男がほとんどいない世界に来(てしまっ)たロイ   作:ロイ1世

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フライト中の喧騒

「あなたも来るんですか?」

「勿論だとも」

――

「え? お前も付いてくるの?」

「そりゃァそうでしょ」

――

 

「皆さんついて来てくださーい!!」

 

 小さな旗を掲げて修学旅行の引率をしているかのような佐岳主任に引き連れられて、府中から最も近い国際空港を一列で歩く。横七のガードの囲いの外側にはマスコミから一般人が押しかけており、その姿を撮ろうと苦心している。

 

「マンハッタンカフェーッ!! 今のお気持ちを!!」

「シリウスシンボリッ!! シンボリ家の星として一言ッ!!」

「うるせえな…」

「右に同じく」

 

 チェックを済ませて続々と飛行機に向かう生徒たちを最後尾から見送りながら、改めて周りにいる連中共の顔を見る。フライトの関係上インタビューを受ける時間などあるはずがないのに集まるなんて、愚の骨頂だ。

 

「次…は、ろ、ロイトレーナーですか。今男性の職員を…」

「いや、早急に済ませたい。頼むよ」

「わ、分かりました!!」

 

 金属ゲートを難なく通り抜けた後、妙にベタベタと触ってくる職員の検査を受ける。当たり前だが問題ない。引っ掛かるような物は何一つ持っていないのだから。

 

 その後横七が用意した飛行機に乗り込む。いつものように本来なら問題ないはずの落雷で墜落したらしいペリカンではなく、改造されたプライベートジェットだ。

 

「フランスまでは8時間か。少しねr…」

「やっほーッ!! 待ってたよーロイ!!」

「チッ…」

 

 リクライニングを最大まで倒したところで、後ろから目隠しをされた。この声の持ち主が誰かは分かっている。

 

「加古…」

「欧州まで行くのにあたしを置いていくのはなしだろー、ブーブー」

「特効貰えない奴が喚くなよ…」

 

 流石に生徒たちの前でこいつと話すのはダメだと思うので、後ろの関係者以外立ち入り禁止と書かれたCAの部屋に入る。

 

「なんでお前が来るんだよ」

「言った…いや、あんたには言ってなかったか。監視と牽制のためだよ。それに後で合流するし」

「許可はとったんだろうな? ここにいてあんな振る舞いをするということは、そういう訓練もしたんだろうな?」

「勿論、これでもあたし、結構やるからね」

「まったく、先に現地入りした理由が分かったよ」

 

 冷蔵庫から適当な飲み物を持って席に戻ろうとしたとき、後ろ向きの力が掛かる。

 

「やっべ、今から発進だ」

「ああ…あたしはこれでよし」

 

 足の裏から強化プラスチック製の隠し刃を出してスパイクのように床に突き刺した加古を私も真似して粒子でその場に固定する。それでも上半身がまだ揺れるので、そこも粒子で繋ぎとめる。それが出来ない加古はどうするのかと見ていたら、なんと私の腹に腕をぶち込んで固定しやがった。

 

「へっへーん、ここにいい安全装置があってラッキー」

「お前、いつか絶対殺す」

「おお怖」

 

 しばらく立ったまま安定飛行になるまで待っていたが、割とすぐになった。このボケナスの腕をどう引っこ抜くか思案していたせいかもしれないが、想像の1,3倍位は早かった。

 

「大佐と加古さん…」

「CAの君がここにいるということは、もう動いていいということだな」

「はい、どうぞ」

「ったく…」

 

 上半身を一度粒子化して加古の腕を抜いた後、誰も座っていないのにリクライニングが倒された席に戻る。手にはワインとグラスを二つだ。

 

「飲むだろ?」

「いいけど、ちゃんとトレーナーしなくていいのかい? 他の人はしっかりやってるよ?」

「私が出る幕なんてないだろ」

 

 空港に来る前…というより学園を出発する前にフランスでのトレーニング計画については既に渡されてある。それに私が何か手を出して完成している絵画に絵の具を載せるのは邪道だ。

 

「やあやあトレーナーくーん、こんな早い時間からアルコールだなんて結構な身分じゃないか」

「アグネスタキオン…L'arcには参加していなかったと記憶しているが」

「すみませんトレーナーさん。私の専属アドバイサーということで同行すると…」

「カフェちゃんじゃん。座りなよ、この一角は誰の席でもないからさ」

 

 こいつ(加古)面倒なことを招き入れやがって。私を苦しめるのが楽しいのか? アルコールが入ったせいで眠ったという状況を作るために態々ワインを出したのに、これでは口にできないじゃないか。

 

「トレーナー君もお酒を飲むんだね。長いこと一緒にいたけど知らなかったよ」

「そうですね、トレーナーさんはあまりそういったものと縁が無いと思っていました」

 

 グラスに注いだアルコールが数%しかない赤い液体を見て普段との乖離を指摘される。だがそれに対する解はすでに用意してある。

 

「フライトが長いからな。ここでやることも特にないし、到着したら現地のパーティー兼顔合わせで忙しいから、アルコールを入れてでも多少強引に寝ようかと」

「あたしの膝枕と子守歌もあるしねー」

「おいおい、ここはあくまで公共の場だぞ。イチャつくなら他所でやってくれ」

「あらあらタキオンちゃんもしかして嫉妬してるの? ダメだよー、ロイはあたしたちのものだから」

「そういう加古さんは、何故ここに? 義明さんと一緒に日本に残って横七業務をしていてくださいよ、帰国した後のトレーナーさんのために」

「怖いよ―ロイー、カフェちゃんが私を虐める―」

「俺も手を貸す」

「私も手伝うよ」

「四面楚歌!?」

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