今までの形式の方が票が多かったので、行間戻しました。
──響也side──
倉田に助言みたいなのをしてから、あっという間に一週間が経過した。彼女達はあれから昨日のを含めて2回ライブイベントに参加したものの、中々良い結果を残せていないようだ。俺はあいつ等のライブ参加自体が急だったからバイト休めなくて行けなかったが、倉田の雰囲気から一目瞭然だった。
今のバンドの状況なんかも気にならないと言ったら嘘になるし、俺は丁度人がいないタイミングで二葉の席へ駆け寄った。てか俺から話すのって初めてかこれ。
「なぁ二葉。今ちょっといいか?」
「ん?珍しいね。四条君から話し掛けて来るなんて」
「俺もそう思ってた。じゃなくて、バンドって今どうなってるんだ…?倉田のどんより度が半端ないんだけど…」
何と言うか、負のオーラでも纏ってるんじゃないかってくらいに話し掛けにくい。俺がそう言うと、双葉も「あー…」と考え込んだ。やっぱ何かしら感じてるところはあるんだな。
「確かに直近のライブは上手くいってない、かな。でも!もっと練習して腕を磨けば、きっと上手くいく!」
「まぁそうかもしれないが、その練習はどれくらいやってんだ?」
「私は、練習はちゃんと家でもやってるよ!透子ちゃんは分からないけど…」
「はぁ…」
……こりゃ駄目だ。一人一人のバンドへのやる気度が違い過ぎる。お嬢は家で練習しないって前に言ってたし、あの教室での練習以外じゃマジで触ってないんだろうな。
「分かった。あんがとな」
俺は二葉に礼だけ言って自分の席に戻った。これはもう一人の問題じゃないな。バンド全体の問題だ。俺一人が動いたところでどうにもならん。倉田はもう完全に塞ぎ込んじまってるし。今日バイト休みだし、練習に顔出して話してみるとするか。
──────
放課後。倉田達の練習を見に来たわけだが、歌う倉田の表情は未だ暗いまま。そんな状態でやる練習、というよりバンドは楽しいのか?
一曲歌い終えると倉田は机に両手を置き、ボソッと呟いた。
「私、もうバンドしたくない……」
『え……!?』
「(ついに、感情を口にし始めちまったか…)」
こりゃ相当追い込まれてるな。メンバー間の意欲の差、前向き過ぎるが故に気づかれなかった感情が爆発した感じか。 まぁバンドをやりたいと一番最初に動き始めた倉田がこんなに早く折れるとも思わないよな。
「だって、頑張ったってこんなこと言われるんだよ…」
そう言って倉田が見せたのはSNSの画面。そこにはイベントに出た倉田達に関して呟いているものだった。
『月ノ森のバンド、なんか残念だったね』
『あの学校にしては普通な感じ』
『月ノ森のボーカル、思ったより平凡だった』
『あの学校ならもっと歌える子いそうな気がするけど』
などなど他にもあまり好ましくない呟きが多くあった。これはそもそもバンド名がツキノモリ(仮)だったり紹介文に月ノ森学園って入れてるからな。観てる側はそりゃ期待するに決まってるし、そこに達しなければガッカリしてしまうのも頷ける。
だが俺がこうして冷静に物言い出来るのはこの呟いている人と同じ第三者視点だからなわけで、倉田達からすれば正面から受け止めちまうだろうな。
「たくさん練習してこんな思いするなら、バンドなんてやりたくない…!」
「で、でも…!ライブをしてみて、反省するところ、たくさんあったでしょ?」
「そ、それは……」
二葉の言葉を聞いて黙り込む倉田。どうやらあれから反省会はしたらしい。演奏に負けちゃったり、ボーカルが聞き取れないところもあったり、緊張して歌詞を間違えてしまったりと俺よりも正確に直すべき点を倉田に提示していたようだ。きっと二葉の考えでは、
そもそも月ノ森から出たバンドだろうと、始動したばかり。これくらいの意見が出るのは当たり前っちゃ当たり前だ。
「……でも、それなら透子ちゃんだって…」
「え?あたし?」
……は?
今、あいつ話逸らしたよな…?
