男がほとんどいない世界に来(てしまっ)たロイ   作:ロイ1世

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ロイ アメリカに行く その3

「臨時ニュースを申し上げます!!臨時ニュースを申し上げます!!先程確認した情報によりますと国防省、保全省*1及び男性保護委員会の会長であるクラウス氏の邸宅が相次いで爆破されました。死人は確認されていませんが、被害は…」

「やるじゃない、これで小娘に負けなきゃ言うことなしなのに」

 

 チップが拾うラジオ放送から、忍者が任務を達成したことを確認した。本当に戦闘能力の低さだけが欠点である。

 

「あんたもそう思わないか、えーと…」

「ジェシー…ジェシー=アンダーソン…」

「そうだそうだ。そうだったな」

 

 二日前に会ったあの誘拐の主犯格ともう一度顔を合わせていた。

 

「それでだn」

「ふざけないで!!ここは合衆国の軍司令部よ!!あなたみたいなテロリストを絶対に許したりはしないわ!!」

「これは本当に手厳しい。二日前に銃刀法違反と誘拐未遂をした人物とは思えない」

「だいたい、個人邸は兎も角、官庁を爆破するなんていったいどういうつもりなの!!」

「それをお話ししたくて会いに来たんですよ」

 

 腹立つなこいつ。改めて確認するが今いる場所は第38米軍陸上師団司令部。総員は非戦闘員含め20万は下らない一大拠点である。そしてこの部屋は師団長でもあるジェシー=アンダーソンの執務室。外の衛兵は既に倒されており事実上の一対一。加えてこちらは武装をしており銃口を相手に向けている。敢えて言おう、私の勝ちだ、と。

 

 それなのにも関わらず、こうも威圧的なのは何なん。

 

「私は一つだけお約束をして頂きたく参上いたしました。それはつまり」

「黙って!!あなたはテロリストよ!!私達はテロには屈しないわ!!」

「…殺すよ、あんた」

 

 ヒステリーを起こす奴と話しをするためにはどうするか、方法は簡単、銃を撃ちます。すると相手は完全に黙ってこちらのペースで交渉ができます。

 

「失礼、約束とは簡単で、二度と日本で誘拐を目的とした活動をしないで頂きたいのです」

「ゆ、誘拐って…」

「お忘れですか?あー、失礼失礼。不時着の衝撃で記憶がないんですね、大丈夫です、一から説明してあげます。あなたは護衛に扮した特殊部隊5名を連れ日本に入国。2人を輸送機に残し中央トレセン学園に行きそこで私を誘拐、太平洋を半分渡ったところで事故が起き私は自由の身に。あなたたちは魚のえさの気分を体験した身になりました」

「私は、テロには…屈しn」

「黙れ犯罪者」

「・・・」

 

 危ない危ない、まーた弾が出ちゃったよ。気を付けような。

 

「先程の約束、大統領閣下は容認、上院も承認、保全省、国防省、後保護委員会は拒絶しましたが、もう出来そうにありませんね」

「だから…何って言うの…」

「いや別に。あなたも変に意固地にならずに飲んでいいんですよって」

「わ、私は…私の、い、意思で、あた、あなたを」

「川に投げ込みますよ。…いい川ですね、特にほら、大きな川とか。日本の川にはいない大きな生き物がいて」

 

 特に鞄とか財布の材料にしたら高級品になりそうなやつ。

 

「…私にどうしろと」

「簡単ですよ、先程も言いましたが日本国内で誘拐活動をしなければいいんですよ。簡単でしょ?」

「それでも、私には合衆国に新たな遺伝子を納める義務が」

「合衆国ってのはいつから日本を含むようになった?おたくらは税金をイギリスやフランスからも取ってんのか?違うだろ?」

「…」

「元から手に入る物ではなかったと諦めるんだな」

 

 まだ国内のを攫うのはよくないが妥協して許してやろう。だが外から奪ってくるのは流石に堪忍袋の緒が切れますよ。

 

「…」

「あんた、どうせ口約束で済ませるつもりだろ」

「…」

「だんまりか。まあ別にいいよ。破ったらここも吹き飛ぶだけだから」

「…クレイジーなテロリストめ」

「どうも、クレイジーな人攫いさん」

 

 ホントにこのババア嫌いだわ。腹いせにシュールストレミング開けて正解だった。部屋は地下だから窓がなくて換気扇だけが頼りだから換気扇壊せとけば苦しみ藻搔くだろ。ざまあ。

――

「米軍があなたを捕まえに少し本気を出すみたいです」

「まじで!?アイ、詳細を」

「予想通りジェシー=アンダーソンは外部に増援を要請していました。規模は戦闘車両含む一大隊」

「そこまでかー。回収チームとの合流地点は?」

「西海岸ならどこでも」

「西海岸!?ここ東海岸だよ!?」

 

 潜水艦が迎えに来てくれているのだろうが諸機関は東海岸に集中していたので東まで来て欲しかった。大陸横断なんて時間が掛かり過ぎる。

 

「ペリカンとかは?無いと困るよ?」

「そう言うと思っていたので既に。場所はそこから南に行った廃工場です」

「流石にだよね、よかったー。速く行きますねー」

 

 基地から盗んだ車両が止まらないようアクセルペダルに重しを置いたら飛び降りる。その勢いのままハイウェイ下まで落ちたら声を掛ける。

 

「忍者、いるな!!」

「こちらに」

 

 天井に張り付いていた爆破テロの実行犯がペタリと落ちてきた。

 

