最初の中ボスは勇者姫の宿命のライバルである   作:炭酸パスタ

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神の導きなど不要ッ!! 貴様を超えるという意思こそが運命を作り出すのだ!!

 天界の最高意思決定存在たる神の一柱たるリア・スクーデ・フェルアーリは、いずれは滅ぼすべき下界を見ていた

 

 人に定められた限界を次々と超えていく人間達の様子を。

 

「体力・筋力・耐久力・持久力・抵抗力・記憶力・思考力・想像力・魔力・気力・成長力・寿命・速さ・処理能力・向上心・自主性。

人間には何もかもが足りてない。

余もそう思っていたんやけどねぇ」

 

 その視線の先にあるのは、一番最初の中ボスとして消え去るにしては余りにもビジュアルが良い男。

 

 

 

「興が乗ったわ。少し余が遊んでやる(・・・・・)としよか」

 

 その日、燦然と(かがや)く流れ星を多くの人々が確認した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スクウェア眼鏡が似合う男、ジティア・スカイラインは荒野で研鑽を重ねていた。

 勿論仮想敵は宿命のライバルたる勇者シルヴィアである。

 そんな彼の横には、自身を高める為、更に強力な魔臓に再び改造するとすれば、どうするのが良いかを考えながら書いたメモが乱雑に置いてあった。

 結局メモするよりも頭の中で覚えていた方が早いと判断して、それらは全て中途半端にしか書かれていなかったが。

 

 そのメモを拾った少女がいた。

 鮮烈な真紅のドレスを着こなした、眩過ぎる金髪の少女。

 一度視界に入れてしまえば、もう二度と忘れられなくなる強烈な存在感を放っていた。

 幼さ残る顔付きの少女は、メモを眺めるとジティアに話し掛けた。

 

「ねえ、お兄ちゃん。何してるん?」

 

「少女、見て分からないのか?

我が宿命のライバルと戦い、そして勝った時のポーズを練習しているに決まっているだろうが」

 

 それを見ただけで分かるとするならば、きっとそれは神とか悪魔ですらなく、同種のキチガイだけだろう。

 少なくとも神では理解できぬ事は少女には理解出来た。

 

「そっ、そっか〜。

お兄ちゃん頑張ってるんやね」

 

「当然だな、少女よ。

我が宿命のライバル、シルヴィア・フォン・ソラプロダクトに敗北を認めさせる為に、研鑽を重ねぬ時を消費出来ようか」

 

 もはや少女はその事についてツッコむのはやめた。

 やめることにした。

 

 

「ねえ、少女って呼ぶのやめよ?

そういうのってモテないよ?」

 

 少女の一言に対して、ジティアは普通にノーダメージだった。

 この男、モテようと思えば幾らでもモテられるのに、そんな事に一切興味がないから、未だにライバルライバルとばかり主張しているのだ。

 モテる癖にモテようと思わない男に「モテない」の言葉は注射器ほどの痛みも与えない。

 

「ふん。しかし貴様の名前を知らぬ。

少女と呼ぶほかあるまい」

 

 正論かもしれないが、青年が少女に正論で叩き付けるのは普通にアウトである。

 だが、幼い少女に対して、名を無視したかの様に接するのは悪いだろう程度の配慮は彼にもあった。

 

「あーそうやったね。

よは…ヨハリア・フェリ。

リアって呼んでねお兄ちゃん」

 

 世のロリコン共を見ただけで昇天させる笑顔で、そう言った少女。

 生憎とジティアはロリコンどころか、爆乳美女な勇者姫にさえ欲情しない真正のライバル莫迦である。

 勿論ホモでもない。

 

 分かる者には分かっただろうが、この少女こそ至高たる神々の一柱、リア・スクーデ・フェルアーリである。

 

 

 

「そうか、ではリアよ。

貴様ッ、何故こんな所にいる」

 

 リアは即座に理解した。

 この男、既に余を神だと見抜いているのだと。

 “敵側の最高存在の一柱が、何故ここにいるのか”と本神(ほんにん)相手に聞くジティアに内心で称賛した。

 流石神々が構築した世界のシステムを抜ける術を、紙に乱雑に書き捨てるだけの男である、と。

 

