あれは嘘だ
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□月▽日
4歳になった俺は突如、地図にも載っていない田舎へと引っ越すことになった。
引っ越し先は父の故郷、父方の祖父が済む木造建築の一軒家。
「親父、金は渡したからな、ちゃんとやってくれよ?」
「勿論、愛する息子の願いだ、ちゃんと叶えてやるさ」
確か父は、幼少期に酒豪の祖父に暴力を奮われたことから、祖父のことを嫌っていたはずだ。
それこそ、都会に出てもう二度とここには帰ってこないと決意するほどに。
しかし、今日、父は祖父と相対する。
そして息子である俺を、心に住まう怒りに任せて祖父へと押し付ける。
つまり父は祖父に一定の金額を払うことを担保に、俺を厄介払いしたのだ。
俺は祖父の玄関で踵を返す父の背中を見る。
「と、父さん」
呼び止めなきゃいけないと思った。
ちゃんと、俺を愛してくれていた父さんと話さなくちゃいけないと思った。
「俺を父さんと呼ぶな、疫病神。
もうお前は俺の息子じゃない。」
しかし返ってきたのは拒絶。
「…っ!」
俺が悪いのは知ってる、俺が原因なのは分かってる。
それでも、胸は締め付けられたように痛む。
恨みたくなる程、憎くなるほどに罪悪感に囚われる。
逃げたい、どうしようもなく逃げたい。
けど俺は、まだ聞かなきゃならないことがある。
「母さんは…無事ですか…っ?」
父さんだった人は一瞬だけ立ち止まり、なにも言わず車へと乗り込む。
なにも告げてないのは、俺に対する恨みからか
なにも教えてくれないのは、母さんの安全を確保するためか
どちらにしろ、俺に知る権利はない。
俺は母さんを傷つけた罪を、軽率な行動に対する結果を、一生背負わなければならないのだから。
「もう二度と俺達の前に姿を現すな」
俯いた瞬間に聞こえる、父の言葉
それは俺の罪悪感を刺激する、澄んだ池にわざと泥を混ぜこむように。
祖父はもう家に入ったからもういない。
父は車を出してもういない。
実質的に今ここに、俺は一人。
「ごめんなさい…っ」
転生して初めて…空知らぬ雨が降りそそいだ。
○月□日
俺の1日はいつも朝早くから始まる
祖父より早く起きてするのは朝食づくり
次に祖父が散らかした居間の掃除
そして最後に、祖父へのマッサージなど奉仕
それが終わり次第、買い物や家の掃除
祖父曰く、俺は「金の入るメイド」らしく、性別を間違われているが、好きなように使える道具としかみられていなかった。
その証拠に、祖父が悪酔いした日には、賭け事で負けたりと何か気に食わないことがあれば暴力を奮われた。
金のなる木なためか、致命傷になる怪我は負わされなかったが、この状況には俺の自業自得がある。
だから俺はされるがまま望まれるがまま、その要望に答え続けた。
✕月▽日
ここ最近、呪力がちゃんと練れない。
拳に纏うぐらいは出来るから低級呪霊の相手は出来るが、術式によって呪力に強力な効果を持たせようとなると手足が震え、呪力が霧散する。
…母親を呪ったことで無意識に縛りでも作ったか?
どちらにしろ、呪いを使おうとすると、母さんの苦しむ姿がフラッシュバックして使えなくなっていた。
「…トラウマ…いや、これは代償だな。」
まさか精神的には誰よりも長く生きている俺がこんなことになろうとは。
「確か…真人の台詞に『魂が先か肉体が先か』って言葉があったっけ?」
ダラダラと流れる冷や汗を拭う中、自称気味に苦笑が溢れる。
「多分だけど俺の魂は、この幼い身体に引っ張られてるんだよな」
直感的に感じたそれは、大人であると思い込んでいた俺にとって最も情けなく感じた。
とは言え、大人であるはずなのに、子供の好奇心に負けて最悪な結果を産み出した時点で、俺は馬鹿そのもの。
「本当に…馬鹿…だよなぁ…っ」
予想できたくせして避けられなかったその事実
自然と出た笑みは乾いたものだった。
×月〇日
最近、押し寄せる呪霊が強力なものになった。
気配が強いと言えばいいだろうか?
