男がほとんどいない世界に来(てしまっ)たロイ   作:ロイ1世

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書き溜めするのに定期投稿しないせいで書き終わった話が30個くらいあるしもうほぼほぼラストまで辿り着いてる。
それなら予約して挙げろって話だけど、めんどくさいんだそれが。
しかも古いのは3月とか冬に作ったのだから当時何考えながら作ったのか覚えていないし(n回目)。

あとこの週末は艦これでもウマ娘でも欧州行くから…。


おじいさんといっしょ

「なあなあ、じいさん知ってっか?」

「…何回も言ってるが、そのじいさん呼びをやめろ!!」

 

 窓から入って来て早々に人を老人扱いするゴールドシップに、これで何回目かも分からない叫び声をあげる。なんでそんな風に呼ばれなきゃいけないんだよ、こっちはまだ二十歳過ぎだぞ!!このクソガキ!!

 

「それで、知ってんのかよ、じいさんはよ!!」

「何をだ、内容によってはその窓から出てってもらうぞ」

「おい、ここ一階じゃねえぞ。流石のゴルシちゃんでもこの高さから飛び降りるのはムササビスーツがないと…」

「あればやるのか。で、結局何の話だ?」

「おう、マックちゃんお見合いするってよ」

「御令嬢は大変ですなぁ」

 

 マックイーンはまだ中等部、それも今年入ったばかりの子供だ。それなのにもうお見合いとは。

 

「…何か思う所はねえのか?自分の教え子が結婚が前提のお見合いするんだぞ」

「そんなこと言われても。他所の家のことだしな」

「政略結婚なんだぞ!!相手はマックちゃんより一回りも二回りも年上の!!」

「それはまあ…きついな」

 

 一般的にも歳の差が大きいと話題が合わなくなる。二つや三つなら話題を共有することができるだろうが、ゴールドシップの言うレベルにまでなると宇宙人とのコンタクトと変わらないだろう。産まれた世界が違うだけで歳は近い俺でも時々皆と話題が合わなくなるんだ。

 

「マックちゃんも、お見合いに乗り気じゃない。けどメジロ家の当主が絶対に成功させようとしているんだ」

「政略結婚なんてそんなものだろ」

「相手はじいさんとこの奴だぞ!!」

「あ”?」

 

 メジロ家と横七で政略結婚?

 

 ないな。確かに最近、横七の活動を誤魔化すためにメジロ家を利用したが、そんなにメジロ家は婚姻関係を結ぶことによってより強固な関係を築く程必要というわけではない。逆にメジロ家にとっても、横七は利用代金を支払う程度の存在のはずだ。だから向こうから持ち掛けたとも思えない。そもそもメジロ家と政略結婚する話なんて聞いてない。てか横七に結婚できる人間がいるのか? 横七にいるのは妖精と兵士だけだ。下請けの横七ではない横七を含めればいるにはいるが、そんなのを重要な政略結婚では使わない。

 

「ゴールドシップ。もっと情報が欲しい」

「お?乗ってきたか?流石のじいさんも気になってきたな!!」

「乗ろう。黄金船の出航はまだか?」

 

――

「結局、お見合い当日を押さえるしかないとは…」

「じいさん、横七使えばすぐに分かるんじゃねえのかよ」

「横七は今別件で忙しいんだ。マックイーンのお見合い相手も気になるが、どうしても二の次になっちまう」

 

 府中からだいぶ離れた高級レストラン。その隅でバレないようしっかりと変装しつつも礼装してじいさんと一緒にマックちゃんたちを待っていたが、他に客はいねえしそれっぽい奴も来ねえな。

 

 …にしてもじいさん、いつもコート姿しか見てこなかったから礼装してる姿見ても誰か分からねえな。仮面もいつもの顔全体を隠すのじゃなくて、男なら一般化してる顔の上半分だけを隠すのを被ってる。これなら仮にマックちゃんに見られてもじいさんだとはバレないな。 

 

「でもこの店でやるってどうして分かったんだ?」

「メジロ家当主の電話を盗聴した」

「じいさん…」

「やらなきゃ分からなかったんだぞ」

「聞かなかったことにしてやるよ、感謝しな」

「その耳引っこ抜いて聞こえなかったことにしてやる。頭下げろ」

「やなこった。てか相手の名前とか聞けなかったのかよ」

「ダメだった。相手は大物だから情報が洩れてほしくないとか言って誤魔化してた」

「なーんで当主はそんな怪しい話に乗っちゃったのかなー」

「俺も聞きたい」

「「はぁ…」」

 

