なお、出来はお察し
椿が楓の村に入ってしばらく後の事である
御免!椿殿はおられるか?
訪問者があった
・・・・・なるほど。先の退魔師は相手方に引き渡された、と?
うむ。其方やこの村の者からすれば不本意ではあろうが、あれも都より招かれたと聞く
残念ながら、
訪問者は先の騒動の顛末を知らせに来た城からの使者だ
本来ならば「お上のする事」の一言で済む話なのだが、敢えて知らせに来たと言う一点において椿は相手の思惑を正確に汲み取っていた
(なるほど。この村に対する気遣いができる程度には状況は悪くないということか)
事実、管領家との戦は終始有利に展開している。加えて今回の乱行の噂話を流布した結果、一部の管領に従っていた勢力は明らかに距離を置き始めていた
とはいえ、彼等管領と敵対している側からすれば、そこまであからさまな事をして欲しい訳ではない
寧ろ、土壇場まではその不満を隠し通して欲しいとすら思っていたりするのだが
今回使者が村を訪れたのは椿の考える通り、『被害にあった村の感情』を
だが、それ以上に高名な巫女であった桔梗の身内である楓や桔梗に並ぶ力量を持つ椿への配慮に他ならなかった
この時代は各勢力が常に争い続けており、そんな状況下における死者は無念、怨みなどを抱えたままの者が多い
そうなってくると、負の感情を好む妖怪達の格好の餌となってしまう例は挙げてしまうとキリがないほどであったのだ
故に先月までは武者でも打倒できていた妖怪があっという間に対応出来ないところまで成長してしまう。という笑えない話も山ほどある
そうなれば、妖怪退治の退魔師や退治屋、椿の様な巫女に依頼する他ない
この時代において退魔師などの妖怪退治が出来る者達の価値は非常に高く、勢力によっては高禄で召し抱える事も何ら珍しい話ではない
殊更、日の本の中心である都やその近辺ではその傾向が特に強く、金銭や名誉などを与える事により体制に組み込もうとする
そして、ある程度の野心がある者は都に向かってしまう
そうなれば、地方は妖怪の影にいつまでも怯えねばならなくなるのは必然だろう
ではあればこそ、桔梗や楓の様な土地に根ざした巫女や椿の様に他所から流れてきた巫女を大切にするのだ
此方としては文句を言うつもりもありませぬ
ありがたい事よ
あってもらっては困るが、もしも先の様な事があるのであれば早急に知らせてもらえぬか?
されば迅速に対処する故
わかりました
そう言って使者は村から去って行った
同時刻
うぬっ!まだ怪異の元凶は退治出来ぬのか!?
二日後に処刑される退魔師の上司は叫んだ
彼はここ二日もの間、管領の領地にて騒がれている怪異の解決に奔走していた
焦っている理由は一つ
この騒動の解決の功を以て、退魔師の助命を嘆願しようと考えていたからである
何せ、彼は都の退魔師である
自身の持ち得ない人脈、そこら辺の術師よりも高い力量を有しているのだ
とはいえ、一個人である上司と異なり統治者である管領からすれば如何に力量が優れようが人脈があろうが、統治に差し支える人物など積極的に使おうとも思わないのが普通なのだが、彼は根っからの術者であり統治者としての視点や考え方などした事もなかった
そんな管領の屋敷では
ふん、都落ちした退魔師だと聞いて少しばかり期待してみれば何の事はない。大したものではないか
上座に座る男は不快そうに言い捨てた
・・・面目次第もございませぬ
左右に管領の家臣が一堂に並ぶ中、管領の正面の下座に座す男は平伏する他の事が出来なかった
この人物は都より落ちる退魔師の男を不憫に思い、管領の配下であった術者に紹介した者であるのと同時に都より管領の為に派兵された一団の長でもあった
つまり、この事態を引き起こした一因と言える訳で
そも、都にて問題を起こしていた輩が何故こちらに来て大人しくしていると考えられたのか?
家臣の一人が疑問を呈した
この様な場にて主君が直接声をかけるのは余程の事であり、基本的に家臣が主君に代わって
は、かの者は退魔師としての力量に優れておりまして、それをむざむざ捨てゆくのはどうかと思いまして
その結果、現在敵対している勢力の所領にて狼藉をはたらいたというが?
申し開きのしようもありませぬ
というか、都ならばある程度の勝手は許されたのであろうがな?
それがこの地でも受け入れられると思うなど、傲慢にすぎよう!
・・・はっ
詰問が行われている頃
こちらでよろしいのですか?
