バトルスピリッツ コラボウォーズ   作:龍牙

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第一話

バトルスピリッツ!

今、世界で最も注目を集めているカードゲーム!

最新のバトルシステムにより実体化したスピリットによるバトルは多くの人々からの人気を集め、多くのスポンサーを集めた大規模な大会の賞金は高くなる一方で、世界大会では『世界最強』の栄光の称号のみが与えられる。

 

ある者はその過程で得られる莫大な賞金を求め、

ある者は唯只管に世界最強の栄光を求め、

ある者は幼い日の約束の為に

バトルを続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「暇だな」

 

次の世界大会までに一通り出場する大会のスケジュールの調整は出来た。まあ、彼『鳴海 センカ』としてはいくつかハードスケジュールにしてしまったので暫く忙しくなるだろう。

 

「また巻き込まれれば、って世界の危機と個人的な楽しみを天秤に掛けてどうする、オレは?」

 

その年の世界大会優勝後に異世界スピリッツワールドに呼び出された時、邪神皇の復活を目論む暗黒バトラーの一人として戦った。

立体映像とは違う本物のスピリット達の鼓動や、ライフを砕かれる痛みと衝撃を伴うバトルには何度も心を震わせ、その世界で己のキースピリットである仮面ライダーセイバーとも出会った。

 

まあ、流石に世界が滅びるかもしれない事態まで行く前に裏切ろうと考えていたが、もっと危険な裏切りをやらかしてくれたやつ(と言うよりも最初から邪神皇側)のお陰で邪神皇は復活。

 

放って置けなかった他の志のない類の暗黒バトラーたちを何とか纏めて、敵としてバトルしたこともある赤と緑の勇者とその仲間達と合流し、復活した邪神皇を赤と緑の勇者達二人が倒した事で先に元の世界に帰還する事になった。

 

「先ずはこの世界で最強か。カードバトラーの頂点って奴は遠過ぎるな、セイバー」

 

頂点に立つと言う幼い日の約束の先に見えた道は険しいが、走り甲斐のある道だ。強さの果てなど永遠に見えてこないのでは無いかと思える程にカードバトラーの道は長く険しい。

 

思い出すのは異世界での戦いよりも前、キースピリットの仮面ライダーセイバーのカードと出会う前の、センカにとって原点とも言うべき約束。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、ここでお別れだな……」

 

「うん……」

 

幼い日のセンカと向かい合う銀色の髪の少女。二人はお互いに寂しさを見せながら向かい合っている。

この二人は小さい頃から一緒によく遊んでいた者同士であり、この二人には互いにそれぞれ打ち込んでいる物があり、この二人が似通っている点として、打ち込んでいる物で上を目指したいという向上心の高さがあった。

 

それ故に二人はお互いにその気持ちを理解して、相手側の実力が上がったことが分かれば相手を称賛し、自分も負けられないと気持ちを引き締めたりと、分野の違う競合相手とも見ることができた。

とは言え、それ以上に一つの物事を打ち込む者同士と言う親近感が強いのは事実で、互いにその頃から目の前の相手に淡い恋心を抱いていた。

 

「残念……もうあなたと会えなくなるなんて……」

 

しかし、互いにその思いを伝えることは今までなく、センカの方の家族が仕事の都合で離れなければならなくなり、センカの家族が引っ越しするこの日が来てしまった。

少女が残念だと思っているのは本音で、互いに一つの道を走る身近な存在がいなくなるので、少女には不安が押し寄せていた。

それだけではなく、目の前の好意を持っている存在と会えなくなる。その事実が少女には辛かった。

 

「でも、これが今世の別れって訳じゃないだろ? 大丈夫、生きてればまた会えるからさ……。それにほら、オレ達がもう少し大きくなれば自分でここに来ることだってできるし」

 

センカは少女の寂しさを紛らわせればと思って言葉を紡ぐ。しかし、センカも辛い気持ちは確かにある。その理由は少女と同じだった。

それでも、センカは再び少女と会えることを信じていた。だからこそ、センカは新たな地で強くなり、少女の前に戻って来ることを決意していた。

 

「それなら、私たちがまた会えた時……あなたに大事な事を伝えたいの」

 

「奇遇だな……それはオレもだよ」

 

何かの偶然か、二人の考えは一致していた。

この時二人は気づいていないが、二人とも伝えたいことは自分の好きだという気持ちで一致していた。

 

「でも、ただ伝えるだけじゃだめ……だから、お互いに目標のステージに辿り着いたら伝えることにしましょう」

 

「お互いの目標か……。確かに、オレ達らしくていいな」

 

少女の提案をセンカはすぐに受け入れる。お互いに高みを目指そうとする二人だからこそ、また会えると信じたからこその選択だった。

 

バイオリニストの父と歌手の母を持つ彼女は両親と同じ音楽の道を進む為の選択を。

 

「……そう言うあなたは?」

 

「オレか? オレはもちろん……」

 

少女に問いかけられたセンカは上着のポケットから一枚のカードを取り出し、少女にタイトルが載っている方の面を見せる。

 

