男がほとんどいない世界に来(てしまっ)たロイ   作:ロイ1世

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見返しながら思ったけど、やっぱこいつやべえよ。


ウマネスト その2

「あれが魔王城か。大した事なさそうだ」

 

 はるか遠方にそびえたつ城はいかにもファンタジーものといった感じの中世ヨーロッパのレンガ造りの城だった。城壁は無く大砲もないのでこちらに届く有効な遠距離攻撃は無いだろう。つまり…

 

「一方的に終わらせる」

「ワウ!?すごいマジックデース」

「これは…大砲?いえ、艦砲でしょうか」

 

 右腕から51㎝単装砲を出し、構える。わざわざ勇者御一行みたいに城内に突入して戦うような馬鹿な真似はしない。遠距離から複数回砲撃を行い魔王とその手下たちには瓦礫の下敷きになってもらう。

 

「撃ち―かた始め!!」

 

 51㎝砲から発射された対地用の散弾は着弾する直前で爆発し込められていた無数の小さな徹甲弾を放出しちんけな城を一撃で半壊状態にする。

 

「続けて砲撃する、二番砲塔起動。一番砲塔は冷却、排莢、装填を速やかに行え」

「これが噂の…横七をトレセンにつけた男…」

「エル。外ではあまりこのことを言わないようにしましょう」

「そ、そうデスネ」

 

 左腕から出した51㎝の砲撃で、半壊したちんけな城はもはや城という名称を失ったただのがれきの山と化した。

 

「電探に感あり。空から来るよ!!」

 

 観測員兼見張り員の加古が声を張り上げた。

 

「一番の換装は間に合わないか。次弾は対空弾を使う。一番はこのままの状態で対空戦闘を開始する!!」

「了!!」

 

 背中から半身だけ出して加古が周辺状況を教えてくれる。だが電探の動きからして一番を対空弾に換えていたら接近されてもう使えなくなってしまう。

 

「よし、撃つ!!」

 

 信管の時間を調節し飛行型の軍団の鼻先で爆発したそれは城の時と同じように群れに風穴を開けて行く。

 

「どうだってんだ」

「凄いですよトレーナーさん!!これなら後は魔王を倒すだけデス!!」

「おいおいお前たち!!このゴルシちゃんの風雲ゴルシ城をあんな風に壊しやがって!!ちっとは手を抜けよ!!」

 

 地平線の彼方先から銀髪…葦毛のウマ娘が走ってきた。…知らない奴だ。

 

「ゴルシ先輩?ここで何をやってるんですか?」

「なんだグラスとエルじゃないか!?ちっと面白そうなもんがあったから試しにウ魔王にでもなろうかと思ってよ。城と魔物軍団をこさえてみたんだが…そこの男に殲滅されちまってよ。代わりに幹部になってくれねえか?」

「世界の半分でもくれるのか?」

「お前…あたしの城をぶち壊しやがって。だがま、お前ほどの奴なら世界の半分とドーナツの半分を分けてやるぜ」

「トレーナーさん!?」

 

 二人の話し方からしてこいつはゴルシ…ゴールド…ショップか?兎に角トレセン生だ。そして何やらこいつが本来なら魔王を倒すはずのウマネストを弄くりまわして自分が魔王…ウ魔王?馬王?になろうとしている。

 

「嬉しい話だが、こっちは仕事で来てるんだ。さっさとゲームを止めろ」

「なんだよあたしが折角勧誘しているのに。こうなったら、無理矢理にでも仲間にしてやるぜ!!」

 

 ゴールドショットはこちらに向かって走り出し、ドロップキックを仕掛けてきたが、脚を掴んで宙づりにする。

 

「なっ…ゴルシちゃん流奥義、アルティメットドロップキックが!?」

「もう一度言う。遊びじゃないんだ。今すぐゲームを止めろ」

「だが、この程度で負けるゴルシちゃんじゃないぜ!!影分身の術!!」

 

 ポン、という音と共に発生した煙によってゴールドシフォンは無限に増殖し、囲まれてしまった。

 

「「「「どうよ!!このゴル術は!?」」」」

「うるせえ…誰か一人が喋ってくれ」

「お?いいぞ」

「ゴルシ先輩…」

 

 宙づりにしていたゴルシを叩きつければ分身体は消えると思い早速地面に叩きつけると、それは急に札束とJRA、ゴールドシップと書かれた小さなの紙切れに代わってしまった。

 

「残念!!本物は一つだぜ。悔しかったら当ててみな」

「…しまったな、面倒になる前にやるべきだったか」

 

 トレセン生ということで甘くしすぎた。倒せば強制ログアウトが出来るのだから脚を掴むのではなく体をへし折ってやるべきだった。この状況、あのドロップキックが今いる分身体の数だけやってくるとしたら、対応は厳しい。

 

「2人は離れていろ」

「わ、分かりました」

「お?やろってか?いいぜ!!やってやろうじゃねえかよこの野郎!!」

 

 無数とも言える分身体が一斉に走り出し、ドロップキックを仕掛けてくる。五体目まではどうにか出来たがそれから先は背中や腕、脇腹や脚に当たる。流石は馬。防御力はカンストだというのに結構痛い。

 

