有翼のリヴァイアサン   作:ヤン・デ・レェ

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第十八話 宣戦布告

第十八話 宣戦布告

 

 

三日前に国都テトラリア郊外の国防軍駐屯地から出立した五千名の前線慰問団の進行は順調だった。すでに旅程は三分の二を終え、国都より遠く西のイスパナス公国公都ザマスの手前の街にたどり着いていた。日程三日目の晩、テトラとテクナイは同じ部屋で到着予定日の明日について話し合っていた。

 

「ふぅ〜今日も終わったね。」

 

宿泊のために用意された寝室は煉瓦建ての頑固な外容とは裏腹に柱や床は木製独特の温かみが感じられ壁の白漆喰には清潔感があった。公都近郊にある小さな街での一泊。一番の貴賓室をあてがわれたテトラはベッドへと飛び込んだ。日頃から使われているのか埃っぽくない。

 

「お疲れ様です、陛下。いよいよ明日にはザマスへと入城する予定となっております。出発は午前九時頃ですので、明日は少し早起きになりますね。朝食は車の中で召し上がるのが良いかと。あと、うつ伏せでは呼吸が苦しくなってしまいますよ?」

 

うつ伏せになったテトラは力を抜いていたもののテクナイは明日の予定を告げつついとも簡単に彼の体を仰向けに直した。

 

「そうだね。明日はザマスに入るんだね…少し、楽しみだな。」

 

コテンと仰向けで寝転んだテトラは気づいたら真上にあったテクナイの顔から自分が数瞬で膝枕の餌食になったのだと悟った。慣れたことなのでテトラは驚きつつも意外には思わない。自然な流れで話を続けた。

 

「ふふふ、それは何よりでございますね。」

 

撫でりこ撫でりこ役得を味わいつつテクナイはその赤瞳を細めてテトラに相槌を打つ。彼女はこの三日間、テトラが大いに世間への興味を強めているのを知っていた。

 

「うん。お城を出てみてよかったよ。僕は世間知らずだったってよくわかったし、お陰で知らないことを沢山見れた。この三日間で母さん達が創ってくれた国がどれだけ素敵な国なのか、まだまだ未熟な僕の目から見てもよくわかった気がするよ。」

 

少し真面目な顔でテトラはそういう。彼はのほほんとした顔立ちの、一見すると人間の子供だが、その実は森人(フォームレスト)に運命を魅せる不思議な人に非ざる男の子だ。外見は人間に見えても、その中身は全く違う。姿形が違うことが当然の価値観の中で生きてきた森人(フォームレスト)達にとっては彼が人間に見えることは髪の色が違う程度の違いに過ぎない。シンパシーとも言うべき独自の通念がそこにはあった。それはテトラから民やユリアナ達を見た時も同じだった。彼は強く運命を感知できるのだが、まだそれを使いこなせてはいない。

 

「陛下は勤勉でございますね。何より、楽しそうで良かった…ユリアナ様はさぞかし喜ばれることと思います!」

 

この三日間は特に問題もなく順調であった。テトラの成長は帝国にとって万金にも勝る大事であるから慰問計画は既にその成果を充分なものとしていると彼女は思っている。しかし、変わらず一つの懸念が頭を過っていた。

 

「テクナイは喜んでくれないの?眉がハの字だよ?」

 

顔が険しい。言外にそう伝えられてテクナイはハッとした。自身の腿の上に乗せた頭から純真な二つの輝きが向けられている。テクナイは隠し事も嘘をつくのも下手だ。

 

「顔に出てしまいましたか…まだまだ未熟ですね、私も。」

 

俯いてしまったテクナイは少し気まずそうな顔をしていた。

 

「陛下、私も陛下とこうして旅の趣を共に出来たことを心より喜び、そして誰より楽しんでおります。ただ、中々今の時分は平時とは言い難く。私は陛下を守るという使命がございます。それゆえ、護衛の者があまり明け透けに気を抜いていると思われてしまえば陛下の身を危険に晒してしまうかもと気が気ではないのですよ。未熟な私の落ち度です…申し訳ありません。」