 

「答えたくなければ答えなくても良い。

家出か迷子かは問わん。

だが親御さんが心配しているぞ。

必要なら、俺様が付き添ってやろう」

 

 リア・スクーデの予想は外れていた。

 

 ジティア・スカイライン。

 彼は親御さんの愛を一杯に浴びて成長したお坊ちゃまである。

 親が子供を愛するのは当たり前だと考えている。

 育ちは平民の中で一番良い。

 …親に甘やかされ過ぎたのも、彼のこの性格が作られた理由の一つではあるのだが。

 そしてこの男は、意外にも面倒見が良い。

 

 

「リアは一人で帰れるよ」

 

「ならそれでいい」

 

 目の前の少女がそう答えた以上は、ジティアはそれならそれでいいと思う事にした。

 彼自身、子供時代に周囲の大人よりも遥かに優秀にも関わらず“子供には出来ない”“どうせ子供だから”と年齢を理由に過小評価する年長者に、実力で示してきた。

 平民では最年少でアカデミーに入学したのは伊達ではない。

 そんな彼だからこそ、「己で出来る」と主張する子供の言葉は、しっかり信じるのだ。

 

 実際には、そう言っても失敗する子供も多いが、本人としては十分成功見積もりがあった上で、今回偶々失敗しただけなのだろうと自分基準で考えるジティアは、割と放置プレイの節がある。

 …子供に大人と同じ自己責任を追求するのは、いい大人のする事ではないが。

 

「ねえ、リアとお話しようよ」

 

「貴様が俺様の邪魔をしなければいいぞ」

 

 逆立ちして片手で腕立て伏せを始めるジティアは、文字通り片手間でリアと話してやるとばかりの態度だった。

 

「…あのメモ、何を書いていたの?」

 

 世界の秩序(神々の権勢)を揺るがしかねない致命的なアプローチ。

 その構成まではわからないが、最初の概要部分だけでそれは理解出来た。

 殺すか、神として迎え入れるか。

 フェルアーリ神族の女帝、リア・スクーデ・フェルアーリはその判断を選ばざるを得ない。

 

 

「アレは、…そうだな。

世界にとって最も重大な事だ」

 

 リアは続きを待った。

 普通の天才どころか、神であるリアにさえ理解出来ぬ術理であるが故に、有象無象が読んでも理解出来ぬとはいえ、己が無造作に書いた内容の重大さは理解出来ていた様だと。

 天界という支配者階級と、地上という奴隷階級の垣根を破壊する手段を、地上の民が保有して良いはずがない。

 そこまでは理解しているのだろう、と。

 だが、その野心があるのなら、生かしてはおけない。

 奴隷が支配者と同じ地平に立てば、奴隷はまず支配者から奪い上げる事から始めるからだ。

 垣根を破壊する術は存在してはならないし、存在しても神々の手中に無ければならない。

 天界は地上に対する絶対優位権を、永遠に保有し続けねばならないのだから。

 

 

「重大、なんだね」

 

「ああ。俺様がシルヴィア・フォン・サンプロダクトに大勝利する。

これ以上に重大な事があるか?

それ以外など全て些細ごとだっ!!」

 

 リアは、ジティアに野心が無い事を何となく理解した気がした。

 というか野心自体はあるが、余りにもその野心が特定の事だけに偏り過ぎていて、天界への暴力革命思想は無いだろうと。

 

「所で、お兄ちゃんは欲しいものがあるん?

これがあったらシルヴィアさんに勝てるとか。

これが成功したら勝てるぞー!!みたいなのとか。

神頼みとか験担ぎとかそういうの、リアが応援(・・)してあげようか?」

 

 それは契約だった。

 相手には契約したとさえ気が付かせぬ、神の誘惑だった。

 

「はっ、それを己の力のみによって勝ち取ってこそ、俺様が天才と証明される。

人は誰もが誰かに助けられて生きている?

助け合いこそが人の基本的な在り方?

下らん。実に下らん!!

俺様は、俺様によってのみ支えられている!!

俺様が誰かに助けてやるのはいい!!

俺様が偶然、誰かに助けられる時もある!!