 溜息が重なったとき、誰かが店内に入って来た。一人は小太りの全部隠すタイプの仮面を被った男。そしてもう一人は…ッ!! マックちゃんだ。

 

「嫌そうな顔してんな。まあ俺がもしマックイーンだったとしても同じだろうが」

「あたしだったら逃げてるぜ。あれは」

 

 二人が私達とは離れた席に着く。向こうからこっちは見えないし普通の声で喋っても聞こえないだろうが、それはこっちも同じだな。どうしたものか…。

 

「ゴールドシップ、これ」

「ワイヤレスイヤホン?…違う、すっごい細いけど線がある」

「向こうの会話が聞こえる。様子はこっちで見れる」

 

 机の上に置いた小さな小説サイズのモニターで二人の様子が見える。…マックちゃん、何とか笑顔を取り繕うとしてるけど隠せてないな。目も合わせようとしないし、こりゃ脈なしだな。

 

「クソ、あの野郎の素顔が知りたいぜ。どんな顔でマックちゃんを見てるのやら」

「全くだ。顔か名前が分かればBB…横七のデータベースと照会できるのに」

「どうにかして外せれないか…そうだ!!…そこの店員さん」

「ううわ急に取り繕ったよ」

 

 明らかに素のテンションで言われるとイラッとするな。けどお前はこのパーフェクトアルティメットスーパー完璧ハイパー最強ハイテクゴルシちゃんの妙案に頭を下げるだろう!!

 

「ハイ何でしょうか?」

「あそこの方に水を出すのが遅れていますよ」

「ありがとうございます。直ちに」

 

 どうだ、これなら水を飲むためにあの仮面を外すだろ。

 

「賢いやり方だな。だがまだ足りない」

「あん?この賢さUCのゴルシちゃんの秘策だぞ?」

「喉が渇いてなかったら意味ないだろ、全く」

「しまった!! けどどうするよ? 今から外走らせるわけにはいかないだろ?」

「そうだ。だから今、奪ってきた」

 

 じいさんの指先から滴り落ちる水。まさかと思ってモニターに目を向けると男はコップに手を伸ばしていた!!

 

「どうやっったんだよ!? お前!!」

「そのイヤホンの線よりも細い、存在すら危うい点の線で奴の喉から直接水分を絡めとって奪ってきた」

「意味が分からねえ。けど、これで顔が見える!!」

 

 あの男が仮面を外して水を飲んだ!! すっげえブサイク!! 気持ち悪い!! 少しは化粧してその荒れた肌を誤魔化せ!!

 

「…一致する顔はないな。親族でもなしだ」

「まじで何者なんだ」

「自己紹介はもう済ましたのか?だとしても何故あそこまで会話がない?」

「マックちゃん何か話しかけてくれよ!!」

「ここまで来たら仕方ないな、マックイーンも利用するか」

 

 じいさんの指先から何か出たのが見えたぞ!! しかも指先に残っている方は今度はあたしにも見える位に太い!! それがうにょうにょと蛇みたいに動きながらマックちゃんの机にまで延びていく。

 

「これをマックイーンの耳に着けて通話する。悪いが話すのはお前に任せる」

「は?なんでだよ、じいさんがやればいいだろ?」

「考えろ賢さG、横七が送り込んだ政略結婚相手を俺が聞いたらおかしいだろ」

「なるほど。…チキショー、やっぱゴルシちゃんしかいないってか」

「この線を持って話せば伝わる。頼むぞ!!」

 

 ココアシガレット並の太さの線を掴む、届けよマックちゃん!!

 

「マックちゃん、聞こえるかマックちゃん!? 聞こえても落ち着いて聞いてほしい。あたしだ。ゴルシちゃんだ!!」

 

 モニター越しでマックちゃんが耳をピーンと伸ばして驚いてるな。つまり聞こえてるってことか。

 

「細かい話は抜きにして、マックちゃんの目の前にいる男の名前とかが知りたい。話してくれっか?」

 

 さあ、どうなる!?

 

『コホンッ!!…そろそろ、自己紹介をしませんこと?』

『自己紹介? 俺はお前の名前とか知ってるから別に…』

『はい。ですが私はまだあなたのお名前を存じ上げないのです。教えていただけますか?』

 

 よくやったぜマックちゃん!! 流石はメジロのパクパクお嬢様だ!!