「カードバトラーの頂点、バトルスピリッツで世界大会優勝だ」

 

世界最強のカードバトラーの称号を得る事。

少年は『バトルスピリッツ』に力を入れていて、開始自体は少女よりも遅れていたものの、少女はその努力する姿を認めている。

彼の道は、切札となるキーカードと出会えずに後一歩の所で足踏みをしている今では、少女よりも厳しい道だった。

 

この世界に存在する何枚ものカードの中から、いつその一枚と出会えるのかは分からない。

 

だが、絶対にそのカードと出会い、世界の頂点に立つと決めていた。

 

「ふふっ……あなたらしいわね。それなら、また会って約束を果たそうね、センカ」

 

「ああ。また会おう……そして、その時に約束を果たすよ、クリス」

 

二人は互いに見つめ合って柔らかな笑みを浮かべた。それは別れを惜しむものではなく、互いの技術を高めてまた会うことを信じるものだった。

そして、そこまで話したところで遂に少年が乗るための電車が来た。ここで二人は互い暫くの間別れることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと、踏み出せなかった一歩を踏み出せたと思ったら、約束の先の場所まで見えたか」

 

喜ばしい事この上無いだろう。ただ強くなりたかったから、あの時は強くなれたという実感があっても、どうしても越えられない壁が、開かない扉があった。その先に行くには決定的な何かが足りていない。そんな閉ざされた扉が。

あの世界で手に入れたカードであるセイバーがセンカにとっての、その壁を乗り越えるための鍵であった。

 

今度こそ、本当の意味で約束を果たせる。相棒と共に、だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だけど……な」

 

ゆっくりと太陽へと手を伸ばし、太陽を掴むように手を握る。当然ながら握ったその手は空を切り、彼の手は何も掴んで居ない。

 

「バトルに熱くならないんだよな」

 

ふと、屋上から校庭で行われているバトルを見る。

咆哮を上げるスピリット『輝竜シャイニングドラゴンX』が相手のライフを砕き勝利する様が告げられる。

 

バトルスピリッツは確かに楽しくはある。世界の運命を賭けたバトルでは無く、ただ純粋にバトルを楽しむべきだとも思っている。

だが、やっと異世界でキースピリットに出会えたと言うのに、今度はこの世界でのバトルに熱くなれない。

 

バーチャルのバトルでは異世界でのバトルで感じた衝撃も、迫力も、そして確かに存在していたスピリットの息遣いも感じられない。

そんなバトルに、センカは熱くなれないのだ。

 

だからこそ、前年度の上位者が全員出場を辞退したと言う曰く付きの不本意な世界大会では無く、二度目の世界大会。本当の意味でのこの世界の頂点に立つと決めた。

大切な約束を果たすため、もう一度バトルへの熱を取り戻すため、本当の意味での世界大会での優勝を果たす為に、再度の出場の意思を決めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、上空で光が弾けるように幾つもの流星が舞った。

町中に降り注ぐように微かな光のシャワーが降り注ぐ中、その光のシャワーの一つ一つが一枚のカードで有ったと知る者は誰もいないだろう。

 

 

『拙い事になったな……』

 

 

その流星群をを見下ろす影達の中の一人がそう呟く。

 

セイバー(お前)の力に惹かれたか、この地に奴らの手に落ちた我等の世界の力が紛れ込んでしまった』

 

影が見下ろす先にあるのは光の中の数枚のカードを回収する赤い剣士の姿。この世界に存在したからこそ、敵の手に落ちなかったセイバーの姿。

己を見下ろす影に気付いたのか、セイバーもまたその影を見上げる。

 

『丁度いい』

 

自分が動けば今回の事態を解決するのは簡単な事だ。それをするのが面倒と言うわけではないが、敵の手に落ちた者達が、この世界に導かれた原因がセイバーとその所有者にあるのならば、その本人達にやらせれば良いだろうと考えた。それだけだ。

 

彼はそう考えると一振りの剣を取り出すと見下ろしていたセイバーへと投げる。

一枚のカードとなってそれがセイバーの手に当たるとセイバーを見下ろしていた影はその姿を消した。

 

『お前には、その剣の力が必要になるだろう』

 

そう言い残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、急に増えていたデッキの枚数と見たことのないカードにセンカが疑問の声を上げるのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の世界はスピリッツワールドの様にファンタジーではない。そう思っていた時期が有った。

あの世界の様にカードは勝手に新たなカードに進化はしないし、勝手に増えることもない……筈だった。

 

「……カードが、増えてる?」

 

だが、現実にその場には確かに見た事もないカードが増えていた。

センカのデッキに組み込まれているカードはセイバー関連のカード以外では仮面の系統を持つのは、それ以外のカードでは後に手に入れた二枚だけ計五種類だけの筈だった。それが、朝起きたら急に増えていたのだから疑問に思うしかない。

 

(……何が有った?)