だが、俺様が助けて欲しいと願う事は無い。

そうした時点で、俺様の為した全ての勝利は、俺様だけのもので無くなるからだ。

俺様だけが、俺様の行いの成果と報いを得るのだ。

運命の女神など眼中にないわ!!」

 

 

 ジティア・スカイラインは誰よりも賢く優れていると己を信じる故に、運命の神になど縋りはしない。

 彼を導くのは女神が敷いた運命ではなく、彼自身の意思!!

 運命など我が足で踏み越え、我が手で作り上げてくれるとばかりに、彼自身しか理解出来ぬ根拠に燃える。

 勇者シルヴィアに勝ちたいという意思こそが、定めを踏破し、因果を紡ぎ上げている。

 

 その思慮の在り方は、人や天使よりも神に近いとリアは感じていた。

 投資(誰かの助け)を受けてしまえば、事業の権利と財(己の栄光)は、その誰かと分け合うものに成り果ててしまう。

 ならば己で完結させてしまおう。

 それは何処までも傲慢な神々の思想。

 己の力だけで何もかも解決出来ると傲る、力ある自惚れ屋特有の思考だった。

 しかし「運命の女神など眼中にない」などと、よくも当の本神(ほんにん)を目の前にして言えたものだ。

 湧き上がる怒りと共に、それを上回る滑稽さをリアは感じていた。

 

「お兄ちゃん。それって運命の女神様がいたら怒るんじゃない?」

 

 半分本音でそう聞き返したリア。

 ジティアは運命の女神をおとぎ話と否定したりはしない。

 それは天使と接触するよりも以前からだ。

 運命の女神がいないという証明を未だしていない事がその理由である。

 それ以外にも理由はあった。

 

 

「俺様は運命などよりも強く賢い。

そして、運命の女神とやらもきっとそれを望んでいる」

 

「それは、どーして?」

 

 リアはその解答(・・)を既に知っていたが、敢えてジティアの回答(・・)を聞きたかった。

 

 

「運命を与えられて過ごす人間を管理するだけの世界より、運命を自給する俺様の方が、女神からしても確実に楽だ。

そして何より────面白い!!

己が届かない領域だからこそ、届かせて勝利を収めたくなる。

ライバルとして競いたくなる!!

超えられない壁に納得しないからこそ、好敵手足り得るのだ。

天才でも思い通りに勝てない相手だからこそ、期待と希望が止められないのだ!!」

 

 リアとしては、前半は不正解だった。

 運命の管理から外れる一部の人間(ジティアたち)のせいで、官僚クラス以下の天使たちが必死の対応に追われている。

 楽だなんてとてもじゃないが言えなかった。

 だが、怜悧な眼を輝かせて面白いと叫ぶジティアに、同意を禁じ得なかった。

 点数としては及第点である。

 尚、壁という言葉を聞く度に、定期的に勇者を輩出する軍閥の天使一族を思い浮かべるが、リアは神様なのでどの天使に貧乳と言っても許される立場なのである。

 

 リアは思い出そうとした。

 あれは何時の日だっただろう。

 人間がまだ面白かった時代。

 神々が未知(難解)に怯える人間に、予言した運命(答え)を授けたのは。

 日付は今でも正確に記憶しているが、実感としては遥か遠い夢の彼方だ。

 人間はそれから直ぐに、問題さえ見ずに、与えられた答えを書くだけの在り方に溺れていった。

 始まりは興味であったのに、気が付けば全ての人間が既知へと落ちた。

 神々は人間を家畜と看做す事にした。

 与えられた飼料の通りに動く魂など、死霊となにが違うのか?

 資料に従うだけでなく、試料を使い思料を働かせないのか?