そばにいれば悪寒が走り、近づけば死の気配が強くなる。
術式の使えない俺には少し手強い相手だ、
正直、俺が戦うのは得策じゃない。
『この疫病神めっ!』
しかし、呪霊を見て思い出すのは、父の恨めしそうな眼と言葉。
(呪霊と大差ない俺が、何の役にも立たず生きて、何の意味がある?)
基本、呪いというものは、俺含めて人体には有害。
近くにいるだけで肉体的にはもちろん、精神面でも大きな影響を受ける。
それが一般人相手になったら尚更、その影響は理性や常識を失うほどに甚大だ。
加えてここには、そんな呪霊を殺せるのは俺しかいない。
「倒さなきゃ…」
体が呪霊の攻撃で裂ける、心が呪霊との戦闘ですり減っていく、
「嗚呼ァっ!」
俺は呪力に練れるだけの『毒』と言う術式を乗せる。
トラウマに触れないだけの毒と言う効果を乗せる
出せるだけの呪力を、ありったけ全て呪霊に被せた
『ーーー』
気味の悪い悲鳴を上げながら、呪霊は俺の呪力溜まりに溶けていく
思えば初めて、自主的に、意図的に、故意的に、呪霊でも命あるものをドロドロに殺し溶かした。
ーーーー殺した。
ーーーーそうだ、殺した。
ーーーー俺の力は、こんなにもグロく、命を殺す
となれば、母さんが、あんなに苦しめられたのも、母さんの手が、あんなにも変色したのも、納得の行く結果だったと言うわけだ。
「…」
残った呪力溜まりに自分の顔が写る
その場所に低級も低級な呪霊がオアシスのように集まってくる。
そして、毒だから、死んでいく。
このまま残してはいけないものだと悟る
だから、その全てを体内へと戻す、溶けた呪霊ごと
「…おぇ…」
吐き気が込み上げてきた
△月◎日
引っ越して約数ヶ月、
ここら一帯の田舎の事が何となくだが理解できてきた。
だから、それを記すためにも何があったかは時系列に並べて箇条書きで書こうと思う。
一つ目、『噂が回るのが早い』
それは祖父の言いつけで買い物へと出掛けたときの事だった。
「ねぇ、あそこにいるの、噂の嗣永さんのお孫さんじゃない?」
「え?でも確か、嗣永さんのお子さんはここを捨てたわよね?」
「話じゃああの子、自分の母親を入院に追い込んだらしいわよ。
それで嗣永のお子さんがここに追いやったのだとか」
「うわぁ~、綺麗な顔してえげつないことをするわね、やっぱり身体には嗣永さんの血が流れているってことかしら」
「どちらにしろ、関わらない方がいいわよ、私たちも被害に会うわ」
「そうね、距離を置くことにしましょうか」
ほぼその内容は正しく否定できたものではないが、知れ渡るのがネットより早い。
恐らく、祖父が酒や賭け事の席で言いふらしたのだろう。
閉鎖的な生活をしているにも関わらず、数ヶ月足らずで俺の存在は全員が知っていた。
その知識に尾ひれのついた噂も混ざるものだから、どうやら今では、俺は腫れ物扱いそのものになっていた。
だが、俺からしたら有難いことだと言える。
これで、無闇に、誰とも関わらずに済む
△月☆日
二つ目『監視の目が強い』
一つしかない寂れた公園で一人の時間を噛み締めている時のことだった
「…ねぇ、聞いた?最近起きてる物騒な事件、あの子が原因らしいわよ」
「事件?もしかして雨宮さんちの火事とか、田中さんとこの売上が消えたことを言ってる?」
「そうそう、私の旦那の話だと犯人候補に上がってるらしいわ」
「なんで?あんな子供になにか出きるとは思えないけど?」
「なんかね、全ての事件の前、絶対と言っていいあの子が近くにいたらしいのよ
雨宮さんちの火事の件じゃあ、前日にあそこで野菜を買ったんだって」
「そんなに疑わしいならなんで貴女の旦那さんはあの子を捕まえないのよ?