 

突然増えているセイバーと同じく系統:仮面を持つカード達の存在に疑問を覚えつつも、内心で『まあ、良いか』と悩んでも仕方ないとばかりにそのカードをデッキに組み込む。

丁度増えていたカードの枚数が入れ替えるカードを何にするか悩んでいた枚数と一致する事や、そのカード達の持つ効果のセイバーとの相性も手伝い、好都合だとも思ったのもある。

あのスピリッツワールドでのバトルの時にこのカード達が有れば、とも思うがそれは未練だったと思う。

 

(……それにしても、あの世界でも確認されてなかったカード達か……)

 

もうあんな戦いは起こらないと思うが、新たに手に入れたカード達の存在に疑問に思う。

何故このカード達は、と言う疑問と心の中に沸く一つの期待を押し殺しながら、何か起こるのならばヴィラン側の自分の所に来ないでくれと心底思い、部屋を出るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよ」

 

朝の通学路、一人の少女がセンカにそう声を掛けてくる。センカの幼馴染の雪音クリスだ。

二人はそのまま一緒に学校に向かって歩き出す。クリスとは別の学校のために途中で別れるが、家が近い為に自然と一緒にいる事が多くなっているのだ。

そんな通学途中、話題になる事は大体決まっているのだが……

 

「そういや、昨日」

 

クリスから話し始めればやはりその話題は昨日の流星群の話だろう。なんの予兆も無く起こった流星群は夜空に光のシャワーが降り注ぐように見えて、とても美しいものだったとニュースでやっていた。

夜遅くに起こった現象のために、偶然にも撮影されたその光景を生で見れなくて残念だと二人とも思っている。

 

「あれは凄かったよな」

 

「だよな!? あんな綺麗なもの見たことないぜ!!」

 

「俺もだ……。それにしても、あの流れ星は何だったんだろうな?」

 

「願いごとでもしようと思ったけど結局出来なかったもんな~」

 

「ふふっ。またいつか見られるといいな」

 

「おう! そうだな!」

 

流れ星と言うと妙に引っかかる物を覚える。

 

(何か、物凄く嫌な予感がする話だな)

 

何も知らなければクリスの話を聞く限りでは、奇跡的で幻想的な光景でクリスと同じ感想しか出てこなかったのだが、過去の経験からどう考えても嫌な予感しかしないのは気のせいではないだろう。

そんな事を考えているとふと何かの視線を感じて足を止める。

スピリッツワールドでの経験の賜物だろうか、妙にそんな所まで人並外れて鋭くなってしまっている節があるのだ。

 

(いない?)

 

隠れているのか、気の所為なのかは分からないが、確かに何かの気配を感じた。

 

「どうしたのか、センカ?」

 

「いや、何でもない」

 

突然立ち止まった彼を見たセンカを不思議そうに問い掛けるクリスにそう答えて、センカはもう一度歩き出す。

 

後ろから感じる視線は途中で二人と別れるまで続いた。

 

 

 

 

 

「なんで、お前なんかが……」

 

後ろから感じる妬みの困った視線を向けていた男は確かに存在していた。

何でお前が其処にいるのだと言う妬みの困った視線の持ち主は二人の背中が見えなくなるまで睨み続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校には今や世界的な競技となっているバトルスピリッツの部活や、立体映像を発生させるバトルマシンもあるが、それは休み時間や放課後には一般生徒にも解放されていて、多くの生徒がそれを利用している。

 

「それじゃ、行くよ、鳴海くん」

 

何故かこうして放課後、帰ろうとしたところでコイツに呼び止められ、こうしてバトルをする羽目になった訳である。

 

センカにバトルを挑んだのは、学校の人気者で中心人物。

漫画とかなら裏で悪事でも働いてる様な裏の顔を持ってそうな奴(偏見)、と言う立ち位置の男『葉山隼人』。

内心で面倒なのに絡まれたなと溜息を吐きつつ、ドローしたカードを一瞥し、何故こうなったのか思いを馳せる。

 

「メインステップ。オレはネクサス『ワンダーワールド』を配置。ターンエンド」

 

 

リザーブ(4)4→0

 

 

センカのネクサスが発動し、フィールド内の景色を変える。ファンタジーの世界の様な幻想的な世界へと変わった場を一瞥し、ターンの終わりを宣言する。

 

 

手札:4

場:【ワンダーワールド】LV1

バースト:【無】

 

 

「……で、何でオレにバトルを挑んだんだ、葉山?」

 

「身近に仮にも、バトルスピリッツの世界大会の優勝者が居るんだから、是非ともバトルして見たかった。って言うのは、何か変かな?」

 

取り敢えず、そう問いかけてみると返ってきた、バトルフィールドの向こう側に立つ対戦相手の葉山隼人の『仮にも』と言う所を強調した妙に含みのある言葉に『絶対、こいつそれだけじゃ無いな』と思う。

そんな会話を交わしながら、葉山はスタートステップからドローステップを終え、メインステップに入る。

 

「メインステップ、僕はライトブレイドラを二体召喚する」

 

 

リザーブ(5)5→3

 

 

(ライトブレイドラ?)

