新世界の‪✝︎神‪✝︎になる   作:鳥ッピイ

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005.アンドロイドは創造主の夢を見た

 

「ぁあっ! あなた達は...!」

 

「機械生命体...!?」

 

「先程私たちの村に訪れたアンドロイドさんですか!?」

 

「もしかして、貴方がパスカル?」

 

「そうです!私が村長のパスカルです!」

 

「あっ、これ。アネモネさんから渡された...」

 

「今はそれどころでは無いんです!」

 

機械生命体の村にオイルを送り届けようとした2B達の前に現れたのは、あまり見た事のないタイプの機械生命体だった。

私たちの村に訪れた、という言葉で思いつくのは、今まさに訪れようとしている機械生命体の村以外には思いつかない。そして、その村の村長である目の前の機械生命体──パスカルは大きな爆弾を落とす。

 

 

 

 

「私たちの村に訪れていた人間さんがいなくなってしまって...! 」

 

 

 

「人間...?」

 

 

 

 

 

2人の時が止まった。

 

 

▲▼

 

 

『お前の方こそ、ニイチャンニイチャンうるっせぇんだよ!!!』

 

 

ダメージを与えるのではなく、ほんの一瞬で良い。隙が欲しかった。

会話で時間稼ぎをしたおかげで、水滴程の魔力が回復したのだ。

 

「ッ――――――!!!」

 

魔法が発動し、またどこかに飛ばされる。俺の体は一瞬の浮遊感と共に、どこかに消えた。

 

 

 

 

回復する視界の中、聞こえたのは水が流れる音だ。

――どうやら作戦は成功したらしい。

視界が暗い。濡れた土の匂いが鼻につく。 立ち上がろうとしても、今度は足どころか全身が震えて地面に無様に這い蹲ることしか出来ない。

四つん這いから、随分ひしゃげてしまった鉄パイプで立ち上がろうとするが、力が及ばず座り込んでしまう。

 

またどこに飛ばされたんだろう。

 

聞こえた水の音はビルの隙間から縫うように溢れ出る滝の音だった。

しかし、滝の音と混じって奥からまた別の水の音が聞こえる。

 

「う......」

 

立ち上がったものの、視界がぶれる。 滲む視界の中、足を進めると『別の音』が波の音だということに気づいた。

 

「海だ............」

 

長い時間をかけてビルの隙間を歩くと、ひび割れたアスファルトの先に、穏やかでありながら薄暗い海が広がっていた。

 

 

 

「...!ちくしょう...!」

 

しばらく何も出来ずに海を眺めているとこちらに気づいたらしい機械生命体が、3体ほど目を赤く光らせて襲いかかってくるのが見えた。魔力で槍を作るが、精製出来たのはたったの2本だった。

まずいちばん近くに居た一体は1本目の槍で吹っ飛ばす。

2本目は上空からこちらを襲う機械生命体に投げつけた。背後で爆発音がする。

 

最後は、こちらに腕を振り回しながら向かってくる機械生命体に対応するために、魔力を練ろうとした瞬間だった。

 

「がっ!!!」

 

視界が赤く染まる。

 

 

雪が降っていた。

逃げようとした足はもつれて転んだ。かじかんだ手は動かない。

 

『ひ.........』

 

振り返ると、赤い目がこちらを見つめている。動け動けと念じても足は震えて動かない。助けてと叫びたかった。

 

 

もうダメだと目を閉じた時、ふいに誰かに抱きしめられた。

 

『だ ょう か!? 、!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「────!!!」

 

耳鳴りと静寂。その次に体を襲ったのは、体内から内蔵をねじきられるような耐え難い激痛だった。

 

「っぐ──!!!」

 

3体目の機械生命体には至近距離の接近を許してしまった。 跪いた姿勢から攻撃を鉄パイプで受け止めるが、あの全裸の男に比べたら衝撃は少ないものの、とっくのとうに限界を迎えていた腕に激痛が走る。

 

「っぐ............あ゛ぁぁぁぁあ゛っ!!!!」

 

機械生命体に向かって押し返した鉄パイプを振り下ろした。

その機体が壊れるまで何度でも。

 

 

 

 

▲▼

 

 

「人間.........?」

 

「急にいなくなってしまったので、付近を探していたのですが、見つからないんです。レジスタンスキャンプに向かおうと思っていた所にあなた達が現れていてくれて助かりました。」

 

「2B、こいつ、人類を利用して僕たちを騙そうと!!」

 

ただでさえ平和的な機械生命体がいるなんて懐疑的だった。にも関わらず、アンドロイドを騙すために機械生命体が人類を利用しようとしたと考えた9Sが、いっそ憎しみを込めた目でパスカルを見る。

 

「違います! なにやら赤い光が迸った後消えてしまったんです。機械生命体やアンドロイドのことも何も知らない様子でしたし、命からがらこちらに逃げてきていたようなので、このままでは彼が危険です。」

 

「赤い光が?」

 

赤い光、という言葉で軍刀にかけた手を止める。 過ぎるのは遊園地での会話だった。9Sと顔を合わせる。

 

『――――――人がこの地球にいるんじゃないでしょうか?』

 

 

「ええ。なんなら、私をハッキングしてください。それで分かると思います。」

 

「...............」

 

「......わかりました。もし嘘をついてるなら壊せばいいだけの話ですから」

 

 

パスカルの声音からは、謀るものではなく、純粋にこちらを想うものにさえ聞こえた。

一瞬の違和感を直ぐに消した9Sは、パスカルの記憶領域をハッキングした。もし嘘であるならば、死を持って償わせてやると考えながら。

 

 

