有翼のリヴァイアサン   作:ヤン・デ・レェ

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第二十八話 勅令宣下

第二十八話 勅命宣下

 

 

 

天幕の中には四、五人のメイドがテトラを待っていた。

鎖帷子にサーコートを纏った彼女たちをメイドだと思ったのは兵士には不似合いなほど所作が洗練されていたからだ。

テトラは予め用意されていた湯で泥を二人がかりで落として貰い、顔と口を清涼な水で洗った。

 

髪は勿論、耳の裏から手足の指の間まで洗われたテトラは柔らかい長布巾で水気をとられて、パンツまで穿かされた。

義母のユリアナ以外からは初めて裸を見られたので、彼は気恥ずかしさを覚えたが、至極真面目な顔で甲斐甲斐しく世話をされている内に冷静を取り戻した。

 

深紅と金糸のマントを白絹のトーガの上から羽織った彼はやっと幕中の椅子に腰を落ち着けた。

 

仕事を終えた侍女達が出ていくと腹の底から重い息が吐き出された。

飾り気のない陣幕の中は思いの外静かで、暫し彼はこころの整理に精を出した。

 

テトラが熟考すること半時間。白羈が入ってきて言った。

 

「改めてお初にお目にかかります。公尊羈でございます。此度の万事。我が身の不徳の致すところ甚だしく、罰を賜りに参りました。」

 

両手両膝を大地につけて、頭を垂れる姿はあまりにも迷いがなかった。

簡潔に言われた言葉はテトラをさらに困惑させる。

 

「何が何だか僕にはわからないよ。さっきから罰とかなんとかばっかり言ってなんなのさ。僕にはあれもこれもさっぱりだよ。ねぇ君、僕は罰とかよりも籍羽や桓のことが心配だよ。」

 

どれもこれも理解し難い。混沌とした状況に彼は説明を求めた。

白羈は押し黙っていたが、すぐに顔を上げた。

 

「畏まりました。僕の配慮が足らずに心苦しい思いをさせてしまい申し訳ありません。ことの始まりから、包み隠さずご説明させていただきます。テクナイ将軍や呂文殿のことはご心配なく。私の兵を既に走らせております。遠からず合流できます。」

 

「…うん。」

 

「ことの発端は、百年前。帝国が建国されて間もない頃に僕とツェーザル総監との間で結ばれた密約に御座います。」

 

「密約?」

 

テトラは首を傾げた。とんと聞いた覚えのない話だった。

 

白羈は朗々と百年に亘る経緯を紡いだ。

 

「はい。建国当初、我が国も人間の国のように内乱がございました。現在のような、四つの執政府と一つの宮廷府からなる中央集権と地方分権が融合した体制が固まるのは、暫く経ってからのことです。当時は各地の境界線で人間との小規模な小競り合いが多発し少なくない被害が出ていました。」

 

「国内では森を出て人間の領域を攻める主戦派と、帝国の国土を完全に掌握するのが先であるとする統政派で二分されていました。僕はどちらにも所属しておりませんでしたが、守るだけでは駄目だとも考えていました。あわや内戦になるまでになりましたが、これは険悪だったのではなく、今以上に森の外への反発が強かったのです。」

 

「ツェーザル総監は当時から別格の発言力を持っており、自分からどちらかの陣営に属することも良しとしておりませんでしたから、僕とも馬が合ったんです。陛下がまだ黒玉であらせられた頃、僕とユリアナは陛下を温めていた絹のお包みを巡り殺し合いましたが、そのことを含めても僕達は戦友のような関係を保ちました。」

 

「内戦へと踏み切らぬうちに人間側は略奪者を五百騎ほど差し向けてきました。百や数十での小競り合いが続く中、このことはなぁなぁと時間が過ぎていく内に軟化していた主戦派を再燃させました。侵略者を迎え撃つために兵が組織され、いざ戦争と言う時に、ツェーザル総監から僕に声がかかりました。」

 

「母さんは何て言ったの?」

 

