よくわかってるね^-^ なんて思いながら見ていました。
何とか同乗すること出来た私は、誰も座っていなかった監視席の天窓に座る。伝声管を通じて彼らの声は聞こえた。
「右前方に民放のヘリです!!」
ヘリが赤く縁どられて強調される。確かにあのヘリは自衛隊だとかそういったものの戦闘用ヘリには見えない。
「進路は!?」
「Vに直進しています」
「生中継のテレビは…これか!!」
とある局の中継をスマホで見るとあの巨大な浮遊物…Vに近付く様子を撮影していた。画角からしてあのヘリだ。
「見えますか?あの飛行物体が!!あれは十分ほど前に出現して以来、沈黙して動きません。一見無害な様に見られますが、あれには無数の銃座があり、既に多数のヘリやドローンが破壊されています」
「後二十秒であのヘリは射程に入るな」
…腕時計を見る。
「どうします?どちらにせよ電波に我々の攻撃が乗りますよ」
「既に退避命令は出しているな?」
「はい、勿論です。既に日本国政府が発していますが、黙殺しているようです」
「なら、落とされても文句は言えないな」
後、十秒もない。
「ハッチを開く。…拾ってくれよ」
「了解、お気を付けて」
下から冷たい風が入ってくる。かなり高空にいるので酸素は薄い筈だが、マスク無しでも苦しくないし暖房で暖かいのは横七の技術の結晶だからだろう。
「エントリー!!」
トレーナー君はカタパルトのようなもので空中に飛ばされ、緑色で強調表示される。彼はそのままヘリに近付くと、フロントガラスにへばりついた。声は聞こえないので再びスマホを出してさくらテレビの放送を見ると彼は退避指示を出していた。
「繰り返す!!退避しなければこのヘリは撃墜される!!」
「脅しに屈するな、機長!!」
「これは脅しではない!!」
「こ、このまま直進します!!」
「…」
トレーナー君は無言で「バ鹿め」と呟くと右腕でガラスを突き破って操縦桿を握り、そしてへし折った。バランスを保つことが出来なくなったヘリコプターは、高度を落としながら地上へと落下していく。
「脱出しろ!!パラシュートには反応しない筈だ」
「む、無理だー!!うわー!!」
「機長!!…逃げやがったな」
「お前も脱出しろ」
「悪いが、ジャーナリスト精神が拒否するんだ」
「それなら、そこで朽ちろ」
トレーナー君はそう言い残すと再び跳躍してこの機体に戻って来た。
残っていた彼女もヘリの復旧が見込めないと悟ったのか、すぐに脱出した。その後、墜落したヘリは幸運にも、或いはトレーナー君がそこに落ちるよう計算して破壊したのかは分からないが広大な空き地に落下した。
「周囲に機影、なし」
「他部隊も既に集結しています」
「よし、これより我々はVに乗艦する。万一に備え、警戒を厳としろ」
――
「ここが…V?」
あの後私達は周囲にいた他の機体と一緒にVと呼ばれている飛行物体の格納庫に着陸した。
「アリス、こいつを見張ってくれ。ジェローム、ダグラス、付いてこい」
「待ちたまえよ!!ここまで来て私はここで待機かい?」
「そういう条件だろ」
降りるトレーナー君に付いていこうとしたが、制止され、アリスと呼ばれたスパルタンに行く手を塞がれてしまった。
「艦内に敵がいる可能性もあります。機内で待機し、あなただけでも直ぐに脱出できるようにして下さい」
「私だけで脱出って…操縦は?それに君達はどうするんだい?」
「ペリカンには自動操縦機能がありますし外で友軍が待機していますので、安心してください。それに私達はスパルタンです」
「トレーナー君は!?」
「大佐ですよ?何を恐れる必要があるのです?」
「…」
何を聞いているんだとでも言いたげな声のトーンでそう言われた。確かにさっきのヘリでの一波乱を見ると、強ちダメだとは言えない。
「どちらに?」
「上。ここでは何も見えないからね」
「分かりました」
ここからでは何も見えないから再度監視席に行く。ここからなら格納庫とはいえ中の様子は見れる。
「あの袋は…何だ?」
格納庫には何百…もしかしたら何千という値に届くかもしれないほど大量の細長い袋が入っていた。監視席の機能を使いスキャンすると、そこには「MAR5-1022」「SPA3-091」のように幾つかのアルファベットと数字が表示された。
「他には何か…これは!!」
直感で色々と操作してみると、死角や入れない所を見るためのカメラビットがあった。
「トレーナー君に追いつかなければならないんだ。壊れないでくれよ」
カメラビットを射出し、操作する。磁力で浮いているのか、外観からはその動力は分からなかったが安定して浮遊している。
早速動かして探索してみると、艦内は車両が通れるような大型の通路と人用の細い通路で出来ており、いくつかの部屋は格納庫にあったものと同じ袋が詰まっていた。スキャンしてみると先ほどと同じように表示されたものと、『鳥海』や『古鷹』と言った山や川の名前から旧国名、さらには自然現象の名前など、様々だった。