 

フィールドに出現するのは、自分も使った経験のある、よく見知ったスピリット。極一般的なスピリットなので、それだけでは大して気にはならないが、先程の妙に含みのある言葉と合わせて何故か引っかかるものを覚える。

 

「そして、ブロンズ・ヴルムを召喚する」

 

 

リザーブ(5)3→1

 

 

手札:2

場:【ライトブレイドラ】LV1

  【ライトブレイドラ】LV1

  【ブロンズ・ヴルム】LV1

バースト:【無】

 

そして新たに現れるドラゴン。普通なら気になら無いスピリットだが、その姿にふと思う。

 

(……こいつのデッキレシピ……世界大会中に使ってた、オレのデッキじゃないか?)

 

前に決着だけだが、前に見た葉山の使っていた輝竜シャイニング・ドラゴンはリメイク版のXだったが、自分はリメイク前の方を愛用していたスピリットだ。これまで葉山のバトルで見たカードの悉くが自分のデッキレシピと絡む。

スピリッツワールドで仮面ライダーセイバーを手に入れる前まで使っていたデッキでも有る。

同時に、シャイニング・ドラゴンは初めてバトスピを始めた時に手にしたカードという事もあって長く愛用していた。

 

(オレが世界大会で使ったカード。もしかして、最近登校途中に感じる視線の正体は、こいつか?)

 

ふと、高校入学前に此方に帰って来てから再会した幼馴染のクリスと途中まで一緒に登校しているが、最近は妙にその途中に変な視線を感じていたのだ。

その視線と目の前の対戦相手から向けられる視線の質が似ている事からそう推測するが、証拠はない。

 

そんなことを考えていると葉山がブロンズ・ヴルムのアタックを宣言する。

 

「ライフだ」

 

センカの場にブロッカーとなるスピリットは居らず、そう宣言するほか無い。

センカのライフバリアをブロンズ・ヴルムが砕き残りのライフが4に減少する。

 

 

ライフ5→4

リザーブ(4)0→1

 

 

「すげぇ! 葉山君、もうあいつのライフを削ったぜ!?」

 

「流石葉山くん!」

 

「所詮は最低レベルって言われてる世界大会のチャンプだろ」

 

そのまま葉山はブロッカーに残りの二体のライトブレイドラを残しターンエンドを宣言する。

 

センカとしては予定調和の流れ。寧ろ、もう一体くらい攻撃してきても構わない、寧ろ攻撃してこいと、センカの考えている展開に一歩近づいたのだが、

 

「HA・YA・TO! フゥーHA・YA・TO! フゥー」

 

それ以上に周りの葉山のギャラリーが鬱陶しい。

 

「スタートステップ、コアステップ」

 

そんなギャラリーに、ちょっとイラッとしながらもドローしたカードに視線を向ける。

手札に来たのは今朝、何故かデッキの中に出現していた仮面ライダーの名を持つカード。

 

「リフレッシュステップ。さあ、早速見せてくれよ」

 

 

リザーブ(6)6

 

 

手に入れた経緯やギャラリーへの苛立ちはともかく、新たなカードの力を目にする瞬間に心を躍らせながら、手札のカードを場に出す。

 

 

リザーブ(6)6→4→3

 

 

流水抜刀! ライオン戦記!

『流水一冊! 百獣の王と水勢剣流水が交わる時、紺碧の剣が牙を剥く!』

 

 

現れるのは、ライオンの衣装のある青き仮面の剣士。

 

「『仮面ライダーブレイズ ライオン戦記[2]』! さらに召喚時効果でデッキの上のカードをオープン」

 

ブレイズ ライオン戦記以外の系統:剣使か剣刃のカードは狙っていたカードだ。

 

「その内の一枚を手札に加え、残りは破棄。そして、次はお前の出番だ! 『仮面ライダー剣斬 猿飛忍者伝』!」

 

 

リザーブ(6)3→1→0

 

 

 

双刀分断! 壱の手、手裏剣! 弐の手、二刀流! 風双剣翠風!

『翠風の巻! 甲賀風遁の双剣が、神速の忍術で敵を討つ!』

 

 

その瞬間、葉山の場のブロッカーであるライトブレイドラに斬撃の痕が現れ爆散し、それを成した翠の忍者の様な姿の仮面の剣士がセンカの場に現れる。

 

「剣斬の召喚時効果でBP4000以下のスピリット、つまりお前のブロッカーのライトブレイドラ二体を破壊した」

 

センカの宣言にギャラリーの葉山コールは止み、センカの場には青い剣を構えるライオンの剣士と翠の双剣を構える忍びの剣士が並び立つ。

 

「やれ、剣斬!」

 

ギャラリーが現れたカードに言葉を失う中、センカは剣斬に指示を出す。

 

「っ! ライフだ!」

 

剣斬の振るう緑と黄緑の剣が葉山のライフバリアを切り裂き、同時に彼のライフを一つ奪う。

 

 

ライフ5→4

リザーブ(5)1→2

 

 

「続いてブレイズでアタック!」

 

それに続くのは青き剣を持ったライオンの剣士。その流水を纏った斬撃が更にライフを削り取る。

 

 

ライフ4→3

リザーブ(6)2→3

 

 

