有翼のリヴァイアサン   作:ヤン・デ・レェ

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第十四話 前線慰撫

第十四話 前線慰撫

 

 

ーー緊急。西の国境地帯に異変あり。南方前線は平穏なりしかーー

 

簡略ながらも大きな意味をもつこれらの情報が数分で通達されたことは極めて有益かつ驚くべき事実である。魔導電線通信恐るべし。

 

昨年度末の冬季より西の国境地帯には総勢二十万余りの森林帝国の軍勢が集結していた。国防軍の常備軍が東西南北と国都経済圏を併せて約三十万弱であることを考えれば、常備軍の約半分が集中していることになる。しかし、この数値も三十万のうち約半数は平時に屯田兵として各地での練兵と土木作業に勤しんでいることを考慮するとかなり危うい偏りであると見ることもできる。恐らく一部は国都圏の四方を守る四大城塞宮殿に詰めていた即応の近衛軍を動員したのだろう。どちらにしろ、今最も加熱する恐れがあるのは西のイスパナス公国にほかならなかった。

 

西方諸国連合からの最後通牒は未だ届いておらず、突然に先端が開かれたという報告は受けていない。

 

どれだけ遅くとも三十分ほどで地下に埋め込まれた魔導電信線を通じて魔導電報が届くはずである。

 

万に一つ、既に西部が敵の手に落ちていて、なおかつ占領を受けていたと想定しても、地下の魔導電信線を全て掘り起こして遮断することは物理的に不可能である。

 

東西南北の公都から国都テトラリアまで、全長数千キロ、地下十メートルに埋められた直径三十センチの魔道電信線を全て掘り起こすなど…到底遠征軍が片手間に出来ることではない。

 

 

前線で防衛を担っている南方マケドナからの助っ人軍団長アルザーヒル・バイバルトからもたらされた緊急報告の扱いは中央でも慎重にならざるを得なかった。国防総監スキピオ閣下主催で緊急会議が開かれたため私…国防省所属の総兵官職…呂文桓も協議に参加した。総監閣下からの提案で現在の二十万以上の派兵計画は凍結となった。その代替計画として国防軍の南部、北部、東部方面軍に対して各公国民の避難指示及び主要城塞と地下軍用路を活用しての戦線構築と国都周辺への各種備蓄を急足で進めさせることに決まった。

 

会議の三日後。前線からより詳細な報告が来る前に、私の次男呂文白から話が上がってきた。白曰く、現在南方では流通に作為的な偏りが見て取れるらしい。あからさまな兵糧の大規模輸入を南方マネルワが仕掛けてきた時は財務省と外務省が主導したことで大事に至らなかった。

 

流通が何らかの瑕疵を負うとき、それは戦線維持に重大な困難が生じる可能性が浮上すると言うことだ。それは、私に忘れられない記憶を想起させる。

 

あれは大陸の北東に広がる大草原でのことだった。我が軍は東部森林外縁における度重なる異民族による略奪行為への対処を命じられ騎兵を主体とした遊牧民の軍団との長期戦闘を行った。機動戦を広範囲に展開する遊牧民の攻勢は苛烈であり、巧妙であった。守勢に回らざるを得ない私たちは後手に回り、補給線は乱され…攻めきれずに退却を余儀なくされた。

 

結局、中央から応援の近衛軍三万を率いて来られた防衛戦の大家たる猛珙将軍による防衛線構築によって略奪被害を物理的に激減させることで一旦の終結となった。あの時の撤退戦での経験とその克服は私の生涯の課題となった。

 

そして、その中でも最も重要視すべきことこそが流通から敵の動きと時勢を読み取ることである。補給線の維持の為の知識を学ぶことから始まり、我々軍人が勇躍する為には流通こそが不可欠な要因であることを、他ならぬ二番目の息子から学ぶことになろうとは。

 

私は迷うことなく総監に上申書を提出し、前線への派遣を志願した。

 

果たして、私の志願は受理された。

 

