〈トレーナーとフラッシュの年齢〉
正直作者も把握しきれなさそうなのでまとめの意味も込めて
フラッシュ→契約当初 15歳(高1)
ジュニア級 16歳(高2)
クラシック級 17歳(高3)
シニア級 18歳(大1)
トレーナー→契約当初 25歳
ジュニア級 26歳
クラシック級 27歳
シニア級 28歳
「あ、トレーナーさん。URAファイナルズも終わったので、新年の帰省も兼ねて半月実家で過ごしたいと思います」
早急に帰省中のトレーニングメニューを作って渡さなければならない。
喉に入れたバターロールを飲み込みながら浮かんだのはそんな、のほほんとした事だった。
「そっか。寂しくなるな。行ってらっしゃい」
生憎俺の方はまだまだ仕事があるのでついていく事は出来ない。
『エイシンフラッシュURAファイナルズ優勝の立役者』なんて言われて今やちょっとした有名人なのだ。インタビューの申し込みも山ほど来ている。
「・・・トレーナーさんも行くんですよ?」
「何それ知らない」
「当たり前です。今言いましたから」
腰に手を当て、ちょっと怒ってますよな雰囲気を出すフラッシュ。超可愛い。
「ちょっと待ったフラッシュ。俺にはまだまだ仕事残ってるから一緒には「向こうですればいいじゃないですか」
「確かにそうなんだけど・・・。あ、それに俺も帰省まだだし最近生まれた甥も見たいし。あ、ちょっとフラッシュ足引っ張んないで!引きずらないで~!ぎゃー!嫁に誘拐される~!!」
ごねた途端フラッシュは俺の足をひぱって無理矢理ドイツに連行しだした。何とか家から出る前になだめることが出来たがもしこれが近所の人に見られたら俺は『ドイツ誘拐男』なんて異名を貰うところだった。危ない危ない。
「それでフラッシュ。出発はいつなの?」
「本日です」
「・・・(コクリ)」
全てを諦めた俺はすぐさま学園まで飛んでいき、事情を伝え休暇を勝ち取った。ただ、その代償として、せっかくの旅行に大量の書類が同行することになった。ついでに去年から貯めてた有給は全て消し飛んだ。おかしいな、まだ1月なのに。
その後、爆速で家に帰り、早速空港に向かうことにした。ちなみに荷物は既にフラッシュが用意してくれていた。恐ろしい娘・・・。
『ソウル、インチョン国際空港行きの便に乗る方は3番搭乗口からご搭乗してください』
今日は怒涛の1日だ。とんとん拍子に話が進み今はもう空港で飛行機に乗ろうとしている。時刻はまだ1時頃。起きてからたったの7時間しか経っていない。
そんな中でもフラッシュは冷静に俺を引っ張って搭乗口に連れて行ってくれている。
「私たちが乗る便ですね。早めに行ってしまいましょう」
フラッシュに案内されるがままに飛行機へ。
それからも事はあっという間に進み、後は出発を待つだけとなってしまった。
これから37時間弱の飛行機旅の始まりである。・・・のだが、如何せん暇である。きびだんごをあげた覚えはないが勝手に同行してきた書類共を片付けてもいいのだが味気がない。なので俺は横で、礼儀正しく座りながら窓の外に映る滑走路を眺めているフラッシュに声をかけることにした。
「フラッシュは飛行機に乗るのは何年ぶり?」
「4年ぶりですね・・・。初めて日本に来た日以来です」
「そっか。フラッシュがこっちに来てもうそんなに経つんだ・・・。初めて日本の地に立った時、どんな感じだった?」
「・・・そうですね。あまり鮮明には思い出せないのですが・・・私を歓迎してくれているような、そんな感じがしました」
「それならよかった」
「ドイツの地も、きっとトレーナーさんを歓迎してくれますよ」
フラッシュがそう言うのと同時に、飛行機は飛び立った。俺は心の中で故郷に一旦別れを告げ、まだ見ぬ地へ思いを馳せた。
「海外に行くなんて久しぶりだぜ。テンション上がるなあ~」
日本の地を発って2時間半、俺たちは乗り継ぎのために韓国に来ていた。俺たちが次乗る便は明日発である。よって今日はここで宿泊だ。
近場の手ごろなビジネスホテルにチェックインし、街を少し観光してから明日に備えダブルベッドに一緒に入る。費用的にはこれが一番安いんだし婚約者同士だしなんら問題はないだろう。
「そういえばさ、フラッシュはなんでこうやって唐突にドイツに帰ろうって言ってくれたの?」
目まぐるしい1日で聞くのを忘れていたが思えば不思議なことだった。日課として次の日の予定を立てているが、昨日そんなことは一言も言っていない。『明日は1日休みをいただきます』としか言っていないのだ。
「いくつか理由はあります。まず1つは先に言ってしまうと貴方が事前に調べてしまうことです」
確かにそうだ。きっと先に言われていたら下調べをやっていただろう。
「私の故郷は、私自ら貴方に教えたかったですから」
そんないじらしい乙女心の告白を受け、素直に嬉しく思った。妻の可愛らしい姿はいつ見ても健康にいい。
「そしてもう1つはちょっとした仕返しです。トレーナーさんは去年、私を