 

テクナイはテトラに誰より忠実だ。隠し事は出来ないが、詳細を伝えることも気持ちが憚られた。

 

彼女はテトラを守護するために愛馬に跨り、完全武装の出立でこの行幸へと参加した。文字通り片時も離れずにテトラの側に侍る彼女の忠誠心は鋼よりも強靭なものだとわかるが、一方でテトラはトイレの中まで一緒に入られた時はどんな顔をすれば良いのかわからなくなった。

 

「…わかった。僕も少しハシャギすぎてたよ。ありがとう!セキウ。」

 

テトラは何を思ったかセキウの腿から飛び起きて彼女の頭に手を伸ばした。テトラは頭を撫でられることはあっても撫でたことはなかった。ふとした思いつきから彼はテクナイに望外の福音を与えた。

 

「〜!!陛下!こんな、勿体ない!!私は自分がしたいことをしているだけです!!」

 

テクナイはワタワタと手を動かした。テトラは笑った。

 

「へ、陛下こそ、いつも私の心を温めて下さったありがとうございます!!小さくて可愛らしい姿も最高です!!あと、立派な主君をもてて、その…私は家臣として、あ、あ、姉としてとても鼻が高いですよ!!」

 

「あ、ありがとう。」

 

テクナイは顔が赤くなっていた。キュンキュンしていたが、それ以上にちびっ子にヨシヨシされた照れもあったのだ。それにしても嘘がつけないあまりに人前では決して言わないことまで言ってしまっていた。テトラは可愛らしいという発言に少し凹んだ。自分がチビだとは理解している彼も流石に人から言われると応えたのだ。

 

「さ!明日は早起きですから今日はもう寝ましょう!!」

 

テクナイは布団をかぶってからも暫くデレていたが、テトラは「小さい」発言の傷から安らかに眠りについた。目の端から滴が伝ったのは見なかったことにするのが優しさである。結論として、翌朝テトラは滅法可愛いちびっ子発言が尾を引いて見事に寝坊し、テクナイに負ぶわれて車へ乗り込んだ。

 

 

テトラの寝坊はさておき五千の隊列は些かの停滞を見せていた。

 

ザマスの手前半日の地点で一千名が物資監査のために呂文桓の副官に率いられて南方へと向かい、ツェーザル家の私兵隊長オドアラクが新たに一千名を北のソヴィア公国の優秀な冒険者と傭兵で埋めることを進言したのだ。これに対して副官である呂文桓は反対した。結果としてテトラを前にしての御前会議が半ば無理やりに開かれることになった。

 

森林の各地にある森林や丘陵部をそのままに構築された都市。それらに住むなら防衛能力の高さや魔導技術の発展により快適な居住空間が演出できるために不便はないからまだしも、大所帯がそれらを行き来するのは甚だ困難を極める。そのために、その国土のほぼ八割以上を森林に満たされたバルカン=テトラ神聖帝国では宮廷府森林省が統括する森林庁により国土の測量と森林の計画的開鑿が行われている。これは過不足のない物資の利用と国土の保全管理、また兵站や備蓄に係る機密までもを扱う重要な国家業務であり、道路整備もまた森林庁の重要な仕事の一である。

 

帝国の都市は基本的に森林庁により城塞化される。自然の中に、というよりも自然そのものを城塞に作り替える匠の技だ。道路は敵の進軍を阻みつつも味方の配備と兵站を円滑に助けるものでなくてはならない。結果的に地下の軍用路を除けば地上の都市と都市を繋ぐ幅二十メートルほどの道路のみが唯一の国道という扱いとなる。都市を中心に十から二十の街や村がその外縁を埋めそれぞれの気候や土地柄に合った農作物の栽培などで糧を得たり日雇いの仕事でお小遣いを稼ぎその晩に飲む少し上品な酒を買ったりする。軍武官ではない彼らに軍務権はない。戦時となれば彼らは一路国都防衛圏へと避難する。もぬけの殻となった町村には村人達の代わりに軍人が入り、派遣された国防軍がその特色を存分に生かして瞬く間に前線補給地や簡易陣地へと作り替える。

