~mabinogi~【 Virus 】   作:菊雅雀

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2.『断片』

 別世界に入ってきたプレイヤーには、黒いドレスを身にまとった少女『ナオ』に、案内され導かれてからゲームが始まる。

それが、オンラインゲーム『mabinogi』内でのルールであり、そうプログラムされている。

翡翠色をした瞳を感情のない笑顔で、導かなければいけない。

 一体『ナオ』は、幾多のプレーヤー達に会って導いては、別れていったのだろう?いつか忘れ去られるであろう自分の存在に、苦にならないだろうか?

何千何億ものプレーヤー達に会っては、導いてきたのだ。普通は苦になる筈だ。

 だが、少女『ナオ』は現実に存在しないプレイヤー。プログラムによって作りだされた映像にすぎない…つまり、現実では生きてはいない、プログラムによって作られたキャラクターである。

 

今日も、いつも通りの笑顔でプレイヤー達を導いていくため待っていた―――少女の背後に亀裂が入るまでは

 

 

 

 

 

 

2.『断片』

 

 

 

 

 

「はあ?お前、ゲーム好きだったっけか?」

 

少し風が冷たくなり、枯れ葉が次々と落ちていくと、大きな絨毯が出来ていた。

制服を着た若い男女が、その上を歩き、秋を告げる音がなる。

 

「好きって言うより…最近、気になってるんだよねぇ」

 

季節が変わり始めた頃、風邪をひかない様にと、予防として白いマフラーを首に巻いている少女が答えた。

 

「ほら!あれ!」

 

赤いネクタイの端に学生の紋章が付き、秋冬使用の黒いセーラー服を揺らした少女が指をさす。

少しがやつく所に来たと思ったら、いつの間にか自分達の帰路にあるビルに、設置された大きなテレビモニターがあった。

 

「…いつの間に、こんなドでけぇテレビが出来たんだ?」

「それよりも、あれ!」

 

少年の学ランの袖を引っ張り、無理やりテレビモニターに映し出された映像に目を向けさせる。

そこに映りだされたのは、オンラインゲーム『mabinogi』を紹介するCMが流れていた。

現実とかけ離れた世界で、ただモンスターを倒すだけでなく、料理や釣り等をしたりへと、のんびりと自由に生活が出来る。プレイヤー次第で、自由の世界が広がるのだと宣伝していた。

 

「【マビノギ】て言うんだって…世界が広いらしいよ?」

 

「どんな感じに広いンだ?」と問おうと振り向いたが、少女は輝かせた瞳をテレビモニターに釘付けだった。

まだ、ゲーム紹介をしているのか森、城、街へと各エリアの様な所に映像が流れていた。流石、CM…何とも興味を引かせるのが上手い。現に少年も興味を引かせてしまった。

自身の黒髪を少し掻き、少女に言う。

 

「じゃあ、さあ―――…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ま……!まも……っ!

 

 

 

(まもる)ッ!!?」

 

名を呼ばれた反射で瞼を開いた。何故だか世界が逆さまになっており、背中に痛みを感じる。

ここは『ティルコネイル』―――雑貨屋、宿、食料品等の生活の基本となる物はだいだい揃っていて、馴染みやすい村。名産物といった物はないのだが、ある物好き達が、独自の音楽を披露しようと集う。

 

「だ、大丈夫か…!?」

 

栗色の髪の青年が、心配そうに樹から落下した人物に、駆け寄り話しかけた。

自身の青色の瞳を、仰向け状態の褐色の瞳と合う。青空と重なっているかの様に綺麗である。

 

「…兄貴か…覚めた…」

 

言葉のキャッチボールが出来ていない。

先程まで隠れていたであろう金色の前髪が崩れ、今では、眉間のシワが寄っているのが見える。今、目が覚めたと言わんばかりに…。

兄貴と呼ばれた栗色の髪の青年の名は『桂斗(けいと)』。血は繋がっていないのだが、昔からのよしみで、兄弟みたいに仲が良く、自然とそう呼ばれる様になっていった。

 

「大丈夫そうだな…ほら!」

「悪いな…」

 

仰向けのままの彼に桂斗が手を貸す。服に付いた葉っぱを落としながらも、ほぼ同じ目線にやっと立つのだった。桂斗より頭が一個分下で、こうして見ると本当の兄弟の様である。

金色の髪をし褐色の瞳を持つ彼の名は『葵』。髪の色のせいなのか、少し目つきが悪いせいなのか…一見チャラ男に見えるが、ガタイに似合わず両腰にかけている剣を見る限り、とりあえずは立派な剣士なのだろう。

 

「寝てたか?」

「嗚呼、夢を見る程に…」

「遅れて…ごめんな…」

「! いや!兄貴は悪くねえよ!?俺が先に来ちまっただけで!」

 

眠らせる程待たせてしまった事に、桂斗は謝罪をするが、それはワザとである。

まだ、寝ぼけているであろう葵を目を覚まさせるため、ワザと悲しそうに謝罪をしたのだった。

そんな困惑する姿に、毎回クスッと笑わせてもらっている。

 

「葵は見つけやすくていいな」

 

その言葉には嫌味などではない、樹の上で寝る等…自身が知っている限りでは、葵しかいないのだから。

葵は、桂斗に一緒に樹に登る事を誘った事があるのだが、「今度な」とやんわりと断られた事があった。その日を待つとしよう。

 

「さて…ダンジョンでも行くか?」

「おう!行く!兄貴がいない間、俺、結構修業したン……だ…」

 

葵の先程まで眠たげな表情が何処かに消え、キラキラと輝く子供みたいな表情になる。途中、桂斗の後ろを横ぎった黒いワンピースを着た女性に目を追いかけていた。

それを見逃さなかった桂斗は、唇がゆがむ。

 

「どうした、葵?ナンパするのか?」

「馬鹿!しねえよ!!」

 

葵は赤面する

桂斗は笑った

 

今日もティルコネイルは平和です

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