冬月よ、エヴァに乗れ!   作:朝陽晴空

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冬月よ、エヴァに乗れ:休

 俺は作戦局第一課所属、日向マコト。

 今日はとても辛い事を報告書に纏めなければならない。

 悲劇の始まりは副司令がアメリカ支部から押し付けられた参号機に乗り込んだ事だった。

 どうして参号機が本部に来る事になったかと言うと、それは選挙で当選した新しい大統領が打ち出した『アメリカ第一主義(ファースト)』方針のせいだ。

 エヴァの実験や維持には多額の予算が掛かる、しかも戦争兵器として使う事も禁じられている。

 電源ケーブルを切断されて内部電源が切れてしまえば動かなくなるエヴァは戦争兵器として実用的では無い。

 

「使徒は日本の本部を狙って攻めて来る、だからエヴァは日本が解決する問題だ」

 

 アメリカのポーカー大統領はそんな理論を持ち出して、建造した参号機を日本に押し付けた。

 建造中だった四号機はデトロイトの工場にスクラップとして寄付したらしい。

 参号機の起動は本部の実験場で行う事になった。

 松代に実験場を造る話もあったが、住民の反対運動で頓挫した。

 本部に到着した参号機の清掃は、俺とシゲルが担当する事になった。

 あの場にマヤちゃんが居てくれれば、悲劇は起こらずに済んだかもしれない。

 俺たちは参号機に【ねばねばした白い蜘蛛の糸ようなもの】がくっ付いているのに気が付いた。

 

 「あーっ、蜘蛛の糸ってモップに絡んで取り辛いんだよな」

 「どうせLCLで溶けるんだから適当でいいんじゃね?」

 

 シゲルにそう言われて、俺は装甲板の深くまで入り込んだ蜘蛛の糸を取り除かなかった。

 だいたい掃除は業者に頼めば良いのにその予算までケチる副司令が悪いんだと俺は心の中で副司令に毒づいた。

 後でこの蜘蛛の糸のようなヤツが使徒だったと聞かされた俺は激しく後悔した。

 

 

 

 参号機は起動すると同時に周囲に爆風を巻き起こした。

 実験場に居た葛城さんが吹き飛ばされて怪我をしたと聞いた時は膝から崩れ落ちそうになった。

 

「パターン青、使徒です!」

 

 尊敬する副司令の乗った参号機を使徒として報告しなければいけない事に、俺は胸が痛んだ。

 碇司令は直ぐに初号機、零号機、弐号機の出撃を命じた。

 参号機は獣のような動きで零号機と弐号機を撥ね飛ばし、初号機に迫った。

 そして参号機は初号機を押し倒して馬乗りになり、両手で首を絞め出した。

 

「シンジ、なぜ戦わない」

「だってエヴァには冬月先生が乗っているんでしょう!?」

 

 碇司令の問い掛けに、初号機に乗っているシンジ君はそう答えた。

 

「お前が死ぬぞ!」

「そうだ、君がやられてしまったらどうする、きっと副司令もそう言うはずだ!」

「父さんと日向さんは黙っててよ!」

 

 碇司令と俺の呼び掛けにシンジ君は耳を貸そうとしない。

 正論で説き伏せるのは無理なのか。

 

「回路をダミープラグに切り替えろ」

「しかし、まだ安全性の問題が……」

「良いから早くしろ!」

 

 マヤちゃんは碇司令に押し切られる形でダミープラグを起動させた。

 しかし警報ブザー音が鳴り響き、ダミープラグは拒絶反応を示した。

 

「ユイ、私に反対するつもりか」

 

 悔しそうに碇司令はそう呟いた。

 すると初号機に乗っているシンジ君の方から独り言のようなものが聞こえて来た。

 

「うん、分かったよ母さん。やってみる」

 

 シンジ君はそう呟くと、初号機の首を絞めていた参号機の両腕を払い退けて、参号機を突き飛ばした。

 

「アスカ、綾波、参号機の身体を抑えて。僕が参号機のエントリープラグを引き抜いて冬月先生を助ける!」

 

 有言実行、エヴァ三機は参号機のエントリープラグを引き抜いた後、使徒を殲滅させる事に成功した。

 しかし喜んでばかりはいられなかった。

 葛城さんの怪我はそれ程重傷で無くて一安心だったけど、副司令は面会謝絶の期間がしばらく続いた。

 赤木博士は命に別状は無いと話していたが、一体何が問題なのだろうと俺は疑問に思っていた。

 

 

 

「副司令!」

「おお、日向君か」

 