「間違えもたくさんあったし、音もみんなとズレてて、そっちに私も引っ張られちゃったっていうか…」
「じゃあ、倉田が失敗してたのは全部あたしのせいってことになるの?」
「く、倉田さん…!」
急に指摘され、少し声を張って問い掛ける桐ヶ谷。仮に俺がお嬢の立場だったとしても似たこと言い返すだろうな。倉田の反省点について話してたのに、全面的にお嬢に責任転嫁してんだから。
あいつ、完全に暴走してんな。俺はその場から立ち上がって彼女等の方に歩く。
「しろちゃん、そんなこと言っちゃ…」
「二葉さんも頼りにしてって言ってたのに助けてくれなかったし。頑張ったけど、上手く歌うなんて私には無理だよ…」
「無理って言わn…!」
二葉が大きく声をあげる前にその肩を叩き、二葉と倉田の間に割り込んだ。普段の俺ならこんなことしないけど、悪いが今回ばかりは言わせてもらう。さっきから普通に腹立つしな。
失敗や苦難を無しに“特別なもの”を手に入れようとする倉田に。
「し、四条君…?」
「今までは励ましたり、相談受けてたけど、今回ばかりははっきり言わせてもらう。
今のお前、冗談抜きに最低だぞ…!」
『!?』
俺が放った言葉に八潮を除いた全員が驚いたけど、間違った事を言ってるつもりは微塵もない。特に倉田は俺にそう言われると思っていなかったのか、明らかに狼狽えた表情を見せた。
「自分のミスの原因を仲間に押し付けるなんてのは、絶対にしていいことじゃねぇだろ」
「し、四条君には、私の気持ちなんて分からないよ…!あれだけ頑張っても無理なら、もう無理だよ…」
「出来なかったら、周りのせいにしてもいいのか?そんなのはただ失敗から逃げてるだけだ」
空気が完全に張り詰めてるけど、そんなの気にしない。この月ノ森学園にいる“凄い”人だって失敗から逃げずに努力したからこそ、才能や倉田の言う“特別なもの”を手に入れる事が出来たんだと俺は思ってる。
前に何事にも自信を持たないと変われないって倉田に言ったけど、こいつはまだ自分に自信を持ててない。俺からすりゃ
「私はこの学校にいる人とは違うし、“特別なもの”なんて何もないから…!四条君みたいに自信なんて持てないよ…!」
そう言うと倉田は、机から荷物を持って何も言わずに教室を出て行ってしまった。一瞬追いかけようかと思ったが、このまま言い合いしてても何も変わらないな。一旦落ち着いた方がいい。
それより、“特別なもの”と自信か…。
「んなもん、俺だって持ってねぇっつうの…!」
「四条君、大丈夫だった…?」
「……あぁ。というかごめんな。最初は何も言わないつもりだったんだが、我慢出来なかった」
倉田に対して、二葉も言いたいことあっただろうし。何なら邪魔しちまったかもな。
「ううん。むしろ助かったよ。四条君が間に入ってなかったら、多分言い過ぎたと思うし」
「確かに、俺が割り込む前は大分声張ってたしな」
「うぅ…。すぐに言い訳をする倉田さんに、ついカッとなっちゃって…」
「俺と一緒だな。バンドをやりたいって言ったあいつが、一番最初に諦めるってのがどうしても許せなかった」
あいつ、多分もうこの教室に自分から来ないだろうな。けどな倉田。俺とこいつ等が、そう簡単に諦めると思うなよ。
あいつは前に初めてバンドを見た時、これしかないと思ったって言ってた。そう思える瞬間って、中々巡り会えるもんじゃない。倉田はきっとまだ心の奥底では、バンドに挑戦したいと思ってるはずだ。
「どうしよっか。これから…」
「…取り敢えず、メンバー募集の張り紙を全部回収しよう」
「確かに、今この状況で募集してもだもんね」
こんな暗いムードで募集ポスターを見て人が来てくれても、満足に対応出来ないと思う。それにボーカルが来られたら倉田とどっちを取るかって話にもなる。今直面してる問題を解決するまで、ポスターは回収して保管しておくべきだ。
俺の意見に三人とも同意し、今日は一先ず解散となった。各々今日のことで考えたいこともあるだろうしな。俺も幸い明日もバイト休みだし、ポスターを回収しながら話そうかね。
Morfonica結成編、やっと中盤くらいかな…?
結成する頃には35話くらいになってそうでちょっと怖いw