 思量こそ求めるべきで、飼料しか求めないのならば、それは家畜以外の何物でもない。

 

 そう考えた所で、神々は一つの結論に至った。

 「ああ、人間にはそもそもそんな能力は無かったのだ」と。

 

 

 自分の運命さえ自己管理出来ない人間という種には、運命の予言というシステムの首輪が絶対に必要だった。

 天使という、“一から百まで言われずとも結果を出す生産性の高い成績優良種族”と似たように扱っては行けなかったのだ。

 種族フィルターで区別するのは、統計が示す通り絶対に必要だった。

 人間は天使の様には自己管理さえも出来ない。

 人間という愚かな種の為にこそ、高コストな定型化された運命のシステムが必要だったのだから。

 だからこそ、そのシステムに不具合を出す人間は、処分する必要があった。

 

 人類を家畜として見守っては刈り取っていたが、そろそろ人類に代わる“自分で考えて結果を出す生産性の高い新人類”を作ろう。

 最近になってそんな声が神々から聞こえ始めてきた。

 世界の効率化の為には、それは有益な意見だった。

 

 だから──────今いる人類の中から、“自分で考えて結果を出す生産性の高い新人類”に成り得る者が出て来るとは想定もしていなかった。

 

 そう考えると、ジティアが言った前半の「女神からしても楽」という言葉を強ち間違いではない。

 尤も、それは人類の誰もがジティアと同じ視点と能力を持つという有り得ない前提だが。

 

 それでもリアはジティアの生産性が高いどころか、経営側に引き込まなければ独立する事さえ可能なのだろうと見積もった。

 

「ねえ、お兄ちゃん。

お兄ちゃんは、王様とか神様になりたいって思う?」

 

 ジティアが望むなら、人間の王など幾らでもクビを挿げ替えてジティアを据えてもいいと考えていたが、ジティアが望めば独力で様々な手段(・・・・・)で公王で国王でもなれるだろうから、それをジティアが望むとは思っていなかった。

 無論、ジティアが公王や国王になる手段として考えているのは、次期後継者を打倒して、己の勝利を宣誓する事である。

 式場で宣誓すれば一時間も掛からず冠が降ってくるだろうが、その可能性は想定すらしていない。

 リアが気になっているのは、ジティアが神を目指しているかどうかだ。

 他の神であれば、人間生まれが同じ立場に来る事に嫌悪感を持つだろうが、リアは寧ろジティアが神としてこちら側に来た方が天界は安泰なのだ。

 

 優秀な同業他社がスタートアップするなんて、想像しただけでゾッとする。

 多少天界に痛みが伴っても、ジティアに天界の住人が切り捨てられても、それで世界が成長するのなら安いものだ。

 ルーティン化された仕事以外、教えられていないから出来ない無能な天使(社畜)は、今を熟すだけの他の天使(同類)の負担にはならなくても、上を目指して組織が成長する為にはお荷物となる。

 家畜を管理しているつもりの社畜とは滑稽だが、実際に存在するので笑えない。

 

 天界に住まう天使だけでなく、共同経営者や役員たる他の神さえ切り捨てる判断を決意しながらも、その表情には幼さ以外を映さない。

 

 リア以外の神々にも人類に期待し続ける者はいたのだ。

 その神は、まだ全ての人間が無能だと決まった訳ではない。優秀な人間には存続の機会を与えてやるのが優れた管理者だと主張しており、それまでリアは聞き流していた。

 

 その神は準備が出来たら一斉に人間を全滅させる前に、人類に徹底的な研修(試練)を与え続けて強化を促し、徹底的な選抜試験(聖別)を行い、生き残るべき人間は残しましょうと主張していた。

 その為に災害・疫病・戦争・飢饉(人類種存続の機会)を何度も何度も根気よく与え続けて、生き残れた人間は処分しなくてもいいじゃないかと。

 選抜に残れた人間なら、選抜しなかった人間より生かす価値があるから、どうか人間という種は残してあげてほしい。

 

 そういって人間を愛し続けた神がいた。

 最近はリアとは話していなかったが、あの神がジティアを知ったらどんな反応をするかが気になった。

 もしかすると、ジティアが生まれた時から知っている可能性すらあるのだと。

 

 

 あの神は、地上で消えた二神とも仲が良かったと、リアには今でも思い出される。

 あの二神は、人の側に立って他の神々と戦い散った。

 本神(ほんにん)たちは優秀ではあったが、人類を無意味に甘やかして与えるだけの姿勢に他の神々かは批判が出ていた。

 神々が補助をして生かした結果、神々の補助無しで生きられなくなった人類に、更に補助を与えて堕落させるのかと。

 その批判をしていたあの神は、二神に凄く懐いていたと。

 二神の内の女神…自身の双子の姉に酷似した勇者シルヴィアを見たら、あの神は何をするだろうか?

