男がほとんどいない世界に来(てしまっ)たロイ   作:ロイ1世

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              > 横七、突然の滅亡 <
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横七は滅んだ

 横七は滅んだ。

 

 府中…トレセン学園における戦いで提督のロイ・ヴィッフェ・ヒドルフ大佐を筆頭に指導部と戦力の大半を失った横七はあの日、深海棲艦と共に既に滅亡していた。

 

 しかし一般には横七の滅亡はそれから数日後と覚えられている。

 

 西太平洋の戦い。烏合の衆となった横七残党が太平洋上で待機していたトロピコの艦隊との合流を目指し、米海軍に捉えられ、殲滅された戦い。正規の訓練を受けた軍人なんて一握りもいなかった生存者は二束三文のボロ船を買い、一人残らず、何も残さずに遥か東方の海に散っていった。

 

 それは確かに悲しいことだったのかもしれない。だが、もし彼がそこにいたのだとしたら、きっとこう言っただろう。

 

「横七なんてものは蜃気楼と同じで、あるように見えてそこにはないんだ」

 

 事実、横七を失ってから早十数年の今日の世界は横七や深海棲艦といったものが初めから存在していなかったかのような繁栄と賑わいを見せていた。

 

「いらっしゃいま…」

「なんだいその顔は。この店は大切な常連に対して挨拶もしないのかい?」

「あなたが飲めるようなものは置いていないので」

 

 学園近くの通りの喫茶店を営む私を唯一負かしたウマ娘はカウンターに座った私にメニューには載っていないホットミルクを出した。

 

「いつ来てもこのお店は寂れているね」

「いえ、今日も満員ですよ」

 

 学生のころから変わらずにお友達という霊的存在が見えている彼女だが、今ではそんな存在を主な相手に商売をしていた。

 

「これで一体商売になるのだろうか。まあメジロが支えてくれるんだろ?」

「そうですね。メジロマックイーン…彼女には、私たちに拭うことのできない貸しがありますから。それで研究が続けられているのはあなたも同じでは?」

「違いないね。君やエアグルーヴ君、スズカ君やあの子たちはともかく、私は別段恨んではいないのだが。まあ科学の発展には物が必要だからね」

 

 マックイーン君が私たちに対して罪の意識を感じるのも、皆がマックイーン君に対し憎悪の念を抱くのも分からなくはない。もしもこの『腕』がなければ私だって恨んでいたに違いは無いのだから、両者の間に立って和解の仲介などできはしない。それどころか寧ろ私は立場としてはマックイーン君側なのだ。皆が気付いていないだけで、私のそれはマックイーン君と変わりはしない。それにマックイーン君がメジロ家を通じて私の研究を支援してくれるのは大いに助かっている。不満も何もない現状、何事にも触れないことが最善策だろう。

 

「それで、今日は一体どういった理由で来たんです? まあ、あなたのことなのでおおよそは分かりますが」

「そうか。なら話は早い!! 君の持つその霊視能力が必要なんだ!!」

「そうですか。お断りします」

「私はどうしてもそういった方面のことに疎くてね。しかし君がいれば安心だ!!」

「嫌です。それを飲んだら帰ってください」

「むぅ…横七に関することなんだがな」

「それは本当ですか」

 

 今までとはまるで別人みたいに反応するカフェに答えを教えようとしたとき、カウンターの奥の方に座っていた客が先に答えた。 

 

「そうだ。本当のことだ」

 

 足元には大きなギター箱が置いてあるが、それで生計を立てているような人には見えない立派な体格のその客は、立ち上がって距離を詰めて来た。

 

「なんだい、君は」

「彼女は三沢岳美三佐。陸自の方です」

「君の監察官かい?」

「いや、ただの客だ」

「あの子たちの気配が見えるそうで、それでここを気に入ってくれたと」

「ここにいると感覚が研ぎ澄まされる」

「いつから自衛隊はそんなにスピリチュアルな組織になったんだい?」

 

 冷たい目でムッと見られる。圧のある力強い目線だ。カフェが耳打ちで教えてくれたことにはどうやらレンジャーなる精鋭中の精鋭らしい。

 

 自分の所の常連客に嫌な思いをさせないため、カフェは先ほど話そうとしたことを聞いた。

 

「それで、横七に関することとは?」

「聞いて驚くことなかれ、今回は何と横七島の調査だ!!」

「横七島!? 見つかったんですか!?」

「見つかったというよりはトロピコが公開した、の方が正しい」

「まったく、これまでの努力は一体何だったのか」

 

 消えた横七の痕跡を追い、学生時代に盗み見たBBの記録を頼りに国内だけでなく国外まで飛び回って情報を集めたというのに、彼らは最初から答えを持っていたのだ。

 

「分かりました。付いていきます」

「いやー、流石はカフェだ。乗ってくれると信じていたよー」

「あなたのためではありません。彼…トレーナーさんのためです」

「ふむ。そういえば、トレーナー君と言えばだが、まだ君の所に顔を出さないのかい?」

「ええ。お友達も見たことがない、と」

「これはもしかしたら、もしかするんじゃないのかい?」

 

 私がかねてより考えているわずかな可能性。それは、あの日トレーナー君は死んでおらず、アヴァターが破壊されたどこかに生きながらえているというもの。そして何かしらの要因で復活することが出来ず復活を待っているというもの。彼の魂が彷徨っておらずあの横七ならあり得るのではないのだろうか。

 

 もしそうなら、今回の調査は今までのどの調査よりも意義のあるものになる。もし、そうであるなら、だが。

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