警察でしょ?そんな危険人物放置しないでほしいわ」
「証拠が見つからないんだって、物的証拠が一つも残ってないから逮捕しようにも上から許可が降りないんだとか。」
「…怖いわね」
「えぇ、全くよ」
こんなど田舎だからこそ、ここに住むのは隠居している人や老人ばかり。
麻雀などの賭け事以外に娯楽が少ないからこそなのか、俺がよそ者だからなのか、俺の行動には人一倍に敏感に感じ取られていた。
そのせいでこの田舎で起きた事件全て、中には俺に引き寄せられた呪霊の仕業もあるが、俺が何かする度にその犯人へと仕立て上げられた。
△月◇日
三つ目『話を聞かない』
前日に全くの無罪でととある事件の犯人に仕立て上げられた時のこと
「このクソガキっ!よくも問題を起こしてくれたなぁ!」
「ア"ァ…っ!」
「お前のせいでっ!俺がどれだけ迷惑を被ったと思ってるっ!」
「カハ…っ!ごほっ、ゴホゴホゴホっ!」
「酒が売って貰えなくなるところだったんだぞっ!反省しやがれクソガキっ!」
「ぐ…っ!」
「しかもお前!図々しくあいつらに反論したらしいなっ!」
「…っ!」
「お前は大人しく、俺達の言うことを聞いていればいいんだよっ!」
激しい思い込み、凝り固まった価値観、古くさい風習
田舎民の人たちに、現代人の俺の抗議は全く聞き入れられてもらえなかった。
それどころか、常識で反論した反動が身体に刻まれる。
痛みと言う形で、はっきりと刻まれる。
(いい…訓練になるっ)
呪いはどこまで行っても呪いだが、使い方次第では人を助けることが出来る。
この世界の最強もそう言っていたんだ。
(だったらっ、耐えろっ、耐えろ耐えろ耐えろ、耐えろっ!!)
ならばどんなに辛くても、どんなに恨めしくてもっ、心を律して呪いを制する他ない
(呪いは人に向けるなっ!呪いは内に留めろっ!呪いを外に出すなっ!)
もう二度と…過ちを繰り返さないためにも…っ!
この田舎の特性には、他にも『自己愛が強い』など、現代からすれば時代遅れで前時代的な悪性が多くある
しかし、その全てが俺の成長にはうってつけ。
耐えることが俺を強くし、なくなることのない罪を軽くする。
痛みには歯を食い縛る、母の苦しむ姿を思い浮かべて。
苦しさには手を握り締める、父の恨めしそうな眼を思い出して。
辛さには身体を丸め蹲る、とある男の言った呪いが外へと出ないように。
言葉は小さく、想いは掠れて、誰にも聞かれずに零れ落ちた。
「……助けて……」
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【記録―2007年7月】
とある地方にて、呪霊の大量発生を確認
等級は3級から1級と幅広く、現場を担当した準一級術師数人が、これに対処
しかし後日、現場担当の報告により、担当した術師が意識不明の重体に陥ったことが判明
加えて、呪霊が相当数健在である点を垣間見て、急遽、特級呪術師『夏油傑』を派遣
早急な事態の収束が急務である
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悟が最強になった日の夏、私は任務でとある村に来ていた
内容はいつも通りの呪霊の討伐
しかし今回は、突発的な呪霊の大量発生があり、その原因とともに対処に当たらなければならなかった
私は非術師の保護のためにも、七海や灰原やほかの術師を連れて任務に尽力を尽くしていた。
「七海、大丈夫か?」
住民が避難した後の帳の中
迫りくる呪霊の波に私の持つ火力の高い呪霊を当て、尻餅をつく七海のもとへと駆け寄った。
「あ、ありがとう、ございます、夏油さん、助かりました」
七海には目立つ怪我はないものの、流石の呪霊の量に体力を使ったのか息が上がっている。
だが、まだ闘志は崩れていないのか、呪具を握る手には力が入っていた。
「七海、まだ戦える気力があるなら聞いてくれ。
先ほど私の呪霊でここら一帯を空から眺めてきた」
「なにか分かったんですか?」
「ここを中心に一時方向と三時方向に2級相当、そして十一時の方向に1級相当の呪霊が集まっている」
流石は私の後輩、悟より賢いため私の情報を聞いた七海はすぐさま事態を理解する。
「時間がないから端的に話す、私は呪いの強い十一時の方向を請け負うから、七海は灰原と他の術師を集めて一時と三時の方向へ迎え。人選は七海に任せる。」
無茶振りと分かっていながらも伝えなければならない命令
「目的は呪霊が集まる原因の破壊か、出来るならば確保。
今の少ない戦力じゃあ全て祓おうにも祓いきれないから目的が完了次第、帳を解いて呪霊を霧散させるんだ」
いくら七海でもこの作戦には呪術師として言いたいことがあるだろう。
しかし、七海は尊敬でもしてくれているからか、現状が四の五の言ってられる状況ではないからか、私の命令を了承してくれる。
「くれぐれも無理はするなよ?今は非術師が死ぬよりも、戦力を失うことの方が惜しい。」
「…分かりました、夏油さんもお気をつけて」
灰原を呼ぶ七海の背中が待機中の術師の元へと向かう。
その背中を見送った私は十一時の方向へと走り出した。
途中でたむろう2級以下の呪霊を祓って取り込む。
取り込んだ呪霊を『渦巻き』にして、一級相当にぶつける。
また、その倒した準一級を取り込み、行く手を阻む呪霊を祓う。
祓って、取り込んで、祓って取り込んで…
その回数が10回目になったとき、呪霊が集まった原因の場所へたどり着いた。
「ラ…La La La…ライ…ライ…ライキャク…かぁ?」
目の前には、背を向けて座る一級相当の呪霊
私が来たのと同時に、その呪霊は首をこちらに向けてきた。
(なんだあれは?……血の池?)
