新世界の‪✝︎神‪✝︎になる   作:鳥ッピイ

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008.箱庭で嗤う

「すごく似合ってるわ」

「馬子にも衣装ってやつか?」

「.........」

「あ、アカツキさんの足が産まれたての子鹿のみたいになってますけど...」

「あの...なんか...あれ...あれがあれで......あれなんだよ」

「すみません。あの、話が抽象的過ぎて何もわからないです」

 

「お世話になるレジスタンスキャンプの皆さんに挨拶するのは当たり前なのはわかってるけれど『え?人間って......そういう...』『あっ...へ〜笑』『うわ...こんなのを守らなきゃ行けないのか...だるいわ〜』って愛想笑いされたら二度と立ち直れない 。鉛筆のボキボキに折れた芯になる」

「そ、そんなことありませんよ!!」

「ほら、2Bの後ろに隠れてないで出てこい」

「うふふ、皆待ちくたびれてるわ」

「ッアー!!助けて2B〜!!!」

 

2Bにしがみついていた腕をべりべりと剥がされ、両腕をデボルとポポルに担がれる。 力強!!!!ぁあ...部屋の出口までの道が処刑台への坂に見えてきた...。

 

 

 

 

 

「連れていかれちゃいましたね」

「......」

「アカツキさん、レジスタンスの皆さんを気に入るといいんですけど......2B? おーい」

「......」

「完全に固まっちゃってる...」

『報告:ヨルハ部隊2Bのバイタルの異常を検知』

「あっ、ポッド。多分すぐ治るからほっといていいよ」

『了解』

 

▲▼

 

「アッアッアッ」

 

レジスタンスキャンプのアンドロイドは全員が呼吸を忘れ、シンとした空気の中、たったひとりの人間の一挙一動を見逃さないよう視線を注いでいた。

 

「知っていると思うが、彼が人間のアカツキだ。訳あってこのレジスタンスに留まることとなった。皆、彼を丁重に扱ってくれ」

「由良...暁です.........その、よよよよ、よろしくお願いしまままます」

 

大きな歓声が上がる。それは嬉しさのあまり涙ぐんでいたり、親しい者と抱き合ったり、様々な感情が入り乱れていた。

ヨルハ部隊がアカツキを運び込んだ時、レジスタンスキャンプは月にいるはずの創造主に大混乱となった。 誰もが興奮で我を忘れ、そして人間が怪我をして気を失っている事実に大きく動揺した。

メンテナンスに特化したデボルとポポルの冷静な指示が無ければアネモネだけでは収拾がつかなかっただろう。

手当された人間は、3日で目を覚ましたが、怪我を考慮して動けるようになるまでには、さらに3日を要した。

それは人間としての回復速度を考えるのではあれば、有り得ないものであったが、アンドロイド達にすれば人生で最も長い時間である。

しどろもどろになるアカツキに代わる代わる握手を求めながら、握られる手から伝わる感情にアンドロイドは狂喜する。しばらくして興奮がなんとか少し収まった頃、

 

「そうだ。アネモネ、あとレジスタンスの皆さん」

「どうした?」

 

どもるアカツキの言葉にアンドロイド達は一斉に口を噤む。騒がしい雰囲気が再び一気に静まり返った。

 

「その、もうひとつお礼を......」

「お礼?」

「アネモネ達アンドロイドは地球を取り返すためにここにいるんだろ?

だからずっと俺たち人類の為に戦ってくれてありがとうって言おうと思ってさ。

 

別にその...人類代表とか厚かましいつもりは無いんだけど......」

 

「そんな、ことないさ。その言葉だけで...散っていた仲間は、私たちは...私は...............」

 

今度は感極まったアネモネが言葉に詰まる番だった。それは、レジスタンスのアンドロイドも同じことだった。 今までの戦いを、創造主自らに労われることは全てに勝る喜びだった。

 

▲▼

 

ヨルハ部隊の司令官であるという、2Bとは違ったタイプのクールビューティな女性はホワイト、と名乗ってくれた。

彼女もヨルハ部隊の基地から離れられない都合上、俺との通信制限を心待ちにしてくれていたらしい。9Sの話ではヨルハ部隊は月面の人類会議から通信を直接受け取るらしいが、

司令官であっても人間の存在は初めてだそうだ。

会えたことをめちゃくちゃ嬉しがられて自己肯定感が上がる。

しかし、ヨルハ部隊の制服はなんであんなにスカートの切れ込みが際どいんだろう.....設立者の趣味?