 そして姉の夫に面影が似たジティアには、一体何をするのだろうか?

 もしかすると、とっくに仕掛けている可能性すらあるのだと、思い至ったリアは内心でクスクスと笑った。

 

 

 

 神様になりたいかというリアの質問に、ジティアはある程度リアの予想内の発言をした。

 

「なる必要があれば、自ずとそうしているだろう。

人間に拘るのも神に拘るのも下らないが、俺様は人間に絶望してもいないし、神を万能視する気もない。

種に価値はなく、個に価値を生む。

神であるから成せるのでは無く、俺様だからこそ成すのだ」

 

 リアにはある程度はジティアの思考が理解できる気がした。

 やはり、ジティアは人間や天使よりも神の思考に近い。

 

 

 この後もまだまだ話し足りなかったが、お邪魔が来たようだ。

 天界からも、地上からも。

 

 天界からは精神波で部下から申請の確認が溜まっていると、リア宛に何度も連絡が来ている。

 りーちゃんと渾名で呼ぶ仲だと一方的に思っている、私的秘書な天使の部下だ。

 呼び方に意味など無いと感じている為、此方もリアちゃんとでも好きに呼べと言っているが、どうにも聞き入れる様子もない。

 その天使は、戦士階級の家系から生まれたにしては、武術を好まない性格だった。

 妹ととはそれなりに仲が良いらしいが、彼女はそれ以外の親族親戚からは軽んじられていた。

 その妹も戦士級の天使の中でも、戦闘者として特別な指定を受けた為に、もう実家に姉の居場所は無いそうだ。

 一族の看板を押し付けられたせいで、妹も下手に庇う事も出来ぬらしい。

 戦士階級で武道を求めないのなら、それは仕方ないだろう。

 解決する理由もない。

 とはいえ、事務作業が優秀な部下で調整能力も高く、単純なソルジャーよりは余程使えると感じている。

 戦士としては極めて優秀な彼女の妹よりも、正直姉の方を買っているが口煩いのはどうにも敵わない。

 苛ついて殺しても仕事が増える。

 神階級のレベルにおける庶務が出来る天使なんて、全天使の中にも滅多にいない。

 上級神の仕事を手伝える天使とか、下手なカス神よりは余程価値があると評価している。

 だから殺すにも殺せないし、特に殺す気も無い。

 上司の楽しみを無碍にした神罰として、そのデカい胸を揉むぞと決意を新たにした。

 他の命令は完璧に熟すのに、オンコールで出なければ、寝てるか無視してるかということで一年待ってかけ直せと命じた割と最初の命令は、一度も果たされた事は無い。

 思い出したらイライラして来たので、神罰として膝枕もさせる事にした。

 

 これで、楽しい時間も終わり。

 神は神の世界に帰らないといけない。

 

 

 

「ねえ、お兄ちゃん。お話楽しかったよ。

凄く、楽しかった。

でもそろそろ帰るね。ばいばーい。

また、逢えると良いね」

 

「ああ、貴様がそう願うのなら、また会うだろう」

 

 リアはニコニコして歩いていった。

 ジティアからある程度離れた所で、ジティアの気配を感じて近くにやって来た折心と、ちょうど入れ違いになりながら。

 「こんにちわ~」と折心に手を振り近付いたリア。

 動かない、否、動けない折心。

 彼女にとっては、天界の神々の中でも王の資格を持つリアがこの場にいるとはイレギュラーにも程があった。

「余は気分が良い。姉に免じて見逃してもやるから、一切何も語るな

 折心は、背筋が千切られたかの様に錯覚した。

 

 思考も気力も体力も全て消し飛ばされた折心。

 それでも、リアには聞きたい事があった。

 リアにだからこそ、聞かねばならぬ事があった。

 

「姉は…、理葉(リーヴァ)・ミラノサロネは元気ですか」

 

「余は最初に言った。“一切喋るな”と」

 

 それは絶対者からの命令。

 お願いでも交渉でも取引でさえもなく、服従以外を許さぬ強制だった。

 

「ですが、唯一の心残りで────」

 