 

 

 

『食べないでください!!!?俺美味しくないんで!!!!!!!』

 

 

『ほ、本当に地球には人は誰もいないのか?』

 

 

 

 

 

『あ、ありがとうパスカル!!!』

 

 

 

 

「これは...!」

 

「.........!」

 

ゴーグル越しでも互いの顔が驚愕に染まっていることはわかりきっていた。

 

「ポッド」

 

『了解』

 

9Sが声すら出せない間に、2Bが彼女自身に似合わない震えた声でポッドにスキャンを頼んだ。

言葉は無かった。2人とも口に出さずとも、アンドロイドたる自身に刻みつけられたプログラムという本能を持って確信に至っていた。

 

9Sは手元のカードをしげしげと見つめる。パスカルの記憶領域内で、パスカルに笑いかけた『人間』の顔がそこには印刷されていた。

 

 

 

 

▲▼

 

 

「─────............」

 

再び気を失っていたらしい。

気がつけば壁のようなもの──朽ち果てたバスに寄りかかる形で手足を投げ出していた。

指1本動かそうとするだけで体を迸る激痛は、息を止めてやり過ごした。

 

見下ろした体はボロボロで、学ランは所々破けているし血まみれだ。

...もしかしてこの血俺の血か?

さっきから皮膚がヌルつく理由は水じゃなくて、自分の血なのかもしれない。

 

目線を横に動かすと、壊れた高速道路やビル。そして海が見える。 血の匂いに混じって届く潮の匂いが気持ち悪い。生ぬるい風が頬を撫でている。

視界が暗いのは此処の天気が曇りだからということにようやく気づく。雲の隙間から日光が鈍く海面を反射していた。

 

この世界に夜がなくてよかった。もし今が夜だったら孤独に耐えきれずどうなっていたことか。その時、ふと視界によく分からないものが映る。

 

「......ミサイル?」

 

視界の端に過っていたのは廃墟のビルではなく、見たことの無い大きさの砲弾が天高く向けられている。

 

▲▼

 

「9S...!」

 

「今やっています!」

 

たった1人で彷徨うには機械生命体が渦巻くこの地上は危険すぎる。写真に映る『人間』を探すために2Bと9Sはすぐに行動を再開した。

エミールから手に入れた魔素を探知する特殊スキャナーを内包するプラグインチップを装備した9Sは、高機能スキャナー型の名に恥じぬ解析処理速度をもって周囲を捜索していた。

 

「遊園地......廃墟都市...該当なし......商業施設跡......無い!...クソっ!」

 

「.........ッ!」

 

9Sは普段の様子から考えれば有り得ないほどに取り乱している。 しかし態度にこそ現れないものの、2Bも9Sを諌める余裕など一欠片もなかった。

 

「......あった!!!! リアルタイムで観測される魔素反応確認!場所は水没都市です!!」

 

 

2人は現在位置から最も近いアクセスポイントに向かって全力で走り出す。しかし、たどり着いたアクセスポイントで水没都市に向かおうにも、何度試しても表示されるのはERRORの文字だけだった。

「アクセスポイントの防護シールドが稼働して、転送不可になってる...!」

 

「......このまま足で向かうしかない!。」

 

「待って2B!! 近くに待機中の輸送ユニットがあります。それを使いましょう!」

 

「わかった!」

 

廃墟都市から水没都市までの距離ならば、今までの任務なら徒歩で向かっていたが、悠長なことは言っていられない。輸送ユニットはコストが高く、使用には本来司令部の許可が必要である以上、9Sの提案は規律違反になる。だが2人はそれをものともせず輸送ユニットが配置された廃ビルに向かう。 2人のアンドロイドが乗り込んだ輸送ユニットは、空の向こうにすぐに見えなくなった。

 

 

▲▼

 

あのミサイルが設置されている場所まで行けば、助けて貰えるかもしれない。

向かったところで誰かがいるのか、もしくは助けてもらえるのかすら定かではないが、行くしかないのはわかっている。

そう思うが、腕だけではなくもう体を動かす気力も体力も精神も限界だ。

 

立たなければ。こんなところで死にたくはない

 

「...はぁっ......はぁ......ゲホッ!!!............ぁあ...ああ...」

 

動悸が激しく、呼吸したくて胸を掻き毟る。なぜか零れた涙が頬の傷に染みて痛い。

 

「っあ.........ぁあ゛?...............」

 

少し目をつぶっていた間に、赤い目を光らせた機械生命体達が俺を取り囲もうとこちらに向かっているのが見えた。先程殺した3体よりずっと多い数だ。

逃げようとするが、その速さはほぼ徒歩だった。魔力は体力を消耗しすぎて回復する兆しすら見えないのに、倒すなんてもってのほかだ。

 

「クソ............!!!」

 

走れ走れ走れ...! 走らなければ死ぬ、足を動かさなければ死ぬ。 このままでは死ぬ!!!

 

 

「ぐぁっ!!」

 

廃墟都市よりも酷くひび割れたアスファルトに躓き、受け身なんて取れる訳もなく地面に転ぶ。 最近ずっと転んでいる気がする。痛みに悶絶しているうちに機械生命体に追いつかれてしまった。

 

「あ.........」

 

スローモーションに映る視界に、中型の機械生命体が俺に斧を振りかぶっていた。

 

 

 

 

 

「───────!!!......?」

 

 

その瞬間響く爆発音に頭を抱えるが、衝撃はいつまでも来ない。恐る恐る閉じた目を開けた時、誰かが俺を庇うように背を向けて立っていた。

 

 

 

 

 

「―――――敵を確認、破壊する。」

 

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