 

『ああそうだったな。俺の名前はカール!! ミスターの息子だ』

『そ、そうなのですね。カール、カールさんですね』

『おお、そうだぜ、マックイーン』

 

 ミスターの息子…つまりは、横七のトップの息子ってことかよ!! 大物とかそういうレベルじゃねえぞ。けどそうすると照会しても出なかったのはなんでだ? それにどうしてそんな大物をじいさんが知らない?

 

「取り敢えず、だ。じいさん!! ついに聞き出せたぜ!! おい、じいさ…おじい様?」

「・・・」

 

 あまりの冷たさに流石のあたしでもビビっちまったよ。じいさんの眼が見開いたまま固まってる。それなのに口元が張り裂けそうなぐらいにすっげえ笑顔だ。

 

 そういえば聞いたことがある。笑顔は元々生物にとって怒りを表すものなんだって。笑顔になったときには色や数に差があるが取り敢えず歯が見えるんだ。その中でも特に目立つ犬歯は虎やライオンの場合だと牙。つまり人間の笑顔と肉食動物の威嚇は同じなんだ。だとすると今、おじい様は…。

 

『マックイーンちゃんとの結婚はまだだが婚姻届にはサインをしてもらうぜ。これがその婚姻届だ』

「か、カール側の名前とかは一切記入してありませんね、お、おじい、様」

「ちょっと潰してくる」

「あっ、おい待てよ!!」

 

 気づけば、じいさんは立ち上がってそのまま二人の席に歩いていっちまった。これじゃ今まで隠れてたのがバ鹿みたいじゃねえか!!

 

「止まってくれよ、おじい様!! 何のためにこそこそしてたんだよ!!」

「…もう、限界なんだ」

「なにがだよ!?」

「これ以上あのウジ虫以下のクソッたれが胸張って生きてるのを見てると、腸煮えくりかえって怒りで死にそうなんだよ!!」

「なッ!?」

 

 おじい様の顔が一瞬光ったぞ、アグネスタキオンの薬か!? いや、あいつの薬は一回ばら撒いたことがあるが、一度光ったら長時間光ったぞ。だからこれは違う!!

 

「何が起こって…ハッ!?」

 

 ダメだ、もうじいさんが二人のいる席に着いちまった!! もう止めれねえ!!

 

「誰だおめえ」

「ええっと、失礼ですがお名前は…」

「聞かせてもらおうか、カール」

「は?」

「横七のミスターの息子であるお前に、一体何人の護衛がいるのか」

「お前、ふざけた真似してるとスパルタンがお前を殺すぞ」

「…ッ!!」

 

 一瞬。本当に一瞬だった。気付いたらじいさんは右手にソードオフのツインバレルショットガンを持っていたんだ。そして二発、バレルの中に込められていた弾で机の上に置いてあった婚姻届を塵にしやがった。

 

「今度は違うことを聞こうか。お前は誰だ」

「ヒィ~~ッ!!」

 

 じいさんが慣れた手つきで排莢、弾込めをして銃口を顔に近付けようとしたとき、あの野郎はじいさんの脇を抜けて外に走って行っちまった。

 

「逃げられちまったぞじいさん!! どうするんだよ」

「アリス。奴はどこに向っている」

 

 呼ばれてきたのは店員…に扮したスパルタン、アリスか!!

 

「ダグラスからの報告によると正面に待機していた車に乗って東に逃走中です」

「車は追えるな?」

「勿論」

「なら、釣っても問題ないな」

 

 エプロンを外して戦闘態勢になったアリスが奥に銃を取りに行ったとき、遠くで窓が割れる音とともに、シャーッというリールを巻くような音が聞こえた。

 

「うわああああ!!」

「なんだあの野郎!! どうやったらあんな動きができるんだ!?」

 

 外から吹っ飛んできたあいつは、店の前で綺麗な直角90度のターンを決めて中に入ってきやがった。もしかしてだが…やっぱりだ!! じいさんの足からまたひもみたいな線が出てる!! これで引っ張ってきたのか!! しかも扉にも線が張り巡らされて風や自重で勝手に閉まらないようにしている!!