 

こうして平時に都市を中心とする経済圏は、戦時体制移行命令が発令され次第都市を中心とした大規模防衛基地へと変貌を遂げる。

 

「つまり私が言いたいことはこうだ。平時において十大主要都市一つに当たり一軍管区、即応含まず常ならば五千名が詰める都市を黙然としているのにどうしてわざわざ所在もわからぬ連中を陛下の玉体守護の勅任を許さなければならぬのか私には甚だ疑問だと言うことだ。」

 

ドン!冷静な呂文桓にしては珍しい。机に強かに拳が叩きつけられた音は急で組み立てたせいで隙間風が何処からか入り込む陣幕でも逃げることなくよく響いた。腰を上げて前傾姿勢になって机を挟んで向かいにいるオドアラクを睨む呂文桓は見たこともないくらいに怒っている。

 

「ましてや我々が向かっているのは公都ザマスだ。公都には三万の衛戍軍が配備されている。練度も十二分だ。そんなに一千名も増援が必要だと言うならば衛戍軍から引き抜かせて貰えばいい。他ならぬ陛下の御身を守るためなのだ。文句は言うまい。」

 

言いたいことは言ったと今度こそ折りたたみ式の椅子に座り直した呂文桓は荒く鼻息を吐き出した。

 

「まぁまぁ、そう怒らずに聞いてくだされ。陛下の御身を守るためには実戦経験が豊富な傭兵などの方がいざという時にはお力になれると私は愚行しておりますれば、公都の衛戍軍は確かに精強でありましょうが、かと言って奇襲などに即座に対処したと言う実績はございません。今回は万に一つもあってはなりません。寝首をかかれることもおそろしいですがこのような道で立ち往生もできません。残りの旅程を完遂するためには最寄りの町に寄り、最低一千名の増員をすべきです。」

 

三日前に出立して以来、どことなくぎこちない二人。テトラは机の影の見えないところでテクナイの手を握った。

 

「お二方。私はまずは公都入りすることが先決かと思う。オドアラク殿が懸念しているのは呂文桓殿以下三千名が公都ザマスで護衛任務から離れることで四千卒がその兵力を半減し、結果的に帰路が危うくなることだと私も理解している。」

 

オドアラクはうむ肯んじた。テトラは呂文桓の顔を見る。彼の方はそれでよいと満足げだ。

 

「懸念は公都にて解決するということで宜しいか?私はかまいませぬ。」

 

呂文桓は締めにかかり、自分の結論を表明した。

 

「…私もそれで文句はございません。致し方ないことです。まずは玉体の安全を、早急に確保せねば。えぇ、そのためにも、公都へ急ぎ向かうこととしましょう。」

 

オドアラクは少し不満そうだったがまずは公都へ向けて足を急がせることを選んだ。

 

「よろしい。では各ら疾く出立のご用意を。私も陛下の御車のご用意を致します。さ、陛下はこちらへ。」

 

テクナイがまとめ、なるべく早くの出立が決定された。呂文桓は誰よりも早く天幕を出ていた。幕を捲った時には既に部下達へと指示を飛ばしていたから、彼のイライラはやはり道路脇に天幕を張りそれを兵で囲んだだけの無用心に対してだったのだろう。

 

オドアラクは配下の黒備の騎兵達に指示を下達して自らも騎馬に跨ると先導と後衛のために部隊を前後に一千ずつ二分した。中央に呂文桓の三千がテトラを挟む形で前衛後衛で二千と一千の布陣となった。

 

テクナイが用意した魔導式馬車に乗り込んだテトラは居住空間といって申し分ない、三日間世話になっている巨大八頭立て馬車の窓から外をボンヤリと眺めていた。

 

