男がほとんどいない世界に来(てしまっ)たロイ   作:ロイ1世

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残りはテールのみ

「第二艦隊はアフリカ、第三艦隊はシベリア、本艦隊はオセアニア地域に避難する。次作戦が決定次第連絡するため、各艦隊はその間、生存を最優先せよ」

 

「通信妨害、孤立無援。裏切者はうまくやっているようだな、クソッタレ」

 

「全生存者に告げる!! 辿り着くことが可能な者は自力でブリッジに来てくれ。…誰でもいい、一人でもいい、頼むからいてくれ…」

 

「…白露!?」

 

 

 

――

「ゴハァ!!」

「提督、復帰します!!」

 

 府中郊外に設けた拠点で新しく届けられたアヴァターに接続する。保管の関係上仕方ないとはいえ毎回特殊溶液を吐くことになるのだからやってられない。それに接続待機時の走馬灯。あれも嫌いだ。

 

「地下の少佐とは繋がっているな?」

「はい。戦局はこれです」

 

 シェルターや地下司令部のあるエリアの前線は無事だ。だが戦力分散を期待して形成した学園裏の森が既に壊滅、トレーニングコースの部隊も敗走している。

 

「リリィがやったか」

「圧倒的な火力と技術で成す術が無かったと」

 

 シャットダウン前に聞いた通りだ。テールは神化に必要な道具を探しに出ていて戦闘には参加していない。あいつはきっと俺が戻ってくる前に事を終わらせるつもりなのだろう。

 

「よし、残りの全戦力で殴り込みをかける」

「ですが輸送が…」

「ミサイルとカタパルトカーゴはまだあるんだろ? スパルタンはサイロに集合、その他はアイの指示に従って行動しろ。それとカタパルトカーゴにはありったけの爆薬を詰め込んで学園に照準を合わせろ」

「府中をクレーターにでもする気ですか?」

「馬鹿を言うな。ちゃんと敵に届けろ」

 

 爆薬満載のカタパルトカーゴは時間稼ぎだ。十分な戦果を挙げるのは歩兵の役目。

 

「よし、全員揃ったな」

 

 集まったスパルタンの数は一個大隊十六人。負傷兵ではないが横須賀の後に繰り上げ採用した訓練生が過半数を占めており、その顔に不安を浮かべている。

 

「はい、大佐。ですがどうやってここから学園まで行くのです。ジェットパックでの最大飛行距離では学園まで届きません」

「そうだ。だからここに集まってもらった」

「なぜ乗り物が一台もないミサイルサイロに?」

 

 広大な敷地を擁するこの拠点の地下には兵站や整備などに関するものから戦闘支援のための砲やミサイルサイロまで揃っている。ミサイルには目的に応じた様々なものがあるが、今回使おうとしたものは無かったので俺と少数のミサイル整備員で改造する羽目になった。

 

「俺たちはこれに乗っていく」

 

 ブザー音が鳴り響く中、発射台に置かれたミサイルを指差す。大きさは25mほど。

 

「…大佐、もう一度伺います。我々は何に乗って学園まで行くのです」

「あのミサイル。…弾頭は外したよ」

「正気ですか!? あれは元々核を…」

「側面部の膨らんだところの下にある傘、あの空気抵抗の少ないところにいくつか突起がある。あれを掴め」

「無茶ですよ!!」

「命令は発したぞ。ただちにミサイルに取り付き学園まで移動、その後降下する」

「そんなぁー…」

 

 あいつらが慣れ親しんだ訓練メニューには入れたことがない前代未聞の命令で、俺も初だ。だがこれしかスパルタンを高速かつ比較的安全に学園まで直接運ぶ手段がない。

 

 深海棲艦があの後襲来した増援に対するミサイルの撃墜率はわずか21%と航空機の51%に比べたらとても低い。これはテールがミサイルの威力が低いことを見抜いており、直撃しなければ脅威ではないと思っいることを表している。対して航空機にはその戦闘能力、或いは積み荷を恐れていることがうかがえる。

 

 つまりミサイルに本来は乗せるはずがない積み荷を乗せることで空中での被弾を抑えようというのが今回の目的だ。学園付近にまで到達すればジェットパックでいいのだから、結局最初の奇襲降下とやることは変わらない。乗り物が空中艦隊からミサイルに変わっただけだ。

 

 もちろん保険策だってある。発射されるミサイルの本数は残りあるだけ全ての163発で、囮の役割が期待できるし、迎撃をさせないために爆薬カタパルトカーゴを投擲し、着弾の衝撃と爆発の衝撃による長い間大地震を引き起こす計画だ。

 

 それもカーゴは敵の密集地点に落とすのだからミサイルにまで気は回らないだろう。じゃないと困る。

 

「発射まで3、2、1、発射!!」

 

 サイロの口が開き厚い雲に覆われた空が見える。擬似台風発生装置の残り香だ。

 

「提督、少佐から報告です。人質に取られていた生徒らがシェルターに到着したそうですが、戦闘の発生でグラスワンダーが孤立。現在は義明特務官が保護に向かっています」

「場所は分かっているんだろうな」

「はい、発信機は解放時に取り付けました。誤爆はしません」

「じゃないと二人が可哀そうだ」

 

 人質に取られ、戦場で孤立し、信頼していた人から裏切られる。そんな踏んだり蹴ったりな人生を歩ませるのは酷というものだ。しかし義明が出たのなら安心できる。あいつは戦闘訓練を受けた立派な戦士だ。それも肉体は陳腐化したとはいえ第二世代のアヴァターだし、銃は新型だ。並の深海棲艦どころか姫や鬼級とだって戦える。

 

「あと少しでトレセン学園です!!」

「総員降下!!」

 

