突く。
「っ・・・。『誇り』を全うするためです。後悔は・・・ありません」
だがフラッシュの決意はそれすらも跳ねのけてしまう。一瞬ぐらつきを見せた気がしたが、すぐに立て直した。彼女の決意は固いようだ。
「そっ・・・か。分かった・・・明日、ゆっくり考えよう・・・。どのレースに・・・出るのかを・・・」
「・・・ありがとうございます」
互いに震える声でミーティングを半ば強引に終わらせ、フラッシュをトレーナー室から出させる。
フラッシュがいなくなったトレーナー室で俺は力なく横たわった。窓から差し込む夕日に想いを馳せることしか、俺には出来なかった。
フラッシュがトレーナー室を後にして数時間が経ってなお、俺は次の目標レースである大阪杯の出走取消書類にサインできずにいた。
彼女がそれを『望んだ』はずなんだ。希望に応えるのも、トレーナーの仕事と言える。無茶させてG1に出そうとするなんて以ての外だが・・・。
「君はそんな器じゃないはずだ。フラッシュ・・・」
俺の『希望』が、手を止めさせる。俺のエゴが、フラッシュの強豪と競り合うあの心熱くなるレースが見たいというファンとしての欲望がトレーナーとしての俺を縛り付ける。
『~♪』
夜も更け、いつもならもうとっくに帰っている時間。俺の携帯が鳴った。軽快なリズムとそこから流れる特徴的な声が、電話の主を告げる。
「どうしたんだ、スマートファルコン」
『あ、繋がった。もしもし、フラッシュさんのトレーナーさん』
スマートファルコンがいつもより真剣な声色でが聞こえた。
『今日、フラッシュさんが寮に戻ってからずっと布団被って泣いてるんだ。なんで?』
最後の怒気を孕んだ声は・・・大方俺がフラッシュを振ったでも思っているのだろうか、こんな冗談を考えれるなんて俺も案外落ち着いているのかもしれない。
「いや、今日フラッシュから目標レースを変えたいって話が来たんだ。ファルコンの話を聞く限りではやっぱりフラッシュは自分の選択に納得してないのかもね・・・」
『!?そうなんだ・・・。ごめんなさい、ファル子、勝手に勘違いしちゃって・・・』
正直に伝えるとファルコンはすぐに謝ってきた。友達思いのいい子だ。
「どんな勘違いをしていたか激しくツッコミたいけど一旦置いとこう。それに君がフラッシュのことを心配してるのはよく伝わってくるよ。こんなにいい友達を持って、フラッシュは幸せ者だね」
『う、うん・・・ありがとうございます・・・。じゃなくって!どうしよう!?このままじゃフラッシュさんが!』
「ああ、かなりまずいね」
そう、かなりまずい状態なのだ。年配トレーナーに稀にいる根性育成論者ではないが、心は走りに大きな影響を与えるのは間違いない。それはいい意味でも、悪い意味でもある。今の様に後悔が強く残っている状態で走ったら・・・。どんな結果になるは想像に難くない。
焦りを感じるのと共に、『誇り』を全うしたいというフラッシュの強い意志に敬服の念を感じる。
『う~ん。どうしよう・・・。このままじゃ・・・』
「今のフラッシュは強い意志を無理矢理通そうとしている。生半可な手段では心を開ききってはくれないだろう」
『あ、じゃあデートしてその時に話してみるのはどうですか?それなら、フラッシュさんもきっと・・・』
「確かにいい手段ではある。でも・・・最近のフラッシュは俺とデートにも行ってくれないんだ。かれこれ1か月半位」
『・・・ファル子耳塞いでもいい?』
「ああ、ゴメン。話がずれちゃったな」
危うく変な惚気(?)を始めるところだった。危ない危ない。だがここ最近、倦怠期に近い感じなのは・・・そういう問題でもないのか?