 久しぶりに顔を合わせた副司令は、右目に眼帯をしていた。

 訳を尋ねると、副司令は人目の無い場所で話そうと俺を私室に招いた。

 副司令は右目に使徒に汚染された参号機のコアを埋め込み、眼帯はそれを押え込むための拘束具なのだと話した。

 すでに副司令の身体はヒトではなく使徒に近いものになっていて、食べ物の味を感じる事も、眠る事も出来なくなったらしい。

 副司令は回らないお寿司とお酒が大好物だった、それをもう楽しむ事も出来ないなんて。

 俺の目から自然と涙が溢れ出した。

 

「済みません、俺のせいでこんな事に……」

「構わんよ日向君、もう私は十分にヒトとしての人生を楽しんだ」

 

 副司令はそう言って俺の背中を優しくさすってくれた。

 本当は俺が副司令を励ますはずが、逆に励まされてしまうとは情けない。

 それから副司令は24時間飲まず食わずでネルフで一番の働き者となった。

 でもあの使徒との戦いの後、俺にとっても深刻な問題が起こった。

 葛城さんと碇司令の間に大きな不信感が生まれてしまったんだ。

 シンジ君から初号機の中で自分のお母さんと話したと聞いた葛城さんは、エヴァの秘密を話せと赤木博士や碇司令と揉めたらしい。

 謹慎処分となった後も、俺にMAGIにハッキングしてエヴァに関するデータを盗み出して欲しいなどと頼んで来る。

 葛城さんはセカンドインパクトが碇司令によって人為的に引き起こされたものではないかと疑っているらしい。

 真の黒幕がシンジ君のお母さん、碇ユイ博士だとしたら許す事が出来ないと言っていた。

 俺も葛城さんの考えは正鵠を射ていると思った。

 碇司令と葛城さんが対立する様な事があれば、俺はどちらの味方をするべきだろう?

 

 

 

 葛城さんの謹慎が解けないまま、次の使徒が襲来した。

 作戦局第一課で序列が二番目の俺に作戦指揮のお鉢が回って来た。

 実験場の爆発事故現場の原状回復工事は終わっていない。

 手薄なそこを突かれたらマズイと判断した俺は、エヴァ三機で使徒を守備の厚い場所に誘導しようと考えた。

 でもそれは無意味なものだった。

 使徒の放った不可視軌道の光線は、特殊装甲板を18枚も貫通するとんでもない威力だった。

 

「まずい、メインシャフトが丸見えだぞ!」

 

 発令所に居た副司令がそう叫んだ。

 俺は待機していた初号機、零号機、弐号機のエヴァ三機をジオフロントに直接出撃させて使徒を迎撃させようとした。

 

「待て。碇、私を参号機に乗せろ」

「副司令、それは無茶です!」

 

 俺は碇司令が返事をする前に副司令を止めた。

 参号機は使徒として処理されたため、右腕をもがれて腹部にも大きな穴が開いている状態だ。

 そんなエヴァとシンクロすれば、激痛で正気を保てる訳がない。

 ましてや使徒と戦うなんて論外だ。

 

「構わんよ、私は痛みに耐えるのは慣れている」

 

 副司令は俺の方を振り返って余裕の笑みを見せた。

 そして碇司令も参号機の出撃許可を出し、他の三機は引き続きケージでの待機となった。

 使徒が光線によって開けた穴を通ってジオフロントへと降下して来る。

 待ち構えていた参号機に気が付くと、カミソリのように鋭い両腕を参号機に向かって伸ばした。

 しかし参号機は使徒の腕を左手で掴むと、思い切り引っ張って引きちぎった。

 その引きちぎった使徒の腕を右肩に押し付ける。

 

「参号機、右腕復元しました!」

 

 マヤちゃんが絶叫しながらそう報告する。

 さらに反対側の使徒の腕も復活したばかりの右腕で引きちぎると、腹部に空いた穴へと押し当てて修復してしまう。

 副司令の乗る参号機ならば使徒を倒す事など赤子の手をひねるように簡単だと思った。

 実際に両腕を失った使徒は接近する参号機に向かって光線を放つが、全くダメージを与えていない。

 その上驚くべき事に、参号機は使徒のコアを捕食し始めたのだ。

 参号機の頭上に天使の輪のようなものが浮かび、青い空が赤く染まった。

 

「冬月……シン化が目的だったのか!」

 

 碇司令が突然立ち上がって、そう叫んだ。

 一体何が起ころうとしているんだ!?

 俺には訳が分からなかった……。




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シン化したスーパー冬月さんの活躍の場

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