男がほとんどいない世界に来(てしまっ)たロイ   作:ロイ1世

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ウマネストは色んな意味で面白かった。


何故回り方変えたらデバフを無効化できるのか、それが分からない。


ウマネスト その1

「いや、それはちょっと…」

「懇願!!もう横七しか頼れる者がいない!!何とか、何とか、VRウマレーターのバグを解消してくれ!!」

「いえ、ですから…」

 

 エアグルーヴのオークスが妥当な形で終わり、新メンバーの育成計画とタキオンとカフェのデビュー戦への調整をしていると、理事長から深々と頭を下げて新トレーニング器具のバグ取りを頼まれた。

 

 VRウマレーターは横七に駆逐されたトレーニング器具業界が巻き返しを狙って開発したバーチャルリアリティーのあれをこう…何だったか。確かルームランナーの進化系みたいなものだった。ただ実質学生相手の商売ということで折角搭載したVR技術をゲームやら何やらに使えるようしたところ、かなりの量のバグや不具合が生じたらしい。だが追い込まれている器具業界は座して死を待つか座すならバグ取りをするかの選択でバグ取りを選び、順調に作業が進んで近日解放の予定で今日試運転をしていた。ところがテストランナーのシンボリルドルフがずっと戻ってこないことに加えサーバーへの介入もブロックされお手上げになったところ白羽の矢が立った。

 

 学園は生徒、それも無敗の三冠馬であるシンボリルドルフの安全確保を優先し、VRウマレーターの全ての権限を横七に移させ、問題を解決させようとしている。関係者は全員泣いて良い。特に開発者。

 

 ただこちらとしてもいきなり訳の分からないものを渡されて人命が掛かっているとか正直キラーパスを回されたとしか思えない。おまけに解析に掛けれる時間もシンボリルドルフの生命維持を考えるとないに等しい。もう一度言う、関係者は全員泣いて良い。

 

「頼む!!既に問題はシステムではなくゲーム内にあることが分かっている!!履歴からしてウマネスト、ウマネスト内に問題があるんだ!!ウマネストをプレイすればおそらくは…」

「そこまで分かっているなら他に当てがあるでしょう」

「既にエルコンドルパサーとグラスワンダーに頼んだが、変化がないのだ。しかし君なら…」

「おい、ちょっと待て。今エルコンドルパサーとグラスワンダーって言ったか?ウマネストの関係者ではなく何で生徒にやらせた!?」

「あの場に居合わせたのだ。専門の者を呼ぶには時間が掛かり過ぎる。2人とも了承してくれたから…」

「やるしかない、か…」

 

 机の上にはいつぞやのチップを掌握しようとして壊れたゴーグル。だがあの後修理をし、さらにチップや色々なものに干渉して壊れないよう改造し、動作確認もした。…つまりは準備万全。

 

「請負いました。横七として生徒三名の命、必ずお守りします」

「感動!!任せたぞ!!」

――

「装備は…よし、問題ないな。スキルも職業も同じ、外見もだ。短時間でよくやった」

 

 ウマネスト様に急遽俺を作らせたが、流石はアイ、寸分違わない俺が出来ていた。

 

「まずは二人と合流…いや、元凶潰し?」

「それなら二人と合流してついでに楽しんじゃったら?折角の機会だし」

「ああ、そう…そう、だな。加…古…」

 

 右から話し掛けられたので自然と返していた。だが、間違いなかった。間違いなくそこにいた。そこにいたのだ。

 

「古鷹型重巡洋艦の二番艦、加古っていうんだー。知ってた?」

「お前このッ!!」

 

 分かってる。どうせアイが加古を道案内のようなアシストキャラとして用意したんだ。本物は既に死んでいる。だが、それでも…それでも…。

 

「ありがとう…また、会わせてくれて…」

「もう、一々抱き着いて泣くんだから…」

「でも…」

「はぁ、私はいつも一緒にいるのに」

「…ありがとう」

 

 感傷に浸っていると遠くの方から煙が上がって来た。あの上り方からして火事だ。いや、ファンタジー世界なら火炎魔法みたいなものもありえるのか。だとしても、問題が起こってるに違いない。

 

「加古、10時の方向にある煙の発生源を調査する」

「オッケー、ミニマップに表示するね」

「ミニマップ?…おお、すげえ」

 

