読んでくださり、本当にありがとうございます!
約二ヶ月ぶりですかね。お久し振りです。
今後もマイペースに更新していければと思っているので、宜しくお願い致します!
──響也side──
「(朝ってなんでこんな憂鬱なんだろうな…)」
倉田達が作詞を始めた日から一週間が経過した。俺もあれからバイトがない日はたまに練習へ顔を出し、練習を眺めながら時折八潮と意味のない会話をしている。
そして倉田達の作詞の状況と言うと、実は既に倉田以外は作詞を終えてみんなに見せている。広町さんに至っては、八潮から提供されたバイオリンの曲をバンド楽曲にアレンジしやがった。
「(ああ言うのを、人は天才って呼ぶんだろうなぁ……)」
音楽てんで知らない俺でも鳥肌立ったもんな。本人はアレンジ初めてって言ってたけど、それであんなのが生まれるとは思わないだろ。あと八潮が言っていたが、ベースの上達スピードも凄いらしい。何者なんだ広町さん。
だが問題が一つあって、それが今まさに倉田達が挑戦している作詞だ。本人達曰く、どれもピンと来ないらしい。まぁ作曲した八潮もアレンジした広町さんも超がついても可笑しくない天才だからな。
「うーん……」
「おっす、倉田。何してんだ?」
「!!し、四条君……」
「悪い悪い、びっくりさせちまったな」
どうやらかなり集中していたらしい。けど、倉田がこんな早くいるなんて珍しいな。いつも俺と同じくらいか少し遅いくらいなのに。手に持ってるのは、ノートか?あぁ、そういうことか。
「作詞の続きか?朝早くから凄ぇな」
「そんなことないよ。まだ私だけ出せてないんだから。けど……」
「けど?」
「さっきヒントを見つけて、頭の中にイメージが浮かんだんだ。だから、何とか書けると思う」
ヒントねぇ。このあたりにあるのだと、そこにある石碑のことか、それかたまたま巡り合った風景か。ただまぁイメージが浮かんだんならもう大丈夫そう、かな。
───翌日───
今日の放課後はバイト無し、てなわけで倉田達の練習を見に来た。大翔はバイトみたいで直ぐ教室を出ていった。ファーストフード店のバイトなんて俺にゃ無理だ。人混み過ぎたらテンパって何も言えんくなる。
なんてことを考えながら俺は授業内で出された課題を進めている。いわゆるテスト当日までに提出しろって言われてるやつだ。これが範囲広いと面倒なんだよな。
「(そういや八潮のやつ、練習ある日いつも来てんのかな。それでずっと隅っこにいんのか…?)」
『前から思っていたのだけれど、あなたは何故彼女たちに協力しているの?あなたには何のメリットもないはずよ』
「(前にああ言ってたけど、お前もそうだろ。ならどうして…)」
来たくもない場所に来て、一人隅っこでただ本を読んでいるだけ。楽しくも面白くもないことなんて、それこそ苦痛そのものじゃねぇか。八潮のことだから生徒会としてとか、頼まれた事だからとか、色々と理由つけて正当化してきそうだが。
ま、あれこれ考えても仕方ないか。俺は課題に集中することに……したのだが───
「四条〜!こっちきて〜!」
「ちょ…!き、桐ヶ谷さん…!」
「……この感じ、なんか前と同じ流れな気がするんだが…」
桐ヶ谷お嬢に呼び止められた。倉田のあの感じからして、多分作詞の事だろうな。大方桐ヶ谷お嬢が俺にも見せようとか言い出したんだろう。倉田が慌ててるけど、俺としても興味はあるから構わず歩み寄っていく。
「これ見てよ!倉田の歌詞!」
「どれどれ……」
「……!」
桐ヶ谷お嬢から倉田のノートを受け取り、書いてある歌詞を見る。これ全部昨日の朝から書き上げてきたんだよな。ヒント見つけてイメージが浮かんできたってのは、本当だったらしい。
「輝きがいつか、道を照らすなら…。これって月ノ森の校訓が元か?」
「え、あ、うん。そうだよ」
「へー、意外。四条君が月ノ森の校訓を知ってるなんて」
「流石に知ってるわ。あんま馬鹿にし過ぎんなよな?」
「し、してないよ!」
その反応はしてるやつだぞ。二葉。
「とにかく、俺は結構好きだけどな。この歌詞」
「ほ、本当…?」
「ここで嘘言っても意味ないだろ。本当だって」
同じ月ノ森生で友達だから、歌に込められてる世界観がイメージしやすいってのもあるかもしれないが。
「四条もこう言ってるし、歌詞は倉田ので決まりじゃね?」
「うん、異議なし。校訓からとった歌詞なら月ノ森生らしさもあるし」
「うんうん、採用おめでとう、しろちゃん!」
「あ、ありがとう…」
どうやら満場一致で決まりらしい。もう少し自分の書いた歌詞をおすすめしてもいい気がするが、まぁいいか。
「これでまた、月ノ森音楽祭に向けて一歩前進だね!」
「月ノ森音楽祭……?あぁ、この前告知されてたやつか。てお前等、それに出るつもりなのか!?」
俺の言葉に当然と頷く4人。あの音楽祭ってこの学園の吹奏楽部や合唱部はもちろん、他にも楽器を演奏してる凄い人達が参加するんだよな。それにまだ組んで間もないバンドが出ようとしてんのか……いや、流石に無理じゃね。烏滸がましいにも程がある。
そんな俺の考えとは裏腹に、彼女等は出る気満々というか桐ヶ谷お嬢に至ってはあっと言わせるかとまで言う始末。それに二葉も賛同してるし。
キーンコーンカーンコーン! キーンコーンカーンコーン!
「あ、チャイム鳴った」
「最終下校時間前よ。帰る準備をしなさい」
それだけ告げて八潮はいつも通りそそくさと教室を出ていった。俺もさっさと帰ってゲームやろっと。机に出してた物を閉まって支度をすると、倉田達も既に片付けを終えていた────楽器は教室に置いて。
「ん、楽器は持ち帰んないのか?音楽祭出たいんだろ?」
「あー、あたし家では練習しない主義なんだよね。まぁそのうち上手くなるし大丈夫っしょ」
……え?この練習時間だけで上手くなって音楽祭に出ようと思ってんのか…。
桐ヶ谷の言葉に何も言わず、この後カフェに行こうと話しながら教室を出ていく倉田達。目標があるなら、それに向かって練習の時間は増やすもんなんじゃないのか。あいつら────
「こんなんじゃ音楽祭なんて夢のまた夢だろ……」
結局この後、倉田達はそのままカフェへ。俺は断って帰宅。それ以降、俺が練習を見に行く頻度はちょっと減った。人に言われてもやる気なんて出ないだろうしな。元々いる意味なんてあんまりなかったしな。