個人的な性癖というか、ある意味人類の夢なのかもしれない。 ヨルハ部隊設立者、やるな

 

「ホワイトさん、この服ありがとうございます。俺の服ボロボロだったしめちゃくちゃかっこいいし助かりしました」

『そうか。気に入ってくれたのなら何よりだ。本来ならば、人類たる貴方に「黒」を着せるべきでは無い。しかし、貴方の安全を考えた時にはそちらの方が良いと思ってな』

「うん?」

 

『機械生命体は敵生体と対峙した時に、敵味方の識別にネットワークによる接合の可否によって判断しているという報告を加味すると、彼らの識別能力は我々と比べ粗略な傾向にある以上――......』

 

「???」

 

なんだろう。冠位十二階の話じゃなかったっけ???

 

 

『す、すまない。とりあえず言いたいのは、機械生命体は人類たる貴方と、人類を模倣して作られた我々アンドロイドの違いが分からないんだ』

「えっそうなんだ」

『奴らが視覚情報においてこちらを判断する以上、現地のヨルハ部隊に貴方を紛れ込ませた方が安全に近いと判断した。』

 

どうやら木を隠すなら森の中という話らしい。俺に黒を着せるのは何故か不敬に値するというが、その辺の感覚はわからない。元々着ていた学ランも黒だしな。

 

「俺は黒がいいから、これがいいです」

 

『...ありがとう』

 

 

▲▼

 

「助けて2B〜〜!!!」

 

「め、メディカルチェックは......大切だから受けるべき」

「9S!!!」

「頑張ってくださいね〜」

「健康は何よりも大切よ?」

「あたし達が全部見てやるよ」

「ア゛〜〜〜〜」

その後、メディカルチェックを渋ったアカツキを再び引きずっていくデボルとポポルを2Bと9Sは見送った。

扉が閉めらられ、周囲に誰もいないことを確認する。

そして、空中の通信に再び目を向けた。

 

 

『では2B、9S。話がある。』

 

「はい」

 

ホワイトはアカツキに向けていた柔らかい声から、真剣な雰囲気に変わる。2人は背筋を伸ばした。

 

 

『察しているとは思うが、アカツキの件だ。―――彼の存在は最高機密とする』

 

「...な!?」

 

「......!」

 

『2人は彼の護衛任務と共に、アカツキについての情報は一切の口外を禁ずる。無論、他のヨルハ部隊も例外ではない』

 

この6日で月面人類会議との協議が終わり、アカツキに対する命令が下されるという予想までは当たっていた。

アカツキを守るにあたっては、レジスタンスキャンプのアンドロイドの戦力だけでは心許ないと考えていた。その不安を最新型であるヨルハ部隊が補うのだと。

しかし、司令官の命令は、その予想の真逆をいくものだ。

 

「僕と2Bだけでは彼の守護には不充分です!せめて、他のヨルハ部隊を何名か...!」

 

『...ヨルハ部隊は精鋭部隊といえば聞こえが良いが、その数は少数だ。レジスタンスと協力し、彼の存在を徹底的に隠す。

機械生命体から彼を守るにはアンドロイド側からも情報統制が最も良いと判断した。』

 

「......ですが。」

 

「司令官、月面人類会議は何と?」

 

『....月面人類会議は彼の地上の逗留を決定したよ』

 

「そう、ですか」

 

司令官だけではない。月面人類会議の決定とあらば、ただの一兵卒に過ぎない2Bと9Sがこれ以上口を挟む隙はない。

無理やり納得させるに他なかった。

 

 

▲▼

 

「健康状態はおおむね良好...と。魔素による健康状態への影響は今のところ認められないな」

 

「アカツキ、お疲れ様」

 

燃え尽きたぜ......真っ白にな.........

 

まさか、本当に隅々までチェックされるとは思わなかった。

うぅ、乙女の秘密が!

