男がほとんどいない世界に来(てしまっ)たロイ   作:ロイ1世

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連続投稿できるときは連続投稿をする。これ、ビジネスの基本ですよ(盟主王)。

全快のアララギ

ロイ(の肉体)が消えてもうたわwwwwww










主人公交代ですね


時間を遡る

 グラス君の姿が完全に見えなくなったとき、私はイメージに合致しないしっかりとした戦闘服を身にまとったマックイーン君に話しかける。

 

「私を撃たないんだね」

「あら、投資された分の額を研究成果でまだ返していないことをお忘れですか?」

「手厳しいね。願わくば徳政令で許してほしいよ」

「冗談ですわ。連れていきたい場所があります。乗ってください」

「処刑場じゃないなら、ね」

 

 半壊状態の車に乗って地上へと行く。どうやらマックイーン君は途中の天井を爆破して道を繋げたようで、この学園地下の基地を作った横七がどれだけ突貫工事をしていたのか思い知らされた。

瓦礫で何度も擦り傷ついた車から新しく別の車に乗り換え、メジロ家へ。

 

「タキオン、グラスワンダーは…」

「あれが彼女の決断だ。私はそれを認める」

「…そうか」

 

 深夜であり、かつ新生とメジロ家とXCOMの三者によって人払いが行われていた学園で唯一灯っていた明かりのある部屋。あそこは間違いなく、私たちのトレーナー室だった。そしてそこにいた人影、遠くからでぼんやりとしていたが、間違いなくグラス君だった。

 

「グラスさんについては、部隊が守護します。それよりも、もう到着しますよ」

 

 深夜の道路には他の車がなく、渋滞に足を止まらせることなくいつの間にかメジロ家に着いていた。

 

「それで、私をここに連れてきてどうしたいんだい? 個人的には指名手配を解いてほしいんだが」

「その必要はありません。詳しくはあの方から」

「あれは…」

 

 工事用の防音シートがその全体を取り巻いている私たちのチームの記念館になる予定の建物の工事用入り口に、スーツ姿の女性が立っていた。

 

「お久しぶりです、みなさん」

「豊峰…さん?」

「全く老けていないだと?」

 

 トレーナー君の腹心の部下と評するに値するのであろう、横七の戦略室長。彼女は大きく変化した私たちと違って十何年前と何もかもが同じだった。

 

「ああ、提督もそこにいるのですね」

「?」

「詳しい説明は、移動しながら。付いてきてください」

 

 柔らかい笑みを浮かべた豊峰さんに先導された私たちは記念館の中に入っていく。驚いたことに工事は外装を除いてほぼ完成していたようで、国立の美術館と変わらない内装だった。

 

「…まずは、ここにグラスワンダーさんがいないことを詫びるとしましょう」

 

 一枚の額縁…中に飾られていたのは、おそらくトレーナー君がアメリカに行った際に撮ったのであろう、日本に来る前のグラスワンダー君とトレーナー君のアメリカ郊外にある民家の庭先が背景のツーショット写真だった。そこで立ち止まった豊峰さんは、こちらを見ずにそう謝罪した。

 

「彼女は自分で…」

「はい。ですがそう仕向けたのは我々横七です」

「横七が?」

「XCOMは『未知の存在である新生横七』に対処する組織です。つまるところ、Xは新生横七を表す」

 

 XCOMの設立を提唱したアメリカの議会演説、そこが出典元だと後ろに続いていたエアグルーヴ君が囁いた。

 

「しかし、本来は違います。司令官であるジェントルマン・ジョニーという男も、保全省が把握していなかったぽっと出の男。XCOMは謎の存在Xが指揮をする組織、という意味でした」

 

 そのXCOMに追われる身だった私とそれを潰そうとしたマックイーン君はともかく、縁遠い一般人として暮らしてきていたエアグルーヴ君はだからどうしたといった表情をしていたが、その前口上で豊峰さんが何を言いたいのか分かった。

 

