歴史の中のウマ娘   作:友爪

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 私が勝手に愛してやまないオリジナルウマ娘。
 ナポレオンの愛バ、芦毛の《マレンゴ元帥》についての激重妄想を最低限整えたものです。
 何せナポレオン戦争はいくらでも深堀り出来てしまうので、とりあえずこれ位でネタを放出しないと耐えられませんでした。

 めくるめくフランス革命の腹から出たウマ娘と人間、二人の天才。その二人が、竹バの友から政敵へと変わり、そして別れゆく物語です。
 行間の妄想は、もう一杯あるけれど、色々と激重過ぎる。


【未満】ナポレオンの愛バ、マレンゴ元帥という夢幻

 

【挿絵表示】

 

図.マレンゴ元帥の肖像

 

 

◆マレンゴ元帥

 共和制フランス軍人ナポレオン・ボナパルトの愛バ、竹バの友。

 帝制フランス皇帝ナポレオン一世の政敵。

 著名なナポレオンの戦いには凡そ参戦しており、()()()()などとも言われる《アウステルリッツ三帝会戦》の勝利に寄与した事は有名。

 しかし、ナポレオン最後の戦いである《ワーテルローの戦い》には不参であった。

 後半生は英国の駆兵教官として長く教鞭を執り、二度と祖国に帰る事なく天寿を全うした。

 生涯未婚、子も無かった。俗にはランヌ元帥(人間)へ淡い思慕を懐いていたという。

 

 

◆軍バとしての出発

 戦争に火砲が必須になった時代、しかし、砲兵科はウマ娘に全然人気が無かった。

 主には「うるさい」「びっくりする」「なんかこわい」が理由で、確かに人間より繊細な聴力を持つウマ娘にとっては分厚い遮音耳カバーを装備したとしてもストレスが大きかったのである。

 そして、もっぱら花形である駆兵科に人気が取られていた事もあった。砲兵科はその成立から常に牽引ウマ娘の不足に悩まされていたのだ。

 例外的に砲兵科へ志願してくるウマ娘といえば……一癖も二癖もある娘ばかりで、だがそういうのに限って謎に優秀だったという。

 

 ナポレオンの愛バ《マレンゴ元帥》はその筆頭だろう。

 砲煙弾雨の演習中、必須装備である耳カバーも付けずに眠りこけるという、その胆力というかズブさというか、それを教官は叱って良いやら褒めて良いやら分からなかった──という逸話は有名だ。

 砲声を子守唄くらいにしか思っていない心臓に毛の生えた田舎ウマ娘は、ある意味で士官学校の有名人だった。とんでもなくズブな芦毛がいるらしい──その噂がナポレオンと運命的に知り合うきっかけにもなった、というのは後世の潤色である。

 

 

◆相棒ナポレオンとの出会い

 コルシカ島産まれのナポレオン・ボナパルトという士官候補生、これも成績を下から数えた方が早い位の田舎者だった。

 マレンゴとナポレオン。この出来が良いとは言えない二人が組まされたのは全く学校側の都合というもので、別に運命的でも何でもなかった。しかし、事実、二人を組ませてみると成績が飛躍的に上昇した。

 実は割と良くある現象である。人間とウマ娘の間には不思議な相性というものがあって、合わない時は徹底的に合わないものだが、その逆もある。マレンゴとナポレオンは後者だった。

 昔から「ウマが合う」と言う──否、二人はそんな言葉では形容不能であろう。

 

 ウマが合う、ウマ娘と人間の軍人ペア。二人は指導人(トレーナー)と競争バの様に、互いに人格と能力とを成長させるケースがある。マレンゴとナポレオンは違う。しばしば互いを思慕する事で能力を発揮するケースもある。マレンゴとナポレオンは違う。

 ()()

 その極めて奇異な共通点が、しかも完全に重なっていた。単なる学校の都合が、歴史を変える軍才を急速に開花させた。マレンゴに見えるものはナポレオンにも見えていたし、ナポレオンに見えるものはマレンゴにも見えていた。