「おめえ、まだ立っているのかよ…こうなったら、全力でやるしかない、いくぞー」

「まずい…ッ!!」

 

 咄嗟の判断で51㎝砲を出し薙ぎ払って前方は対処するが背中に何発も受けてしまう。

 

「ガッ…ぐぅ…やるじゃ…ない…」

 

 艤装ユニットが変な音を出し始めた。いつ機能停止してもおかしくはない。

 

「大丈夫、ロイ?」

「すまない…背後を…任せた…」

「んっ?何だその女?…まさか、この宇宙を股にかける探検家、ゴールドシップちゃんですら知らないレア装備か!?くれよ!!くれたらすぐゲーム止めっから!!」

「悪いが…彼女は、渡さない」

「そうか、なら、力ずくでいかせてもらうぜ!!」

 

 ゴールドシップは背中を中心に襲ってくる。きっと加古を無理矢理にでも引きずり出そうとしているのだろう。

 

「やらせない!!」

 

 振り返り、飛び掛かって来た奴らの顔をぶん殴って弾き返す。だが…

 

「読めていたぜ、その行動はよー!!」

「何だと!?」

「掴んだぜ!!後はぐぐーいと引っ張り出す!!」

「ロイ!!」

「させるかーッ!!」

 

 壊れかけの艤装ユニットに過負荷を掛け、限界を越えさせて爆発させる。俺は勿論の事背中から出ている加古やそれを引っ張っているゴールドシップも爆発に巻き込まれる。

 

「ロイさん!!」

「い、痛え…加古、無事か!?」

「ロイの体にいなかったら、危なかったよ。日々の行いに感謝だねー」

「よ、よかった…」

 

 近くに転がって来た加古の怪我の容態を見るが些細な火傷くらいだ。

 

「どうして…」

「あん?」

 

 加古を掴んでいたのに反対に吹き飛ばされたゴールドシップが下を見ながら何か言っている。

 

「どうして、邪魔ばかりするんだよーッ!!」

「速い!!」

 

 一瞬で距離を詰められ、その白い手袋をした腕で殴られる。

 

「あたしは楽しみたいだけなのに、どうして、どうして!!」

「この感覚、どこかで…グエッ」

 

 正面から殴られたと思ったら、今度は背後から。それらが繰り返され落ち着いたのか、ゴールドシップは止まった。

 

「あたしはただ、遊びたいだけなのに…」

「二つだけ、少し偉そうなことを、言わせてもらおう…。君よりもはるか昔に生きた者として…。他人に迷惑を掛けるな、それと…」

 

 止まっていたゴールドシップは再び瞬間移動をし、今度は加古の目の前に立った。だが、そこには俺もいる。加古の方から俺に近付いていたから、自然と加古の目の前に出ると俺に挟まれることになる。

 

「なっ!!」

「人の女に、手を出すなーッ!!」

 

 加古と俺の渾身の回し蹴りはその腹を捉え、遠方へと飛ばす。飛ばされた先から砂埃が立ち上がり、その中からゴールドシップも出てきた。

 

「てめえ…ぶっ潰す!!」

 

 分身体に使われていた紙がゴールドシップの元に集まると、それらはやがて人型を形成し巨大なゴールドシップとなった。

 

「ヒャッハー!!このまま踏みつぶしてやるぜ!!」

「…出番は、なかった方がよかったんだがな」

 

 空を見上げると、攻撃衛星たちが忙しなく向きを微調整している。

 

「あばよ!!四人とも潰してドーナツにしてやるぜ!!」

「さよならだよ、ゴールドシップ。くらえ!!」

 

 無数の光の柱が空から降り注ぎ、巨大化ゴールドシップを貫く。巨大化の原料が紙だからか、すぐに全身に火が回り本体だけが落ちてくる。炎に巻かれたせいか動けないようだった。

 

「ほにゃほにゃほにゃへ…」

「遊びは…これで、終わり!!」

 

 頭突きで本体の脳に衝撃を与え、気絶させるとゲームからログアウトさせる。するとバグの原因がいなくなったからか、こちらも強制ログアウトさせられた。

 

「しまったな。もう少し生かしとくべきだったか」

 

 目の前の世界が真っ白になる直前まで、加古に手を伸ばし、そして…触れた。

――

「…ハッ!!…何とかなったのか?」

 

 ゴーグルを上げて電話を探し、理事長をコールするとすぐに繋った。バグが直ったことやテストランナーがシンボリルドルフではなくゴールドシップにすり替わっていたことが伝えられた。VRウマレーターは既に機能を回復しており、明日からでも使えるとも言われた。

 

「これにて一件落着、とね」

 

 ゴーグルを頭から外し乱雑に机に置く。

 

 ウマネスト、悪くは無かったが偽物で満足するほど俺の欲は小さくない。

 

「また本物に、会いたいな」

 

 最後の最後に触れた加古の手はやはり本物と言ってもよいものだった。だがそれで心が満たされないのは、やはり頭がそれは偽物だと分かっているからだろう。

 

 ならば、本物に。まぎれも無い本物に、俺は会いたい。

 

 

 

 それが死体であっても。この想いは変わらない。




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「やっぱりあいつが===の。でも、まだ、まだ分からない」
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