隣のお嬢様はネガティブガール   作:星メガネ

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お久し振りです。星メガネです。
2026年最初の更新ですが、今回は大分短めです。

そして本日2/19はましろちゃんの誕生日!おめでとう!!


第22話 夢を見るのはやめたくない

──響也side──

 

 

「み、見つけた…」

 

 

 走った。めっちゃくちゃ走った。俺って意外と短距離走得意なんじゃね?そんな場違いな事を考えながらも、目の前で戸惑っている倉田から一つ間を空けて座る。

 

 沈黙が流れる。やべぇ…話したい事はあんのにどう切り出せばいいのか分かんねぇ。あれこれ迷っていると、倉田の方から話しかけてきた。

 

 

「…四条君。ど、どうしてここに…?」

 

「お前とほぼ同じ理由だよ。みんなと二手に分かれて、バンド勧誘のポスターを回収してたんだ。昨日の事があった後に人が来られてもって感じだからな」

 

「……そ、そっか…」

 

「で広町さんと『CiRCLE』行ったらお前と話して直ぐのポピパさんがいて、今に至るわけだ」

 

 

 俺の回答に倉田は黙りこくってしまった。けどここで話を終わらせたらダメだ。俺の方から、更に一歩踏み込め!

 

 

「その…昨日は悪かったな。カッとなって、強く言い過ぎちまった」

 

「……」

 

「けどあの時俺が言ったことは、間違ってないって今も思う。あれは、これからずっと一緒にバンドをやるかもしれない仲間に言っていい言葉じゃない」

 

 

 これは本当にそう思う。自分のミスを他人のせいにするのなんて絶対に間違ってる。まぁ桐ヶ谷お嬢もライブ前だってのに全く練習してなかったし、お互い様ではあるんだけども。

 

 

「無理強いするつもりはないけど、聞かせてくれ。倉田はもう、バンドはやりたくないか…?」

 

「私は…………」

 

 

 バンドと初めて出会った時のあの姿を知ってるからこそ、倉田にはまだやめてほしくない。憧れも友達も出来て、これからだって所で挫折してやめるのは絶対に後悔すると思うんだ。

 

 だがそれでも───

 

 

「……やらない。私は、もう…!」

 

 

 ───長い間を開けながらも首を横に振ったと思えば、彼女は逃げるように走り去ってしまった。

 

 

「待っ…!話はまだ…!」

 

 

 呼び止めようとしたところですでに遅く、倉田は公園を出て行ってしまった。かなり焦っていたのか、俺の前にはくしゃっと握り潰されたバンド勧誘のポスターが落ちていた。

 

 それを拾い上げ、広げる。そこにはマイクやギターなどの楽器やぬいぐるみの絵、そしてデカデカと「バンドメンバー募集中!」と書かれていた。

 

 

「(あいつ、答えるまでに大きな間があった。本当にやめるって気持ちにはなってない…のか?)」

 

 

 本当にやめるって決めてるなら、直ぐに答えられるはずだ。それに───

 

 

『これが、これがバンドなんだ…!』

 

 

 ───衝撃を受けて好きになった物を、そんな簡単に切り捨てられるはずない。

 

 俺はスマホを開いてLINEを起動。倉田とのトークルームを開き、一通のメッセージを送信した後に『CiRCLE』へと戻っていった。

 

 

────

 

 

 『CiRCLE』へ戻ってくるとポピパさんの姿はなく、スタッフの人も業務に戻っていた。まぁそりゃそうか。広町さんには申し訳無い事しちまったな…。

 

 

「広町さん、待たせちゃってごめん」

 

「ううん。大丈夫だよ~」

 

 

 帰りにジュースとかスイーツでも奢ろう。衝動的に動いてしまったとはいえ、女の子一人残して飛び出しちまったわけだからな。てか待って?これシチュだけ見れば俺とんでもないクズ野郎になってないか?よし、考えるのやめよう。

 

 

「しろちゃんには会えた?」

 

「……あぁ。会えはしたんだけど、仲直りまではいかなかった。それにバンドもやりたくないってさ…」

 

「…そっか…」

 

「けど、そのやりたくないって言葉が出るまでに間があったんだ。だから、まだ引き留めることも出来ると思う。多分」

 

 

 100%勘だから何にも頼りにならないけども。あいつ、俺がLINEで送ったメッセージ気づいてっかな。

 

 

「あ、そうだ。四条君」

 

「どした?」

 

「近いうちに『CiRCLE』でライブがあるんだって。ほら!」

 

「第2回ガールズバンドパーティ…」

 

 

 今週末、それに出演バンドはこの前のライブと同じ面子だ。さっきポピパさんが『CiRCLE』にいたのはそういう事だったのか。

 

 

「みんなと、行きたいな…」

 

「…!広町さん…」

 

 

 そっか。広町さんはこの前のライブの時はまだメンバーじゃなかったもんな。それにライブはずっと出る側だったし、まだ見る側になった事がないんだ。

 

 

「…そうだな。そのためにも、倉田を説得しないと」

 

「…うん。私もしろちゃんと話してみるよ」

 

「あぁ。今日の事、二葉と桐ヶ谷お嬢にも話しておかないとな」

 

 

 待ってろよ。倉田。送ったメッセージの通り、みんなお前のこと諦めてないからな。

 

 

───side三人称───

 

 

 時は少し遡る。ましろは公園を離れた後、響也に追いつかれないよう小走りで自宅へと帰っていた。平静を装って母親と話し、やる事をささっと終えて自分の部屋へ。鞄を机に置き、何も考えずにベッドへ飛び込んだ。

 

 

「(今は、何も考えたくないな…)」

 

 

 そう思ってスマホを起動すると、真っ先に視界に入ってきたのはLINEの通知。響也から一通のメッセージが届いており、今だけは彼から連絡がきたという事実に憂鬱さを隠せなかった。

 

 彼が今までしてくれた努力を否定するような、酷い事を言った。それでも追いかけてきてくれた彼の謝罪に、私は何も返す事が出来なかった。

 

 

 それなのに───

 

 

『俺もあいつ等もまだ諦めてないからな

 このバンドのボーカルは、お前がいいんだ』

 

 

 ───まだ皆は、四条君は、私に手を差し伸べてくれるの?

 

 

 眩しい。どれだけ振り払っても、遮っても、さし続ける光が。背を向けているましろを、振り向かせる程に。

 

 

「(私は……)」

 

 

 一度諦めようと止まってしまっていた足が、ほんの微かにまた動き出す。自分にしかない輝きを求めて。




次回かその次でましろちゃんがバンド復帰かな…?
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