 戦場に立っては、早ウマを仲介せずとも同じ事を思考し、剛毅果断、戦果を最大化させるための連携が取れた。

 正に『一心同体』とは二人の事を言うのであろう──傍目には互いに悪態を吐いている様にしか見えなかったと言うが。

 

 

◆黄金時代

 自由・平等・博愛。人間は生まれながらにして平等である──祖国フランスに革命の炎が巻き上がっていた。

 相次ぐ国難のため、若い士官も戦地に駆り出される。そしてマレンゴが直々に練兵した砲兵ウマ娘隊は猛威を発揮した。

 とてつもない速さで火砲を牽引し、敵の態勢が整う前に横っ腹へぶちかます。一度で崩れなければ、直ぐさま移動し別角度からぶちかます。その機動力、火力は間違いなく世界最高水準であった(見事に癖ウマ娘しか居なかったけど)。

 そして敵の秩序に綻びが見えるやいなや──いや、それ以前に綻びを予知したナポレオンは「前へ」と号令する。

『モンジョワ!』

 鬨の声が挙がり、古式ゆかしい駆兵突撃が敢行される。フランス胸甲駆兵の先陣を駆けるのは猛将ミュラである(マレンゴとはめっちゃウマが合わなかったが能力は認め合っていた)。

 革命以後成立した史上初の《国民軍》。それを軍事史上の天才二名が手足の様に動かす分進合撃と内線作戦は大陸軍(グランダルメ)の不敗神話を作り上げた。

 

 古代の英雄ハンニバル・バルカに倣い、アルプス山脈を越えるという奇想天外な戦略も、二人なら不可能ではなかった(ポール・ウマローシュ作『一つ外套に包まって寒いと叫びながらアルプスを越えるナポレオンとマレンゴ』。ナポレオンのアルプス越えと言えばダヴィッドの絵画が有名であるが、記録に忠実に再現すると多分こんな感じだよね……という絵画。さむそう)。

 

 旧態依然のヨーロッパ諸国は()()()()()()()()()()()()()()()というものに太刀打ち出来なかった。

 一体全体、何の理由があって身分卑しい一般庶民までもが『祖国のため生命を賭す』事が可能なのだろうか? フランス大陸軍は全く理不尽で、不気味な、意味不明の強さに思えた事だろう。

 ナポレオンとマレンゴが組んだ戦場には、常に勝利の栄光が付いて回っていた。ただの田舎者コンビから、最高の民衆の守護者、元帥まで駆け上がるまでたったの数年であった。

 共和制フランス両元帥は言う。

 

『我々の辞書に不可能という文字は無い』

 

 

◆相棒の皇帝即位

 

「ギロチンで死なない奴がいるのか?」

 

 フランス皇帝即位の内報を聞いた時のマレンゴ元帥の言葉。ルイ16世が蘇ったのかと思い怖かったらしい。元帥にとっては、死者蘇生より相棒の皇帝即位の方が現実味を帯びない事象だったのだろう──それは共和制フランスの死を意味していた。

 同年、マレンゴ元帥は《フランス大元帥》の任官を拒絶。()()ナポレオンへの深い失望を察するに余りある。

 

 

◆帝政崩壊に際して

 フランス大陸軍(グランダルメ)の優駿、マレンゴ元帥は、竹バの友ナポレオン・ボナパルトが皇帝に即位した時、全く祝福したりせず「調子に乗んな」と冷たくあしらった。

 須く祝福されるものだと思っていたナポレオンは鼻白み、激しい口論となったという。

 以後、両者の関係は冷えたものとなる──マレンゴは『自由・平等・博愛』というフランス革命の精神が、利己的拡大の口実へ変質しつつある事に気付いていたのである。

 

