新規実装艦の他、サブ艦として育成予定の艦も複数ドロップ。E6甲チャレンジはしようとしたんだけど、うん、対地装備が少なくて…。
E2はおかしいよ(ボソッ)
「エアグルーヴ、大阪杯を制した!!無敗のトリプルティアラウマ娘、エアグルーヴ。彼女の伝説はどこまで続くのか!!」
「チッ…」
情報収集の為、昔から変わらない習慣として点けていた朝のテレビニュースを不快感が消す。理事長から直接休職を言い渡され、誰もいない地方の実家に帰ってきていた。母は相も変わらず仕事で不在。偶に飛んでくるメールは腑抜けて腐った男との縁談、あのゲスクズゴミカスとはベクトルは違うが、それでもお断りだ。
だいたい母には男を見る目がない。20代前半でURA幹部という地位を手にし、結婚相手など選びたい放題だったはずだ。なのに選んだ男はこの家で自害した。そんな救いようのない臆病な卑怯者だったというのに、母は未だにその影に怯えている。
おかげで母はこの家に帰ってこない。お盆の時期も、学校行事のときも。墓参りもするし学校に来てくれるが、必ず家には帰ってこない。私を育ててくれた使用人が言うには、母は父を地下室に軟禁していたそうだ。一日中、陽の光の当たらぬ地下室で、今が朝か昼か夜かも分からない。東京にいる母が帰って来たときだけ、今が土曜の夜だと分かる。そんな生活を繰り返すこと半年、結婚してこの家に婿入りし、地下に閉じ込められるまでは快活で、善良な青年だったという父は荒廃した。
そしてある日、食事を食べずに放置し、不審に思った給仕係が扉を開けた際、ベットの下に潜って給仕係を襲い、地下を脱出すると今後の生活のため屋敷内にあった金品を強奪しようとしたが使用人に見つかり、美しく整えられたこの眼前に広がる日本庭園でその命を絶った。
回収されずに朽ちていくカラスの死骸のように害悪なあいつもそうだが、父も守られることの大切さを理解するべきだ。この世界は女性が如何いう因果か強い。ウマ娘では無い一般的な女性、私のようないわゆるヒト耳ですら基本的な身体能力は男性よりも強い。そんな世界で自分を愛してくれる存在に生命を保障され、守られることのすばらしさを。
…父が自殺したことを知った母は重要な会議を飛び出して家に戻ったが、門の前で倒れた。主治医が言うには過労とのことだったが、母は病床で、彼が呪っている、彼が私を拒絶したと精神異常を起こしていたそうだ。
その症状が回復すると、母は二度と家には帰らず、東京の職場付近にある寮で暮らすようになった。私を産んだ後も、私を家に預けて使用人に任せたままだ。まるで父の置き土産である私を忘れたいように。
あの使用人は私の実の母のように私を育ててくれた。尤も、父の話を私にしたことでクビにされてしまったが、お陰で私はこうしてトレーナーをやれていた。母とは違い、人を見る目はあったはずだ。エアグルーヴとサイレンススズカ、二人共素晴らしい素質と可能性があったのに…。
「気に入らないわね」
飲みかけのビール缶をそのままゴミ箱に捨てる。スーパーで買った安物ではない。ビール工場が一部の特別な客のために製造して直接卸している一級品だ。だが今はそんなものですら私を苛立たせた。
気分転換の為、ここ数週間と同じように散歩に出かける。巡るのは私にとって縁のあった変化してしまった場所だ。シャッター街となった商店街、住居開発された田んぼ道、遊具の数が格段に減った公園。全てが変わっていて、虚しくなっていた。唯一変わらないのは普段人のいない私の家だけ。学園での出来事を忘れてノスタルジック的な感傷に浸ったまま私は家に帰る。
「ただいま…」
誰も返事はしない。清掃員が来るのにはまだ早い。その筈だった。
「お帰りなさい、義明トレーナー」
「あなたは誰!!」
見知らぬ女性が庭に立っていた。そこは丁度、父が自殺した場所だった。
「ごめんなさいね、本当は門の前で待っていようと思ったのだけど、ここから流れ出てくるものに惹かれてね」
「通報します!!」
「待って、私はあなたの手助けに来たの」
「手助け?」
女性は被っていた帽子を外して一礼する。その美しさと瞳の冷たさにどこか心が惹かれた。
「ロイ・ヴィッフェ・ヒドルフに復讐したくはありませんか?」
「…」
「私はあなたが復讐を成す手伝いをしますよ?」
「…詳しく、話を聞かせて」
「いいね」
女性の足元から椅子が生え、彼女はそこに足を組んで座った。
彼女の髪は漆黒だが、その肌は真反対の白さ。そして瞳は金色に妖しく輝いていた。
「あなたはロイに復讐したい。どこまでやりたい?」
「…私は、あの男を…彼女を奪ったあの男を、殺したい」
自分の感情の全てを、吐露する。抵抗は無かった。どこかこの女性には、安心感があった。そしてこの女性も、私を全力で肯定してくれた。
「素晴らしい!!怨念の籠った殺意は強い動機になる!!」
懐から一つの木箱を取り出して渡してくる。中には一本の短剣が入っていた。
「それをどこでもいいから刺せば、ロイを一撃で、簡単に殺せる」
「これが…。でも、いつ、どうやって!?」
「そうね。近頃行われるファン感謝祭のときに近付いて刺せばいいわ。それにこれは横七の検査もすり抜けれる。ボディーチェックも…」
女性が短剣を私の顔に強く押し付けると肌の中に沈み、冷たい手が私の頬に触れる。
「いけるわね?」
女性が手を離すと短剣は頬から落ちず消えた。どこへいったのか思っていると、いつの間にか掌にそれはあった。
「じゃあねー。結果、楽しみにしてるわ」
女性は立ち上がると椅子は消える。ゆっくりと歩いて門の前にいつの間にか停められていた車の前に立つ。扉を開けるのは若い男だ。窓から見える運転手はそれよりもさらに若い女。 女性は車に乗り込むと、こちらを一瞥してそのまま去っていった。
「やれる、やれる、これなら…やれる!!」
私の内に燃え盛る情熱とは真逆で、手に握る短剣は、とても冷たい。でも、これが。これが私を…。