かなーり時間が経ってしまいましたが、本編更新です。そして今年の8月頃にしているお知らせの通り、一部設定を変更しております。詳しくは本小説一番上のお知らせをご確認ください。
──響也side──
「倉田さんと喧嘩した…ねぇ。てか、お前の立場なら少なくとも喧嘩は止める立場だろうよ」
「……何も言い返せねぇ…」
倉田と喧嘩をした翌日の昼休み、俺は大翔に昨日の一件を話していた。というか話せと尋問された。こいつ曰く、表情だったり雰囲気で悩んでるのがバレバレらしい。俺ってそんな分かりやすいのかよ…。
そして大翔からの正論オンパレードで今に至るわけだ。あ、やっぱのり弁美味っ。
「まぁ、お前の言ってることも分かる。最初から倉田さんに協力してたわけだしな」
「分かってくれるか友よ…!」
「けどそっちから喧嘩しに行くのは違うわ」
「うい……」
今日だけは大翔に逆らえねぇ…。
「んで、仲直りするタイミングが見つかんねぇと」
「……あぁ。あいつ、授業が終わる度にそそくさといなくなっちまうんだよ。止めようとして声かけても反応せずに行っちまうし」
それもあって話すタイミングが全くないんだよな。何処に行ったかも当然分からないし、授業中は話せないし。
「倉田さんも逃げたくて逃げてるわけじゃねぇだろうよ。こういうのはどっちかが踏み入らないと進まないんだから、覚悟決めろ」
「……おう」
確かに大翔の言う事は正しい。倉田がこの状況で自分から話しかけにくるとは思えないもんな。
そこでふと、倉田に初めて話し掛けた時の事を思い出した。そっか……そう考えると今回も同じだ。勝手に一人ぼっちになろうとしてるあいつを、陽の下に引っ張り出してやろう。
「……おし、あんがとな。おかげで気合い入ったわ」
「全く、話聞くこっちの身にもなってほしいもんだ」
「悪い悪い。けど女子と喧嘩するなんてこと、お前もないだろ?」
「それはそう」
こいつも今の今まで彼女無し。中学でも彼女のかの字とも繋がりがないのは互いに知ってっからな。仮にこいつが俺の立場だったら同じ事になっていただろう。
「んじゃあ今日の放課後にでも話しかけにいくのか?俺はバイトだけども」
「いや、俺も今日は別に予定が入ってるけど……」
「けど、なんだよ?」
「運が良かったら、そこで倉田と会うかもな」
何せ、今のあいつからしても放置出来ない物を片付けに行くんだからな。
──────
「よし、全員揃ったね」
時は経って放課後。俺、二葉、広町さん、桐ヶ谷お嬢の四人は学校前に集まった。大翔はバイト、倉田は誰とも話すことなく教室をあとにしたからもう帰っていると思う。
目的は各ライブハウスや楽器店に貼り出してもらっているバンドメンバー募集のポスターを回収することだ。さっき倉田に会うかもと言ったのも、バンドを辞めたあいつでもこれを放置出来ないからだ。
「学校のは私が回収しておいたから、後は外だけだよ」
「おー、流石はつーちゃん!」
「けど外でも結構な数貼って貰ってたし、今日一日で終わるかな?」
「一日で終わらせるなら、手分けして行った方がいいかもな」
そもそも放課後なのもあって時間はあまりない。それもあって俺達は二葉と桐ヶ谷お嬢、俺と広町さんの二組に分かれて回収することにした。各々ルートの回収終えたら連絡だけ入れて解散、ポスターは明日まとめることに。
そんなこんなで二葉とお嬢と別れ、俺は広町さんと最初のライブハウスに向かっている。こうやって広町さんとちゃんと話すのは魍魎列島のおまけの時以来か。クラスは違うもんな。
「昨日から少し聞いてみたかったんだけど、四条君としろちゃんってどうやって仲良くなったの?」
「しろちゃんって……あぁ、倉田のことか」
そんなワンちゃんみたいに…。けどちょっといいな。仲直りしてまた話す時、少し勇気があったら俺も呼んでみようかな。絶対嫌がられるだろうけど。
「うん。四条君としろちゃんって性格とか全然違うなぁと思って」
「まぁ確かにそうだな。倉田と初めて話したのは────」
そこから俺は倉田と会ってからどういう流れで仲良くなったのか、所々省きながら広町さんに話していった。こうやって話しながら思い返してみると、バンドを組むに至るまで俺が大分引っ張っていってる感じするな。
――響也説明中――
「うし、取り敢えず一店舗目回収と」
あの後話し終わったタイミングでライブハウスに着き、店舗スタッフさんに説明してささっと回収。ポスター自体はそこまで大きくないから、四つ折りにして鞄に閉まっておいた。
広町さんとライブハウスを出て、俺は話の続きをするために彼女の方に振り向いた。
「んで話は戻るけど、俺と倉田が仲良くなったのはあんな感じだ。と言っても今はすれ違って話せてないけどな…」
「でも、仲直りしたいと思ってるでしょ?」
「そりゃもちろんな」
相当嫌なことされない限り、友達と仲直りしたくないって奴なんているわけない。そんな奴いるなら、もうした側は相手のこと友達だと思ってないだろ。
「じゃあどうにかして話すタイミング見つけないとね」
「だな。それに広町さんも皆も、まだ倉田の事は諦めてないんだろ?」
「もちろん!私はまだしろちゃんと、皆とバンドやりたい」
それを聞けて安心した。なら、はやいとこどうにかしないとな。明日、強引にでも倉田を呼び止めて話してみるか。
少し前向きな気持ちになったとこで、俺と広町さんは他にポスター貼らせてもらったライブハウスや楽器店へと足を運んでいった。
──────
「うし、次が最後だな」
あれから小一時間くらいで、俺と広町さんは最初のを除いて3店舗を巡っていった。二葉と桐ヶ谷お嬢は俺等よりも少し多く回収したらしい。多分というか、十中八九お嬢が二葉引っ張っていったんだろうが。何処と無く犬に振り回される飼い主が思い浮かんだが、心に閉まっておこう。
「確か『CiRCLE』だったよね」
「あぁ。向こうももう終わるくらいだろうな」
何なら桐ケ谷お嬢もいるし、あっちの方はもう終わってるかもしれない。二葉は多分この一時間半くらいで相当疲れてんだろうな。
歩きながら広町さんと何気ない話をして数分、俺等は『CiRCLE』前の一本道に出て来た。
「見えてきたな……ん?」
「四条君、どうしたの?」
今『CiRCLE』から駆け足で飛び出した人、もう他の通行人に隠れちまったけど倉田に似てたな。まさか俺が思ってた通り、あいつもポスター取りに来てるのか?
