戦記絶唱シンフォギア -TAKE ME HIGHER- 作:はげちよ様
俺には誰にも言えない秘密がある。言ったところで信じてもらえないだろうし、最悪の場合「えー、やだー。あの人まだ中二病引きずってるー」と、笑いながら引かれるのがオチだろう。……自分で言っていて悲しくなってきた。この先は考えないでおこう。
まあなんだ、その秘密っていうのがだ。
「うじゃうじゃ沸いてんねぇ……さあて、一丁やりますか」
俺の名前は長野大悟。ノイズと呼ばれる特異災害に対抗するべく、日本政府が立ち上げた特異災害対策機動部、その第二課の職員の一人だ。ちなみに今年で19歳。
幼いころからヒーローにあこがれていて、誰かを守る仕事に就きたいと思いここに就職した。ノイズなんていうとんでもない災害、とはいってもエイリアンだとかそんなものの類だと勝手に思っている。
で、ここに就職したはいいものの、表の一課ではなく裏の二課に配属されてしまった。
ここではシンフォギアと呼ばれる、聖遺物の欠片がどーたらこーたらいうあれで、あれがあれしてちちんぷいぷいな鎧型の武装を扱って直接ノイズをヌッ殺すことを専門にしている部署である。いろいろとアレな説明ではあるが、桜井博士の提唱した理論が俺のおつむには難しすぎて理解が及ばなかったの許してほしい。
早い話が、歌を歌うことによって戦うカラオケ兵器である。なにそれ素敵。
何で歌わなくてはいけないのかっていうのはよく理解してない。司令がフォニックゲインが何とかとか言っていたが、俺は計器を見ながらオペレートするのではなく、現場に赴き装者と呼ばれるシンフォギアを纏って戦う少女たちをサポートするのが役割だ。だから覚えなくても大丈夫。多分。
そんでもって、今現在がどういう状況かというと……。
「ノイズだー!」
「だ、誰か助けてくれーッ!」
「やめろー! 死にたくなァーい!」
うちの部署に所属しているシンフォギア装者の天羽奏と風鳴翼。その二人が結成している今大人気のボーカルデュオ、"ツヴァイウィング"のライブ会場兼二課による聖遺物の起動実験場。そして、起動実験の際に今回起動実験を行っていた完全聖遺物、ネフシュタンの鎧が暴走。その騒ぎの真っ最中にノイズが襲来。起動実験を行っていた地下実験場と大盛り上がりだった地上のライブ会場は、一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図へと表情を変えた。
通信機越しに聞こえてくる怒号のような声と、逃げ惑う人々とそれに襲い掛からんとする大量のノイズ。実験場で何があったのかも気にはなるが、俺に与えられている任務は会場の警護と人々の安全の確保である。それ故に、地下の状況はほかの職員に任せ、会場の人々に避難指示を出すように同じく鶏歩に配置されていた職員に通信機越しに声をかける。しかし今回のライブの動員数は約十万人。それだけの人たちを避難させきることはおそらく不可能であると考えている。現に、すでに多くの人たちの命が炭となって散っている。そしてそれ以上に、人の波に押されて逃げ遅れた人の数の方が圧倒的だった。
この騒ぎと人が密集した場所をノイズが見逃すはずもなく、迫りくる小型ノイズの群れに嫌な汗が流れるのを感じた。
――せめて俺だけでも動ければ。
そう思っていた矢先に、ノイズ殲滅戦の開幕を告げる
――Croitzal ronzell gungnir zizzl.
……始まった!