「彼女曰く、人間との戦争は回避できない事項だが、今ではない。力を蓄え、陛下がその力を自らの御意志で振るわれるまでは時期尚早。戦争を壟断すべきではない。そのためには、主戦派と人間側を震え上がらせるのが一番だ。一時的な枷が必要だと彼女は考えたのです。抑止力として敵の差し向けた兵力を出来るだけ惨たらしく常識外の方法で誅滅して見せれば、人間は怒りを通り越して恐れを抱き戦争を踏みとどまり、憎しみも薄れる常識外の悲劇を味わった人間に対して主戦派の溜飲も下がる。」

 

「勝利というものを綺麗なものと勘違いしている者は敵にも味方にもいましたから、これはとても効果的でした。ご覧の通り、百年間の平和が現出したのです。最初の三十年で生活水準は大きく改善されて、人間より良い生活をしている満足感や優越感、国家という寄る方が確かなものとなっていく安心感は反面外部への敵愾心を慰めました。その頃は主戦派も少しずつ解体され、筋金入りの強情以外は平安を享受したのです。」

 

「君はそのあとどうしたの?」

 

「僕は結局どちらの派閥にも属さず、表向きは残酷な処断が目に余るとして獄へ繋がれましたが、内務省に掛け合って親衛軍に組織した情報部隊の指揮をユリアナに頼まれておりました。」

 

「母さんは何のために君に頼んだの?」

 

「国外は勿論、国内の主戦派と統政派の動向に目を光らせておりました。凶悪な将軍がどちらの派閥にも属していなければ彼らは動けず、しかし野放しにされていなければ心安んじていられる。毒にも薬にならないが無視できない存在感を醸し出せたのはツェーザル総監の助力のお陰ですね。彼女のおかげで僕は警戒されることなく私兵を国内至る所に隠蔽しておくことができました。」

 

「獄に繋がれること百年というのは、人間にしてみれば途轍もなく長い時間であり、我々長命種の森人(フォームレスト)から見ても長すぎる投獄でした。敵にも味方にも僕とツェーザル総監の謀を邪魔されるわけにはいかなかったのです。そのことを今の今まで陛下にまで隠していたことを謝罪いたします。そして…」

 

「そして…言葉を選ばずに申し上げます。百年間、僕たちは只管に戦争の準備をして参りました。平時、僕たち戦士の役目はいついかなる時に攻められても、外敵から陛下と国家をお守りできるように力を蓄えておくことです。その一環として軍が国の負担と極力ならないように屯田制や予備役制度と言われるものがあるのです。僕たちは常に戦ってきたのです。」

 

「戦争は断じて楽しいものではありません。戦争は極力避けるべきです。しかし、それは優先順位に過ぎません。土を耕すものがいるように、まだこの世には剣を持ち、同じ覚悟を持った者の命を奪うことで糧を得ているもの達がいるのです。それは僕や、陛下を襲ったゼルプ達敵も同じでしょう。」

 

「……百年の平穏は、人間の側から破られてしまいました。いつかは必ずそうなるであろうと覚悟していました。」

 

「戦争は現実として起きてしまったのです。そして、始まった以上僕は軍人の宿命として勝たねばなりません。全てを賭し、陛下の平穏を勝ち取ることを僕は堅く心に誓い実行したのです。結論すれば、ただその一点に尽きます。僕の信仰にかけて私事は挟んでおりません。」

 

「…ツェーザル総監は開戦の兆しに鋭く反応すると僕を呼び出しました。時が来たことを僕たちは互いに確信していました。雌伏の時は終わったのだと。」

 

「陛下にも侍った峙金には暫し民間の商会にて情報を集める任務を任せていました。彼は名を司馬忠と申しまして、古くから僕へ仕えてくれている副官です。此度の一件で彼の片腕を奪ってしまったことは悔やんでも悔やみきれません。」

 