うむ、これならば構うまい
当の退魔師は牢の中でとある式を作っている
彼からすれば、自身を貶めた連中全てが許せなかった
それ故に
男の生家はそれなりに歴史のある家であり、それ故に並の家では扱えない秘薬の扱いも認められていた
これは彼の家の開祖とも言える人物が功績を挙げた事により認められていた訳だ
しかし、近年ではその力量も意識も低下しつつある為に、術者を管理する組織は密かにこの権限の剥奪を考えていたりする
というか、彼が関州に行く事と決まった翌日には権限の剥奪が実行されており、彼の実家の者達もまた都より西国などへと分散して追放されていたりする
彼や彼の上司が期待したものなど何処にもなかったのだ
そんな知識の中には、妖怪を取り込む方法もあり、幼い頃から力を何よりも求めていた彼は密かにそれを写し取って、保管していたのだ
それを今まさに実行しようとしていた
むかしむかし、ある所に力の弱い妖怪がおりました
その妖怪は他の妖怪達からも蔑まれ、退魔や破魔の力を持つ者からも侮られ、力無き者達からは恐れられていました
しかし、その妖怪は非常に頭が切れる者であり、他の妖怪達を盾にしたりして何とか逃げ延びていたのです
其処は都から近く、ある時都から退魔師が派遣されて来ました
しかし、力はほとんど無い妖怪故、上も其処まで問題視しません
だからでしょうか、退魔師は自分一人。お供も仲間も居ません
彼は親類縁者が退魔師でも何でもない者達であり、腕前を買われて都に呼ばれこそしましたが、誰も彼もが彼を心の底では侮っていたのが本人にも分かっていたのです
だからこそ、多少話題に上っていた妖怪を退治する事で自身の力を示そう
そう思っていたのです
しかし、この人物は結局妖怪を退治する事が叶いませんでした
妖怪は人質をとったり、他の妖怪達の縄張りに誘導したりと退魔師からすれば理解できない方法を取ってきたのですから
嗚呼分かった。私の負けだ
妖怪は観念したのか、退魔師に負けを認めました
漸くか
手間をかけさせおって
退魔師は内心安堵していました
やっと、この妖怪を退治出来る。と
しかし
だが、人間よ
負けは認めたとしても、お主に討たれる気はない
何?
妖怪はある物を退魔師に投げて寄越した
巻物?
そうよ
我は確かに力の無い妖怪。だからこそ知っている事もある
退魔師の男は警戒しながら、その巻物の中身を読んだ
こ、これはっ!
其処には己が力を高める方法が幾つも書かれていた
さてさて、我はこの地を去り更に西国へと参るとしよう
後はお主が好きにすれば良かろうて
その退魔師が興した家こそが、問題の退魔師の家であり、彼が得た知識はその巻物の一部であった
だが、彼は知らない
彼の祖先に巻物を与えた者が妖怪であり、特にその妖怪は知恵に秀でた者であった事を
男が式を完成させた僅か半刻後には彼が捕らえられていた牢はおろか、管領の屋敷や城なども全てが無くなっていた
そう
妖怪というものは人と同じく多種多様なものがいる
例えば結羅の様な鬼
例えば犬夜叉の様な半妖
ひと口に妖怪と言っても、種族も多種多様であり、尚且つ同じ種族だとしても全く性質の異なるものとて不思議ではない
そして、弱いと思われている妖怪ほど厄介なものはない
これは熟練の退魔師や巫女、退治屋が口を揃えて言う言葉である
妖怪の中で弱いとされていたとしても、人にとっては危険極まる存在
だが、弱いとされる妖怪の中には
とある妖怪は人を喰らう事なく、一つの国を地獄に落としたとも言う
何をしたのかは不明ではあるが
そして、巻物に記されているものは全て
それ故にかの者は己が子孫にも厳しく言い付けていた
これは充分な力量を持つ者。私が遺した試練を突破した者にしか見せてはならぬ
と
だが、時を経てしまうと口伝というものはその重みを失うものであり、いつしかその存在自体を忘れられる事となってしまった
そして、永き時を経てその術式が現代に蘇ってしまったのだ
同化の法
力量優れた術師が更なる退魔の為の力を得る為
その名目で編み出された邪法である
しかし、この邪法を編み出したのは他ならぬ妖怪であり、力無き者がそれを行使すれば術者自身が妖怪と化す恐ろしきものであった
いや、そうなる様にわざと書いたのである
数百年も前に退魔師へと贈った
それが牙を剥くことになる
楓が救われるかどうかダイス振って、ファンブル直前だったので究極挟むことになった話
多分、死亡フラグが乱立しそうな予感
このままの方針で良い?
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メインキャラも書いて、どうぞ?
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日陰者に光当てんだろ?あくしろよ
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ふーん、興味ないね