冬月よ、エヴァに乗れ!   作:朝陽晴空

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冬月よ、エヴァに乗れ:破

 碇の息子であるシンジ君が初号機に乗るようになってから、初号機と弐号機は協力して二体の使徒を殲滅した。

 第六使徒は、弐号機にシンジ君とアスカ君の二人が乗り込み使徒の口をこじ開けて露出したコアに向かって零号機がライフルで攻撃して殲滅された。

 第七使徒は二体に分裂する特技を持つ厄介な敵だったが、私は初号機と弐号機をユニゾンさせる作戦を立てた。

 二体のエヴァがユニゾンして使徒を倒す姿は、さすがの私も胸がときめいてしまった。

 木石でもない限り当然だな。

 

 

 

「何、私にまた初号機に乗れと言うのかね?」

 

 私とゲンドウの居る司令室に、葛城君と赤木君、シンジ君とレイ君とアスカ君が顔を揃えてやって来た。

 新たな使徒が、マグマの中に蛹の状態で発見されたと言う。

 弐号機がD型装備で潜ると作戦を立てたが、アスカ君はそんな不格好な装備で潜りたくないと不満を言い出したらしい。

 

「冬月のおじいちゃん、おねがーい!」

 

 アスカ君は片目を閉じながら、私に向かって甘えるような声を出した。

 目にゴミでも入ったのだろうか、決して汚い手で擦ってはいかんぞ。

 

「D型装備では使徒と戦闘になった場合に大きな不安があります」

 

 赤木君の話では、使徒が羽化してしまった場合、高圧・高熱のマグマの海を泳ぎ回る使徒を相手にナイフで渡り合うのは厳しいらしい。

 マグマに耐えられる固い装甲を持っている可能性も考えられる。

 

「そこで開発されたのが、この初号機用の武器『マゴロクソード』です」

 

 赤木君は誇らしげに私とゲンドウに向かって刀身が光った武器の映像が映しだされたタブレットを掲げた。

 

「副司令は日本の古式泳法にも精通なされていると聞きました。刀や甲冑を身に着けて泳ぐ事も出来ますよね?」

 

 葛城君は目を輝かせて私を見つめている。

 違うとは言いにくい状況だ。

 しかも赤木君の話によると、D型装備は弐号機専用に造られたもので、初号機に転用する事は出来ないようだ。

 アスカ君は自分以外の人間を弐号機に乗せるつもりは無いと言うし、まさか通常装備の初号機でマグマの中に潜らせようと言うのか!

 

「使徒の陽電子ビームを受け止めた副司令なら大丈夫ですって。心頭滅却すれば火もまた涼しって言うじゃないですか!」

 

 君が言うな、葛城君。

 私はこめかみにピキピキと青筋が立つのを感じた。

 もう少しで私の怒りも臨界点を超えそうだ。

 

「そうだ、使徒を倒したら温泉に入りましょう」

「温泉だと!?」

 

 葛城君の突然の提案に、私にある考えが閃いた。

 

「ならばシンジ君、後で一緒に私と温泉に入らないか?」

「僕とですか? 別にいいですけど」

 

 シンジ君はキョトン顔をしながらも了承した。

 アスカ君は疑うような目線で私を見つめる。

 

「まあシンジ君とは、じっくりと話してみたかったのだよ」

 

 言い訳をしながらも、私は使徒に勝った後の御褒美の温泉のため、初号機に乗る事を了承した。

 

 

 

 浅間さんの火口に着いた私は、初号機に乗り込んで準備を始めた。

 気休め程度に初号機には冷水が掛けられ、額の部分には大きな保冷剤が貼られている。

 丈夫なワイヤーに吊るされる形で、初号機は高度を下げて行く。

 初号機のつま先がマグマに着いただけで、足に激痛が走る。

 赤木君が神経接続を少なめにしてくれているとは言え、初っ端からこれでは先が思いやられる。

 初号機の全身がすっぽりとマグマに入った頃には、エントリープラグを満たすLCLが沸騰しているのではないかと思わされた。

 

「副司令! ATフィールドをしっかりと張って、しっかりと気を持ってください!」

 

 葛城君の言う通り、気を失ってしまえば私の運命は終わりだ。

 

「シンジ君(と温泉に入る事)のためならば、例え火の中水の中!」

 