国防総監スキピオ大将軍閣下からの御下命に従い、西方前線の不安要素解消の為に三千名の国防省直下軍を率いて現在進行中のイスパナス公国への補給線の維持と警備、南部へ流れる物資を抜き打ちで監査する任務に服することとなった。

 

辞令が出て間も無く、呂文桓は国都郊外西にある国防軍駐屯地へと向かい、今回任務を共にする三千名の兵卒を前に出立式を行っていた。

 

「本任務の要項は第一に補給線の警備である!兵站こそは軍隊の血管であり、物資は血液である!!第二には集積した物資の監査となる!総改めではないにしろ、我々の相手は南方へ向けて送られるはずだった追加品目のほぼ全てだ!!山のような物資となることを覚悟せよ!!」

 

手を後ろに回して低い声を張り演説をする呂文桓の姿は白森族(ライトエルフ)の中でも精悍な顔立ちである。目は鋭く、その長い耳も心なしか鋭く見える。白髪混じりの金髪は鈍く輝いている。後ろ手に固く組まれた両手には実戦でのし上がることでのみ勝ち取れる積年の古傷が目立つ。

 

「本任務の要項は以上!!熱い忠義を胸に!冷徹に対処せよ!!解散!!」

 

呂文桓の演説は事務連絡のようでいて熱意がある。短く、情熱的に。硬派だが熱い彼の性質は兵士からは好感触を得られた。

 

「一時間後に出立!!急ぎ用意を済ませっ……む?」

 

早々に出立準備へと移ろうかという時、駐屯地へ入ってくるただならぬ雰囲気の一団。そして先んじて呂文桓へと近寄ってくる驃騎が一騎。

 

「その方が指揮官であらせられるか!!」

 

ドガりと土埃を立てつつ、南赤馬の脚を最小限の手綱捌きで止めた騎兵は馬から華麗に降りるとそのまま頭を軽く下げつつ、そう桓に声をかけた。

 

「如何にもっ。私が右に見える三千卒の軍権を賜った呂文桓である。して、何用であるか?追令か?」

 

身のこなしからして精兵。乗っていた馬も精鋭騎兵が騎乗を許されるような艶茶の毛足で恵まれた体格の南赤馬だ。桓は気を引き締めて応答した。

 

「これは軍団長閣下!!失礼を緊急故許されよ!!」

 

「構わぬ。それで、その緊急の件とは今駐屯地に入営している軍団に関係することなのか?西部への増援は停止したはずだが?何か変化でも?」

 

「左様!緊急の事の仔細についてはこちらを!!」

 

ずい!と騎兵から差し出されたのは紫金の飾り布で丁寧に包まれた円柱状の命令書であった。封印されており、重要案件でなおかつ機密がこの中に封されていると分かった。桓は布を別けると出てきた蝋どめされた黒革の文書筒の封を切り中身を改めた。

 

「こ、これは!」

 

偽造を防ぐために特定の波長を編み込まれた上質の魔導紙には玉璽の印が刻まれていた。

 

これが示すもの、これ即ち神聖皇帝テトラからの勅令である。

 

常に冷静な桓をして瞠目せざるを得ない驚き。読み進めるうちに彼の感情は歓喜と、そして純粋な疑問へと変わった。

 

 

ーーーーー

 

勅令文

 

神聖皇帝テトラ・バルカン・ドラコニウス・ノトヘルム=ノトガーミュラー・バシレウス陛下は軍民慰撫のために行幸を行われる。

 

西方第一の都市たる公都ザマスと国都テトラリア往復における陛下の玉体守護の大任を授けるものは以下の二名とする。

 

1:臨時監査令・師団長総兵官・呂文桓とその麾下国防省直下三千卒

 

2:ツェーザル特令官家・直下兵隊長・オドアラクとその麾下二千卒

 

以上の者は各自の職務を満身を以て完遂せよ。

 

ーーーーー

 

