ロイさんがトレーナーになってから2週間以上が経ったある日、とある商談…いえ、支援の話がトレセンに舞い込んできました。
横七によるトレーニング器具の無償提供。
あまりにもいい話過ぎて折り返し電話を確認のためにしてしまう程でした。
横七のトレーニング器具を提供されたことは無いですが第三次横七駐屯部隊年報の映像で見た隊員のトレーニング風景では、かなり良質な器具が使われていました。
そして今回、横七にとっても初めてのトレーニング器具提供ということで本日の放課後にいらっしゃるとのことです。
「…もうそろそろいい時間ですね」
腕時計の時間を確認して案内のため駐車場へ行く。少し待つと予定時刻に銀色の高級車が入って来た。中からは4人…ですよね、スーツ姿の方が一名と何かこう…機械的なものに身を包んだ方が3名。顔はヘルメットを付けているので分かりません。
「自分は横七グループ戦略室長、豊峰です」
「駿川たづなです。今日はよろしくお願いいたしますね」
「こちらこそお願いします。3人は私の護衛兼運転手です。お気になさらず」
「わ、分かりました」
4人を連れて理事長室に行く。
話し合い自体は順調に進み無償提供に関するものはサインや注意事項の喚起含め20分で終りました。
話し合いも終わり、他のものも提供できないかと理事長が話始めたときです。
「こちらに、ロイ・ヴィッフェ・ヒドルフという男がいますよね」
警戒。彼を回収に来た保護委員会かもしれない。
「そうだが…何か」
「彼を取り戻しに来ました」
場の空気が悪くなる。
豊峰さんのやることは間違っていない。ロイさんは空から落ちてきた…おそらくヘリのような空を飛ぶ乗り物から落ちてきてしまった。保護委員会はそんな彼を取り戻さなければならない。ですが私も理事長もロイさんを手放すつもりはありません。今のトレセン学園にはロイさんが必要ですし彼も望んでここにいます。
「残念だが…拒否。彼を手放すつもりはない!!」
「そうですか…アリス、ダグラス、ジェローム!!」
「たづな!!」
機械服を着た3人が扉に向う前に抑える。例え戦闘服を着ていても私には勝てる筈がない、そう思って一人を押さえ他の2人もそうしようとしたとき。
「行け、2人とも」
「了解」
「任せたわジェローム」
「なっ!!」
腕を掴まれ逆に拘束されてしまいました。
「たづな!!」
「座れ秋川理事長」
豊峰さんは手を突き出し理事長の動きを止めます。
「もうしばらく…30、いや20秒だけ止めさせてもらいます」
「彼は渡さんぞ」
「いいえ、それを決めるのは彼です」
豊峰さんは焦らずに座ったままです。ジェロームさんも拘束の力を緩めます。
「いいでしょう、ジェローム、彼の元へ」
「たづな、彼を頼んだぞ」
「分かりました」
ジェロームさんに付いて彼のいるトレーナー室に行きます。
彼の部屋が見えた時、ジェロームさんはどこからか銃のようなものを出します。
「な、なにを!?」
「2人がやられた。見ろ」
指差す先には廊下にスパルタンがヘルメットの水晶部分にひびが入った状態で倒れていました。
「少し離れてください」
ジェロームさんが扉を開けた瞬間、トレーナーさん用の机が蹴られたのかスライドして襲い掛かります。
「危ない!!」
「大佐ア!!」
ジェロームさんは机を体で受け止め、オレンジ色の光とともに机を破壊します。そして銃を撃ちながら部屋に入りました。
「トレーナーさん!!」
ロイさんの身を案じ部屋に入る。するとそこには予想していたものとは全く違う光景がありました。
それはロイさんがジェロームさんと格闘戦をしているところです。構えていた銃は既に部屋の端に転がっていて、格闘の流れ的にロイさんが優勢です。ジェロームさんが一度ロイさんを押して距離を取り、ロングマガジンのハンドガンを二丁出します。ですがロイさんはジェロームさんの腕に自分の腕を絡ませ、離しながら腕を捻じることで全て外させています。
「これで終わり!!」
ロイさんは詰めた距離のまま大きく頭を引き、頭突きをジェロームさんの頭に当てました。すると水晶はおろかヘルメットも砕いてしまいます。