剣斬とブレイズのアタックが終わった瞬間、ターンエンドを宣言するセンカ。

 

 

手札:4

リザーブ(6)0

場:【仮面ライダーブレイズ ライオン戦記[2]】LV1

  【仮面ライダー剣斬 猿飛忍者伝】LV1

  【ワンダーワールド】LV1

バースト:【無】

 

 

「な、何なんだ、そのカードは!?」

 

「ん?」

 

剣斬とブレイズを指差しながら叫ぶ葉山の姿を見て、

 

「何って? オレの新しいデッキだけど、それがどうかしたのか?」

 

「どうかしたのかって、君はシャイニング・ドラゴンのデッキを使っていたんじゃ……」

 

「前はな。世界大会が終わってから直ぐに、デッキを新しくする機会が有ってな」

 

「っ!?」

 

正確にはスピリットワールドへ召喚された事だが、其処まで詳しく教える必要も無いだろう。

 

「くっ…ドローステップ!」

 

狙いが外れた様な表情を浮かべた葉山はデッキから一枚のカードをドローすると、そのカード見て笑みを浮かべ、手札の中のカードを場に出す。

 

(巫山戯るなよ!? 俺がどれだけこのデッキを作るのに苦労したと思ってるんだ!? それを、新しいデッキだと!? あんな見た事もないカードを使って!)

 

だが、ドローしたカードは葉山の待ち望んでいたカード。それを見た瞬間、葉山は己の立つ優位性を改めて実感する。

確かに葉山のデッキの大部分はセンカの世界大会の時のデッキを元にして組み上げたものだ。一部のカードはリメイク版を採用してセンカの使っていた物よりも強化しては居た。

だが、それだけでは無く、センカの予想外の切り札となりえるカードも用意していたのだ。

 

「来い、爆覇龍エクスプロード・ドラゴン!」

 

咆哮を上げて葉山の場に降り立つのは、センカ場に立つブレイズと剣斬を見下ろす巨体を持ったドラゴン。

 

本来ならばもっと後でセンカにトドメを刺す切り札として出したかったカードだが、それでもセンカを追い詰める切り札としては十分だ。

 

 

【爆覇龍エクスプロード・ドラゴン】LV 1 BP5000

 

 

「エクスプロード・ドラゴン……。っ!? 拙い!」

 

センカの場にいるブレイズも剣斬もエクスプロード・ドラゴンよりもBPは劣っている。つまり、

 

「見せてあげるよ、爆覇龍の力をね」

 

切り札を出した事で出来た余裕がそうさせているのか、笑みを浮かべながら爆覇龍エクスプロード・ドラゴンに攻撃の指示を出す。

 

「行け、エクスプロード・ドラゴン」

 

「っ!?」

 

出てきたカードの持つ厄介な効果を思い出して表情を歪めてしまう。

 

「アタック時効果、このスピリット以下のBPのスピリットを破壊する! 消えろ、剣斬!」

 

双剣を振るい抵抗するも剣斬はエクスプロード・ドラゴンの炎によって破壊される。ブレイズだけだが、

 

「ライフだ!」

 

「そうだね、それしか無いだろう?」

 

センカの宣言に葉山は笑みを浮かべながら答える。

センカのライフバリアをエクスプロード・ドラゴンの一撃が砕き、ライフが更に減少する。

 

 

ライフ4→3

 

 

「さらに、相手のライフ減少により、転醒発動!」

 

攻撃を終えたエクスプロード・ドラゴンが赤のシンボルへと変わり、その形を青のシンボルへと変える。

 

 

スピリット破壊の赤からデッキを壊す青に。赤と青、二つの破壊の力を併せ持つ爆覇の名を冠するスピリット。

 

 

「爆覇造神ビッグバン・ゴレム!」

 

赤いドラゴンが姿を変え、新たに現れるのは青い巨兵。

 

「転醒時効果発揮! 相手のデッキを十枚破棄! 更にカウント一つにつき一枚を破棄する!」

 

その剛腕から放たれた衝撃波によりセンカのデッキから11枚のカードがトラッシュへと送られて行く。

 

「くっ!」

 

「オレはこれでターンエンドだ」

 

「オレのターン」

 

デッキの大半を失いながらも回ってきた自身のターンを進めるセンカ。

 

(来たか、相棒)

 

引き当てたカードを一瞥し、センカはそのスピリットの名を宣言する。

 

「オレは仮面ライダーセイバーを召喚!」

 

 

『かつて、全てを滅ぼすほどの偉大な力を手にした神獣がいた…』

烈火抜刀! ブレイブドラゴン!

『烈火一冊! 勇気の竜と火炎剣烈火が交わる時、真紅の剣が悪を貫く!』

 

 

【仮面ライダーセイバー ブレイブドラゴン[2]】LV1 BP3000

 

 

現れるのは炎の聖剣を携し龍の剣士。

 

「セイバーの召喚時効果……」

 

三枚をオープンした時、その三枚目のカードに目に止まる。間違いなく良い引きだが、

 

(……ここで来るか?)