それくらいしかすることがなかったというのもあったが、周囲の慌ただしさに返って緊張感を無くしていたのだ。テクナイが御者として馬車を操っていたからと言うのもあった。久しぶりに静かな一人だけの時間だった。テトラはこの三日、ずっとテクナイと共にいた。一昨日も二つ目の街で湯浴みを一緒にした程だった。トイレにもお供してくれるのだからお風呂くらい何でもないということだろうか…。テトラはともあれ少し気疲れしていたのかもしれない。最高品質の馬車はスプリングも充実している。何より魔導式なので馬車内部は外気から遮断されており空調も快適だった。太陽は中天にあり森林帝国の象徴とも言える巨木達が伸びやかに育ち、空からの過分な光を遮り窓からは穏やかな木漏れ日だけが届けられていた。馬車に優しく揺られながら彼は暫し微睡んだ。

 

 

 

「酷い誤算だ。何故こうも日数を誤ったのか…。」

 

顎を摩るゼルプの視線の先には約四千名の兵列。

 

「いやはや、これで誤算とは大佐殿も欲張りですな!」

 

副官からの軽口を聞き流し、どうして今、目の前に二週間前に国都を出たはずの部隊が存在しているのか思考を繰り広げていた。

 

「可笑しい…二週間前に国都を出発したと言うオドアラク少佐からの報告は嘘だったとでも言うのか?」

 

目を瞑り頭を悩ませること数十秒。ゼルプは馬頭を返して自ら率いてきた斥候部隊と共に本隊である「勇者の剣」約一万を伏せているザマスから直線距離で北方一キロ地点にある湿地へと帰還した。

 

「叛意ですか?或いは彼らは我々の待ち伏せを?」

 

もう一人の若い副官から戸惑いの声が上がるがゼルプは答えない。

 

「大佐殿、我々は「勇者の剣」の名を現代に蘇らせる栄誉を手にするためにここまでやってきました。今更弾いては兵達の士気を無闇に下げることになりかねません。」

 

年配の副官からの陳言にもゼルプは答えない。

 

「(進むべきか…オドアラク少佐、貴様は私を裏切ったのか?或いは本当に二週間前に国都を出た一団がいたのか?では先程目の前にいた一団は一体…?)」

 

ゼルプの悩みを他所に、軍議は熱を帯びていく。焦りは良く燃え上がる油になりかねない。

 

「進軍すべきだ!!断固として!!我々の計画が敵に漏れていたとしても!敵を最も苦しめうる作戦こそ進軍することだ!!」

 

ついに一人の若手士官の戦意が爆発した。

 

「もとよりこの作戦は正面から本軍が敵前線を抜き、敗残兵と共にフラーテル・コリントスまで下がった軍を有り余る兵力の一部で包囲拘束し、我々迂回した機動部隊がザマスを奇襲して敵指揮官を討ち、残軍全てでこれを陥落せしめるものではないか!!!」

 

ゼルプも自らが立案した戦略の周到さは理解している。でなければ大胆にも一万で敵の中枢に進もうなど考えない。

 

「敵の援軍が来ぬように道を塞ぐのも、敵の敗残兵を一匹でも多く刈り取るのも、我々が遊撃のために敵領西方に深くまで展開していることが前提だ!!例え敵に我らの戦略が知られたところで敵は籠城以外に対処できまい!!」

 

その通りだ。ゼルプも思ったが彼の勘が何か致命的な見落としをしてはいないかと猛烈に痛みを発していた。だが、彼の胸騒ぎなど知らない周囲の若手幕僚達もそうだそうだと声を上げた。いやしかし、と声を濁すのはもはや年配の戦争経験豊富な老兵達だけだ。

 

「それとも!!なにか?諸君らは三倍以上の兵力差を誇る我が軍が負けるとでも?味方を信じずしてどうする!!!」

 

若手士官の蛮勇ぶりは見事に血気盛んな若手将校たちの心を掴み、良くも悪くも敵意と自信を増幅させた。戦うぞ!戦うぞ!そう強く訴えている。

 

「まてっ!もし敵に伏兵がいたらどうするのk「心配はいらない!!!」……!?な、貴方は!」

 