「一応、デートは前は2週間に1回はしてたんだ。もしかすると単なるデートではそこまでの効果は見込めないかもしれない」
『わ・・・そんなにしてるんだ・・・』
「これでも一応、彼氏彼女の関係だからな。これくらいのことはしないと」
『そういうの恥ずかしげもなく言えるの、ファル子凄いと思うな★』
「大人の余裕ってやつだ。にしても・・・どうする?どうにか心を開いてくれる手段を探さないと・・・」
少しずれてしまった話題を修正しながら意見を求める。俺の方は万策尽きてしまった。なんと情けないことか。
『ファル子これが終わったらトレーナーさんの恋愛事情興味あるな☆教えて!』
「いいけど先に意見をください・・。俺の脳みそだと何にも浮かばん・・・」
恋に興味津々の乙女の制御は難しい。経験値を1獲得した。
『そうだな~。どこか旅行に行ったらいいのかも。やっぱり、いつも一緒にいるトレーナーさんといるのが落ち着くだろうし・・・それに、いつもは行かないとこに行くのはそっちに興味が向いて、心を開きやすくなるんじゃないかな』
「旅行か、いいな」
『でも明日から授業だよ!?』
「勉強は俺が見ればいいや。あ、それとファルコン、お願いしてもいいか?明日の早朝フラッシュの身柄と私服等々の1週間滞在できる荷物が欲しい。あ、パジャマはいいから」
『うわあ・・・。なんか誘拐じみてきちゃった・・・。っていうか、どこに行くんですか?』
「フラッシュの土産話に期待してくれ」
『パフェ1週間分で手を打ちますからね!』
電話を切り、俺は早速明日からの準備に取り掛かった。
「ん・・・。少し眠りすぎてしまいましたね・・・」
「あ、おはよう。フラッシュ」
布団が擦れた音と、微かな独り言が聞こえたので目を向けると普段は綺麗に整えられている美しい青鹿毛をぼさぼさに跳ねさせたフラッシュが目を覚ましていたので読んでいた本をぱたん閉じ、おはようの挨拶をする。
「ト、トレーナーさん!?どうして・・・」
「可愛い寝顔ご馳走様。一緒に寝てもいつも君の方が先に起きちゃうから見れなかったんだよね」
「ね、寝顔を・・・見られちゃった///」
可愛いかよ。
「そういえば・・・ここはどこですか?」
「ああ言ってなかったね。ここは温泉旅館だよ」
「・・・は?」
翌日、俺はフラッシュを連れて温泉旅館に来ていた。連れて、といっても20割誘拐なのだが。
『う~、しゃい☆』
ウマドルパワー(物理)でフラッシュを眠らせ、俺が車やらお姫様抱っこやら神輿担ぎやらでここまで連れてきた。すんません神輿担ぎは嘘です。
・・・そういえば俺ってフラッシュのことお姫様抱っこしたのってフラッシュが気絶してるときだけじゃね?また今度してあげよ、てか俺がしたい。
「あの・・・今日の予定は・・・」
「今日どころか今週はここで過ごすもんでそれに合わせた予定を組もっか。時間はたっぷりあるんだ。ゆっくり立てよ?」
「そういうことは先に相談をしてほしいのですが・・・」
「あはは・・・」
残念ながらそれができそうになかったからこのような強硬手段に出たのだ。多少の無理は勘弁してほしい。
「そういえば今日から授業が始まるはずなのですが・・・学校の方は?」
「俺が教えるよ。免許はないけど」
トレーナーになるのは司法試験と同等の難易度を誇る。それに比べれば高校3年生の勉強などお茶の子さいさいである。
「・・・教えてください。どうしてこんなに強引なことをしたんですか?」
しばしの間をあけて、フラッシュが俺に問う。その声には呆れの声が混じっているのを感じられた。
「俺がこうしたい、こうしなきゃって思ったから。理由はそれで十分だろ?」
「はあ・・・貴方はそういう人でしたね・・・。いいですか?私たちは天皇賞に向けて綿密なスケジュールと共に努力を積み重ねなければいけないのです。今、こんなことにうつつを抜かしていい状況では・・・」
「旅行の後のスケジュールはもう組んである。後はこれに君の意見を足すだけだ。で・も!今週は旅行を楽しも?せっかく来たんだし」
「で、ですが・・・」
「じゃあ、話し合おう。君の、そして俺の未来を」
納得のいかない様子のフラッシュに、覚悟をもって話を切り出す。
ここからは、想いと覚悟の勝負だ。
「あ、その前に温泉に行こっか。せっかく温泉旅館に来たんだし」
台無しである。
「ふぃ~、生き返る~」
その後、マッハのスピードで準備をし温泉に来た。白いお湯が竹の柵から漏れ出す太陽光に照らされ橙色に染まって幻想的だ。
かけ湯をし、体を洗って足からゆっくり浸かる。お湯が体に張り付く感触が気持ちよくておっさんみたいな声が出てしまう。
「まだまだ若いのに、そんな年寄りみたいなこと言っちゃいけませんよ~。早く体が弱ってしまいますよ~。でも、あなたのその体なら全然問題なさそうですけどね~」