「禁衛軍は陛下の御身、国防軍は国土、近衛軍は四大要塞と国都を含む防衛圏、親衛軍は宮廷府と国城の守護を司ります。国城地下の監獄内に執務室を与えられていた僕は、親衛軍の者を通じて彼と定期連絡を取り合っておりました。」

 

「忠から間者として警戒していたゼルプが出奔したことも聞きました。もとより彼の実家に関しては把握していましたから、特に警戒を強くしていたのですが、やはり彼が中心となって此度の戦争は開戦に踏み切られました。少なからず陛下の即位も関係していることは、伝えるべきではないかもしれませんが、紛れもない事実です。」

 

「ど、どうして?どうしてそこで僕が皇帝になると戦争になっちゃうの?」

 

それまで静かに話を聞いていたテトラが声を上げた。

自分のせいで戦争になったなどという話は冗談でも聞きたくなかった。

 

「…僕はそれだけは避けたかったのですが、紛れもなく、陛下はこの時既に戦争に組み込まれてしまいました。敵は我が国が今後、陛下という明確な最高指導者を得たことで、対外戦争へと踏み切ることを恐れたのです。」

 

「そんな…そんなこと、考えたことも無いのに…。」

 

「或いは、僕たちが尚強く結束することを恐れたのかも知れません。いずれにせよ、陛下は敵にとって最大の戦略目標となってしまいました。」

 

テトラの顔は不本意と理解し難いという思いに染まっている。

白羈は心が締め付けられる痛みに顔を歪めた。

 

「僕の不本意の極みであり、この身命を以て償っても償いきれない失態でした。…しかし、敵が明確に陛下を狙うということが分かりきったことを、僕は家臣として、万卒の将として優先順位に組み込まざるを得なかったのです。」

 

「どういうこと?」

 

彼は唇を噛みしめながら搾り出すようにテトラへの懺悔を始めた。

 

「僕が将であるのに対して、ツェーザル総監は母なのです。僕は勝利を捧げることを自身の忠誠心であると誓いました。その誓いに背くことは、たとえ陛下の御身に望まざるを一時強いる無礼を働くとしても認められません。ツェーザル総監は陛下を心から、我が子として愛しておいでです。僕は家臣として仕え、一人の情ある者としてこの世で一番に陛下をお慕い申し上げております。」

 

「しかし…僕は家臣として陛下の親任を得て将たる位を賜っております。将となったならば、陛下の加護を受けた兵士たちの、彼らの生命を握るという責任を負わねばなりません。全てを無駄なく、戦術的、戦略的な資源として、兵站上の息する数字として扱わねばならないのです。そこに、私情など挟むわけにはいかないのです。」

 

「…司馬忠に、誉洸を通じてツェーザル総監の印璽と陛下の勅印の模造品を作るよう指示し、出来た印璽を使って、傭兵から軍の会計に転じていたオドアラクをツェーザル家の私兵団長に据え付けました。」

 

「オドアラクがログリージュより来た者だとは存じておりました。彼が傭兵になったのも先祖が南からの奴隷身分だったことまで分かっていましたから、それまでの諜報活動に恩赦を出す代わりに計画への参加を持ちかけたのです。彼は二度返事で参加し、西側に恨みを持つ彼は清々しいまでによく働いてくれました。陛下を危険に晒したとなれば偽であれ本物であれツェーザル総監とオドアラクの名誉と大義に傷がついてしまいますから、後々に行幸の勅令文、信任状に再度利用した印璽は全て外部の存在であるゼルプ・ディートリッヒの咎として収拾したのです。」

 

「僕が言っても信じてもらえないかもしれませんが、本来ならば穏やかに死ねたはずだったのに彼は自らのこの道を選びました。僕は彼に敬意を払うと共に、ツェーザル総監達と共に新たな平和を創出するために失敗するわけにはいかなくなったのです。」

 

「……僕が狙われたのは?ゼルプが僕を狙ったのはどうして?ユリアナは都市を攻め取ろうとしてるって言ってたけど?」

 