臨戦態勢を取る私は、呪霊が手についている血と、その下にある血の池を訝む。
これが人が食われているからこそ出来たものならば、直ぐ様助ける必要があるがここに人がいる気配はない。
それどころか、ただその血を吸い取ろうとする呪霊の行動を奇妙に思う。
恐らくだが、あの血には何かがある。
「…どちらにしろ、祓わなきゃ先には進めない、か」
調べようにもあの呪霊が素直に退いてくれるわけもない。
それに人に害するならばそれは祓う対象、私は一体の特級相当の呪霊を召喚しようと…
「オイ…オイシ…シシシシシ…」
「ん?」
「……イイイeeeeeッヅ!?」
「…っ?!」
突然、その呪霊は内側から破裂した。
まるで限界まで膨れ上がった風船のように、破裂した
あまりの状況に、私は息を呑みこんだ。
「…やっと、終わった」
すると、突然後ろから、先ほどの呪霊よりもおぞましい『なにか』の気配がした
それは、濃密な死の気配
私は直ぐ様、その場から距離を取り、正体を確認した。
「…」
そこにいたのは、薄紫がかった髪をした、どこか儚げで幼さが残る、性別不詳の少年。
これが私と彼のファーストコンタクトだった。
「君は、何者だ…っ」
私はこれでも悟同様に最強と謳われた呪術師だ。
それなりに戦闘経験もあり、悟を除けば誰にも負けない自信がある。
なのに、そんな私がこの少年に脅かされた。
年端も行かぬ少年に、死ぬかもしれないと錯覚させられた。
この少年は…危険だ
「…貴方は…」
私は襲われようともすぐ対応出来るように少年に殺気を当てる。
しかし少年自身に俺を害しようとする意思はないのか、それを意に介さない。
それどころか、私には興味をなくしたのか、その視界にはもう私を映さなくなった。
(呪詛師にしては…隙だらけすぎる、か?)
悪事を働く呪詛師であるなら私を知っているはずだ。
悟と同様に特級術師として知られる私の危険性を知っているはずだ。
なら、絶対に視線を外すはずがない。
知らない可能性もあるが、敵なるかもしれない奴から視線を外すはずがない。
となれば、この子は呪詛師では…ない…?
「…すいません、あそこにいた呪霊は、貴方が倒しましたか?」
「いや、破裂したように死んだが…」
「そうですか、ありがとう御座います」
少年のあまりに淡白な声に私は正直に答えてしまう。
(なんなんだこの子は…)
見た目通りなら四歳か五歳辺りだろうか?
歳のわりに早熟したような言葉遣いに、内側と外側があっていないチグハグさを感じる。
第一印象だけで少年を表すなら、奇妙と言う言葉があうだろう。
なにかを思案する少年を前に、私は不信感から立ち尽くすことしか出来なかった。
しかし、少年はそんな私を気にも止めない。
「…吸収しないと」
「何して…っ!?」
目の前に広がる血の池は、含まれている呪力からてっきり何かの呪物だと思っていた。
が、それは甚だ見当違いのようで、次の少年の行動により判明する。
少年は禍々しいその血の池を、一滴も残らず吸い取ったのだ
「君の仕業だったのか?」
少年の表情は変わらない
無感情なのか、その目には色を灯さない
しかし、私の台詞から自分が迷惑をかけていたことに気づき、頭を下げてきた。
「…ごめんなさい、呪霊は自分を狙って集まってきました」
「…?…君は『稀血』かっ!?」
であるならばあの呪霊の集団も頷けるというものだ。
『稀血』とは、呪霊がもっとも好む呪力を有した者のことで、その殆どが呪力の質で言えば私や悟よりも高いとされる。
あの呪力は故の禍々しさか…
「ここにあったのは、僕が用意した呪霊用の毒の罠です。
信じてもらえないでしょうが、誰かを害そうとして作った訳じゃありません。」
しかし、稀血は天与呪縛より珍しい、
その希少性から稀血と判断される材料が少なく、私の判断は直感的には間違いないだろうが、正確かどうかまでが分からない。
(くそっ、判断材料が少なすぎる…っ!)