せめて伏兵対策を、と敵を軽んじる莫れと熱い息を吐く青年たちに訴えかけようとした老将校を押し退けて現れたのは黒髪黒目の十代の青年だった。

 

「あなたは…ユウヤ・ムラカミ!!!」

 

ユウヤ・ムラカミ。煌びやかな大剣を背中に背負った青年はそう呼ばれたことには反応せず。直感的に決めあぐねるゼルプに向かって、彼を頼みとする幕僚たちに向かってその大剣を天に突き向けると声を張った。

 

「オレが!この勇者ユウヤ・ムラカミがあなた達にはついている!!!この聖剣バベルの力を信じてくれ!!オレたちは必ず魔王に勝利するとこの剣に誓おう!!」

 

聖剣バベル。大陸に二振りしかないロストテクノロジーの塊。魔を滅する力があると伝承される正に、現存する最古の伝説だ。ユウヤが力を込めるとバベルの刀身が赤熱し、赫光がその場にいた者達の目を眩まし、それまでの不安を消しとばした。

 

うおおおおぉぉぉぉ!!!!

 

歓声が上がり、それはその場で奇跡を目の当たりにしていなかった者たちにも伝播していった。

 

「ゼルプ大佐!オレとオレの仲間達なら必ずこの大陸に平和をもたらすことができます!そのためには貴方の決断が必要なんだ!!オレにこの力で大陸の人々の平穏を取り戻す機会をくれ!!」

 

右手を胸の前で硬く握りしめ、左手で聖剣をなお高く掲げる勇者ユウヤ。ゼルプは自分が感じてはいけない思いを抱いていることを表情に出ないように取り繕うのに必死だった。

 

「ゼルプ大佐!!」「ゼルプ大佐!!我々も勇者と共に戦いたいです!!」「そうです!!彼こそが真の勇者なのです!!我々は彼をずっと待っていたのではありませんか!!」「時は今です!!正に天命が俺たちに味方しているのです!!」

 

これまで共に歩んできた信頼できる幕僚たちの目にも生気が帰ってきた。彼らはやっと自分達が主役になれたと錯覚したのだ。ゼルプは口の中が乾いていた。唾液が粘ついて不快だった。

 

「俺たちは遂に真の「勇者の剣」となった!!!」

 

誰かがあげた声が耳障りであった。士気は上がり、最高潮となる。勇者は掲げる。希望となるべき力を。赤熱する聖剣から放たれる光は人々から熱気を呼び起こすような、正に魔法のような魅力とカリスマに満ちていた。

 

「勇者の剣バンザイ!!勇者の剣バンザイ!!」

 

「勇者バンザイ!!勇者バンザイ!!!」

 

ダメ押しとばかりに剣を輝かせる勇者は指導者に他ならない。希望への先導者。平和への先導者。他にもいくつかあるだろうが、ゼルプは掴み掛かられるように出撃を求められればもう頷く他なかった。声は出ない。勇者の剣はもはや勇者の剣に過ぎなくなったのだ。ゼルプは胸騒ぎだけが深まる今の己の心中が、せめて勇者へ感じた悔しさと口惜しさに取って代わってくれないものかと思えてならなかった。

 

「さぁ!みんなオレと共に勝利を掴むんだ!!正義をこの大陸に示す時が来た!!!」

 

「まずは前哨戦といこう!!目標はザマスに向かう途中の敵軍四千!!!足の速い騎馬から順次オレに続いてくれ!!」

 

軽騎兵二千、騎銃兵三千の五千と勇者ユウヤが率いる聖銀騎士団五千の計一万は稲妻の勢いで南下を開始した。

 

彼らの後方、重装騎兵二千と傭兵三千を率いて後詰めを担うことになったゼルプはやつれた顔に官僚的な表情だけを残して静かに行軍を開始した。

 

ゼルプの情熱は彼本人の困憊など知らぬ顔で一人駆け出した。

 

ゼルプは胸騒ぎを抱えたままに兵の足を期日通りに進め、これにより大陸に火の粉が舞った。


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