 視界の端に小さな地図が表示された。瞳の中にあるのか、手が貫通し、視線を動かしても常にそこにあった。FPSゲームをしている気分になって楽しい。

 

「距離は数十㎞、十分もあればいけるね」

「よーし、抜錨!!」

――

『神の雷によって、魔王は敗北し、この世界に平和が訪れるであろう!!』

 

 あの預言者の言っていたとおりヒーラーの雷魔法を覚えることはできましたが、村に魔物の大群が押し寄せてきてしまいました。先程から戦っていますが、きりがありません。

 

「グラース、大丈夫デスカ?」

「ええ。そういうエルこそ、まだたくさんいますよ」

「無問題デース!!なぜなら、私は!!最強!!」

「ふふ、行きましょう!!」

 

 エルはまだ余裕があるよう振る舞っていますが、私よりも前で戦い続けるのはいくら戦闘職でも辛い筈です。キングさんやスカイさんを倒せたのは良かったですが、ここまでたくさんの魔物の群れ…。レベルアップをもう少しするべきでした。

 

「グラスちゃん、エルちゃん!!3時の方向からさらに大群が来てるよ!!私も戦うから二人は一旦休んで!!」

「マッチョスさんは村の中にいてください、私達が、何とかしますから」

「でも!!」

「エルたちは勇者デスヨ?こんなところでは負けません!!」

「…分かったから…死なないでよ!!」

 

 マッチョスさんは強いですが、ウマ娘程ではありません。私達でも辛いこの戦いに、彼女が参加しても徒に犠牲を増やしてしまうだけです。

 

「はぁ…はぁ…こうなるのなら、剣士を選ぶべきでした」

「グラスは今でも十分剣士デスヨ」

「あらー、私はヒーラーですよ。…アッパーダウン!!」

「ヒーラーはそんな格闘技をしないデース」

 

 失礼ですね。これは杖術の技とウマ娘の種族技の融合技ですよ。

 

 

 

 ですが、本当にまずくなってきましたね。マッチョスさんの言っていた増援は飛行系。エルは勿論、魔力が尽きかけている私には見てることしかできません。ですが逃げてしまってはウマ娘としての名が廃ります。例え倒せなくても、走って時間位なら稼げるはずです。その間に何とか…何とか。

 

『   戦闘メンバー  に  ロイ  が  加わりました   』

「この表示は…?」

「この名前ハ!!」

 

 連続する銃声と爆発音、飛行系の断末魔。指揮者と思しき巨大な鎧を着ている人型魔物を踵落としで大地に沈め、群がって来た小型の魔物を自分を囲むように全方位でグレネードを爆発させで倒しました。

 

「大丈夫か、エルコンドルパサー、グラスワンダー」

「「トレーナーさん!!」」

 

 爆発の煙の中から見せた恰好こそいつもの服にいつもの仮面ですが、僅かに風に揺られて見えるコートの内側には機械がぎっしりと着いていました。

 

「2人は下がっていろ。後は俺達が片付ける」

「俺…たち?」

「無理デスヨ!!ウマ娘二人で辛い戦いだったのに、トレーナーさん一人だなんて!!」

「言っただろ?俺達が片付ける。背中は任せた」

「おっ任せ―!!」

 

 トレーナーさんの背中から上半身だけ女性が出てきました。2人は魔物の群れの中に入ると素手でそれらを倒していき、わずか三分で殲滅してしまいました。

 

「すごい…あれだけいたのに、素手で…」

「それだけじゃアリマセン。背中の女性とトレーナーさんの息、まるで私達のように合ってイマシタ」

「あの男の人、グラスちゃんたちの連れ?うらやまけしからん」

――

「トレーナーさんのステータス、チーターデスカ?」

「全ステータスカンスト、装備効果も凄いです」

「バグを直しに来たんだ。遊びじゃないのよ」

 

 あの後宿屋で休みながら今後の計画を立てるため、取り敢えずロイさんのステータスを見てみましたが、私達の数段どころかいる世界が違います。

 

「決メマシタ!!明日、私達は魔王討伐に出発シマス!!」

「エル!!まだ時期早々ですよ!!焦ってはことを仕損じます。レベルアップに努めるべきです」

「大丈夫デスヨ、トレーナーさんがいれば、百人力デース!!」

「トレーナーさんからも何か言ってください」

「エルコンドルパサーの案が焦っているのは事実だが、時間がないのも事実だ。補給なしで走っているシンボリルドルフのことを考えれば、明日にでも決着をつけたい」

「そうですが…」

 