「あ、はい」
「それのお返しです」
規模のケタが違い過ぎる。一瞬そんな言葉が出かかったが楽しければそれでいいかというらっかんてな思考が何とか押さえつけてくれた。
「じゃあこれからドイツにいる間はフラッシュのプランに従うよ。せっかく君が一生懸命用意してくれたんだもの、楽しくないわけがないさ」
「ふふ、楽しみにしていてくださいね。それではもう就寝時刻なので、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
それからしばらくして・・・
俺たちは無事デュッセルドルフ空港に到着した。
サンサンと照り付ける太陽の光がまるで俺を歓迎してくれてるようだった。ただしすごく寒い。冬の函館レース場くらい寒い。
「ん~長かった~」
ただでさえ退屈な乗り継ぎ含めて34時間の経路だが、機内では書類仕事しかしていなかったことが退屈さに拍車を掛けていた。
しかし前回の飛行機旅のハイジャックと比べれば全然マシである。にしてもよく勇猛果敢に戦ったものだ昔の俺も。
「長旅、お疲れ様です」
「フラッシュこそ。体は大丈夫?」
「以上はありません。それより、どうですか?ドイツの地は」
「そうだね・・・。すごくよく馴染むよ。まるで日本にいる時みたいだ」
手を閉じたり開いたりを繰り替えして感触を味わう。故郷のような心地よさが、そこにはあった。
もしかしたらフラッシュと一緒にいるからかもな・・・。
そんな軽い冗談が頭に浮かんだ。
それから諸々の手続きを終え、ターミナルの方へ向かうとフラッシュのご両親が出迎えてくれた。以前会った時と変わりない気品あふれるその様子を見て、変わらず元気であることが伝わってきた。
それから俺は、フラッシュ一家の案内の下デュッセルドルフの街を歩いた。西洋らしく石造の家屋が立ち並ぶその街並みを舐めるように見ながら進む。
「そんなにこの街が気になりますか?」
そんな俺の様子を見て、フラッシュは苦笑しながら言った。確かに少し変に見えるかもしれない。
だが俺にもしっかりとした理由があるのだ。このフラッシュが生まれ育った街を知れば、フラッシュのことも知ることができて、これまで以上に彼女を愛せるという立派な理由が。
その旨を彼女に伝えると、顔を真っ赤にして照れていた。非常に可愛い。
そんなこんなで歩いているとやがて大通りから少しずれ、商店街に入った。物珍しいあれやこれやに目移りをしていると、やがて1軒のケーキ屋に着いた。店の入り口には、
『
と書かれたカードがぶら下がっていた。
「着きました。ようこそ、我が家へ」
フラッシュがそう言ってご両親と一緒に中へ案内してくれた。
店に入ると目に入ったのは大きなガラスのケースだった。今は何も入っていないが、普段はここにいっぱいのケーキが並んでいるのだろうと想像すると涎が出てきそうだ。
それから、さっと店内を見渡すと丁寧なクラシック装飾が施されており、欧州らしさを感じる。
「Ich bin wieder da」
「Willkommen zuhause,Flash」
一応ドイツ語を多少勉強してきたのでわかる。今のは『ただいま』と『おかえり』だろう。英語に発音が少し似ているので聞き取るのに苦労しないのが助かる点だ。
なので俺も、
「
大分なっていない発音だが頑張って言ってみる。
「「
伝わったのか、汲み取ってくれたのかどうかは分からないが、しばしの間を置いて返事をしてくれた。
「トレーナーさん。私たちも日本語で話すことは出来ますので無理に言う必要はありませんよ」
フラッシュが耳打ちをしてきた。
確かに以前会った時も、片言ではあるが既に十分なほど日本語を話されてはいた。それからもう数年は経っているのだ。ほぼ完璧になっていても不思議ではない。
だが郷に入っては郷に従え。せっかくドイツに来たのなら、ドイツ語で会話してみたいではないか。
「あはは・・・出来る限り言ってみたくってさ」
「もう・・・子供っぽいんですから」
少し呆れた口調で話すフラッシュだったが、その奥で嬉しそうに尻尾を振り、耳を動かしていたのを俺は見逃さなかった。
「では、トレーナーさん。こちらへどうぞ」
フラッシュのお父さんに言われるがまま、俺は奥の居住スペースへと足を運んだ。
店の方と同じく、クラシックな家具が礼儀正しくキチンと並んでいた。だが不思議と堅苦しさは感じず、寧ろ心地よさと暖かな優しさが伝わってきた。
「ここが・・・フラッシュが育った家・・・」
そんな内装を見ていると、フラッシュの幼い頃が目に浮かぶようだった。
俺は改めて3人の方を向き、挨拶をした。
「これから半月の間、よろしくお願いします」
「「「こちらこそ、よろしくお願いします」」」
その後、ご家族からシュニッツェルという料理をいただいた。大変おいしいそやつを堪能した後、俺たちはようやくご両親に結婚の報告をすることになった。
遅い気はするがここまでとんとん拍子過ぎてそんな猶予が一切なかったのだ、しょうがない。
