男がほとんどいない世界に来(てしまっ)たロイ   作:ロイ1世

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夏を思いながら春に作った話を夏を思いながら冬に投稿する。馬鹿馬鹿しい。


奴ラガ来ル

「はい?」

 

 起きてすぐ、ここ最近全然姿を見せてくれなかったお友達が現れたと思ったら、何やら海がヤバいと言っていますね。

 

「それはどういうことですか?」

 

 身振り手振りを交えた全力の説明ですが、如何せん抽象的で、トレーナーさんの指示書の方がまだ分かります。

 

「それで、その…海に怨霊たちがいる、と?…違う?生きている?」

 

 聞けば聞くほど分からなくなってしまいました。生きている怨霊とはどういうことですか?…冷たいが生きている異形?

 

「具現化をしている怨霊のような半生物?すみませんが、あまり時間がないんです。後にして下さい」

 

 …両手で行く先を塞がないでください。何をするにしても着替えはしなければいけないのですから。その間に聞けるだけ聞くので、話してください。

 

「つまり、強い怨念を持った謎の生物の集団がこちらに向かってきているということですか?」

 

 首を縦に振っているということは、この解釈で合っているんですね。

 

「それは一体誰を?トレーナーさんを?どうして…」

 

 トレーナーさんは確かに色々と憑いている人ですが、どれも彼を敬愛している方達でした。お友達はトレーナーさんにちょっかいを掛けようとしていたので嫌われて彼がいるときはあまり出てきませんが、とにかくトレーナーさんは強い怨念を持たせてしまうような人ではないはずです。

 

「一応、トレーナーさんに伝えておきます。そのときに何か聞けるかもしれませんが。それと、先程から何を言い淀んでいるのですか?何か他にもありますか?…ないなら、いいです」

 

――

 朝食の時にトレーナーさんに一応伝えましたが、平生と同じ様子で特にどうというわけではなさそうでした。二人きりでお昼ご飯前の追加のトレーニングをしている今もそうです。

 

 珍しいですね。あなたが日中、しかもトレーナーさんの前なのに現れるなんt…伏せろ?

 

「あれは、発光?伏せるんだ!!」

 

 海の方を見ると、確かに何かが光っていますね。あれは一体…。

 

「危ない!!」

 

 後ろにいたトレーナーさんが私に覆いかぶさるように倒れてきました。倒れた時の衝撃と音で頭が少し…かなり痛いですね。

 

「?」

 

 覆いかぶさったままトレーナーさんが何か言っていますが、耳鳴りが大きくて聞き取れません。それが分かったのか、トレーナーさんはトレーニングの指示書に急いで何か書きましたね。

 

「鼓膜が破れている。ホテルまで走れ?」

 

 自分の耳元を触ってみると、何か赤い液体が。これは…。

 

「血?」

 

 おそらく何かの拍子で鼓膜が破れてしまったのでしょうか。

 

 取り敢えず倒れたままの姿勢ですが、周りに何か…。

 

 …

 

 …

 

 …

 

「何が、起こって…」

 

 砂煙が落ち着いたと思ったら砂浜に大きな窪みが私たちを囲むようにいくつも…。

 

「トレーナーさん?これは…」

 

 何か知っているかもしれないトレーナーさんに話を聞こうとしましたが、当のトレーナーさんは立ち膝の状態で海の方をずっと見ていますね。遠くに見えるあれは…人?近くには鯨並みの大きさの魚もいますが、どれも全て不気味です。

 

「カフェ、聞こえるか?」

「は、はい…」

 

 トレーナーさんが私の両耳を覆うと突然耳鳴りが止んで声が聞こえました。

 

「幸いなことに、今ビーチには俺と君しかいない。本当に、不幸中の幸いと言う奴だ」

「トレーナーさん?」

「今、スパルタンたちが向かっている。けど君ならホテルまで一人で走り切れる。一人で行けるね?」

「だから、トレーナーさんは何を?」

「おおっと、お楽しみ中だったかい?ロイ。あのとき隣にいた女が泣くぞ?」

 

 女性が海の上に…立っている?少し後ろにも誰かが二人いますね。先程遠くに見えた人影は彼女達でなのしょうか。ただその纏う雰囲気は異質で、三人のが合わさって一つの壁のようになっていました。

 

「あの方達は…トレーナーさん?」

「…」

「そんなに殺気をおっ立てるものではありませんわよ、クソ野郎」

「そんな汚い言葉を使っちゃダメだよ」

「けれどこいつは私たちの仲間を殺したのですよ?クソ野郎以外にどう形容すれば?」

「でもおじさんは凄い人なんだから…」

「リリィ、グラハム。今日はもう下がりなさい」

「「はーい」」

 

 女性の後ろにいた声からして私と同じくらいの二人は海面を滑るようにして去っていきました。

 