奏ちゃんの聖詠が聞こえてきてしばらく、ノイズが粉砕されていく様が遠くで確認できた。
俺はすぐさま避難の完了している地点へ向けて静かに走り出す。ある程度移動すれば、そこにはノイズの攻撃により崩れ落ちた瓦礫と、炭と化した多くの人々の遺骸しか残っていない悲惨な状況が広がっていた。だが、この場所の方が今の俺にとっては都合がいい。
――さあ、行こうか。
小さく息を吐きだし、ノイズの群れを睨みつける。
俺の持つ、風鳴指令や桜井博士すらも存在を知らない、俺だけの健全聖遺物――
俺の意志に応じてギミックが解放されると共に、眩い光が辺りを照らす。
そして――
「ティガァァァアアアアアア!!!!」
§
ノイズの数が多い。私と翼だけでどうにかなるはずだけど、今回は場所が悪すぎる。ライブ会場という閉鎖空間に加えて、私たちのライブを見に来てくれたたくさんの人たち。逃げ惑う人たちをかき分けながら、何とかノイズを仕留めていく。
フォニックゲインを高めるために歌を奏でながら、手にした槍で手当たり次第にノイズを屠っていくが、それでも処理が追い付かない。翼も頑張ってくれているが、このままではジリ貧かもしれない。
でも、それでも最近は、そんな絶望的な状況でもなんとかなってきた。
どこかから突如として現れる、光の戦士によって。
目の前には、逃げ遅れた少女がいる。走れと声を出したが、怪我をしているのか、足がうまく動いていない。その上、戦闘の余波によって吹き飛ばされた瓦礫と思われる礫が、彼女の体を射抜いた。吹き出す血潮に私も翼も顔から血の気が引いていく。
生きることを諦めるな、と必死に声をかけるが虚ろになった瞳が元に戻る気配はない。
細く息を吐き、意を決して立ち上がった瞬間、それは降り立った。
シルバー、ヴァイオレット、クリムゾンレッドの身体。
白金のブレストプレートには黄金の二本線。
胸の中心に光り輝く宝玉。
そして、頭部に輝く光る瞳。
轟音と共に土煙を巻き上げ、私たちとノイズの間に着地。
ここ数年で見かけるようになった正体不明の
誰が呼び始めたかわからないが、私たち二課の間ではこう呼ばれている。
「ウルトラマン……来てくれたんだッ……!」
§
戦闘開始から大幅に遅れてやってきたせいもあるが、状況がかなりまずいな。
奏ちゃんがかばってる女の子は胸部に大怪我を負っている。恐らくは奏ちゃんが少女を守るために立ちふさがった際に、砕かれて吹き飛んだ
んじゃあ、そのためにまずは。
『目の前の奴らから処理していきますかね』
右こぶしを握りこみ胸の前へ、左手は親指をたたみ指を揃えて正面へ突き出す。右足を半歩引き、少し腰を落とす。
基本となるファイティングポーズから、一気にノイズの群れへと飛び込む。
正拳突き、裏拳、エルボー、回し蹴り、ヤクザキックetc.
俺の攻撃によって次々とノイズたちが炭へと変わって風に払われていく。完全聖遺物であるスパークレンスの起動によって造り変えられた俺の身体は、ノイズの持つ位相差の障壁を完全に無効化することができる。
そうこう言っている間にもノイズたちは翼ちゃんだけでなく、突如として戦場へと乱入した俺にも襲い掛かってくる。人間に対し無差別に襲い掛かるノイズ。それはどうやら光となった俺も対象に入っているようなのだ。ひとまずは翼ちゃんがノイズを抱え込みすぎないうちに、その辺のヒューマノイドノイズやらフライトノイズを千切っては投げを繰り返してどんどんとヌッ殺していく。
ある程度を蹴散らしたところで、奏ちゃんの様子を確認する。よし、女の子をしっかりと庇ってくれているようで何よりだ。ただ、受け流すこともせずに真正面から攻撃を受け止め続けていたため、彼女の纏うシンフォギア――ガングニールはもう装甲のほとんどが剥がれ落ちており、残っているのは僅かなレッグアーマーと肌にぴったりと吸い付くインナースーツのみ。少しでもノイズから攻撃を食らえば、すぐにでも致命傷になってしまいそうな状態だった。
なんだか感極まったような表情でこっちを見てきているけど、遅れてきたのにそんなに嬉しそうな表情をされると複雑なんですがそれは……。
翼ちゃんは翼ちゃんで、「今回も共に戦えるとは……背中は預けたぞ!」とか言って意気揚々とノイズをバッサバッサと切り刻んでるし……。
とりあえず奏ちゃんが抱えている女の子の安否のためにも、さっさと小物と一緒に深緑色のゲロみたいなのをまき散らしている大型のノイズも葬り去らねば! そうとなれば即実行!