「それでは、改めましてお父さんお母さん。この度、私たちは結婚することになりました」
左手の指輪を見せながらフラッシュから報告の言葉が出た。
別にドイツ語で言ってくれてもいいのに日本語で言ってくれたのはきっと俺への配慮だろうそういうとこすち。
そんな配慮に続くように俺も報告を続けた。
「娘さんと年が大きく離れている自分ですが、娘さんを愛する気持ちは誰にも負けていない自信があります。娘さんを大切にします。世界一幸せにします。ですから、どうか、娘さんを私にください!」
頭を下げ、己の胸の内を隅から隅まで打ち明けた。
傲慢な思いかもしれない。身勝手な思いかもしれない。でも、ここまで曝け出さないといけない。そんな気がしたんだ。
だって、家族になる人たちなんだから。
とまあそんな事を思っていようが伝わらなければ意味がない。現実とは常に非常な生き物なのだ。
どういうことかというと・・・
「「・・・」」
ご両親がフリーズ中なのだ。
普段のダンディなイケおじの風格も、気品あふれるビューティなマダムのオーラも鳴りを潜めあまりうまく言葉を飲み込めていない様子だった。
それを悟ったのでドイツ語に翻訳してもらおうと思い横にいるフラッシュに視線を向けると、そこには衝撃の光景が広がっていた。
「私が・・・トレーナーさんのモノに///」
それはそれは大変嬉しそうに尻尾を振り、耳を激しく動かし、顔を紅潮させて、自分の世界に入り込んでいるフラッシュがいたのだ。
あっ可愛い。という煩悩も束の間、俺に電流走る。
もしや・・・『ドイツに娘さんをください文化って存在しない?』
いや十二分にあり得るだろう。そりゃ結婚するときに娘さんをくださいなんて所有権を主張するなんてもはや娘に対する冒涜そのもの。そんなこと言う文化がヨーロッパにあるだろうかいや否!
この約30年日本でのほほんと過ごしてきたからあんまり気にしてなかったけど確かにおかしい!そりゃ初めて聞かされたらこんな反応もするだろう。
そう思い俺はすぐさま弁明を始めた。
「あの・・・娘さんをくださいというのはあくまで言葉の綾といいますか・・・日本独特の言い回しであって意味合いは結婚の許可をお願いするものなんですよね」
レースの実況もびっくりな早く口で言い訳をつらつら並べる。・・・見苦しい様だろう。
さっきのかっこよさ(あったつもり)はどこに行ったのだろうか。
「なるほど・・・そうなんですね。興味深いです」
どうやら義両親は納得したようでお義父さんは顎に手を当てふむふむと頷き、お義母さんはへえーという顔をしている。
何とかなった判定でいいのだろうか。
そこで俺は再び結婚の了承を懇願することにした。もちろん、今度は言葉をしっかり選んで。
「紛らわしい言い方をしてしまい申し訳ございません。それでは、改めまして、どうか娘さんとの結婚を認めて頂けますでしょうか」
「もちろん大丈夫ですよ。トレーナーさんなら、フラッシュ・・・私たちの
今度はあっさりと了承をもらえた。というか、もとよりそのつもりだったのだろう。少し回り道をしてしまっただけだ。
これで俺たちの結婚に関する壁は、戸籍問題と結婚式どうするか問題のみになった。
というかその『宝物』発言って俺のと大差なくねなんて事は野暮なので胸の中に永久にしまっておくことにした。
【義両親宅訪問RTA 計測開始から1095日】
それからはフラッシュにこの街を案内してもらった。
街の旧市街や地元のサッカーチーム、ちょっとした公園など、どこもフラッシュらしさが詰まった場所たちだった。
フラッシュのお祭り好きな一面やサッカー派な所なんかの由来が垣間見えたようで正直嬉しかった。好きな人を知ることがこんなにも幸せなことなのだと実感できた。そんな気がした。
「フラッシュ、今日はありがとな」
「日頃の感謝も兼ねたお礼、ですよ。それに、この街にいる時間はまだまだいっぱいありますから、今日みたいなこと、たくさんしましょうね」
以前よりもまた一段と大人っぽく成長しただろうか。美しい女性に成長したフラッシュに何度でも恋に落ちそうになる。前より一層愛しているのを自覚する。
「私は・・・
彼女を独占できるという優越感と今彼女が不特定多数の視線にさらされている事に対する嫉妬心でごちゃ混ぜになった俺はフラッシュの唇を少し強引に奪った。
どうも遅くなりました
いや2か月はサボりすぎだろおめえ!
え~言い訳をさせていただきますと・・・
1、まず字数の関係からトレーナーの実家訪問編を次回に回すか悩む
2、次にフラッシュの実家でのパートにていくつか没シーンを量産(例:フラッシュ初の飲酒)
3、行ったことのないデュッセルドルフの街の風景を書いた
私は海外はベトナムしか行ったことないのでドイツの風景なんて欠片も分かりません
4、中間テスト、英検があった
とまあこれだけ言い訳があります
・・・本当に遅くなってすみませんでした!次回は早めに出します!