 マレンゴ元帥は大陸軍(グランダルメ)を率い《アウステルリッツ三帝会戦》に芸術的勝利を演出したが、際限無く拡大する《ナポレオン戦争》には政治的に対立姿勢を取った。

 彼女が密かに思慕していた──と言われるランヌ元帥(人間さん)がオーストリア戦役で壮絶な戦死を遂げると(切断した片足が化膿して亡くなった、ウマ娘にしてみると悼ましき事この上ない)、皇帝の()()の様相をいよいよ濃くしてゆく。

 

 そして遂にロシアを懲罰するのだ、と息巻く皇帝ナポレオンに対し「調子に乗るのも大概だ!」と激昂した。

 元帥はロシア遠征に強く反対意見を唱え続け、それを疎んだ皇帝は愛バを露骨に遠くへ配置した。そして遂にモスクワ占領間近にして、マレンゴ元帥は()()()()()()

「勝てば皇帝(ツァーリ)にしてもらえるとでも? バカバカしい」と吐き捨てたという。

 この独断にナポレオンは激怒、かつては一心同体であった《フランス無敵コンビ》は完全に決裂した。

 

「マレンゴ、ズブの駄バ娘めが! 奴だけは私を分かっているはずだ。なのに何故分からぬ振りをするのか。怠慢、裏切りに他ならぬ!」

 

 しかし皇帝怒りの炎もつかの間、ロシア最強の猛将、冬将軍が襲来。仏本軍は惨めな撤退を余儀なくされる。

 逃げ惑う仏本軍を容赦無く追撃する露軍。だがここで、後方で待ち伏せていたマレンゴ元帥が逆奇襲を断行。露軍を壊乱させ、それ以上の追撃を断念させた。

 結果的に、マレンゴ元帥は仏本軍の損害を最小限に留めた──という功績で先の独断は不問にされる。

 

 大敗を契機に失脚したナポレオンは島流しに処されたものの、しかし、彼は流されたエルバ島から舞い戻る。恐れ慄いたルイ18世はしめやかに亡命。

 そしてパリでは彼を歓呼を以て迎える民衆も多かった。まるで英雄の凱旋の様であった──国民に歓迎された皇帝は、機嫌良く周囲を見渡して手近な兵士に尋ねる。

「ところでマレンゴは何処か。軍議を要する」

「恐れながら陛下、元帥閣下は不在であります」

「来ていない? まさか」

 マレンゴ不在の報告にフランス皇帝は多大なショックを受けた。この時ナポレオンは、士官学校時代「俺たち二人で無敵だぜ!」と肩を組みあった竹バの友を失った事にようやく気が付いたのである。

 

 ヨーロッパの問題児が舞い戻った事に反応して、欧州諸国は第五回対仏大同盟を結成。大英帝国を筆頭に、今度こそナポレオンにとどめを刺すべく押し寄せる。

 それからの皇帝の指揮は明白に精彩を欠いていた。己が既に裸の皇帝であると男は自覚していた。

 

 そして、マレンゴ元帥不在のまま行われた《ワーテルローの戦い》

 相対するは《鉄の公爵》ウェリントン公アーサー・ウェルズリー、そして愛バ、コペンハーゲンの鋼鉄コンビ。二人は欧州大陸の地を踏んだ時、真っ先に言った。

「ボナパルトとマレンゴを合流させてはならぬ、断じて。何をしでかすか分からん」

 しかし、その最大の懸念であったマレンゴ元帥の能動的不参――その裏を取った時、彼らは膝を叩き勝利を確信したという。

「奴は片翼をもがれた鳥だ!」

 ――必然の如く、決戦に敗れたナポレオンは「一体何処から間違えた」と激しく自問しながら惨めに最後の戦場を逃れた。

 

 ほうほう後背の陣に逃げ帰ると、何とそこには芦毛のウマ娘、マレンゴが居た。

「やあ、なんてざまだい」

 のんびりティーカップを置いて、ウマ娘は続ける。実はイギリスから戦術顧問として呼ばれているから、お別れを言いに来たのだ──呆気に取られるナポレオンの肩へ雑に腕を回した。