 

「あっ…がっ…俺を、こんな目に合わせて…いいとでも…」

「もう一度だけ言ってやる。お前の本名と所属している組織名を言え」

「うぅぁ…俺は!! かの横七グループの代表、ミスターの息子、カールだぞ!!」

 

 車の窓を突き破ったときにできた切り傷から流れてきた血と涙と鼻水で顔を染めながら野郎はじいさんに指を差しながら怒鳴り声に近い声で言い切った。

 

「…よくしゃべる」

 

 じいさんは感情を極力殺している冷たい声でそう呟いた後、顔に向けていた銃口を左腕にそらして撃った。

 

「グアアアァァァ!! い、痛い!! 俺の左腕が!! 俺の左腕がァーッ!!」

「実弾じゃなければ千切れてもいないのにうるさい奴だ。アリス」

「了解しました」

 

 転がりながら撃たれた腕を必死に押さえて叫んでいる男をアリスは足を掴んで引き摺ってスタッフルームの方に運んで行っちまった。

 

「や、やめろーッ!! 俺は、あのミスターの息子なんだぞ!! お前らなんかただのカスだッ!! 俺に掛かればすぐに殺せるんだぞッ!! 今なら許してやる、だからやめろ!! やめろーッ!!」

「最後まで人の地雷を踏み抜くのが上手い奴だ。いや、そう教えられたのか? まあ、すぐに吐くか」

「はあ、はあ…」

「それと、ありがとうゴールドシップ。おかげで修理代を机一つで済ませれた」

「ああ、…じいさん。まじで気を付けてくれよ」

 

 野郎がまた叫んだ時、じいさんが振り返って野郎の方を向こうとしたから何かヤバいと思ってじいさんの腕辺りを払ったら突然銃が出てきてそれを弾くことが出来ちまった。じいさん、またぶっ放すつもりだったのかよ。

 

「な、何が起こっておりますの…。あなたたちは一体、だれですの…」

 

 席の隅でマックちゃんが縮こまったまま震えちまっていた。…当然のことだよな。望んでいないとはいえ自分のお見合いで銃の乱射騒ぎが起こったり拷問や誘拐同然のことが起きちまったら仕方ないよな。

 

「すまないマックイーン。もう少し冷静に、紳士的にやるべきだったな」

 

 あたしが弾いた銃を拾って上着の中にしまったじいさんは仮面を外すとマックちゃんに頭を下げた。

 

「トレーナーさん…ですか?」

「ああ。事前に気付ければ未然に防げた出来事だったのに、君を巻き込んでしまった。申し訳ない」

「そんな、頭を上げてください。それよりも、そちらの方は…」

「ご機嫌麗しゅうございますわ、メジロマックイーン様」

「その言い方、ゴールドシップさんですわね」

「あらやだ、お分かりになられてしまったのですね」

「あなたの声は分かりやすいのですよ。…ところでトレーナーさん、何が起きているか説明をして頂けますか? 少々…いえ、かなり事態を整理したいのです」

「まあそうなるよな。何か飲みながら話そうか」

「おい、厨房に勝手に入っていいのか?」

「どうせ明日にはリニューアルだ。それにここは横七の店だしな」

「嘘だろ…」

 

 急いでウマホを出して調べるとこの店の企業系列は横七だった。まじかよじいさん。

 

「あいつも運が悪いな。まあおかげで他の客や店員に気を遣わずに済んだが」

「ですがトレーナーさんは大丈夫なのですか?彼は自分をミスターの息子、カールだと…」

「あんな男は横七に存在しない。まだ情報を吐かせてないから分からないが大方横七を騙ってメジロ家を乗っ取ろうとしてたんだろ」

「そんな…お婆様があんなにも熱心だったから私は納得しましたのに…」

「マックちゃん…」

「マックイーン…眠っているのか」

 

 あんな気持ち悪い男と結婚することも家のためにと割り切って本気で覚悟していたマックちゃんも、緊張が解けて眠っちまったのか。

 

「大佐。ペリカンの準備ができました」

「あの男とは別だよな?」

「はい。既に移送済みです」

「ありがとう。ゴールドシップも乗ってくか?」

「勿論だぜ。ありがとうな、おじいちゃん」

「だから、何度言えば…」

 

 マックちゃんをお姫様抱っこしながらペリカンが待っている屋上に上がっていくじいさんは、やっぱりじいさんだ。誰が何と言おうとあたしがそう言ってんだ。間違いない。

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