リボン家のウマ娘   作:鼠日十二

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リボン・リボーン(3)

 

 

 受験を決めた私の前に立ちはだかったのは、試験まで残り一年という時間の無さと、実技試験の難易度であった。全国から優秀なウマ娘が集まるんだから、当然試験のボーダーはとても高くなる。私はレースについては初心者もいいとこなので、1日のほとんどを勉強と練習に割く必要があった。

 

 ……残りの時間? そりゃもちろん妹と遊んだよ。この私が妹サービスを欠かすわけないじゃん。

 

 それに、妹と遊ぶことは時間の無駄にはならなかった。気分転換、トレーニング前のアップ、あるいはクールダウン。たとえば20人以上でやる鬼ごっこには戦略性があって、はさみ撃ちやら待ち伏せやらがあって楽しいし体のいろんな部位を使う。

 

 勝つのは私だけどね。まだ頼れる最強のお姉ちゃんでいさせて欲しい、なんて姉のプライドだ。

 

 トレーニングの面倒は、私の叔母――すなわちお母さんの妹に当たるリボンアニマートさんが引き受けてくれた。運送会社で働くツンツン黒髪のウマ娘だ。せっかくウマ娘のパワーがあるのに運送会社? と疑問に思うかもしれないが、トラックが入れない細道や舗装されていない山道など、車両での運送が難しい場所への配達にウマ娘はぴったりなのだった。

 

 そんな職業なので、アニマートさんはレース現役を退いた今でも身体が筋肉質でしっかりしている。足が仕事道具だから、負担の少ない走りや怪我の応急処置にも詳しい。

 

 さらに私のお母さんは学校の先生をしていて、説明上手な上にレース理論にも明るい。というわけで、この2人を先生に迎えて私の受験戦争は始まったのだ。

 

 

 

 

 早朝、五時半。

 五月とはいえまだ寒いこの時間帯から、私とアニマートさんは朝練をする。

 と言っても、別に複雑だったり器具が必要だったりするようなトレーニングじゃない。アニマートさんは感覚派だからか語彙には擬音がやたら多く……つまり、あまり説明するのに向いてなかった。本人もそれを理解しているようで、提示された内容はいたってシンプルだ。すなわち、ストレッチとランニングだけ、である。

 

「準備はいいか?」

 

 肩をぐりぐり回しながらアニマートさんが尋ねてきた。スポーツブランドのジャージの上からでも分かる鍛え上げられた脹脛は、彼女の相棒であり仕事道具である。体をしっかりほぐし終えた私は靴紐をきつく結びなおして、「いつでもいいよ」と頷いた。

 

 家の門の前に立つ。軽く跳ねて、足腰に違和感がないことを確認する。

 

 ……うん。今日も問題は無さそうだ。

 

「じゃあ行くぜ。3、2、1……スタート!」

 

 号令に合わせて、アニマートさんと私は同時に踏み出した。身体を温め、一定のペースを保つことを心がけながら、まだ薄暗く人気のない朝の田舎道を走る。トワイライト、あるいは薄明と言われるこの時間帯は、運動して生まれた身体の熱が空気に程よく抜けていって気分がいい。

 

 アニマートさんの耳のピアスが揺れて、澄んだ空気を揺らす。ちりん、ちりんとわずかな金属音が一定の間隔で響く中、ふと彼女が口を開いた。

 

「なあなあペルデーン」

「どうしたのアニマートさん」

「最近さ、ミンネとかハーモニーが構ってくれねぇんだよ。あいつらの部屋行こうとしても、『かーちゃんはダメ』って言われちまって……」

 

 ワイルドな見た目に反して子供にゲロ甘なアニマートさんは、ここ数日の娘からの拒絶にすっかりしょげていた。いつもは強気にとがっているウマ耳もぺたんこになっている。ちなみに本当はミンネたちは来たる母の日のためにこっそりプレゼントを準備しているだけなのだが、それを私が言うわけにはいかないので適当にお茶を濁しておく。

 

「反抗期じゃない?」

「なっ……!?」

「ふふっ」

「ぺ、ペルデーン? 冗談だよな?」

「さあ、どうだろうね」

「くっ……こうなったら寝てる間に忍び込んで……」

 

 我が家の大黒柱は過保護である。私もあんまり人のこと言えないけどね。そうこうしているうちに、ランニングコースの最初のカーブが見えてきた。私はアニマートさんをちらりと見て、スピードを僅かに落とし彼女の真後ろにつく。

 

「お、良いのか? じゃあお先」

 

 ニヤリと笑い、アニマートさんが強く踏み込んだ。ウマ娘としての全盛期を超えてなお、彼女の脚からは地面に響くような振動が伝わってくる。

 

「相変わらず加速力がおかしい……!」

 

 お母さん曰く、本来コーナーでは外側に膨らまないように減速するものなのだ。しかし、アニマートさんの鍛えられた脚力は、曲がりながら加速するという奇天烈な芸当をやってのける。元G2ウマ娘なだけはあった。

 

 流石にあれほど苛烈な加速はできないけれど、私には妹たちと遊ぶ中で鍛えた体幹がある。バランス感覚を総動員し、バイクのように体を傾けて極限までロスを無くす。

 

 加速するのではなく、減速しない。慎重さと集中力が要求されるため、コーナーを抜けたあたりでまあまあ疲れてしまうが、それも練習のうちだ。慣れれば武器になるとお母さんにも太鼓判を押してもらっている。

 

 しばらく走れば、アニマートさんの背中が見えてきた。

 

「おお、もう来たか。早いじゃねぇの」

「負けっぱなしじゃいられないからね!」

「そういう台詞は――」

 

 誰でも想像のつく事であるが。カーブで加速できるウマ娘が、直線で加速できない訳がないのだ。再びアニマートさんが身体を前に傾ける。筋肉の弓が引き絞られる一瞬の静寂の後、その身体は矢のように()()()()()。そう錯覚するほど、鋭く、速い。

 

「あたしを抜いてからにするんだな!」

 

 そうして今日も、ランニングとは名ばかりのレースが幕を開けた。

 

 

 

 

 

 ……ちなみに、お母さん姉妹の末妹であるリボンカルマートさんは夜勤なので、生活リズムが私たちと合わない。よって不参加である。その代わり、毎朝リビングの机の上にスポーツドリンクと置き手紙があった。

 

 嬉しくて私も返事やその日あった出来事なんかを書くようにしていたら、ついに机の上にノートが置かれるようになった。結局4冊くらい消費したのかな。そのうち1冊は「わたしもやりたい!」と言い始めた妹たちによって自由帳と化してしまったのだが、それはそれできちんと保管してあります。

 

 




プロットを書いては丸めて捨て、書いては丸めて捨て。気づけばオリジナルウマ娘がペルデーン含めて5〜6人出てきそうになりました。リボン家は大して強くないので、アプリ版のキャラクターだとちょっと相手として強すぎるんですよね。

そいで、展開を考える上で参考にしたいのですが、オリウマ娘を出すことに抵抗のある方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか?

オリウマ娘を出しても

  • 良い(読むことに抵抗がない)
  • 良くない(読むことに抵抗がある)
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