「陛下の存在は致命的なリスクを払っても余ある、決定打になりうるものとして相手には映っていたのだと思います。それと同時に彼は僕がツェーザル総監と不仲だと勘違いするや否や侵攻計画を立てたことからも僕への警戒を薄めたのでしょう。」

 

「僕はこの点を利用して、作戦開始の二週間前に前線へと派遣される禁衛軍竜騎軍の隊列に紛れ、国都からザマスへ移動してから散らばっていた白禁軍に集合を掛けました。いささか時間がかかりましたが、敵味方双方に捕捉されていない完全な孤軍を五万揃えて陛下がザマスへ入城するのを待っていたのです。」

 

「ただ一つ不測の事態がございました。それは勇者の登場でした。彼が僕の想像以上に将としての器を欠いていたのは完全に予想外でした。結果的に僅かに駆け付けるのが遅れ、陛下の身を危険に晒すこととなりました。」

 

「僕は結果的に陛下を生き餌に使ってしまいました。決して本意でありませんでしたが、万が一を起こしたとなれば許されるべきことではありません。」

 

「僕は優先順位に従いました。陛下を愛する者として間違っていたとしても、家臣として、将として、戦人として過ちは犯しませんでした。」

 

「平和は放棄され、一度でも戦火がついたのなら、最後まで戦い抜くための正当な理由が必要だったのです。でなければ、僕は僕が愛する全てを奪われると思ったからです。そして、その正当性は確保できましたが、その間に少なくない犠牲を払ったことも事実です。」

 

「だから、罰を下さい。僕は僕の陛下への忠誠を疑ったことがありません。僕は僕の存在が許し難く愚かであることも知ってます。」

 

「僕の優先順位の最高は他ならぬ陛下の幸福に他なりません。そのためならば、例え一見矛盾しようと、いかなる非難を受けようとも断行いたします。故に、見方によれば陛下の御身を軽んじるような暴挙に出た次第です。」

 

居住まいを正した白羈は改めて最敬礼の姿勢をとる。

 

「もとよりこの身は全て陛下へと捧げています。……僕の弁明と説明は以上です。僕もまた果たすべき役を全うすることができました。陛下にも見えることができたのですから悔いもありません。だからどうか…願わくば、陛下の御手で愚かな僕に罰を与えてください。」

 

「……」

 

 

 

俺には白羈の話を理解するのに少し時間が必要だった。

 

要約すれば、俺の一時的な身の安全よりも、結果的に俺の将来の平穏と国家全体の利益になる方を選んだことに後悔はしていないけれど、個人的感情として白羈自身が自分を許せないということだ。

 

感情がない訳じゃないから白羈の言いたいこともわかる。

そして思う。

自分が本当の意味で人の上に立つ器ではないのだと。

 

目の前の麗人は俺に罰をくれという。

 

確かに俺の中では怒りが湧かない訳じゃない。

理不尽に怒る強い気持ちもある。

 

でも、それが全てじゃない。俺は、何というか彼の話を聞いて凄く面倒くさく感じてしまっていた。

 

人が思うほど俺は自分が大層な扱いを受けるような人柄ではないと思っている。実際、転生してから働かなくていいことや難しい勉強を強いられないことに気安さを感じている。

技術的なハンデがあっても気にならないくらい快適な生活を送ってきたから余計に思う。

 

思えば今日まで、自分が不自由を覚えたことは数えるほどしかなかった。家である国城では母代わりのユリアナと姉代わりのセキウが常に甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。城の中で俺がしなきゃならないことは会議とかで煮詰まり切った話にうむうむと偉そうに首肯くだけだった。

 

心と体がちびっこなのは堪えたが、それ以外は何一つ問題なく健康だ。朝昼晩には好きなものだけが使われた豪華な料理が所狭しと議場の長机みたいな食卓に並び、デザートは頼まなくても数種類常に用意されている。食事だって自分で手を動かすことなくユリアナとセキウに食べさせてもらってる。

 

衛生環境だってそうだ。呆れるくらい広い貸切の浴場で毎日毎日全身の毛穴まで磨かれて、洗われてないとこがないくらいだ。

 