桓の記憶が正しければ陛下の御真影を拝見したのは戴冠式以来一度も無かった。つまりは陛下は一度として国城マリウス・マグナから出られたことがないはずである。ましてや国都の外など…。困惑こそしないが疑問である。"あの"ツェーザル執政総監が陛下の御身に大事が起こるなど例え小指の爪先ほども許容するとは想像できない。剰え、今日明日にも大陸最大の火鍋と化すやもわからぬ西の前線へと陛下を送ろうか?桓は甚だ疑問であった。

 

「……最高機密扱いでありますれば、前線到着までの街々での情報封鎖などをお願いしたく。」

 

耳に口を寄せられて意識を取り戻した桓。騎兵の話はなるほどごもっとも。だが、疑問は拭いきれないでいた。

 

「……陛下が望まれたのか?」

 

最重要はそこである。桓の父の代に建てられ、桓が生まれ育ったこの国はその生まれた瞬間から陛下の御意志の下で繁栄を許されてきた。疑問はさておき今ここで最も大切なことは森林帝国そのものである唯一無二の陛下が望まれたのか、或いは否かそれだけである。

 

「…私はなんとも。しかし、先程封書を頂戴した際は穏やかに微笑んでおられ、初めて見るものが多いと喜びあそばされておられたご様子。イスパナス軍民の慰撫は陛下の御仕事初めとあいなられる予定でござる。」

 

騎兵の歯切れは悪かった。しかし、陛下は喜ばれていたらしいという。桓は一度追及をやめ、この大任を全うすることに全力を注ごうと思考を切り替えた。

 

「なるほど。謹んで御受け致す。」

 

恭しく。改めて奉戴の礼を紫金絹布へと捧げる。未だ陛下の御名の下に勅令が発されたことは一度もなかった。これが初めてとなる。誰も経験したことはなかったがしかし、誰もが望んでいた最高の栄誉。その際に行うべき作法は国ができた次の年には法令化され、市井にも作法や儀礼についてまとめられた百科事典によって広まった。軍民問わず誰もが一度は夢想したその名誉を自分は噛み締めている。桓は少しの目が潤んだ。いつぞや夢見たことが叶ったのだ。勅令授受により臣下は紫金の絹布をその名誉の証としてお預かりする。

 

大任完遂ののち、その絹布は臣下へと正式に下賜される。国家勲章を越える最高の栄誉の証だ。桓は一度目を瞑り深呼吸してから騎兵へと改まった。

 

「では。私はこれにて!出立の時刻は先程師団長殿が宣言された一時間後でかまいませぬ!」

 

覚悟の程を確認したからか馬に跨ると鞭を振りかぶった。

 

「了解した!!陛下には最初の街での逗留準備が終わり次第ご挨拶へ向かう故、何卒お伝え下され!!」

 

去る背中に向けていかにも将らしい豪声で言伝を頼むと桓もまた自らの用意を済ませるために背を向けた。

 

 

駐屯地の無骨な風景に溶け込む形で設営された巨大な組み立て式天幕。ユリアナが育てた黒備の精鋭二千卒の防御円陣の中心に小御所として用意されたそこにこの国の皇帝テトラはいた。

 

場違いなフカフカのカウチは落ち着いた色合いだが、出来立ての紅茶と焼き菓子が並べられている組み立て式の軍用机は艶消しの黒の塗装が剥げた鉄の四足が律儀に光を反射した。ミスマッチなそれらは軍の陣地にあって不自然でならない幕下の風景を演出していた。

 

いつにも増してかっちりした戦装束に身を包んだテクナイに給仕されながら、テトラは目の前に跪く男の宣誓に耳を傾けていた。

 

「陛下におかれましては今日のご機嫌麗しく。矮小の身でありながら大任を仰せ仕りました私オドアラク。全身全霊を持って玉体の守護に努めると誓いまする。」

 

禿頭に剣の鞘まで全身黒備えの鎧を着込んだオドアラクは兜を左脇に置き跪いていた。兜から垂れる毛飾りだけは真っ白だからよく目立つ。

 