 私は気合いを入れ直した。

 頭上よりはるかに北にある上空では、作戦が失敗した後、地上に顔を出した使徒を焼き払うためのNN爆弾を積んだヘリコプターが待機している。

 マグマの海から地上に出た使徒は、『減圧』と言う現象によって装甲もボロボロになり、コアも外に露出するそうだ。

 その状態ならばNN爆弾でも使徒を殲滅できる。

 『減圧』とは深海魚を急速に地上に引き上げると内臓が飛び出たりする現象だが、詳しく調べたいのならググれば良い、タグるは良く分からん。

 ならどうして使徒が羽化して外に出て来るのを待たないのかと言いたげだな。

 それはあの糞爺のゼーレ共の命令だからだ。

 蛹の状態の使徒のサンプルが欲しいなどとほざきおった。

 いかん、あまりの痛さと腹立たしさに、私の心の声まで刺々している。

 こんな時はユイ君の姿を思い浮かべるんだ、そしてシンジ君を……。

 

「冬月先生、シンジに変な事をするつもりですか?」

 

 ユイ君のそんな声が聞こえた気がすると、シンクロ率が下がり、ATフィールドが弱まり、熱さを強く感じるようになった。

 

「私はやましい事は何もしない、神に誓ってだ!」

 

 機嫌を直してくれたユイ君のおかげで、ATフィールドは回復した。

 神経接続を減らせばマグマの熱さは感じにくくなるがシンクロ率は下がる。

 シンクロ率を上げれば、ATフィールドでマグマと初号機を遮断できる。

 ジレンマのようなものだな。

 目標の使徒を捕獲したのは良いが、やはりと言うか、使徒の羽化が始まってしまった。

 

「MAGIの計算より早いわ!」

 

 赤木君はそう言ってうろたえているが、プライドなど捨ててスーパーコンピュータの『京子』の力を借りるべきではなかったのか?

 そうなれば私もこのような無謀な作戦に駆り出されることも無かった。

 私は使徒を捕獲していた電磁檻を投げ捨て、使徒と対峙した。

 生まれたばかりの使徒など私にとっては飼っているメダカの稚魚と同じ。

 動きを読んで体当たり攻撃を避ける事が出来た。

 

「抜けば玉散る氷の刃」

 

 私は古式泳法をしながら使徒と間合いを取り、背中の鞘から刀を抜くと、『蜻蛉の構え』をとった。

 二の太刀要らずと言われる通り、一太刀で勝負を決めてやると私はシンクロ率を高めた。

 

「裂空無双斬!」

 

 気持ち良く技の名前を叫んだ私は、カブトガニのような姿をした使徒を真っ二つに切り裂いた。

 コアも首尾良く切断できたようで、使徒の身体は崩れてバラバラとなった。

 

「熱い!痛い!熱い! 早く引き上げてくれ!」

 

 使徒との戦いに集中して居た私は、ATフィールドをマゴロクソードに集中させていた事に気が付いた。

 防御に回したATフィールドはほとんどなかった事になる。

 ここで気絶したら、シンジ君との温泉が……!

 私は力を振り絞って、意識を保った。

 そして私は温泉で念願の……ユイ君の血を受け継いだ、シンジ君の鎖骨を拝む事が出来たのだ。

 若い君たちには分からないだろうが、女性の妖艶さは鎖骨とうなじにあるのだよ。

 

 

 

 次に現れた蜘蛛のような使徒は、弐号機にあっさりと踏み潰されて殲滅された。

 停電? そんな事はあり得んよ。

 ネルフには正・副・予備の電源が揃っている。

 食堂や大浴場のガス料金もセットで新東京電力に支払っている。

 ついでに言うとTVも電話もネット回線もセットでN:COMだ。

 この私に抜かりは無いのだよ。

 

 

 

 次に現れたのは宇宙から落下してくると予想される使徒だった。

 葛城君はエヴァ三機を落下地点全体をカバーできる場所に分散配置する作戦を立てた。

 エヴァの怪力で使徒を受け止める作戦を葛城君は『ヘラクレス作戦』と名付けていたが、赤木君を含めてシンジ君たちもそれは作戦と言えるのかと懐疑的だった。

 ゲンドウのやつは死海文書を読んでいるから、とっとと南極へと視察と称して逃げ出してしまった。

 サードインパクトが起これば地球のどこに居ても同じだろうに。

 セントラルドグマにあるロンギヌスの槍を使えば使徒を倒す事が出来るが、それでは人類補完計画のシナリオが狂ってしまう。

 

