男がほとんどいない世界に来(てしまっ)たロイ   作:ロイ1世

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生存報告を兼ねた短いお話です。どうぞ。

前回のあらすじ

タキ「今北産業」
スパ「??????」
アイ「ほーん」



伝わるかこれ?


つまらないのね

 私が横七海洋ビルを訪れてからというもの、前回と特段変わることなく時間は過ぎていった。

 

 横七の学園に対するトレーニング器具の貸与が前回よりも少し貧弱だったことには驚いたが、トレーニング計画に大きく狂いが生じることはなかった。

 

 そうそう、トレーニングと言えばだが、私はテールに対して一切の期待をしていなかった。元々テールの育成能力を知らなかったこともあるが、私はこれでもタイムリープ前の学園では彼亡き後はトレーナー代行としてチームを切り盛りしていた。卒業後には奇しくも彼と同じく学園からのスカウトでトレーナーとして学園に残るよう頼まれたほどだ。その私をテールが提案したトレーニング計画は唸らせた。BBを始めとする私の身体能力を把握する機械が無いにも関わらず私の状態を正確に把握し、効率的に高めることができる計画。アシスタントとしてテールの傍にいるラモーヌ君が書類仕事の補佐しかやることがないとぼやくほどだ。

 

 そうした予想外もあってか、私の中に眠る彼の力はジュニア期の締めであるホープフルステークスの時点で覚醒し始めていた。存在が危ぶまれるほどの小ささであるアヴァターのナノマシン、あれのモデルとなった力である『粒子』はまだ使うことができないが、私の身体能力は既にウマ娘の域を脱していた。

 

 そうした中で迎えた弥生賞。かつてはチームメイトだったカフェとの一戦は、私の予想通り、私の圧勝で終わった。何の感情も湧かない。当たり前だ、以前は負けたがそれでもハナ差。ほんの少し何かが違えば勝てたレースだと今でも思っている。そんなレースになる()()()()()弥生賞だが、今の私は大幅に強化されている。おそらくだが、今の私なら凱旋門賞を始めとする世界のレースどころかウマ娘の祖とされる三女神にも大差を付けて勝つことができるだろう。

 

 勝利後のアレコレを終えた後の控室で着替えているとき、ノックもなしにラモーヌ君が入室してきた。

 

「…ノックをするのがマナーなのではないかい、メジロラモーヌ君」

「あら、そう。ごめんなさいね、ノックをするのを忘れていて」

「全く、不審者でも入って来たのかと思ったよ」

 

 既に私は粗方着替え終えているため素肌を晒す心配は無かったが、もしラモーヌ君が彼だったらなと考えると少し残念な気持ちになる。

 

「正直に話すわ。貴女ほどの人なら下手に隠すことの方が失礼だから」

「そうかい。それで?」

「貴女、レースが楽しくないわよね」

「…」

 

 返す言葉は無い。あるはずがない。こんなウマ娘のレース、勝てない方が可笑しいのだ。人間の大人が生後一週間にも満たない赤子を相手にスポーツカーで100m競争をするようなもの。負けることに驚くことはあっても勝ったことに対しては何も思わない、ただ当然のことだと思うだけだ。

 

「それと、これは答えにくいでしょうけれど、言わせてもらうわ。貴女、テールトレーナーのことを避けているわよね」

「…」

「私は貴方の事についてトレーニング以外のことはあまり知らないけれど、それでも風の噂で聞くことはあるわ。私生活が壊滅しているだとか、風呂に入らないせいでかなり臭うだとか…」

「それは…!!」

「ええ、テールトレーナーは貴女の支えになりたいと言って家政婦紛いのことをしようとしていたけれど、断ったそうね」

「た、確かに一時期はかなり生活が乱れていたが、それは契約前の話であって、いまは…」

「私が話したいのはそこではないわ。よろしい? テールトレーナーは貴女の支えになろうと、少しでも近くにいようとしている。だというのに貴女はそれを拒み、常に距離を取り続けている。その理由を聞いても?」

「…」

 

 参った。私はラモーヌ君に対して何一つ言葉を返せない。精神的には遥かに年下であるはずの彼女に対し、有効的な反論ができない。

 

 テールはテールだ。たとえ記憶を失っていたとしても、彼から大切なものを奪い、追い詰め、そして彼がああなってしまう遠因を作った。私にとっても彼を失わせたという許すことのできない理由がある。それになにより、私はテールが怖い。

 

「はぁ・・・。あれだけあなたが感情を乱していた人だというのに、つまらないのね。それでは、御機嫌よう」

 

 

 

 

 

 

「私だってそう思っているよ」 

 

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