「そのXは横七で、グラス君はXCOMの隊長。まさかだが…」

「はい。トレセン学園を卒業後、帰国したグラスワンダーさんを軍に誘ったのは横七。そこで厳しい訓練を付けたのも横七。そしてXCOMの隊長に就任させたのも横七。そして…提督の亡骸を、滅させたのも横七です」

「そんな、グラスワンダーを、あいつをただの舞台装置の一つに」

「はい。一人の乙女であることを利用して、一つの歯車にしました」

 

 グラス君が使っていた薙刀。あれはテールの攻撃を受けても耐えたトレーナー君の肉体を容易に引き裂き、貫いた。あれは横七が用意した物なのだろう。薙刀を学生の頃から…いや、きっと幼少の頃から得意としていたグラス君専用に、おそらくトレーナー君が散ってすぐから。

 

 しかしそれでも、グラス君が自分で選んだ結果には違いない。おそらく、他の誰かに討たれるよりも、自分自身で討ち取った方がまだ気持ちの整理はつけれるのだろう。

 

「グラスワンダーさんがいなければ、きっとこの状況は生まれていませんでした。それほどにあれは恐ろしいですから」

「あれ…そうだ、彼だ!! トレーナー君の肉体を操っていた彼は一体何者なんだ!?」

「言い表すのは難しいですね。…ですが、強いて言うなら、本来の提督であり、抹消された未来と言えるでしょう。どのみち、もう存在しないものをとやかく言う必要はありません。次の一手について説明しましょう。メジロマックイーンさん」

「既に準備は済んでおりますわ」

 

 入った部屋の中央には、かなり年季の入った羅針盤が飾られていた。ショーケースは外されており、いつでも取り出せるよう用意していたみたいだ。

 

「アグネスタキオンさん。横七の副司令官として、提督を継ぐあなたにお願いがあります。時間を遡り、横七に、提督に勝利を齎してください」

「時間を…て、『76』のことかい? だがあれは、トレーナー君の血縁者でなければ意味が…」

「いえ、アグネスタキオン。あなたでも問題はありません」

「マックイーン君? 『76』の初期案を実現させようとしていた君なら、私ではダメなことが…」

「いいえ、つい先刻知りましたが、アグネスタキオン。あなたはトレーナーさんの左腕をその身に宿していますよね?」

「それは…そうだが」

 

 いつの間にか一体となっていたトレーナー君の左腕。国防軍基地でグラス君を撒くときにも使ったそれと、何の関係が…。

 

「もしかしてたが、まさか私の肉体は…」

「はい。左腕に残っていた提督の精神があなたの精神と同化したことで、肉体も提督の要素が混じり始めています。きっと意識すれば、右腕や脚からも左腕と同じように粒子…彼の力が使えるはずです」

 

 そんなわけない、できるわけがない。初めから計算の外に置かれていた可能性を、実行してみる。

 

「ッ!?」

 

 可能性は、1%であっても検証してみる価値はあった。

 

「おめでとうございます、アグネスタキオンさん。いえ、提督。これなら十分資格がありそうです」

「資格?」

「はい。時を遡るには、特別な血、それこそ神の一族と言っても差し支えのない血統を引いている必要があるのですが、アグネスタキオンさんはそれに限りなく近い存在となりました。これなら、一度の時間遡行ぐらいなら出来るはずです」

「できるはず…か。だいたい、私はどうなるんだい? もう娘とは言えないアラサーウマレディーだから、学園のトレーナーである彼と接点は…」

 

 最悪、履歴書云々もないため日銭が稼げず野垂れ死ぬ可能性もある。未来から来たと言っても当時の横七は保護してくれないだろうし、当時の私も人一人養う財力は実験に費やした結果ないし…。

 

「安心してください。時間遡行といっても形式的にはタイムリープに近いです。ただ過去に持っていけるものは記憶や経験に加えて、提督の力もでしょうが」

「力? タイムリープで戻るのだとしたら、トレーナー君に接触する前の純真無垢な私がトレーナー君の左腕を移植されているはずが」

「無いでしょう。しかし、提督の精神は今やあなたの精神と同一。いずれ精神に引っ張られるように、提督の力が使えるようになるはずです。今のあなたがその全身で提督の力を使えるように」