「ATフィールドを展開して受け止めるって、その前に落下衝撃で第三新東京市はおろかネルフまで壊滅よ?」

 

 赤木君が作戦の問題点を指摘すると、葛城君は拝むように手を合わせた。

 

「そこをATフィールドで何とかならない?」

「ATフィールドはそこまで便利ではないわよ……」

 

 呆れた顔で赤木君が大きなため息を吐き出した。

 しかし葛城君の案に代わる作戦が無い。

 ロンギヌスの槍を使う許可をとるにしても、電波障害で南極に居るゲンドウとは連絡が取れない。

 

「皆さんお困りのようですね。私の名案をお話ししましょう。初号機が空を飛んで、使徒のコアを破壊してしまえば良いんですよ」

「待ちなさい加持君、エヴァは陸戦タイプよ。空は飛べないし、ましてや宇宙で推進するブースターも無いわ」

 

 突然現れた加持君の荒唐無稽な話に葛城君がこの場を代表して反論した。

 

「皆さん、あそこにご注目!」

 

 外を映した大型ディスプレイに加持君に言われた通りに目をやると、スペースシャトルの発射台のようなものが設置されていた。

 私たちが作戦会議に夢中になって宇宙空間に居る使徒ばかり見ている間に、そんなものを用意していたとは。

 

「ロシアと宇宙開発を争っているアメリカのNASAから借りた特注品で、性能は折り紙付きですよ。あれでしたら、エヴァを宇宙空間まで飛ばせるはずです」

「帰りはどうするの?」

「そりゃあ、気合いでATフィールドを発生させて星の海を泳いで地球に帰るしかないな」

 

 葛城君と加持君の視線がシンジ君に集中する。

 

「そんな、僕は泳げませんよ」

 

 シンジ君は思い切り首を横に振る。

 

「分かっているわよ。そんなとんでもない事が出来るのは……」

 

 そう言って目を輝かせた葛城君は私の方を見た。

 

「副司令が初号機に乗ってくれないとなると、我々全員は第三新東京市からとんずらするしかありませんね」

「分かった、飛ばない老人はただの老いぼれだ」

 

 私は加持君にそう答えて、初号機に乗るのだった。

 

 

 

 作戦通り、初号機の突き出したパンチは宇宙から降下して来た使徒のATフィールドを打ち破り、コアを破壊した。

 しかし落下中の使徒を攻撃しただけあって、拳がかなり痛い。

 瓦割に挑戦して、失敗してしまった時の痛さの酷いものだと言えばわかるだろうか。

 指の骨が全部折れたかもしれない。

 手首の骨も曲がったかもしれない。

 次なる課題は地上への着地だ。

 零号機と弐号機がATフィールドを展開してマットのように受け止めてくれるらしいが、大気圏に突入した私にとっては、豆粒のようにしか見えない。

 そこへ上手く着地するなど、至難の業だ。

 

「初号機、約3万フィートに達しました」

 

 伊吹君の報告で、一般の航空機が飛んでいる高さにまで着た事を知った。

 航空機のパイロットならば、徐々に高度を下げて空港に着陸できるだろう。

 しかし私はフライトシミュレーターをいじったことも無い大学教授の爺だった。

 物凄い爆音と共に第三新東京市の地面を突き抜け、ジオフロントの地底湖に不時着した。

 通信から、あーあと落胆の声が漏れる。

 それよりもこの老人の事を心配してくれ。

 今の衝撃で両足の骨が、腰の骨までイッてしまったかもしれんぞ。

 

 

 

 私は癒合に数ヵ月かかる骨折により、病室で安静な生活を送らなければならなくなった。

 使徒撃破の後、見舞いに来たゲンドウに掛けられた言葉はたった一言だけ。

 

「よくやったな、冬月」

 

 お前なんぞに今更褒められたところで嬉しくはないと思ったが、不愛想で不器用なゲンドウにそれ以上求めるのも無理な話だ。

 しかし私の体調を気遣う言葉は欲しかった。

 忌々しい、土壇場で裏切ってやろうか。

 シンジ君たちは命を救ってくれた恩人として、顔を出してくれる。

 孫のような存在でとても可愛いと思えてしまう。

 日向君と青葉君はネルフの状況を逐一伝えに来てくれる。

 次に現れた使徒はコンピュータウイルスのような使徒だと聞かされた時には驚いた。

 

「日向君、直ぐに私のパソコンをネットワーク回線から切断して隔離しろ!」

「はい、副司令のパソコンには機密情報が沢山ありますからね」

 

 日向君は勢い良く病室から飛び出して行った。

 誰だってパソコンのDドライブには大切な宝物が眠っている。

 まして、人の目に触れてはいけないものもあるのだよ。

 特にシンジ君の鎖骨やうなじをこっそり撮った画像などは流出させてはならん!