「喋るなと言ったはずだ」

 

 今度は神としての(神威)局地的(ピンポイント)に発生させて命じた。

 

 一瞬だけその姿が薄れかけた。

 

 

 折心がただの天使で勇者でなければ、瞬時に消魂する程度の圧力だった。

 それでも立ち上がる折心に、リア相手に倒れた振りをして見逃されようともせず、神の眼を見返して立ち上がる折心に、リアは内心で面白いと感じた。

 

「…………ボロ雑巾の様に酷使されているよ。

休みさえろくに与えられない」

 

「そんな……ねえさま…」

 

 

 そこには致命的な誤解があった。

 まあ放置しても面白いが、ここは自身の為にも正しておくべきだとリアは判断した。

 

「そう。りーちゃんは酷い奴ね。

余が事後報告で自主的な休暇を取っているだけなのに、直ぐに呼び出して仕事をさせる。

余は神の王。休ませて寛がせて労るべきや」

 

 そう。

 立場や権力や能力や戦力は、リア・スクーデ・フェルアーリが絶対的な上位者だが、関係性としては部下である理葉・ミラノサロネにしっかりと管理されている。

「…良かった」

 

「無論、連座で処罰を望む声も大きかった。

それもミラノサロネ姓のものからな」

 

 折心の顔が再び曇る。

 戦士である事にしか価値を示せなくなり、そして今代も勇者を輩出した事で、一段とそれが加速した閉鎖的な一族。

 戦闘民族ミラノサロネ。

 家系の至る所に勇者の血が取り込まれている、戦闘部門の有力者一族。

 

 その勇者(とっておき)が裏切ったともなれば、もはや自暴自棄になる者も多かったはずだ。

 やはり、と考えないようにしていた想像を思い出して折心は泣きたくなった。

 でも、だからこそ天界を壊さなくてはいけないのだと。

 

「裏切り者の妹のせいで連座で処罰されると、本気で思っているのなら、木偶の坊と彼女を呼んだ連中と何も変わらん。

まさかその程度の理由で、余が直々に指名した秘書に手出しする者がいるとでも?

序列第一位(天使長)】理葉・ミラノサロネが、その程度で屈するとでも?

我が腹心を、舐めるなよ。

 

そう。伝言忘れてた。りーちゃんから妹へーって。

“全力でお相手しますとお伝え下さい”って。

知らんやろ、りーちゃんの全力。

だって余以外の前では、一度も全力見せた事が無い(・・・・・・・・・・・・)んやから」




リア・スクーデ・フェルアーリ
神の中でも最上位クラスの一角。
この世界における一つの上限。
その最上位魔法特性(権能)は運命。
運命の予言システムは最初に彼女が作った。
人から運命を自ら紡ぐ責務を開放した結果堕落させ、神々が人間に興味を失う原因にもなった。
ある種の戦犯。
名前の由来:リア・スクーデ→スクーデリア
神々はF1車から由来。

理葉(リーヴァ)・ミラノサロネ
生真面目でしっかりした最上位級神リア・スクーデ・フェルアーリの首席補佐官にして私設秘書にして友人にして天使内序列第一位の天使長。
敬愛するリア様の為なら、無理なアポを取り付けようとする下級神にお引取りさせる(門前払いする)事も。
逆に主君の溜まった仕事を捌かせる時にも容赦ない。
妹とは違い巨乳。
戦うのは好きではない。
それが彼女が一族から見捨てられる原因となった。
己が戦わなかったせいで、妹が勇者として祭り上げられた事に心を痛めていた。
実は戦わないだけで、戦えない事はない。
本気を出さない理由は、複数種類の勇者因子が同時に発現してしまった理葉が本気を出してしまうと、周囲の心と命をへし折ってしまうと考えた為。
元来暴力が好きでない事も大きい。
本来のゲームでは、妹を斃したシルヴィアに敵討ちとして表れる第7章のボスであり、更に後半で運命神リアとの戦闘前でも表れる。
名前の由来:ミラノサローネ2012で展示されたリーヴァ。
スタイルが極めて美しい車の彫刻。
こちらはセツナと同じく木製の車だが、走れない。
一族から戦えない扱いされている元ネタはここ。
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