 今日の戦いで私達は無力であることを痛感しました。このまま魔王に挑んでもロイさんの足を引っ張るだけです。

 

「大丈夫だよ、明日決戦でも用意はある。グラスちゃんが心配するようなことは起きないよ」

「あなたは?」

「加古だよ?ロイから話し聞いてない?」

 

 先程上半身だけ出して戦っていた女性は今はロイさんの隣に座ってちゃんぽんを食べています。ずっと思っていましたが、あなたはどうしてそんなにロイさんに馴れ馴れしいのですか?気分が悪いので離れて欲しいです。

 

「おお、怖い。これじゃダメかな?」

「グラス?何か言いましたカ?」

「い、いえ…何も言っていませんが…」

 

 心が読める?でもどうやって…。

 

「ロイを相手にしてたら、自然とできることが増えていくよ。だってこれだし」

「お前なあ…」

 

 苦笑いを楽しそうにするロイさん…。心の中の波が荒立って行きます。

 

「とにかく、我々は明日、魔王城に討ち入りし決着をつける。各員今夜は十分に休息をとり、明日に備えろ」

「了解!!」

「了解デース」

「わ、分かりました…」

 

 ちゃんぽんを食べるのを一瞬で中断してロイさんに敬礼をする加古さん。それに倣って敬礼するエル。加古さんが敬礼する速度は脊髄反射と言っても過言ではない速さでした。ロイさんの言い方がそうさせるのでしょうか。

 

「じゃ、俺達はもう寝るから。2人も早く寝ろよ」

「おやすみー」

「お休みデース」

「お休みなさい」

 

 ロイさんたちは上がって行ってしまいました。いくらロイさんの体から出てきたとはいえ、異性が同室で寝るとは…。

 

「グラス、行きマスヨ」

「えっ、はい。私達も早く…」

「違いマスヨ、トレーナーたちの部屋、覗きましょう」

「エル!?何を言っているのですか!?」

「声が大きいデース!!」

「あ…お騒がせしてすみません、失礼しました」

 

 周りにいた他の利用客の方から見られてしまいましたが、動揺が落ち着きません。

 

「エル、どうしてそんなことを」

「だってデスヨ、もしかしたらトレーナーは今から夜の熱愛、愛情、大爆発!!なのかもしれませんよ。気になるじゃないデスカ」

「夜の…不埒ですよ!!」

「でも、グラスだって二人の関係、気になるんじゃありませんか?」

「そ、それは…そうですが」

 

 ロイさんと加古さんが…。

 

 …。

 

 ……。

 

 ………。

 

「行きますよ、エル。グラスワンダー、推参!!」

「ワーオ、恋する乙女は凄いデース」

――

 私達が利用している階は私達の部屋とロイさんたちの部屋しかありません。つまりいくら部屋前で覗いていても怪しがる人はいません。

 

「ここですね」

 

 扉を少し開け、隙間から見ます。中にいる二人はベッドの上に隣同士で手を繋ぎながら座っていました。

 

「それで戦力差はどうにでもなるとして、問題は魔王がどれほど強いかだ。やばい奴だとカンストでも危険じゃないのか?」

「だとしてもロイなら大丈夫だって」

「でも…俺は…」

「あれは運と巡り合わせが悪かっただけだから、気にしない気にしない」

「…ありがとう」

 

 加古さんに背中を擦られる弱気のロイさんを見るのは珍しい…初めてな気がします。いつものどこか強気な感じは鳴りを潜めて今は子供みたいです。

 

「大丈夫、ロイはいつも私達のために戦ってくれる。そのときのロイがどれだけ強いか、私達は良く知ってるから」

 

 今度は膝枕をされながら頭を撫でられています。その表情は暗いですが幸福感はあるようです。そしてそのまま眠り、加古さんはロイさんの体の中に戻って行きました。

 

「…つまらないデース」

「いえ、私達ももう寝ましょう。これ以上遅くなるのはトレーナーさんに顔が見せれません」

 

 加古さんはおそらくロイさんの…。ですが、私は負けを認めれるほど大人ではありません。必ず、私がそこに立ちます。




ロイ

基礎ステータス カンスト

職業 戦う提督

スキル ???

装備 ???

特徴 横七の科学力と????の力で戦う提督。身内に手を出すと怖いぞ。
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