稀血が珍しいとされる理由には以下の二つがある
『生まれてまもなく呪霊に殺される』か『殺されずと呪霊による被害で迫害対象となる』か
それも一般家庭なら尚更、死ぬ確率は人一倍。
と来れば、まず確認するべきは…
「君はもしかして…誰にも教えられず呪力をあれほどまでに操れるようになったのか?」
「…はい」
苦虫を噛み潰したような表情
しかし、その肯定は少年の才能が凄まじいものだと告げていた。
(凄い…っ!)
この様子だと、少年は幼少期から呪霊と対峙していたはずだ。
それも、身体を思う存分扱えず、何もかもが初めてで理解できない時に、力の強い呪霊と戦ったはずだ。
となれば、不気味な程の呪力の質と精神の早熟に納得がいく。
そして、呪霊に対して有効な罠を張ると言うその手際の良さ
まだ知識はそれほどないにしろ、賢さはもう相当なものになっているだろう。
実際に少年の実力は早四,五歳での術式の操作にまで至っている
(これが本当なら持ち得る才能は私以上の…っ!)
私が驚愕していると、家の中へと帰るためか少年は踵を返した。
「君、ちょっと待ってく「触らないで下さいっ!」っ!?」
私が呼び止めようと腕に手を伸ばすと、少年は怯えたように私の手を振り払った。
恐怖の色が混ざった瞳の色。
(特別な力を持つのに何をそんなに…っ!?)
何をそんなに怯えるのか、そう訝むと同時にその訳が視覚情報から明白になった。
少年の服の隙間から覗く大きな青い痣
この少年は稀血として生きているものの、迫害の運命からは逃れられていないのだ。
「その痣はまさか…?」
「っ!?…なんでも、ないですからっ、大丈夫です」
猿め、無意識に脳内現れるその言葉
「…猿どもめ…」
服を伸ばして傷を隠す少年を見て…それは初めて口に出た
(って、何を考えているんだ私は。
今はこの子の確保が優先だろうにっ)
少年は私の怒りを感じ取ってか、急ぐようにここから立ち去ろうとする。
私は慌てて呼び止めた。
「君が望むなら、高専に来ないか!」
それは少年にとってはメリットしかない提案のはずだった
「…高専にいれば、君は君の知らない呪術を学べる。
私含め、呪術におけるプロが君の成長に手を貸すことを約束しよう。
君の体質も、大方それで解決できるはずだ。
年齢が若すぎるが、呪術師は万年人数不足、住むだけなら私がどうにかしよう」
若くして呪霊の戦闘を表立ってすることにはなるが、少なくともこのまま一人で相対するよりかは断然いい。
「それに、高専はここよりかはよっぽど君のためになるはずだ」
私が少年の立場なら迷わず呑んでいたであろう提案。
しかし、少年はそんな好条件に一切期待もせず、分かりやすく頭を下げる。
「…ごめんなさい、お断りします」
少年の口から出たのは、拒絶
「僕はそっちに行っちゃいけないんです」
説明不足にもほどがある。
しかし揺るぎない信念がその内側から感じられた。
どんな説得も通じないと、錯覚させられた。
「僕にはここがお似合いですから。」
初めて見せた悲しい笑み。
「僕の呪力は他人には毒です…お気をつけて」
私が止めるまもなく、少年は自宅へと消えていった。
「…間違っている」
その背中を眺めた私はこの日、悟った。
少年ほどの実力者が、非術師から蔑まれている事実を。
私に次ぐほどの強者が、弱者に人として扱われていないことを。
この世界の仕組みに、この国が抗っていることを。
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【報告】
任務は完了
全呪霊の討伐を確認
呪いに縁も所縁もない地に呪霊が集まった原因は『不明』である
次回こそ、次回こそっ!酒呑童子出しますっ!
お楽しみに!
評価、感想、誤字報告、お願いいたします。
励みになりますので