 

 右の掌を見てみる。そこには、メジロ家の金庫から回収してきた私の研究資金に関する借用書があった。それを右手の細胞の一部を元手に発生させた渦で細切れにし、豊峰さんを見る。

 

「…分かりました。過去に行きます」

「了解しました。準備に取り掛かります」

 

  羅針盤を何やら弄りだした豊峰さんと交代するように、マックイーン君がやってきた。

 

「…あなたを裏切ったこと、心の底から謝罪いたします。アグネスタキオンさん」

「別にいいさ。そんな未来、無かったことにしてみせるから」

「…トレーナーさんを、お願いします」

「偉大なる先輩というものは結果で示すものだよ。まあ、示す相手に君はいないかもしれないが」

「そうですね。それから、この地図を暗記してください」

 

 見せられたのは横須賀市の外れにある山の地形図だった。見れば防御用陣地だの、武器貯蔵庫だのと書き込まれている。

 

「豊峰さんからトレーナーさんが転移してくる前に横七と接触したくなったらここに、とのことです。未来から来たことの証明については、トレーナーさんについて語ればよいと」

「ふむ、確かに覚えた。ありがとう」

「はい。私も準備を手伝いますのでこれで」

 

 可愛げのある後輩も、豊峰さんと一緒に羅針盤を弄りまわし始めた。私を撃たなかったのはきっと、彼女の血縁でなくとも初期の『76』を完遂して再生の日を迎えられると知ったからなのだろう。そう思えば、豊峰さんが私についてマックイーン君に知らせていれば新生横七が増長する必要もなかっただろうにと考えてしまうが、それはそれでグラス君の実戦経験が得られなくなって彼が倒せなくなってしまうのかと考えてしまう。結局、横七の計画したとおりに事が進んでいた。

 

「それで、君からは何かないのかい、エアグルーヴ君?」

「いや、少し…考え事をな」

「ほう、聞かせたまえ」

「…私がトレーナーと契約できるのか、勘ぐってしまってな」

「君が…ああ、そうかい」

 

 一瞬で理解に至る。エアグルーヴ君がトレーナー君に契約を申し込むきっかけは、彼女がプールで溺れたところをトレーナー君に救われたからだ。現役時代の女帝と言う二つ名からは想像できない出会いだが、当時の私とカフェはエアグルーヴ君の契約に猛反対していた。つまり過去に戻った私は恋のライバルを蹴落とすどころか出走を辞退させることもできるのか。

 

「心配しなくてもいいさ。君一人増えたところで、トレーナー君の恋のダービーの一着は決まっている。私も君も等しく敗者さ」

「それはそれで喜べないな。だが、またあのドキドキを味わえるならいいさ」

「お互い頑張ろう」

 

 そういえばと振り返ってみれば、実際のレースでも私がエアグルーヴ君と同じレースで出走したことはなかったな。私はダービーで引退してしまったから、シニア級のエアグルーヴ君やサイレンススズカ君とは模擬レースや並走以外で競ったことがなかった。次はシニアで最強と謳われる女帝やそれから逃げ切った異次元の逃亡者を、クラシック最強の私が撫で切ってやろう。

 

「準備できました!! アグネスタキオンさん、用意はいいですね!!」

「いつでも」

「カウントダウン、30秒前」

 

 目の前にいる現役時代の頃とは打って変わってすっかり老けこんだ面々を見る。トレーナー君がいれば心労が減って多少は若返えるとは思うが、この顔を見るのはまた十何年後だ。しっかりと拝んでおかなければ。

 

「3、2、1、今!!」




魔苦院「借用書も研究者もいなくなってしまいますわね。これで時間遡行に失敗したら、メジロ家はおしまいですわ」
TO 黄泉 〇ね 「万が一の時は安心安全の横七ローンを。毎年三万円の支払いでいくらでも借りれます」
空ノリ「それってリボ払いでは?」
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