「お別れだ、元気でやれよ兄弟」

 親友の言葉に、はっと、ナポレオンは肩を組み返して言った。

「お別れだ、俺に会えないからって寂しくて泣くなよ」

「調子に乗んな」

 マレンゴ元帥は笑って答えた。

 

 

◆引退後の活動

 相棒の失脚後、才を買われ英国で軍事顧問をしていたマレンゴは、かの国の王政下では政治的に微妙な存在だった。が、政治主張をすることも無く、概ね粛々と職務に励んでおり、士官学校の生徒ウマ娘からも人気があった。

 ナポレオンとマレンゴの無敵コンビの名声は欧州中に轟いていたのである。

 

 牙を抜かれた様になったまま時は過ぎ、とある軍事祭典の日。その参加者が凄まじい。

 ワーテルローの戦いでナポレオンを撃退した《鉄の公爵》ウェリントン。

 そして若い時分、ネルソン提督下で戦った経験もある《船乗り王》ウィリアム四世。

 と錚々たる面子が揃い踏みの舞台で、マレンゴは独唱を許された。これは軍事ウマ娘にとって大変名誉であり、普通は海外出身の彼女が許される事ではなかった。それだけマレンゴ(元)元帥の仕事ぶりが評価されていたという事だろう。

 当然準備も丹念になる。打ち合わせ(リハーサル)では英国の軍歌を歌う予定であり、フランス人の彼女も嫌な顔一つしなかったらしい。

 

 しかし、土壇場(ほんばん)でマレンゴが高らかに歌い上げたのは『ラ・マルセイエーズ』。

 

  行こう 祖国の子らよ

  栄光の日が来た!

  我らに向かって暴君の

  血まみれの旗が掲げられた

  聞こえるか戦場の

  残忍な敵兵の咆哮が?

  奴らは汝らの元に来て

  汝らの子と妻の喉を搔き切る!

  武器を取れ市民らよ

  隊列を組め

  進もう! 進もう!

  汚れた血が我らの畑の畝を満たすまで!

 

 よりにもよって()()()()()()()()()()()()()()()()()()である。

 フランス語を解する貴族、高級将校は一同真っ青。

 しかし、外国語が良く分からない士官以下は、芦毛のウマ娘の美声に拍手喝采だった。まるで、そこには()()()()()として戦場に立った、無敗の元帥が復活した様にも見えた。

 

 この異常事態に当の本人は、いたって涼しい顔でうやうやしく一礼して壇上を去ってしまう。

 そして、公爵と国王は──誰よりも強く手を叩いていた。

 彼ら古株の兵が知っている恐るべき異国の名将、往年のマレンゴ元帥と再会した気がしたのであろう。

 その祭典の()()は、大いにイギリス国内で議論を巻き起こしたが──やがてフランスに伝わると市民たちは大喜びしたと言われている。

 

 

◆マレンゴ((もと))元帥、英国将校との問答

Q. ナポレオンってどんな人?

A. 痩せっぽちのヘボ。

 かっぺ。

 おだてりゃ木にのぼる。

 二角帽の被り方がダサい。

 女を見る目がマジでない。

 匂いフェチ野郎。

 南の島でバカンス。

 

Q. 一緒にアルプスを越えましたよね?

A. ハンニバルのばか。

 

Q. ナポレオン皇帝即位について?

A. カペーはギロチンで死なないのかと思った。

 

Q. フランス大元帥の任命を蹴ったのは何故?

A. 成って勝てればなぁ。

 

Q. ナポレオンは何故ワーテルローで負けた?

A. ヘボだから。

 

Q. 史上最も優れた将軍は?

A. ナポレオン・ボナパルト。

 




『ラ・マルセイエーズ(女声)』
https://youtu.be/FTIk66b3dds?si=q_Vw4_K3y2hvENwm
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