「あ、いや…今倉田に似た人がいた気がして…」
「え?私は見えなかったけど…」
「そっか……」
広町さんには見えなかったか。…俺の勘違いだったか?いやでもあの空色の髪した後ろ姿は倉田だと思うんだけどな…。服装までちゃんと見えてたら確信出来たんだが。
一抹な不安を抱えながら、俺と広町さんは『CiRCLE』へ入店。すると入って直ぐにポピパの面々とスタッフさんがいた。何やら相談中?のようだ。
「えーと、お取り込み中でしたか?」
「あ、ううん!大丈夫d…」
「あ!もしかして、月ノ森学園の子?」
俺の問いにスタッフさんが応えるのを遮って、ポピパの戸山香澄さんが俺達に問いかけてきた。その表情は何処か悲しそうな雰囲気をまとっている。
月ノ森……これ、やっぱさっき『CiRCLE』から駆け足で出ていったのって…。
「そうですけど、何かあったんですか?」
「実は…ついさっきまで、月ノ森の女の子がいたの。この前のミニライブにも来てくれて、私もバンドやってみたい!って言ってくれたんだけど…」
『バンドって……もっと、楽しいものかと思ってました…』
「て言って、メンバー募集のチラシを丸めて出て行っちゃったの…」
「……!!」
……は?
怒りがふつふつと込み上げる中、俺は衝動的に走り出した。『CiRCLE』から出て、倉田が走っていった方向へ。広町さんの止めようとする声が聞こえたけど、それで思い留まる選択肢なんてなかった。
「(バンドを始めたきっかけがポピパでも、お前がバンドを辞める事にポピパは一切関係ないだろうが!!)」
そんなのただの逆恨みじゃねぇか!今こうやって走ってるけど、倉田と会った時に言う事なんて何一つ考えてない。けど、今あいつをこのまま放っておいたらダメだ。バンド関係なく、悪い方向に一人で突っ走っちまう。
走れ、とにかく走れ!そもそも倉田が見つかるも分からねぇけど走れ!
──倉田side──
「はぁ、はぁ、はぁ…!」
『CiRCLE』に貼らせてもらっていたメンバー募集のポスターを回収した私は、逃げるように自分の家の近くの公園まで走ってきた。力んでいたせいか、丸めたポスターは真ん中が大きく潰れている。
今でも、脳裏にSNSの酷評が焼き付いている。こんな私でも頑張れば、あの人達と同じ景色が見れると思っていた。けど私の先に見えたのは、一寸の光も存在しない暗闇だった。
「これでいいんだ…これで……」
もうバンドは…やらない。頑張った結果があれなら、私がどれだけ頑張っても上手くいかないに決まってる。皆も四条君も、あれから私がバンドをやめるのを止めに来ていないし、もう新しいボーカルを探しているに決まってる。
『何をするかはあなたの問題でしょう?まわりに理由を求めるのは間違っているわ』
不意に学校を出る前に会った八潮さんに言われた言葉を思い出した。私はその言葉に、何も言い返せなかった。自分からやりたくないと出て行きながら、誰かが止めてくれる、必要としてくれると保険をかけているからだ。
公園内のベンチに座り、握り締めていたポスターを広げる。これを書いた時は、周りなんて関係なく直ぐにでもバンドをやりたいと思っていたのにな…。
『先が見えないものなら、見切りをつけることは正しいわ』
八潮さんの言う通り、もうバンドとは見切りをつけよう。今の自分にはもう必要ない。そう決めてポスターを破こうとする────その時だった。
「み、見つけた……!」
聞き馴染みのある声が聞こえてきた。ここで彼と出会うと思わなかった私は、思わず手の動きを止めて声のした方向を向く。
そこには呼吸を整えながら、私を見る四条君の姿があった。
次回の更新時期は完全に未定です。