「さて、私はもうあの子たちの顔見せが出来たから今日はもう十分なんだが、お前はそうはいかないよな?」

「トレーナーさん?」

「そうだ、雑誌で見たよ。お前、また女囲ってるそうじゃないか。白露と時雨だったか、あいつらきっと恨むぞ?自分達が仲間を…」

「殺すッ!!」

 

 見たことがないスピードで砂浜から海に飛び出していったトレーナーさんもあの女性と同じように海面に一度立つといつの間にか右手に持っていた剣で斬りかかろうとして、止まってしまいました。

 

「…昔よりももっとトロくなってんな、お前」

「そんな…トレーナーさんッ!!」

 

 トレーナーさんの黒いコート…。そこから一筋の得物が貫いて…。右手に力が入らなくなってしまったのか、剣も海中に没してしまって…。

 

「安心しろ。秘宝はあれ一本だけ。こいつは普通だ」

「肉を…切らせて…」

「トレーナーさん!?」

「骨も断たせて…」

 

 左腕が曲がって、トレーナーさんの左胸を貫いている剣を掴み、自力で抜けました。剣先からはトレーナーさんの血液が点滴のように滴り落ちて海面に波紋を立てています。

 

「内臓も、潰させてやる。だが、勝つのは…この俺だーッ!!」

 

 海底へと沈んでいったはずの刀が水面から飛び出し、それを右手で掴むと、トレーナーさんは胴を狙った攻撃をしました。

 

「ふふ…流石にただ止まっていたというわけではないか」

 

 深く斬られたはずの腹部から少しの血しか流さずに、女性は下がっていきます。

 

「逃がすか!!」

「悪いけど、お前はもう終わっているんだ」

「・・・カハッ!!」

 

 トレーナーさんの体から突然爆発音が連続で聞こえた後、コートの内側から吹いた風で上着が空を舞うと、その下には向こう側が見えてしまう穴がいくつもあいていました。

 

「グゥ…ウ…」

「あの子たちも楽しみにしているんだ。くたばるなよ」

 

 倒れたトレーナーさんが波に押し流されて砂浜に水死体の様に打ち上げられましたが、目線がしっかりとあの女性を睨みつけ続けているのでまだ息はあるようです。

 

「トレーナーさん!!すぐに人を…」

 

 波で呼吸が邪魔されないよう引っ張ろうとしたとき、トレーナーさんの体から金色の何かが無数に落ちてきました。これは…薬莢?

 

「ア・・・ガァ!!ガア!!」

 

 野犬の様にうなり、叫んでいるトレーナーさんですが、カチカチという音以外は何もしません。トレーナーさんもそれを理解したのか、鋭い視線を残したまま沈黙してしまいました。

 

 そして遠くの方に女性が去っいくと、突然霧が出てきて見えなくなり、霧が晴れると海にはもうトレーナーさんしかいませんでした。

 

「トレーナーさん!!トレーナーさん!!」

「…」

「トレーナーさん?」

 

 どうやら浅からぬ因縁を持つ女性はもう消えてしまったのですが、それでもまだ海の方を見ています。

 

「大佐、大丈夫ですか!?」

 

 ホテルの方からジェロームさんがミョルニルアーマーというスパルタンの戦闘服を着て現れました。他にも何人もの海兵隊員さんやスパルタンさんが銃火器を構えながら浜辺に展開します。ただじぇろーむさんは見たことのない銃の他にも緑色の液体の入ったバケツを持っています。その液体をトレーナーさんに浴びせると、傷は全て治り、何事も無かったかのように立ち上がりました。

 

「…艦隊の改装を優先し、部隊も移させろ。合宿も平和も終わりだ」

「了解しました。副司令に伝えます」

「あの、トレーナーさん。今、一体何が起こっているんです?それにあの人たちは…」

「…カフェ。君も急いでホテルに戻って荷物を纏めなさい。今日中にはここを離れる」

「待ってくださいトレーナーさん。トレーナーさん!!」

「アフリカに展開していた部隊も呼べるか?」

「はい。戦線も一つになり多くの部隊を撤収させれます」

「一週間以内にアフリカにいる部隊は全て引き上げる。現地にも伝えろ」

「了解です」

「…」

 

 あの女性たちとトレーナーさんの間に、一体何が…。そもそも、トレーナーさんたちは何者なのです。

 

「それと、新しいアヴァターを受領するから私は一度島に戻る。その間の子守は任せた」

「はい。お任せください」

 

 いずれにしろ、今のトレーナーさんにはあまり触れない方がよいでしょう。あんなにもトレーナーさんのお友達の気が立っているのは初めてです。




ペパロニ

おともだち「黒くて大きくてヤバい奴らが…」

カフェ「?」宇宙猫
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