「うん。よろしく頼むぞ。」

 

テトラはその慇懃な姿に驚きつつ、ここまでの経過に些か困惑していた。

 

「(それにしても…母さんは極端すぎる気がするな…。昨日言ったばかりなのにもう勅令文の準備までするなんて…。)」

 

自分の国を見てみたい。三日前にそう言ったのはテトラ自身だ。それを聞いたユリアナは「畏まりました」とは言ってくれたが悩んでいた様子だった。それが、今日の朝になっていきなりこのオドアラクという男がユリアナの代官として宮廷府に参上したのだ。ちょうどユリアナは先日西方から齎された南方不安の案件で珍しく朝から忙しくしていて不在で、テクナイと一緒に説明を受けたのだ。

 

「…オドアラク隊長、話は以上であるか?陛下はこれより諸所の支度をせねばならぬ故、要件が終われば退出願おう。」

 

思考に没入しかけたところ冷たい鉄のような硬い声が目の前のハゲ頭に刺さった。

 

「ははは…テクナイ大将軍閣下もなかなかに手厳しい…。陛下の御尊顔を拝謁する機会など中々にある者ではありません故に今しばらくと思っていましたが…。」

 

頭をポリポリとかいてみせるオドアラクの表情はなんとも言えない。テトラはふと背中にテクナイの柔らかい手の感触を覚え、彼女の顔を見上げた。

 

「話が終われば退出するべし。陛下はお忙しいのだ。慣れぬ政務にお疲れになる前に、少しでも陛下の心労を軽減するために貴様の職務を全うせよ。」

 

ビシリと毒を投げつける硬質な声からは分からなかったが、テクナイの表情は冷めているというより物憂げなものだった。

 

「はは!それでは私は失礼いたします!ご用件がありましたら近くの兵官にお伝えください。私共は他ならぬ陛下とツェーザル総監より賜りましたこの黒備の甲冑に誓って万事全う致しますぞ。」

 

それでは、と幕を出ていったオドアラク。テトラは物憂げなテクナイに、その悩ましげな表情の根を尋ねた。

 

「セキウはオドアラクが嫌いなの?」

 

キョトンとした表情。テトラの疑問にテクナイは珍しい八の字眉でこたえた。

 

「えぇ…嫌いと言いますか。何となく気にかかるのです。」

 

「何が?」

 

「些細なことですが、今回の前線慰撫は一朝一夕で用意できる規模ではないなと思いまして。それにしてはあまりにも早かったので少し不思議でおりました。」

 

テクナイの語ったのはテトラも感じていたことだった。

 

「うん。それは僕もだよ。」

 

首肯したテトラの頭を一撫で。テクナイは話を続けた。

 

「単に疑問だけならば問題ありませんが。先程のオドアラクという男。人間の男を、わざわざ人間嫌いのユリアナ様が御自身の直下軍の長に任用する理由がわからないのです。」

 

テトラは思い出す。いちいち仕草が芝居くさかつた先程まで目の前にいた男は確かに人間である。人間の国との戦争を前にこいつをチョイスしたユリアナに対してテトラは素直に驚いていた。確かに、イスパナスの公都ザマスでの閲兵式典の準備に取り掛かってくれている執政府の次監・オクタウィナスも人間だ。しかし、彼はここで生まれ育った人間らしいからまだしも、先程の男は南方から流れてきた腕利きの傭兵から身を立てたらしい。

 

「セキウの心配は確かだね。でも、あの母さんがオドアラクが何か企んだとして、それを許すとは思えないよ。」

 

テトラは自分の世界一頼もしい実母以上の義母を頭に浮かべた。とてもネズミ一匹取り逃すようには思えない。

 

「…はい。陛下のおっしゃる通りかと。私の記憶が正しければユリアナ様の私兵体長の名前は確かにオドアラクで間違いありません。ですが、それが人間であったとは知らずにいたために、今回は警戒を強めてしまいました…。ご心配をおかけして申し訳ありません。」