そうして自分では戻ることが出来ないほど奥に行くと、そこはそれまで見たどの部屋よりも巨大だった。
「あれは…トレーナー君?」
上の方にトレーナー君が膝をついて立っていた。目の前には赤黒い水溜りがあり、彼はそこで仰向けになって、瞳を閉じてしばらく動かなかった。だが、その口許は…。声は…。
「加古!!皆!!やっと会えたよ!!やっと、やっと…会えたんだよ!!アッハッハッハ、アーッハッハッハッハッハ!!」
猟奇的な振る舞いと言っても過言ではないが、私はどこか、化け物を見たといった恐怖よりも可哀そうな人だなという同情の念があった。彼のこれまでの経緯を知っているからなのか、それとも時折垣間見えた彼の弱さを知っているからなのかは分からなかったが、私は彼…ロイ・ヴィッフェ・ヒドルフを慈愛の目で見ていた。
――――
「それで、この船はどうするんだい?」
「解体なんてできないし、しばらくは月面基地で整備だろうな」
「横七島では無理なのかい?」
「こんなデカブツ、宇宙じゃなきゃ建造も整備も出来ないよ」
ペリカンの中に戻った後、トレーナー君は他の部隊に幾つかの指示を出すと発進させ、地上に戻った。これだけのサイズだと維持するのにも一苦労だろう。それに、トレーナー君にとってこれはそこいらにある物、下手をすれば最も大切な物なのかもしれない。それを捨てるのは無理だろう。
「ロイトレーナー!!先程まで宙に浮いていたあれは何だ!?学園としても説明を求む!!」
戻って早々、理事長が扉を叩いて駆け込んでくる。
「トロピコ軍に納入予定だった飛行船の試作機です。詳しい説明は後日横七が記者会見を行いますので、詳細はそこでお願いします」
「承知した!!しかし、理事会と委員会が黙っていない。早急に頼むぞ!!」
「任せてください」
提督に過ぎない彼に何が任せれるのかは分からないが、理事長はそれで出て行った。しかしまだ他にも彼に話を聞きたい人間は多いようだ。
「××社の者です!!少しお話を!!」
「ノックも出来ないのか…」
確かこの会社はあまりレースに関する記事は書いていなかったはず。そして、騒動が終わってすぐにトレーナー君を訪ねたということは、何をしに来たかは明らかだ。
「先程、さくらテレビのヘリを攻撃し、墜落させたのはロイトレーナー、あなたですよね!?」
「悪いが正規の場でないと何も言わんぞ。取材がしたければ申請が受理されるのを待て」
「そんなものどうでもいいんですよ!!民衆はあなたから出る情報を望んでいるんです!!」
「…分かった。だがちゃんとした場じゃないから、碌なことは言わんよ?それでもいいのかい?」
「勿論です!!」
入ってきてからずっと眉が吊り上がり、口角が下がっていたトレーナー君だが、少しだけ収まった。
「先程の浮遊物は我々が2億8071万年前から追跡していた地球外地球生命体の空飛ぶ唾液です」
あーあ。始まったよ。
「??????」
「我々は唾液に含まれる小惑星トットトウセロに有害なマスコミクソクラレウムが…」
「ちょ、ちょっと待ってください!!」
「どうした?」
「さ、さっきから何を言っているんです!?」
「君が望んでいた大王ジャガイモの話だよ」
「ふ、ふざけているのですか!!これは取材なんですよ!!」
「取材じゃないだろ。現に申請書を受け取っていない」
「だ、だとしても!!そんなバ鹿げた情報、書ける訳…」
「書ける情報が欲しいなら、正式な場を待つんだな」
「ぐぅ…きょ、今日の夕刊に、お前が痴呆症に陥ったと書いてやるよ」
「ああそう。読む人がいればいいね」
「てめえ!!」
「ロイトレーナー、彼女がそうですね」
「ハッ!?」
トレーナー君が記者をからかって手を挙げられたとき、ダグラスさんがその挙げた手を掴んだ。
「は、離せ!!」
「侵入者を確保しました。…御同行、出来ますよね?」
「な、何を言っているんだ。私は真実を伝えるための正義の活動を」
「正義の活動をするなら申請書を提出し、受理されるのを正義らしく待ってください。…我々も正義の活動のため、あなたを連行します」
「ま、待て!!やめろ!!ロイトレーナー、こいつを離させろ」
「…最近物忘れが激しいな。君の隣にいる人は親御さんかい?」
「この…クソ野郎!!」
「耳も遠くなってきた。何て言ったんだい?」
「お、覚えていろ!!…私はまた来るからなー!!」
「あいよー、カビた煎餅用意してるねー」
「チキショー!!」
「…」
「……」
「………」
「二度と来るな」
地味にこの回は色々と問題がありそうな暗喩が多くて、もしかしたら怒られて修正とか削除とかになるんじゃないかなー、って思ってます。
まあパワポケが全年齢だし大丈夫か(楽観視)。
また、それとは全然別のことなんで関係ないんですけど、最初と最後の脳死台本会話のところ、今話題の会社名を呟くだけで法的措置を検討あるいは顧問弁護士と相談して対応されてしまう問題(濁し)とは全く関係ありません。
だってこれ作ったの多分年末年始ぐらいだから(それはそれで問題)。