「予定通りだ。目的地はここから南西。急ぐぞ」

「了解」

 

 機械音声らしい抑揚のない声で返事をした忍者の体はバラけて粒子になり、俺の身体に纏わる。

 

「悪くない気分だ」

「最高速度は時速130㎞。ちょっとしたドライブですよ」

「音速よりも遅いな」

 

 高架下を飛び出して再びハイウェイに上がり、南西を目指して爆走する。自律可能なだけあり、勝手に動いてくれているので不思議な気分だが疲労感は感じなかった。

 

「後方からパトカー」

「武器は刀だけか。不利だな」

「そこの耳なしウマ娘!!止まりなさい!!」

 

 パトカーが二台、後ろから接近している。こちらの速度が100ない位なので向こうもかなり出している。運転手と助手席にいる奴は武器も一般的な拳銃しか持っていなさそうなのでとりあえず軍の追手ではない。

 

「対処方法を」

「イメージを伝える。出来るな?」

「イメージを受信中。再現…物理エンジンにて試験…成功。実施します」

 

 突然倒れるように転がり始める体は隠していた刀を出し、すれ違いざまにパトカーのタイヤを斬りつける。

 

「危ない!!」

 

斬ったのは片側だけなので内側に回転しながら接近し、パトカー同士で衝突をしてしまった。

 

「パトカーの停止と生存者を確認。また、検問が設けられていることも衛星から確認。迂回します」

 

 銃撃戦になったら死人が出かねないので避ける為下に降り、一般道を走る。道行く人からは視線を集めたが、不利なことにはなっていない。60~70㎞出す生き物はウマ娘としてカウントされているのだろう。

 

「そこが合流地点の廃工場です。ペリカンは後5分で着きます」

「5分ね。ヤバいじゃない」

 

 後ろからはサイレンの音が鳴り響いており、5分以内に到着するのは明白だ。

 

「工場内の地図はあるか!?」

「…大手建設会社に設計図を確認。地図化します」

「よし」

 

 地図を見るにこの工場は小さめな食品加工工場だったらしく、あちらこちらに食品しか入ることのできない空間があった。だが部屋数は少なく、さらにそれらは小さいので余っていた土地に建てた、と言われれば納得するものであった。

 

「SWATが接近中です」

「急いで入ろう」

 

 確実に見られたと思うが、それでも中に入る。やり過ごすなんて甘いことは考えていない。逃げるか倒すの二つに一つだ。

 

 そしてこのスーツを忍者と言っている由縁の一つが、確実にそれらのうち一つを実現できるということの自信になっていた。

――

「突入!!」

「GOGOGO」

 

 重武装のSWATチームが彼が入った廃工場に突入した。人数は8人。おそらく各地に展開していた部隊のうちの一つと言ったところだろう。先陣を切った奴の手にはライオットシールド。続く奴らは皆サブマシンガンを持っており、完全に殺すつもりだ。

 

「お前はそっち。俺はこっちを」

 

 チームは二手に分かれて進むが部屋数が少ないせいですぐに彼がいる部屋についてしまった。

 

「…止まれ」

「クリア…でしょうか」

「ああ。だが、何か妙だ。他のチームもクリアと言っている」

「逃げられた?確実にこの建物に入っていきましたよ」

「この部屋…照明は点くか?」

「いえ、ですがライトなら」

「頼む。入り込む自然光では見えないところが多過ぎる」

 

 下っ端の方がライトを渡し、二人して部屋を照らす。

 

「んっ?」

「どうした?」

「あそこ…」

 

 下っ端の方が指差す先は部屋の隅で何もない。だがそこには、妙な歪さがあった。

 

「どうなっている?光が変に屈折しているぞ」

「この形は…人?」

「まさか!?」

 

 流石はSWAT、気付きと次の行動にタイムラグが殆どなく、手持ちの銃を撃とうとする。だがそれよりも速く、歪んだ光…透明になっていた彼は動き出していた。

 

「ロケットカット」

 

 機械音声が技名らしきものを告げながら壁を蹴って二人に突進し、みねうちで黙らせる。

 

「やっぱステルス迷彩も光を当てられたらな」

「ですが迷彩効果は一般的なものに比べたらかなり優秀です」

「そうでなきゃ困る」

 

 透明のまま彼は進みだし、すれ違ったSWATの隊員を気絶させていく。結局、迎えの飛行機が来るよりも早く彼はSWATチームを倒した。

 

「ペリカンがステルス状態のまま降下中」

「大丈夫、モーションセンサーで見えてるよ」

 

 彼は屋上から飛び降りるように走り出し跳躍すると、消えてしまった。だが彼が走り出した場所から見ると彼は空中で空気椅子をしていた。おそらく、迎えの飛行機も透明だからこんな奇妙な光景を見ることができたのだろう。

 

「作戦完了、これより帰還する」

 

 彼が透明の輸送機に隠される前にそう呟いたのを、私は聞き逃さなかった。

*1
国家の維持・保全のため男性収容所の管理や運営、近親相姦にならないよう相手選びを行う省。保護委員会とはズブズブ。




脅迫に対する反応集

大統領「横七は刺激したくないから仕方ない」
賛成した大臣・局長「知らない子ですね」
国防省「脅迫!?ペンタゴンを舐めんじゃねえ」→爆破
保全省「男は離さない、ゆずれない、逃がさない、渡さない」→爆破
保護委員会「上に同じく」→爆破
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