 

そんな事を思いながらその三枚目のカードを手札に加え、残りの二枚を破棄する。

 

(セイバーとブレイズ。こっちの一手としてはどうする?)

 

場にいるセイバーとブレイズのカードを一瞥し、その両方のレベル2の効果を見比べる。

 

(デッキがやる気になってくれたのは有難いし、こんな面白くないバトルはさっさと終わらせる)

 

「そして、仮面ライダーセイバーをレベル2に」

 

その効果は強力だがビッグバン・ゴレムが脅威なのは転醒時のみ。その効果を使った後は使える効果のないスピリットの上にシンボルの色も違う。現状では新しいエクスプロード・ドラゴンを出されるのが最悪の展開だ。

選択はセイバーの効果による攻め手の強化。それにより、確実に次のターンで決めに行く。

 

 

【仮面ライダーセイバー ブレイブドラゴン[2]】LV1→LV2 BP3000→BP5000

 

 

「バーストをセットして、バトルだ! 先ずは行け、セイバー! そして、レベル2のアタック時効果発動!」

 

センカは手札のカードを一枚抜き取り、そのカードをセイバーと重ねる。

 

「手札のブレイブ『火炎剣烈火』をダイレクトブレイブ」

 

 

【仮面ライダーセイバー ブレイブドラゴン[2]】LV2+【火炎剣烈火】BP5000+4000

 

 

ベルトに収めた赤い剣、否、炎の聖剣、火炎剣烈火を再度抜き放つセイバー。先程よりも力を増し炎を纏った聖剣をセイバーが翳すと。

 

「これにより、再度召喚時効果発動! 三枚オープンし、その中の一枚を手札に!」

 

手札に加えたカードは狙っていたカード。それに小さく笑みを浮かべながら、更なる効果を発揮させる。

 

「そして、火炎剣烈火のアタック時効果、7000以下のBPのユニットを破壊! 消えろ、ブロンズ・ヴルム!」

 

 

必殺読破!

ドラゴン一冊撃!

ファイヤー!

 

 

セイバーが火炎剣烈火のトリガーを2回引き、足に炎を纏った飛び蹴りがブロンズ・ヴルムを粉砕する。これで残るのは、疲労状態のビッグバン・ゴレムのみ。

 

「っ!!! ライフだ!」

 

その状況に苛立つ様にそう宣言するしか無い葉山のライフをセイバーの振るう聖剣、火炎剣烈火が砕く。

 

 

ライフ3→2

 

 

「オレはこれでターンエンドだ」

 

このターンでは相手のライフを削りきれない事からセンカは残るブレイズをブロッカーに残し、ターンエンドを宣言するとターンは葉山へと移る。

 

(巫山戯るな……)

 

自分のスピリットが一体の状況に歯噛みしながらも、顔に出さずに葉山はターンを進める。

しかも、自分はこのバトルの為に用意していた切り札まで出したのに、ゲームの流れは二体の剣士を有するセンカに完全に奪われた形だ。

 

(気に入らない……何であいつが彼女の近くに居るんだ……ただ幼馴染ってだけで……)

 

最初は偶然だった。センカがクリスと食事をしている所を見た。信じられないと思ってセンカの事を着けていたら、クリスと途中まで一緒に登校しているところも目撃してしまった。

最近此方に戻ってきたセンカは、彼女と幼馴染だと言うそうだ。羨ましい、妬ましい。そんな嫉妬の感情を抱いた結果、

 

 

 

 

 

 

 

葉山は其処にいるべきなのは自分だと思った。

自分の方が其処に居るのが相応しい。いや、其処に居るのは、誰もが羨むべき立ち位置に居るのは自分であるべきだと思ったのだ。

 

(こいつをこいつの得意なバトスピで叩き潰す筈だったんだ。俺は失敗しない男、葉山隼人なんだ!!!)

 

そして、叩き潰したセンカにお前に其処は相応しくないと言ってやるつもりだった。

だが、結果はどうだ。追い詰められているのは自分の方だ。しかも、センカは此処まで一度もマジックを使っていない。

世界大会の優勝者とは言え、過去最弱の汚名を背負った相手にだ。

 

(この役立たずが!)

 

心の中で絶叫しながら葉山が引き当てたカードは、かつてセンカの愛用していたカードのリメイク版のカード。

 

「ライトブレイドラ、シャイニング・ドラゴンX!」

 

疲労から回復したビッグバン・ゴレムを含めた三体のスピリットを並べて苛つきを含めた声で葉山は更に手札の中の一枚に手をかける。

 

「シャイニング・ドラゴンXの効果! 手札の輝きの聖剣シャイニングソード《R》を一コストで召喚、ダイレクトブレイブ!」

 

地面に突き刺さる聖剣をシャイニング・ドラゴンXが引き抜き、それをセイバーへと突きつける様に構えると、

 

「更にシャイニング・ドラゴンXの効果でブロッカーのブレイズを破壊する!」

 

シャイニングソードの放つ斬撃に飲み込まれ成すすべなく消えていくブレイズを一瞥し、

 

「ライトブレイドラ、やれ!」

 

ライトブレイドラへと指示を出す。

 

「ライフだ!」

 

ライトブレイドラの突進がセンカのライフを一つ砕く。此れで優位に立ったと思った葉山が次のスピリットに攻撃の命令を……

 

「シャ「ライフ減少によりバースト、発動!」何!?」

 

センカのセットしていたバーストがその効果を発動させる。

 

 

『かつて、世界を包み込んだ暗闇を生んだのはたった1体の神獣だった…』

 

 

カードが表返った瞬間、カードから吹き出す闇の中より放たれた斬撃がビッグバン・ゴレムを粉砕する。

 

「相手スピリットの破壊後、このスピリットをノーコストで召喚する!」

 

 

闇黒剣月闇!

