現在、世界中の男性は消えかけている。
理由は分からない。遥か昔…それこそウマ娘と人が互いを理解できず争っていた遥か昔は男性は普通にいた。だが今はどうだ。道を歩けばいるのは女、女、女。偶に男を見たと思ったらそれは化粧で化けた女だった。
種の保存のために必要なオスがメスの数に合わず、結婚などいざ知らず、一目見ることなく老いていくのは珍しい話ではなかった。
だからこそ、今のこの状況は奇跡に近かった。三女神像の起こした奇跡と言われたら、私は普段の私が驚くほどあっさりと疑わずに信じるだろう。
――
私はいつものように実験室の半分を占拠している彼女に実験を薦め、そして拒否され新しい対象を探すべく学園内を動き回っていた。だが悲しいかな、私の噂は広がっている様で、目も合わせずに距離を取られてしまう。
そんな状況に飽き飽きしつつ空を見ると、雷雲が近付いていた、
「はて、ラボの窓は閉めたかな。確か昨日の実験の後は開けたままで閉めた記憶がない…彼女…カフェも煙を嫌って今日はラボのある教室に来てはいなかったし…戻るしかないか」
雨が降りこんで実験器具や材料が使えなくなるのは嫌だったし、カフェのものが雨に濡れてその報いで書類が燃えるのはもっと嫌だったから急いでラボに戻った。
奇跡は既に始まっていた。一つは空を覆うとしていたのが雷雲だと気づいたこと、もう一つは窓を閉めたときの時間が丁度そのときだったこと。
「あれは…人か!?」
窓を閉めたとき、私は空から落ちてくるものがあることに気付いた。落下物は地上との距離が縮まるにつれ詳細がわかり、それが人であることは間違いなかった。
何故あそこに人が?と考える前に私は急いで走り出していた。途中で制止してくる者を無視し、些か危険なコース取りをして人が落ちた練習用ターフに傘も差さず行く。
「はぁ、はぁ。そこか!!」
人はターフの中心にうつ伏せで寝ていた。豪雨のせいか血は既に洗い流され、まるで寝ているようだった。
「追いつきましたよタキオンさん!!さぁ、早くこの傘に入って一緒に校舎に戻ろうではありませんか!!」
「すまないが急いで担架と人を数人呼んでくれ、ついでに保健室にけが人がいると伝えてほしい」
追って来たバクシンオー君に色々と頼む。彼女は普段ぬけている印象があるが、こういった場面では少なくとも正常な行動が出来ていた。
「ムムッ!!けが人とあれば急いでやりましょうとも、バクシンバクシーン!!」
彼女は走りの邪魔になる傘を放り投げ走り去る。方向からして保健室だ。間違いはないだろう。
「さて、すまないが色々と見させてもらうよ」
うつ伏せの彼女をひっくり返し、体を見る。脈と呼吸はある。顔は人の顔のような仮面を付けておりケガの有無は分からないが傷がないので後回しにする。体は雷に打たれたのか黒いコートのような服は所々破れ、肌を露出させてしまっている。
「出血はなし。足も折れ曲がっていない。精密な検査をしてないから分からないが、特にけがはなし…か」
安堵する。空からかなりの速さで落ちてきてケガが無いのは奇跡だろう。
「んっ?この女、ブラジャーを付けていないのか。幾ら胸がなかろうと、付けるのが一般常識ではないのか」
破れた箇所から覗ける胸部にブラジャーはない。
「待てよ、この肩幅、一般的な女性としてはかなり広い。そしてこの筋肉、女性では付けることの出来ないものまであるぞ。まさかだが…」
そこに至って、私は漸くその仮面を外す。
「男…だと…」
驚きのあまり固まった私はその後一切の記憶が無く、気付いたら保健室で暖を取っていた。
並行して投稿している作品の本来なら次のシリーズの予定でしたが我慢できず作ってしまいました。そのため同時並行作品では出てない要素も出ると思いますし、今回のパートもその作品の最終回(予定)を繋げて作っています。なのでこっちのシリーズは手抜きか投稿頻度クオーターのどちらかになると思うので、ご容赦ください。