朝起きて夜眠るまで、片時も離れないで誰かがいる。情けない話だけど、慣れると寧ろ誰かいないと落ち着かなくなるのだ。

 

俺はすっかり腑抜けていた。心の芯まで幼稚になってしまっていた。

 

遠くない未来に俺は道を踏み外していたかもしれない。それこそ暗君まっしぐらだったかも知れない。

 

そう考えると俺は白羈が俺にただ忠実な存在でなかったことに感謝しなければならないと思う。

 

殺されそうになった時の俺にあったのは生きたいという意思じゃなくて、死にたくないという思いそれだけだった。

 

自分の命に執着する人の想いの強さを痛感した今、目の前で俺に罰を下されるのを待っている彼は、どれだけの死地を歩んできたのだろうかと思う。彼は死にたくないなんて安い想いはとうに追い越しているのだ。

 

畏敬せずにはいられないし、自分はそうはなれないとも思う。

 

死ぬほど怖かったけど、落ち着いて考えると走馬灯のように今までのことが過って、その中の自分はあまり好きになれそうになかった。

 

もし、省みる機会が無ければ、俺は何も知らないまま気づけば自分勝手な大人に成長したかもしれない。宮廷府(あの場所)では、俺を諌めてくれる人は殆どいない。それを嬉しく感じていた俺は、納得して、すぐに恥ずかしいと思った。

 

僕という一人称もやめようと思う。無知で愚かな俺は今死んだ。甘ったれは治らないけど頑張ろう。いまならまだ這い上がれる気がする。

 

結局自分が襲われた理由はよくわからない。けどきっと、誰かの逆鱗に触れてしまったのだと思う。

 

誰かにとっては些細なことが、誰かにとっては爆発的な影響を及ぼす何かになり得ることを忘れてはならないのだと感じた。

 

その事も含めて、蒙きを啓く重要性を痛感した。

 

「白羈将軍は罰をお望みなのだな。」

 

テトラは努めて厳かに言った。顔立ちは以前に比べて幾分か引き締まり、大人びているようにも見える。

 

「はい。信賞必罰の基に罰するべきを罰して下さいませ。」

 

白羈は覚悟を決めた固い表情を浮かべた。

 

「白羈将軍は確かに私の身を敢えて危険に陥れた。しかし、それは結果的に私の命を救うことになったのだ。このことは寧ろ賞するべきことと言える。信賞必罰を旨とするならば、これまでのことも加えて讃えたいと私は思う。」

 

一人称が私に変わった瞬間、テトラも予想だにしない変化があった。雰囲気の域を出ていないが、間違いなくテトラの言葉に重みが感じられるのである。後年の言を借りれば、この時初めてテトラは王というものを意識した。王なるものが如何なるものなのか明確に答えられはしなかった。この時のテトラは公における自分を初めて形作ったのである。

 

「………」

 

「罰は百年の不名誉で十二分に与えられた。ユリアナと私のお包を奪い合ったことだけが減点だが、それも微々たるもの。だが、それでは将軍も納得しないだろう。」

 

「将軍には百年の謀の完成を命ずる。君は率いてきた五万の総大将となり、この国を守ってほしい。私は政治はおろか戦争について何もわからない身だ。君が始めた百年の責任を果たしてくれ。これは、勅令だ。」

 

見違えたようなテトラの成長は、不自然に思われたが、それ以上に憑依されたような異質を上回る、納得してしまうような貫禄があった。

 

「勅命、しかと承りました。」

 

白羈は恭しく拝命すると、静かに幕を辞した。

 

 

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御宇暦百二年の春

 

神聖皇帝テトラ・バルカン・ドラコニウス・ノトヘルム=ノトガーミュラー・バシレウスは白禁軍五万を主力とした西部戦線派遣軍を編成した。

 

皇帝は派遣軍の総司令官に上大将軍白羈を任命した。

 

 

「正史森威」より

 

 

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