Get go under conquer than get keen.(月光! 暗黒! 斬撃!)

ジャアクドラゴン!

『月闇翻訳! 光を奪いし漆黒の剣が、冷酷無情に暗黒竜を支配する!』

 

 

 

セイバーと同じく竜の意匠を持った紫の鎧を身に纏った闇の剣士が、邪剣を片手に闇の中より悠然と歩を進めながらシャイニング・ドラゴンXの前に立ちはだかる。

 

「仮面ライダーカリバー!」

 

それはスピリットワールドでセイバーと共に手に入れたカード。闇の剣士、仮面ライダーカリバー。

 

 

【仮面ライダーカリバー ジャアクドラゴン】LV1 BP5000

 

 

BPではブレイブしたシャイニング・ドラゴンXの方が上だが、残りのライフは2。

ブレイブスピリットはダブルシンボルだが、此処で迂闊にシャイニング・ドラゴンXで攻撃して仕舞えば次のセンカのターンで負ける。

 

「……ターン……エンド、だ」

 

僅かでも次のセンカのターンを生き延びる可能性を残す為にもターンエンドを宣言するしかない。

 

「オレのターン、カリバーをレベル3にレベルアップ」

 

 

【仮面ライダーカリバー ジャアクドラゴン】LV3 BP10000

 

 

「バトルステップ! カリバーでアタック!」

 

「シャイニング・ドラゴンXでブロックだ!」

 

センカの指示に従い暗黒剣月闇を構え葉山へと向かうカリバー。葉山もまた光の聖剣を携えたドラゴンに闇の剣士を迎え撃つ様に指示を出す。

 

ぶつかり合うのはシャイニング・ドラゴンXの輝きの聖剣とカリバーの持つ闇の邪剣。

それは、輝く聖剣を翳す正義のドラゴンと闇の邪剣を振るう悪の剣士の対決の構図に見える事だろうか。

 

ギャラリーの応援も悪の剣士にしか見えないカリバーよりも、正義のドラゴンと言うべき立ち位置のシャイニング・ドラゴンXへの方に向いている。

 

何度も互いの剣をぶつけ合い切り結ぶ二体のスピリット。力ではシャイニング・ドラゴンXが、技ではカリバーが上と言ったところだろうか?

 

 

輝龍シャイニング・ドラゴンX+輝きの聖剣シャイニングソード《R》 BP5000+5000

仮面ライダーカリバー ジャアクドラゴン LV3 BP10000

 

 

互いのスピリットは共にBPは互角。そんな中、センカはソウルコアを手に取る。

 

「葉山、お前が何を考えてオレに挑んだのか知らないけどな……どうも、オレ以上にオレのカードがお前にイラついてるみたいだ」

 

葉山の内心を知らないセンカは、そう宣言すると、そのソウルコアをトラッシュへと送る。

 

「そして、もう一つ。最弱だろうがなんだろうが。オレの背負った、その名の重さには違いは無いんだよ」

 

葉山の考えを否定する様に冷たく言い放つと、その効果を発動させる。

 

「教えてやるよ、格の違いって奴をな」

 

手札のカードを一枚手に取り、ソウルコアをコストにしたその効果を発動する。

 

「フラッシュタイミング! 煌臨!」

 

センカの宣言と共に切り結んでいたシャイニング・ドラゴンXをカリバーが弾き返す。

そして、シャイニング・ドラゴンXが離れた瞬間を逃さずに、カリバーが新たに取り出した本型のデバイスをベルトのものと交換し、暗黒剣の柄をぶつける様に開く。

 

 

Jump out the book.

Open it and burst.

The fear of the darkness.

You make right a just,no matter dark joke.

Fury in the dark.

ジャオウドラゴン! 誰も逃れられない…

 

 

開いたデバイスを中心に、カリバーが新たな姿へとその姿を変える。紫の鎧から金の鎧に、

 

「なっ!?」

 

新たな姿に変わったカリバーの姿に、葉山もまた驚きを隠しきれない。

 

「さあ、新たな姿で煌臨せよ! 闇の剣士! 仮面ライダーカリバー、ジャオウドラゴン!」

 

黄金の鎧を纏い新たな姿ジャオウドラゴンへと変身したカリバーは暗黒剣月闇を構え、

 

「そして、カリバーの情報を受け継いだジャオウドラゴンとのバトルは続行!」

 

 

【仮面ライダーカリバー ジャオウドラゴン】LV3 BP12000

 

 

必殺リード! ジャオウドラゴン!