ふと、隣から声が掛けられた。声のした方を見ると、俺の肩位の高さの初老の男性がにっこりと笑いながらこちらに話しかけていた。
「そう簡単に弱る気はないですよ。なんせ、鍛えてますから」
歯を出して笑い、力こぶを作るポーズをする。今まで触れたことなかったが、何気に俺は筋骨隆々な体系をしている。そりゃ日頃からトラックと殴り合いをしているのだ。鍛えてなきゃ死ぬ、誇張抜きで。
「ほう、いい筋肉ですなあ・・・。魅せるためじゃない、力強い筋肉です」
「ありがとうございます」
「それにしても、そんな健康そうな若者が、平日にここにいても大丈夫なんですか?」
「ははは・・・ちょいとばかし無理して来たんですよね・・・。多分帰ったらきついお叱りもらっちゃいそうです」
「お互い様ですな。私も、娘に家を追い出されてここに来たんですよ」
衝撃的な発言をした彼を俺はぎょっとした目で見る。
「そんなに大ごとじゃありませんよ。私が娘に求めてしまった進路と、娘が望む進路が違った。それだけのことです」
淡々と、それでありながら後悔が感じられるしゃべり方がから、娘さんへの愛情を感じた。
「子を思う親の気持ち、ですか。僕も似たような立場なんで身に染みるほどわかります」
「となると・・・先生ですか?」
「似たようなもんです」
ふっと笑い空を見上げる。ただオレンジに染まっただけの空が俺を見下ろしていた。
「・・・もし、もしですよ」
気づけば俺は間の知らぬ男性に相談していた。
「ある種正しい選択なんですけど、本人が望まぬ未来を選ぼうとしている時・・・我々大人はどうするのが正解なんでしょうか・・・」
今は、無性に頼りたかった。この俺よりも小さいはずの背中に。
「・・・正解なんて・・・ないですよ。どんな選択をしても、未来はある。その未来が答えなだけです」
「・・・やっぱりそうですよね・・・「ですが」
「え?」
「ですが。そういう時に・・・感情を、本人の望みを優先させてあげてもいいのかもしれません」
俺に意見を言ってくれているはずなのに、なぜか彼自身を諭すように語る彼に困惑の表情を見せる。
「正しさを、未来を度外視して・・・己の一時の感情に身を任させてみてもいいのかもしれません。もし途中でつまずきそうになったら、転ばないように支えてあげましょう。我々大人の役割は、そんなだけでいいのかもしれません」
確かに一理ある。そう感じた。
「・・・そうですね」
「でも」
先程までのゆったりとした口調から一変、急に力強い口調で俺に言う。
「それはあくまで親としての私の意見です。あなたは・・・
突如、核心を突かれて心臓が跳ね上がる。
「バレてましたか」
「そんなに子供の心に踏み込む人間なんて、限られてますから」
ふっと笑う男性を見て、俺はこの日、ようやくゆっくり呼吸できた気がした。
「いいじゃないですか。あなたの意見をその娘に伝えてあげても」
「え?」
「トレーナーとウマ娘は二人三脚で行くもの。よく言いますよね」
俺は男性が行ったことの真意を汲み取り、頷いた。それを見た彼はうんうんと頷き、話を続ける。
「いいトレーナーの目をしてますね」
「恐縮です」
それから俺たちはふっと笑い合った。
「俺、今日ここに来てよかったって思います。おかげで旅がもっと好きになりました」
「奇遇ですね。私も同じこと思いました」
「どうです?ここは出会いの記念に一杯でも」
おちょこをぐいっとする動作をして風呂酒を誘う。その誘いに男性はうんうんと頷いて、
「いいですね。一期一会、出会いの記念です」
「それじゃあ」
そういって俺は風呂を出て酒を買いに湯船から上がる。白い湯気とお湯に覆われた温泉を一瞥して岩の足場を歩き出す。そして・・・
『ツルッ』
「あだっ」
~~~~~~
「全くトレーナーさんは・・・」
湯船に肩どころか口元まで浸かりながら私はトレーナーさんへの不満を口にしていた。今日目覚めたらここにいて今週の予定を全部崩してここに1週間いると言われたのだ。
確かにここ最近の私は張りつめていた。自覚はある。昨日もトレーナーさんに伝えたことを後悔してずっと寮で泣いていた。ですが・・・
「せっかく、もう考えないでいようと思ったのに・・・」
『君の、そして俺の未来を』
あんなこと言われたら・・・せっかく決めたのに。もう振り返らないって決めたのに、思い出しそうになっちゃう。
トレーナーさん、貴方はこの思い出の旅館で私に何をするつもりなんですか・・・。
【湯けむりRTA 計測開始から724日】
文化祭が様々な学校で行われている日々、皆さまどうお過ごしでしょうか
僕はうまぴょい伝説を踊ることになりました。なんで?
英検・・・俺英検1週間前なのに何してんだろ・・・
今回もご拝読ありがとうございました
次回もよろしくお願いします