と、書いたときは言ってますが、投稿前夜の今からするとホントに息抜き手抜き。
今年も去年と同じく新入生から最高学年の生徒まで、多くの加入申請書が無限ポストに投函されていた。
申請書には色々と書かれている。慣れない敬語や口語で書かれたものも多く、まだ若いなあと感じるものもあれば、逆に完璧な敬語と文、文字までも美しい習い事の多さを察せれるものもあった。
枚数はおよそ千枚。取り敢えず目標が具体的なレース名を挙げてこれに勝つとか書いてる奴は全部撥ねる。すると残るのは百枚より少ないのか。
こいつは…ダメだな。目標が「トレーナーさんに相応しい女性になる」だ。ここは花嫁修行をする場所じゃない。こんなの去年は無かったぞ、どうなってるんだ?
他には…なんだこれ、写真が付いてるぞ?○○○○○じゃないだろうな?ま、ないだろうな。常識的に考えて。で、中身は…ただの生徒写真だな。ん?…んん?こいつ、神社で会ったあいつか!!結構酷いこと言ったけど諦めてなかったのか。目標も「強くてかっこいいウマ娘になる」ね。素晴らしい。文句なしで合格だ。
次に見るのは…。
――
「で、メジロマックイーン。君と君のおばあさんの希望通り面談の場を設けたぞ」
「はい、感謝しておりますわ。ロイトレーナーさん」
メジロマックイーンの申請書には便箋も付いていた。その中にはメジロ家という実業家でレースの名家の当主が直筆で二人きりで話し合いの場を設けて欲しいとあった。
義明に刺されて直ぐだから警戒していたが、相手はメジロマックイーンと知り、流石に生徒に用心をする理由はないので今はトレーナーモードで話していた。
「目標は『メジロの名に相応しいウマ娘になること』だね」
「そうですわ。我一族の名に恥じない走りをすること、そして多くの栄光をメジロ家に齎すことこそ、私の目標ですわ」
「…具体的なレース目標はあるかい?」
「はい。天皇賞春、これだけは絶対に譲れませんわ」
「そうか」
天皇賞春。グルーヴには長距離適性がないので出走するのはカフェか次点でタキオンの長距離レースだ。
「まあ、トレーナーとして聞きたいことは一通り聞いた。それで、ちょっと踏み込んだ話をしようか」
「構いませんわ」
「じゃあ遠慮なく。…なぜこの場を設けた?」
トレーナーとしての仕事は終わった。これからは提督として、横七に今後危険があるかないかの判断をしよう。
「…今回の場は、私を確実にチームに加入するためにおばあ様が設けて下さりました。自分で言うのは気が引けますが、私は素質に恵まれていると思います。ですので落ちるとは考えなかったのですが、おばあ様は心配をしなさって今回のようなことを」
「自信過剰だな。去年もそういう生徒はごまんといた」
「はい。ですのでおばあ様はこれをあなたに、と」
手渡されたのはイヤホンの付いたレコーダー。再生してみると年配の女性が喋っていた。おそらくメジロ家当主が声を吹き込んでいるのだろう。そして内容はというとメジロマックイーンを加入させればメジロ家は横七を支援するという内容だった。
「君はこの中身を知っているのかい?」
「いえ、あくまで渡すよう言われただけですので」
「…」
これは…。メジロ家はどこまで把握していると考えればいいんだ?一応横七の代表としてはミスターという存在を作り出したから横七のトップと話したいからこれが来たという訳ではないだろう。ならば俺がきっと横七と通じているから俺を通して横七に接触しようとしているのか。どちらにせよ自分の孫を信頼せずに金で解決しようとしているのが吐き気を催させる。
「メジロマックイーン、合格だ。ようこそスパルタンへ」
「ッ!?ありがとうございますですわ!!」
「それと、このレコーダーに関してだが、『いらない』と伝えてくれ」
「分かりましたわ!!チーム『スパルタン』としての初仕事。精一杯頑張りますわ!!」
しっぽがぶんぶんと振れている。さっきまでのお嬢様の雰囲気は何処へやら、今は年相応の小さな少女が緊張から解放されて喜びを噛みしめている。
「オモシロ」
「何か仰いましたか?」
「ヴィエ、マリモ!!」
訂正、今の気迫は間違いなくお嬢様です。
ポポラキ
「やりましたわーッ!!今日から私も『スパルタン』ですわーッ!!」
「合格者発表がされていないのに喜んでいる。妙だね」
「とうとう頭までパクパクに汚染されちまったか…」
「おいたわしやお嬢様…」
「君は何か知ってるんじゃないの?」