バク転を二回からのバク中を決め、ある程度の距離を置いてから構えを取る。
――足を肩幅程度に開き、両腕を腰の横に引き付ける。
――指を揃えた両腕を胸の前に突き出し、肘を伸ばした状態で両手首を重ねる。
――そこから両腕を真横に開いていけば、胸のカラータイマーへと光のエネルギーが凝縮されていく。
――右足を軽く引いて半身になり、右ひじを九十度に曲げそこへ左手の甲の指先をあてがいL時を作る。
『ゼペリオン……光線ッ!!』
俺の構えを見た瞬間に射線から外れていた翼ちゃんには掠めることすらなく、俺の放ったゼペリオン光線は小型はもちろんのこと、大型のノイズすらも跡形もなく消し飛ばした。
光線の射線上だけではなく、その余波に充てられたノイズも巻き込み、幾重もの爆発が天井を解放したドーム内に炎の花を咲かせる。
俺が討ち漏らしたノイズを翼ちゃんが片付け切ったのを見計らって、俺はゆっくりとそれへと上昇する。
『シェアッ』
そして、誰にもばれない場所へと飛び去るのだった。ウルトラマンはクールに去るぜ……。
§
私――天羽奏は、あのドームライブの際にガングニールを実質使い潰してしまったといっていいだろう。損傷が激しすぎたために、修復するにも一から装甲やジェネレータを組み上げる必要が出てきたのだ。故に、私は現在非常に暇を持て余していた。
「暇だ……やることがない……」
「ま、まあまあ。あの時ガングニールがボッロボロになってたんだから、どうしようもないって」
暇だ暇だと愚痴をこぼす私の隣で苦笑しているのは、長野大悟さん。表向きは私のマネージャーということになっているが、実態は二課の現場における様々なサポートを行うエージェント。本人はただの雑用などと謙遜しているが、私からすればサポートと称してやってることの幅が広すぎると思う。何で不発弾の処理までできるんだろう……。それに頭の回転も速くて身体能力もものすごく高い。ただし、家事全般が壊滅的という、しっかりとしすぎている欠点を抱えてはいるが……。
「でも、あれは仕方ないじゃん」
「まあね。あの時君が守っていなければ彼女は、立花響ちゃんは生き残れていなかった」
私の二つ年上の人で、一緒にしょうもないことで騒ぐこともあれば、すごく大人な感じがすることもある不思議な人だ。
あれからもう三か月が経つが、未だにガングニールの改修作業は終わっていない。というのも、今回のことを踏まえて私のガングニールはより強固な装甲を搭載し、より強力なエネルギージェネレータを構築することが決まったらしい。ちなみに、私の適合率がそこまで高くはないため、強力なジェネレータを構築するに至ったんだとか。なんか、技術班の人たちに迷惑かけちゃってる。
「あの子、大丈夫かな」
「……心臓に癒着した、ガングニールの欠片のこと?」
「ああ……。私や翼みたいに元から適合者だったんなら、ここまで思わなかったと思うんだけど……」
「確かになぁ。如何せん、適合者じゃない限り聖遺物は体を蝕むただの毒だ。意識はしっかり回復したし、日常生活に問題がないとはいえ……」
「この先何かが起きたとしても不思議じゃない、だよね」
「そういうこと」
あの日助けた女の子、立花響ちゃん。彼女が無事に過ごせているかということも、私の頭を悩ませている一因だった。あの日けがをさせてしまった負い目から、個人的に気にかけているだけではあるのだが、そのせいで何故か翼から嫉妬されてしまうという変な状況が出来上がってしまっている。……何で女の子のアンタが嫉妬してんだよ。もし焼きもちを焼くとするなら今私の隣にいる大悟さんでしょうに。って、そんなのはどうでもいいか。
「それよりも、暇だからって休んでばかりだと体も鈍るし、ボイトレのついでに組み手もやっとこう」
「うげっ、大悟さん容赦ないからあんまりやりたくないんだよなぁ……」
「明らかに手を抜いてるのがわかるから厳しくしてるんだよ。真面目にやればそこまで厳しくしないさ」
「わぁかったよ。やる、やります、やらせていただきます!」
「いい返事だ」
そんな他愛のない日常。毎日はこうやって過ぎていくものなんだと、装者として戦わなくてもいい平和な日々を私はもうしばらく謳歌することになる。
――そして、二年の月日が流れた。
九月にシンフォギアの新台が出ると聞いた。
享楽からティガが出ると聞いた。
やるっきゃねえ!
そんな感じで見切り発車で書き始めました。
生暖かく見守て下さい。