隣のお嬢様はネガティブガール   作:星メガネ

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最近新しいBluetoothキーボードを購入しまして、モチベーションの上昇を感じ始めている星メガネです。
もしかしたら投稿ペースが上がるかも?これまでから信憑性はあまりにもないですけど…

あと前編と言いつつ、今回も短めです。ちょうど切りが良かったので。


第23話 “遊び”が“本気”に変わる瞬間(前編)

──side響也──

 

 

 倉田とのいざこざがあった翌日。相変わらず倉田とは話せていないが、心做しか昨日よりも表情が明るいような気がしなくもない。何かしら心境の変化があったのかもしれないな。けれど、俺からそれを聞くつもりはない。あくまでも倉田から諸々話してくれるのを待ちたい。

 

 そんなこんなで今は昼休み。俺は大翔と購買で飯を食べている。食べてんのはいつもののり弁。いつだってこれが一番美味い。どうでもいいなこの情報。

 

 

「にしても、お前もよくやるよなぁ」

 

「……何が?」

 

「バンドのサポートだよ。倉田さんがいない今、お前タダ働きしてるようなもんだぞ?」

 

 

 それは確かにそうだ。このバンドは倉田から始まってる。俺が今まで協力していたのも、彼女の“特別なもの”探しの延長線上だからだ。きっかけの倉田がいない今、俺が協力し続ける理由も大きくあるわけじゃない。

 

 それでも、あいつ等はまだ諦めてない。倉田を入れてまた4人でバンドをやる事を。なら俺だけ船を降りるわけにはいかないだろ?

 

 

「そうだな。けど、最後までやってみるさ。それでも倉田が戻ってこなかったら諦める」

 

 

 幸い、希望は見え始めている。本当微かにだけど。後はこれからの説得次第だ。と言いつつも、今日も倉田はあれよこれよと直ぐにいなくなっちゃったんだけどな。広町さんが逃げられちゃったと嘆いていたのを思い出す。

 

 

「…お前、やっぱ倉田のこと好きなのか?」

 

「おい待て、何でそうなんだよ」

 

「そりゃ、一人のためにここまで頑張ってるとな」

 

 

 んまぁ友達としては好きだが、恋愛としては…どうなんだろうな。正直まだ分からない。今はどっかそこらへんに置いておこう。

 

 ……ん?ズボンのポケットに入れている(隠してる)スマホが振動してる。周りにバレないように確認すると、そこには一通のメッセージ。

 

 

「(……山吹先輩からだ)」

 

『今日バイトが終わった後、少しいいかな

 昨日の事で話があって』

 

「(昨日の事…)」

 

 

 十中八九倉田の件だとみていいだろう。それ以外に何も思い浮かぶことないし。

 

 俺は一言メッセージを返して直ぐにスマホをポケットに戻した。バレちゃまずいからな。けど絶対俺等以外にもスマホ触ってる人達はいる(決めつけ)

 

 

「どした?」

 

「ちょっとバイト先に連絡返してた」

 

「なるほどな。しっかしお前も人のこと言えねぇよな。ポピパのドラマーの家族が営んでるお店でバイトなんて」

 

「うっせ。てか俺には邪な考えなんて一切ねぇっつうの」

 

「そのお前とは違って、みたいな言い方やめろ。俺だってないわ」

 

 

 本当か〜?まぁそう言った噂も聞かないし、今も大翔が干されてないってことはそういう事だろう。

 

 俺等はその後もくだらねぇ話をしながら、昼休みを過ごした。午後の授業面倒くせぇ…。はやく放課後にならないかな。やまぶきベーカリーでパンの匂いに包まれたいぜ。

 

 

──────

 

 

「お疲れ様でーす」

 

「あぁ。お疲れ様。そのパンも頼んだよ」

 

「お任せください。しっかり配ってきますよ」

 

 

 バイト終〜わり。なんだが、先輩は帰ってこなかった。どうやらライブに向けての準備や練習が長引いているようで、直接ライブハウスに来てほしいとのこと。亘史さんもそれを伝えられていたみたいで、折角だから皆に渡してあげてほしいとパンの入った袋を3つ手渡された。俺の分も入れてくれたみたいで、喜んでこのデリバリーを引き受けたわけだ。