 

テクナイは安堵と無念の表情を浮かべて頭を下げた。姉のような存在にいちいち頭を下げないでほしいとも思うテトラだが、その生来の王器とも言えるものは彼女達忠臣を自認する者の気持ちを汲む度量もあったため、素直に謝罪を受け取った。

 

「ううん。こちらこそ心配してくれてありがとう。セキウもお茶目さんなのかもね。」

 

「それに今回は急だったからね。母さんにも聞いたけど反応は特に不自然じゃなかったし、どちらかというと心配だけど子離れしなくちゃって感じだったよ。」

 

オドアラクへの疑念はテクナイの中にまだ残っていることは彼女の服装からもわかる。分厚い革の鞘に納められた反りのある革巻き柄の双剣を今朝から片時も離さない彼女が懸念したことが起きなければ良いと、そう思いつつテトラはニコニコと今朝見送りにきたユリアナのことを思い出していた。

 

「ユリアナ様は恐らく子離れできないかと。今回は我慢に我慢を重ねられたのでしょう。」

 

「ふふふ!そうだね。」

 

テクナイの表情もテトラの楽しそうな様子に綻んだ。テトラはなんだかんだと疑問を抱きつつ、それを全てが生まれて初めてばかりの自分の無知に理由を求めた。それは間違いではない。彼は浮かれていたし、それを補おうと思ったが故にテクナイは頼まれずとも完全武装で彼の小さな体を片時も離れず守っている。

 

テトラは国城から初めて出た瞬間から、自身が無知であることを嫌と言うほど感じていた。

 

見たこともない賑やかな街並みは彼が見る限りでも区画整備の上で構築されたから伝わるとても合理的な美しさがあった。

 

国城の自室から国城の門、国城の門から国都の門へ、国都の門から郊外の駐屯地まで。

 

たったのそれだけの距離でもテトラには新鮮なものばかりが目に映った。出店は勿論、とても活発な経済活動が行われる街と、そこに暮らす人々の姿は彼にそれまで絵に描いた餅に過ぎなかった王としての自覚を強くもたらした。良くも悪くも敏感にそれらを肌から感じたテトラはそれまでの自分が、どこに生まれてどこで育ってきたのかも知らずにいたことを痛感させられたのだ。

 

生まれて初めて外から見上げる国城は彼がそれまで想像していた自身の住まいとは真の趣を異にしていたし、国都に住む人々が多様なことも初めて理解した。彼が想像していた以上に彼が治めなければならないバルカン=テトラ神聖帝国とは多民族多種族の国家だった。国都一つでそれが理解できたのだ。

 

テクナイの授業で学んで獣人(ランドノーム)にも貴種や魔人(マギア)、氏族という枝分かれがあり、人間に獣の耳と尻尾が生えているいかにもジャパンモノカルチャー的な獣人もいれば、獣が服を着て二足歩行もできるようになったような見た目の逆にいかにも獣の人みたいな姿の者もいる。彼らは一括りに獣人(ランドノーム)の血族に変わりなく、魔導を道具なしで行使できる魔人(マギア)が人間に似た外見をしていることを除けば差らしい差もなく、差別など常識外のことだと言うのだ。テトラにはそれが良い意味での大雑把さだと感じた。

 

地方への慰撫の旅は戦火を前にして大胆にも行われようとしている。テトラはまだ見ぬ己の国に好奇心を強め、彼に侍るテクナイは静かに眼光を鋭くしていた。

 

二人が穏やかな時間を過ごすこと一時間。あっという間に出立の時間が来た。

 

出立前にこれ見よがしにユリアナからの信任状なるものをテトラに提出しに来たオドアラクは物資監査を兼務した呂文桓と共に進路を西へ、五千卒を率いて皇帝による軍民慰撫の旅への出立を号令した。

 

 

 

 

 

 

 

 

この時、勅令文と信任状に宿る玉璽印から紫金の魔導光が放たれていないことに気づいた者は誰もいなかった。

 


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