 

「魔素について質問なんだが、お前はどこまで使いこなせているんだ?」

「魔法? 完全に使いこなせているわけじゃないけど、攻撃で自分の身を守れるぐらい?」

 

魔法による転移で散々な目にあったが、2Bと9Sに助けられるまで生き残れたのもまた魔法のおかげだ。そもそも移転した場所が温暖な地域なのが僥倖だった。雪が降る寒い地だったなら魔法を手に入れる前に死んでいただろう。

 

「結局、魔法って何なわけ? 」

「魔法は......そうね。無から有を生み出す技術といわれていたわ」

「むからゆう とは」

「あたしたちにとってはロストテクノロジーというより未知に等しいものだけれど、魔法はかつて人類が使っていた物なんだ」

「魔素によって、人類文明はかつてないほどのブレイクスルーを迎えたというわ。絶対無いと言いたいけれど...何かあった時、魔法はきっとあなたを守ってくれるはずよ」

「守ってくれる......」

 

ポポルの言葉は歯切れが悪く、曖昧なものだ。2人もあまり魔法については分からないことが多いらしい。

魔法........魔法か。何日も使ってないような

 

「アバダケタブラ......」

 

何も出なかった。

いやこの魔法が成功したらやべぇよ。

 

 

「うーん、次のメディカルチェックはいつにしようか」

「そうね 本当なら24時間毎に行いたいのが本音なのだけれど」

「え゛」

「ポポル、次はこの項目に加えたいものが......」

「俺2Bと9Sの所に行ってくるね!!」

 

俺の健康を気にしてくれるのは嬉しいが、あんなのを毎日やっていたらそれこそ心臓に悪い。

逃げるが勝ちが先人の知恵である。俺は部屋を飛び出した。

 

▲▼

 

レジスタンスキャンプは所々日差し避けのテントが張られているので、外であってもとても過ごしやすい。なんとなく2Bと9Sのところに行くと言った手前2人を探しているが、先程の部屋にはいない。レジスタンスキャンプを離れてしまったのだろうか。

ぶらぶら歩いていると、沢山のアンドロイド達に話しかけられる。

 

「人間さん!! 昨日の食事は美味かったか?」

「ここは日差しが強いから、日に焼けないように帽子を作ろうと思っているんだけど...」

「何か不自由なことはないか? 何でも俺たちに言ってくれ」

 

 

「あれっ」

 

2Bと9Sを探そうと思っていたのに彼等と談笑しているうちに、レジスタンスキャンプの端の方に来てしまったらしい。一度入口の近くに戻った方が良いだろう。そう思って日差しに一歩足を踏み出した時だった。

 

「おにいちゃん」

「ファッ!?」

 

かけられた声に振り向くと、女の子が一人こちらを見上げていた。 黒い髪に赤い服を着ていて、視線が合うとにこりと微笑む。

 

「こんにちは」

「えっ!?うん。こんにちは」

 

小学生くらいの小さい女の子だ。アンドロイドは人類を模して様々な人格や見た目を与えられているとは聞いていたが、子供のアンドロイドもいるのだろうか。 俺の予想では性癖が全裸の男といいヨルハ部隊の制服といい、多様性を盾に性癖に忠実な奴もしくは変態がいると睨んでいる。

 

「おにいちゃんは、にんげんなのにどうしてここにいるの?」

「どうしてだろう。機械生命体を月に代わってお仕置をするため......かな?」

「にんげんは、もうこのせかいにはいないんじゃないの?」

 

俺の渾身のボケをスルーした少女はニコニコと笑っている。 やめろそういうのが一番死にたくなるだろ!!

 

「あっ!いたいた人間さん。ヨルハ部隊のふたりならつい今あっちにいたよ」

「お?」

 

先程話していた兵士のひとりが、俺が2Bと9Sを探していることを知ってわざわざ探してきてくれたらしい。

 

「ねぇ、君は.........あれ?」

 

 

 

振り返った時、赤い少女は消えていた。

 

 

 




感想で気にしてくれる方が多かったので。一応考えていた設定

・贈られたヨルハ部隊の制服が「黒」なのが不適切な理由

・一兵卒のアンドロイド兵士ための黒いヨルハ隊服を、人間に着せるのは不敬だと思ったから。9Sはこちらの意味でとらえている
・ヨルハの制服には、滅びた人類に対して喪に服すための「黒」という設立者の思惑があるため、人類の真実を知っている司令官はこちらの意味で不適切だと思っているから

・主人公が黒が良いと言った理由

ただ単に厨二病

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