 

 『CiRCLE』のライブは今週末、きっと練習も仕上げに入ってくる頃だろう。そりゃ帰ってくるのが遅れるのにも納得がいく。

 

 

「(かっけぇな…。“全力”で打ち込めるものがあるのは…)」

 

 

 自分のための“遊び”なんかじゃない。自分のためでもあり、仲間のため、協力してくれている皆のため、観に来てくれる観客のため、それ等全てに“本気”をぶつけているんだ。

 

 きっとこれは、倉田の言う“特別なもの”にも共通していると思う。月ノ森の内部生にも通ずるものがあるかもしれない。

 

 

「(なんて考えてたら『CiRCLE』着いたな…)」

 

 

 思ってたよりも早く着いたな。確か店前のカフェテリアにいるってLINEにはあったんだが…。全員ではなくともポピパの面々と一緒にいるんだろうか。そう考えると緊張してくる。

 

 

「四条君、こっちこっち〜」

 

「え、あ、お疲れ様です」

 

 

 そんなことはなかった。俺は山吹先輩の座っているテーブルに腰掛け、亘史さんから受け取ったパンの入った3つの袋を置く。それだけで山吹先輩は事情を察したようだ。

 

 

「これ、ひょっとして父さんから…?」

 

「そうです。業務中に用意していたみたいで…」

 

「やっぱり…。はぁ…こんなに必要ないのに」

 

「大丈夫ですよ。自分もいくつか持って帰るつもりなので。他は皆さんに配ってあげてください」

 

 

 先輩のこの反応…さては亘史さん、初めてじゃないな?もしかしなくても亘史さんって親b…ゲフンゲフン。ここから先はやめておこう。きっとバンドで頑張っている家族やその友達を労っているだけだろう。うん、そうに違いない。

 

 

「それで先輩、昨日の件について話があるって…」

 

「あー、実はそれがね…。もう解決しちゃったんだ」

 

「…………え?」

 

 

 その後、俺は先輩から元々話すはずだった内容と、今日『CiRCLE』で起こった事を話してもらった。

 

 最初はポピパのボーカルである戸山香澄さんがもう一度倉田と話してみたいと言ったことがきっかけで、俺にどうすればいいか聞くつもりだったらしい。けど今日また『CiRCLE』に倉田が訪れた事で、その問題が解決したとの事。そして今に至るわけだ。

 

 

「あいつ、またここに来てたのか……」

 

「うん。それに香澄が言うには、昨日よりも明るくなった気がするって」

 

「なるほど…」

 

 

 戸山先輩も俺と同じことを思ったようだ。てことはやっぱり、倉田には何か心境の変化があったのか?学校内での行動は変わってないけど、俺達と話すのにまだ心の準備が出来てないのかもな。

 

 

「(てことは、現状は待つのが正解か)」

 

「ごめんね。わざわざ来てもらったのに。練習に夢中でLINEを送れなくて」

 

「全然大丈夫ですよ。過程はどうあれ、倉田と話せたみたいで良かったです」

 

 

 それに連絡があったら、こうして亘史さんのパンも食べれなかったわけだからな。やまぶきベーカリーのパンは本当に美味しい。いや贔屓じゃなくて。

 

 色々と話していたら、流石の『CiRCLE』も少しずつ閉店作業に入っていた。もう大分夜遅いもんな。ライブで見覚えのある人達が次々と店舗から出て来ている。これは俺も早めに動かないと。俺がパン全部持って帰る事になりかねん。

 

 

「私も手伝うよ。四条君は自分の分も残しておいてね」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 

 そう言って先輩は3つのうちの2つを持って『CiRCLE』の中へと入っていった。多分まだ店内にいるポピパのメンバーの元へと向かったんだろうけど、先輩の事だ。この場にあまり知り合いがいない俺の事を気遣ってくれているんだろう。

 

 だから、せめてこの残り一つは自分でどうにかしないとな。四条響也、勇気を出せ。




四条君が『CiRCLE』で出張やまぶきベーカリーをする様子は、今後番外編で投稿予定です(いつになるかは未定)

後編は3/31に投稿予定です。宜しくお願いします。
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