 数多あるミサイルと共に地上へと迫る。カーゴによる揺れのおかげで対空弾幕は薄く、無事降下出来そうだ。

 

「ミサイル着弾と空中艦隊出現まで5秒、…今!!」

 

 学園校舎を破壊しない位置に着弾したミサイルがどれだけの戦果を挙げるか分からないが、本来の目的を果たしている。スパルタンチームは全員無事に降下することが出来た。後は空中艦隊からの増援がどれだけグングニルに邪魔されずに降下できるかだ。

 

「空中艦隊より入電、…本艦隊は続くVのための囮である。敵対空部隊の位置を送るため地上部隊で殲滅されたし」

「よし、スパルタンチームはそれに対応しろ。俺はトレーニングコースの部隊の撤退を支援する」

 

 あそこの部隊は他所で敗走した部隊が合流してかなりの規模になっている。今も比較的優勢な本校舎に撤退しようと動いてはいるがリリィの攻撃によって止まってしまっている。再編と補給をすることが出来ればまだやれる貴重な戦力を失うわけにはいかない。

 

 新型のアヴァターの機能である飛行能力を活用し、対空弾幕の的にならないよう低空飛行しながらトレーニングコースに向かう。

 

「六戦隊、無事か? 状況知らせ」

「こちら第六戦隊、当初の位置から離れたものの敵の追撃は苛烈を極めています、敵指揮官を叩いて指揮系統を麻痺させる必要があります」

「分かった」

 

 要するに、リリィを叩けばいいってことだろ、結局は!!

 

「各所に設置したカメラからどこにいるかは分かってる。そしてそれはお前も同じなんだろ?リリィ!!」

「ご名答ですわ」

 

 つい数分前に三途の川を渡りかけたとは思えない、白いワンピースを着たお嬢様がコースの真ん中に立っていた。だがその冷たい目は俺を捉えて離さない。

 

「余裕ぶってるところ悪いが速攻で終わらせてもらう」

 

 今回はナノマシンに埋めて物を運ぶことが出来た。つまり、今までとは違って真っ当な銃が使える。

 

 懐に隠していたビームライフルを取り出し、リリィに構える。お前らが作ったグングニルの技術をパクッて完成したこのライフルの威力を味わうがいい!!

 

「実弾兵器じゃない!?」

 

 今までの武器とは毛色が違うことに驚いてはいたが地中に潜って難を逃れたか。だが場所は分かる。地中を掘り進む音が近付いているしお前は決して逃げる性格じゃない。むしろ立ち向かって自爆するタイプだ。

 

「そこだ、くらえ!!」

 

 音から位置を推測して撃つ。だがあれだけたくさんの機械を動かすための炉があるはずなのに、爆発しない。あの音はデコイか。いや、違う。

 

「たくさんの音がある。同時に掘り進めているのか」

 

 体育館で全てへし折ってやったから忘れていたが、あれも修理を受けているはず。そうなると今撃ったのは無数ある機械の腕の内の一本、まだやれていない。

 

「うわっ!? 危ない!?」

 

 芝やダートを問わずあちこちから触手みたいな機械の腕が出てくる。あの先端の尖り様、俺を確実に突き刺すつもりだ。こうなると高く飛んで射程から離れるのが定石だが、今はまだグングニルが生きている。一撃必殺のレーザー兵器に狙われるぐらいなら触手相手にモグラたたきをする方がましだ。

 

「邪魔!!」

 

 近付いてきた触手を切り払いながら進む。俺のことが直接見えず電探で場所だけ分かるのか、動きが直線的でやりやすい。だが、このまま時間を無駄にするわけにはいかない。

 

「超震弾を使う。全部隊は落下物に注意しろ」

 

 左腕から超震弾を発射する。爆発すればマグニチュード10ほどの揺れが起こる。地中に潜っているリリィは外に出てこなければ生き埋めだ。

 

「アアアァッ!?」

「あれが生き物…?」

 

 揺れに耐えきれず地上に這い出て来たリリィだったが、その姿は生き物かどうか疑わしいレベルで、腹部から下はまるで一昔前の馬鹿デカいウェディングケーキのような形状になっており、そこから無数の触手が生えていた。

 

「ビームを、撃たせたりは…」

 

 直接目で追えるようになったからだろう、触手の動きはより細かく、そして賢くなり切り落とそうとすると別のが近付いて邪魔をしたり、行き先を潰そうとしてくる。

 

「もっとだ。もっとパワーがいる…」

 

 触手よりも速く動いて切り落とし、本体を叩かなければ。

 

「オーバードライブ、承認!!」

「了解。オーバードライブ、セーフティーモード、発動」

 

 今までのオーバードライブとは違い、月光蝶は発現しない。なぜならナノマシンが熱でダメになる温度にならない程度のものだからだ。ただ効能が低いというわけではなく、十分に戦える。

 

 触手よりも速いことで邪魔する触手も距離を取ろうとする触手も道を塞ごうとする触手も全て薙ぎ払える。 

 

「なんだあの赤色は!? 対空戦闘、急げ!!」

 

 余裕の無くなったリリィは自身の触手も撃ってしまうことを承知で、その巨大なホールケーキから砲弾などを飛ばしてくるが、それすら当たらない。

 

「覚悟ォーッ!!」

 

 弾幕を躱して一気に近付き、ビームライフルをリリィの体にピッタリつける。

 

「これで…」

『トレーナーくーんッ!!』

「タキオンか!?」

 

 しまった。タキオンの声に気を引かれて既に触手が迫ってきている。ライフルを撃っている暇はない。ビームサーベルを逆手持ちして先端でリリィの腹を焼き切る。 

 

「化け物…ッ!!」

 

 一際大きい爆発がトレーニングコースのターフを全て焼き尽くし、近くの木にまで飛び火する。残りはテールのみ。

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