前回までのあらすじ
アグネスタキオンとエアグルーヴは渡された買い物リストに書かれていた品を買うため、変装をしてショッピングモールへ向かう。しかしその道中、XCOMとメジロ家が手を組んだことを知る。
その後、無事買い物を終わらせたタキオンは入り口でエアグルーヴを待っていた。だが一番最初に隣に座ったのは、本来ならメジロ家にいるはずの、変装したグラスワンダーだった。グラスワンダーから新生の攻勢計画を知らされたタキオンは、急ぎ戻って今後の策を練る。
「揃いましたわね」
向こう側からは見えない特殊な鏡越しに見える
「ああ。頭数は百より少ないが、ハンガリーな連中ばかりだ」
「ハングリー、ではなくて」
「そうだ。そんなアングリーな奴らが、あんたたちの提供してくれた武器で戦うんだ。小娘二人なんか、こうよ」
不敵な笑みを浮かべながら横領した資金で買ったであろう葉巻を二つにへし折ると、また新しい葉巻を咥えてライターを胸ポケットから出す。
「ここは禁煙です。それに、臭いを出すとXCOMに勘づかれますよ?」
「んん? そうか、すまないな。だが、この戦力なら少数精鋭のXCOMなんて…」
ニヤニヤとまるで私を騙すつもりで商談にやって来た者たちを彷彿とさせる表情で咥えていた葉巻を手に取ると、それもまた二つにへし折る。
「メジロの部隊は本隊が出た30分後に出ます。指揮は任せました」
「そうかよ。じゃあ、私が兵士たちを激励しなきゃな」
「…私も出ます。車の準備を」
下に降りて行ったルイの背中を見る。あれが仮にも横七に一度は認められた人間の背中なのかと疑いたくなる。堂々としているその背には、何も輝くものがない。何も背負っているものがない。何も守っているものがない。彼とは違う。あれと共に並び立っても、彼と共に並び立ったことにはなれない。
「虚しいものですね。思い出にしか縋る物がないというのは」
メジロに合流した一部の横七は、私にトレーナーさんの復活計画、通称『76』計画を伝えました。彼の遺した遺伝子を元に血縁者が時を遡り歴史に干渉する初期案。私が愛し、きっと彼も愛すであろう私の血に連なる者たちが彼とともにいる素晴らしい案。けれどそれはあるものの発見…いえ、解読で白紙になりました。
シエラレオネ神話、碑文31号、神の復活。
それを知った横七は、計画を大きく変え、彼自身を復活させる方向に計画を変更しました。それだけなら、まだ歓迎できました。彼が復活することは、私にとっても大変好ましいことでしたから。
けれど、そこに一つの情報が付随したことでその変更は私たちと横七の関係に決して修復することの出来ない亀裂を作り出しました。
『復活し、神と化したロイ・ヴィッフェ・ヒドルフは時を巻き戻し、過去の敗北を抹消する』
再び生を得た彼が一瞥することなく私の元を去ることは覚悟していました。元より私は彼にとっての一番にはなり得ない。一着以外は全員等しく敗北者であり、上位であっても褒賞はない恋のダービーにおいて、私は他の先輩方と比べれば歴史に残る大出遅れ。そして人気もない。何より共に過ごした時間は一年にも満たない意識すらされていなかった大敗北者。唯一の利はあの子たちだけ。
そんな大敗北だった私の初恋。そんな大敗北の初恋が、私にとっては唯一無二の宝物。例えこの身一つになったとしても決して失わない希望の灯。彼と触れ合った一日一日、一瞬一瞬が、私にとっての宝物。これがあるからこそ、彼がいなくなってしまった学園でも私は走り抜けることができました。メジロの当主という重責にも耐えることができました。
私にとっての生きる力。消えることのない無限の力。それを無にしてしまうのが、今の『76』。かけがえのない日々を作ってくれた彼が、その日々を消していく。彼であっても認めるわけにはいかない行為だったから、私は横七を討った。多くは逃げてしまったけれど、それでも逃がすことなく追い詰め、滅ぼした。
そして一抹の不安を消し去るため、新生横七と名乗る蛇に手を貸した。彼を手に掛けて横七の遺産を手にするつもりのあれらと私の思惑は一致。私は彼らのスポンサーとして、新生横七が拡大するために尽くしました。潰すべき標的、行うべき宣伝、示すべき威光。途中、XCOMという想定外の敵によって思ったように強くさせることは出来ませんでした。ただ、だからこそこの算段がついたのです。
「新生も、XCOMも、ここで終わらせる。そのために私は
逃げ延びられたのは想定外でしたが、彼女のおかげでXCOMと信頼関係を築けました。彼女らの装備、彼女らの編成、彼女らの作戦。それらが私にも共有される。
裸の城となったXCOMにいくらの戦力があっても、私が手塩にかけて育てた新生横七との戦いの直後となれば、メジロの部隊でも倒せます。
唯一の懸念点は、アグネスタキオン。どこに潜伏しているかは分かりませんが、彼女のラボには『76』の真相に迫ったと思われるデータが残っていました。もしも、そう仮にもしも彼女がまだ生きていて、何かを企んでいるとしたら、それは『76』の完遂に違いありません。行方が追えなくなったエアグルーヴ先輩もそうでしょう。
「我々の伝説の始まりは今日、このときだ!! 彼の男を討ち、私たちが世界の覇者となる!! 全部隊出撃しろ、目標は府中郊外、横七日本支部とトレセン学園だ!!」
「…XCOMに連絡を。新生が動いたと」
確かに今日が、始まりの日です。後戻りも出来ない、きっと後悔しか残らない日々。
「それでも私には希望が残ります。あの子たちが、彼を生存させるという希望が」
新生横七
メジロ家を追われた横七の残党がルイをロイの後継者と認め組織されるが、メジロ家と組んで横七残党を駆逐し、ロイを討って横七の遺産を独占しようと試みる。メジロ家によって勢力を拡大し、世界各国の軍ともコネクションを築いた。メジロ家の指図が鬱陶しくなってきたため、横七の遺産を手に入れ、XCOMを打倒したら、次はメジロ家を滅ぼすつもりでいる。
マックイーンの謀略
新生とXCOMを互いに潰し合わせた後、メジロ家の黒服によって勝ち残った方を潰す。その後は初期の『76』に基づいて血族がロイを生き残らせる世界に辿り着くことを期待して生を終える算段。
XCOMの情報を手に入れるため、アグネスタキオンと新生の繋がりや新生の作戦をいくつも流した。彼の最期を看取るため、自身も少し後方ではあるが出撃する。