 

 

 

 その次に現れた使徒は、弐号機を影の中に飲み込んでしまったらしい。

 シンジ君はアスカ君を助けるんだと半狂乱になり、初号機から強制射出されてしまった。

 そのままだと初号機も影の中に飛び込みかねない勢いだったからだ。

 シンジ君は鎮静剤を打たれて、病室のベッドで拘束されている。

 時折目を覚ますと、アスカ君を助けるのだと暴れて、また薬で眠らされる。

 こんなにもシンジ君に思われているアスカ君には幸せになって欲しい。

 赤木君の立てた作戦は、日本に現存するNN爆弾をかき集めて使徒を爆撃する作戦のようだ。

 そんな事をすれば、中に居る弐号機は無事で済むとは思えん。

 

「日向君、青葉君、私を初号機のエントリープラグまで連れて行ってくれ……」

「無茶です副司令! 全身が骨折したようなものなのに、癒合までの時間が伸びますよ!」

「良いから、私を連れて行けっ!」

 

 二人に支えられながら、私は初号機のケージへと向かった。

 ケージではゲンドウが初号機に向かって独り言のように話し掛けていた。

 

「冬月、何をしている。お前を初号機に乗せるつもりはない」

「お前は孫の顔を見たいとは思わないのか!」

 

 私が一喝すると、初号機の両目がキラリと光った。

 ゲンドウは観念して私に道を開けた。

 

「初号機、起動しました。シンクロ率300%超、エントリープラグ内、モニターできません!」

 

 伊吹君の報告と同時に私はまたオレンジ色の世界へと飛び込んだ。

 向こうの世界での私の肉体は溶けてしまっているだろう。

 折れた右手、折れた両足など今の私には不要なものだ。

 きっと葛城君が初号機を使徒の側まで誘導してくれるはず。

 私がすべき事は、このオレンジ色の世界で、使徒のコアを見つける事だ。

 感じる、感じるぞ……禍々しい狂気を放つ負のオーラが。

 銀色の発行体となった私の身体でその方向に向かうと、淡いピンク色の光を放つコアと少女ぐらいの大きさの銀色の人影があった。

 恐らく弐号機のコアとアスカ君だろう。

 そしてそれを汚そうとするどす黒い血のような赤いコア、これが使徒のコアだ。

 赤黒い触手をタコのように伸ばして弐号機のコアを狙っているが、ATフィールドに弾かれているようだ。

 しかし弐号機のコアに何かがあってからでは遅い、早く助けなければ。

 この銀色の発行体となった私の身体で、使徒のコアにダメージを与える事は出来るのかと考えていると、突然目の前に聖剣のようなものが現れた。

 なるほど、この世界は普通とは違う、何でもありという訳か。

 私はその聖剣を握り締めて、使徒のコアを斬り付けた。

 だが使徒のコアは蟹の甲羅のように固く、傷をつける事すら出来ない。

 

「冬月先生、その剣は斬るのではなく、投げて使うんです!」

 

 ユイ君の言葉に従って投げ付けると、その剣は使徒のコアへと突き刺さった。

 

「ありがとう、ユイ君」

 

 使徒の殲滅と共に、オレンジ色の世界は白い光に包まれ、私は意識を失った。

 

 

 

 目を覚ました私の目に映ったのは、見慣れたジプトーンの天井だった。

 

「副司令、直ぐに起き上がって大丈夫なのですか!?」

「ああ、私はすこぶる元気だよ」

 

 日向君に向かって、体を起こした私は笑顔で告げた。

 自分の怪我を直すのに、ユイ君の力を利用してしまった、それは感謝せねば。

 

「副司令、身体のお加減はいかがですか?」

 

 病室に入って来たのは青葉君だった。

 

「どこも悪いところはない、初号機に乗る前より調子が良いよ」

 

 私が青葉君に笑顔で答えると、青葉君は喜ばずに辛そうな顔になった。

 

「碇司令からの命令です。副司令は、エヴァ参号機のテストパイロットになれとの事です」




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スーパー冬月さんの強さについて

  • 使徒と互角に渡り合えるくらい
  • もっと、圧倒的な強さに!
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