「そこまで!!」
気づけば後ろで豊峰さんが腕を上げていました。
「…久しぶりだな、本当に」
「はい」
二人は近付き、そして力強い握手をします。
「鈍ってないようで安心しました」
「お前らが鈍ってんだよ。あとダグラスを外に投げ捨てたから拾っといてくれ」
「分かりました。アリス、ダグラスを」
「りょ、了解です」
廊下で倒れていた人が立ち上がり、フラフラな足取りで歩き出していきます。
「すまないがたづなさん、少し席を外してくれませんか?」
「えーと、分かりました」
―――――
横七提督…ロイ大佐として、副司令官の相棒妖精と話す。向こうも俺がトレーナーを続けることを分かっているのか生活に必要なものを渡してくれる。
「これが戸籍、これが通帳、これが免許証です」
「ありがとう。なくて困っていたんだ」
通帳には3000万と書いてある。たいして悪くなかったサバイバル生活とはお別れだ。
「横七本社の位置はこちら。それとこれを」
「これは…」
「新型の神経ユニットです。少し痛いですが」
そう言って何か小さいものを頭に突き刺される。
「これで通信が可能になりました」
「ああ。キーね」
横七で作った頭に埋め込んで通信やハッキング、状況把握など色々できる万能チップだ。手術しなくても埋め込めるのは嬉しい。
「ああ、聞きたいことがあるんだった。お前らはここに来て長いか?」
「一応6年。場所を調べた結果この世界に繋がりました」
「よく繋げれたな。で、聞きたいことがあるんだ。男は都会のホタル…どういう意味だ」
この前タキオンと買い物をしたときに言われた言葉だ。正直言って意味が分からない。この世界に来て長いなら知っていると思って聞く。
「知らなかったんですか。では説明を」
そう言って紙に円グラフを書く。
「私たちが元居た世界は男女比がまあ5:5、艦娘が増えたので4:6としたら、この世界はこうです」
「いや見えんがな」
100やん。女100。
「正確には1:99です。そして男は男性保護委員会という国際機関によって保護施設という場所に閉じ込められ、遺伝子を提供して一生を終えます」
「箱庭か」
「なので街を歩く男は施設から外出してきたのだけです。そのため女は見かけた男にアプローチをします…危険な領域に踏み込んでも」
そういえば外出した日、街頭テレビで男性へのストーカー行為で禁固何年とか見た気がする。
「その悪い話が施設で広がり、男は女とは危険で貪欲な怪物と知ります」
「その世代が更に語り継ぎ、女嫌いの男達が続々と」
「はい。ですので世の女性が見る男というのは表面上笑顔を繕うことが上手で内面で嫌悪を抱くアイドルです」
「つまり男は都会のホタルのように個体数が少なく、施設で一生を終えるため外に出てこないことから見れない、というわけか」
だとしたら、ここトレセン学園はホタルを捕まえようとしないいい子たちばかりだ。
「もしものことを考えて部隊を」
「頼む。外の連中がトレセン学園に押し掛けた時に対応する人が欲しい」
「はい。スパルタン2個師団64人を府中に」
場を整えることはできた。
「本当にそうお思いで?」
「どうして?一度戻った方がいいか?」
「いえ、トレーナー業をやるのでしたら、担当の子たちに言わなければいけないと思います」
「…言うべきかねえ。理解できないだろ」
「信じれないなら能力があっても向いてませんよ。お分かりでしょう?」
信じなければ勝てない。提督業と変わらない不変の事実だ。
「分かった。明日、明日皆に説明する」
「ダメです。今すぐ、私の前でお願いします」
「君えぐいな。分かったよ。理事長室でたづなさんと理事長にも聞いてもらおう」
こういうのは必要だと思うけどキツイな。そう思いながら理事長室を目指す。勝利云々よりも彼女達の目的を達成するために。
アリス→扉を開けようとしたら扉を貫通して蹴られダウン
ダグラス→アリスを蹴った後窓から飛び降りたロイを見て上から撃とうと窓辺に近付いた時に飛び降りず隠れていたロイに頭を掴まれ4階のトレーナー室からフライアウェイ。