月闇必殺撃! 習得一閃!

 

 

僅かだがシャイニング・ドラゴンXのBPを上回ったカリバーが放つ4体の竜が金色の鎖に変換してシャイニング・ドラゴンXを拘束する。

自身の体を拘束する鎖から逃れようとするシャイニング・ドラゴンXだが、それよりも早くカリバーが右足に暗黒のエネルギーを纏わせたライダーキックを放ちシャイニング・ドラゴンXを粉砕する。

 

悲鳴をあげて砕け散って行くシャイニング・ドラゴンX。正義のドラゴンが悪の剣士に敗れる期待とは違うその姿にギャラリー達からは悲鳴が上がり、その墓標のようにフィールドにはシャイニング・ソードが突き刺さる。

 

「そして、バトル終了後、お前のライフを一つトラッシュへ」

 

カリバーが横一線に放った斬撃が葉山のライフを奪い、残りのライフは一つになる。

そして、センカの場にはまだ動けるスピリットが一体。

 

「セイバーで、トドメだ!」

 

バトルの終わりを告げるセンカの宣言に、炎を纏った火炎剣烈火を構えたセイバーが応え、葉山へと向かう。

自分に訪れる敗北が信じられないのか、最後のライフを宣言する事なく唖然とした様子で振り下ろされた炎の聖剣によるセイバーの斬撃を受ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(くそっ!!!)

 

バトルの後、自分の敗北を信じられなかった葉山を置いて、興味が無いとでも言う様に、何も告げずに立ち去って行くセンカの背中を見送るしか無かった。

 

フラフラとバトルマシンから降りる自分を励ますギャラリー達から離れると、悔しげに自身のデッキを睨みつける。

周囲に誰もいない事を確認すると忌々しげに力任せにそれを地面に投げつける。

デッキケースが砕け、彼のデッキに入っていたシャイニング・ドラゴンXやエクスプロード・ドラゴンが地面に飛び散る中、エクスプロード・ドラゴンの様なレアリティの高いカードだけを拾うと地面に飛び散ったライトブレイドラ等のレアリティの低いカードを破り捨て踏み躙る。お前達のせいで負けたとでもいう様に。

 

(くそっ! くそっ!)

 

最後にシャイニング・ドラゴンXのカードを破り捨てる。自分を倒したセンカへの怒りをぶつける様に。

 

(くそっ! くそっ! くそっ! くそっ!)

 

そうやって、大した価値のない捨てても惜しくはないと判断したカード達を踏み躙って処分すれば、残して置いたレアリティの高いカードだけはポケットに仕舞う。

売り払えばまた次にセンカに挑むための、新しいデッキの資金には成るだろうと思ったからだ。

 

次はどんなデッキで戦うべきかと思う中、いつの間にかそこに落ちていた一枚のカードが目に入る。

見た事もない白と紫の二つの属性のカードだ。人型のロボットの様なそのカードは系統は二つ、白属性には珍しい事に一つは闘神の系統を持っている。

何かに惹かれた様に葉山はそのカードを拾い上げる。

 

「このカードは……」

 

小さく笑みを浮かべながらそのカードに魅入られた様に笑みを貼り付ける。

 

雄々しく立つ正義のヒーローの様な姿は、自分に相応しいカードでは無いか?

あんなカードなんかよりも、自分が持つべきカードでは無いか?

 

暗い喜びを浮かべるとそのカードをポケットの中に仕舞う。

ゆっくりと、ほんの一瞬だけ、機械仕掛けの巨人が禍々しい合成獣へと変わった事も知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

「何だよ、珍しいな、お前が一人なんて」

 

カードショップの対戦用のテーブルの向こうにいる相手。

センカは『喧嘩でもしたのか?』と問いかけて来る目の前のバトスピ仲間の『結城 ユウヤ』の言葉に『またか』と言う感想を抱く。

 

「今日は学校でバトルを挑まれたから、一人なんだよ。クリスと一緒に帰る約束してるから、それで時間潰しにバトルでもしようと思ってな」

 

内心では、クリスといつも一緒にいる訳じゃないと思うが、よく考えれば大抵は一緒にいる。

 

元々此処で初心者の為のバトスピの入門教室を頼まれていたのに、今日は面倒なのに絡まれて、強引にバトスピをすることになったが、

 

(……ん? そう言えば、新しいカードのテストにはなったか?)

 

今回のバトルの収穫としては新しくデッキに投入した仮面のカード達のテストが出来た事だろう。

それでも、感謝してやる事はない。面倒なバトルだったと言う感想しか無いのだから。

 

「それにしても、そのカードって何処で手に入れたんだ」

 

「……いや、オレもいつの間にか、確か」

 

目を逸らしながらユウヤの問いに答える。

実際問題、センカもいつの間にか存在していたとしか言えないのだ。出所不明のカードとはいえ全てが全て自分のデッキとのシナジーもあるので迷わずデッキ投入したが、その出所自体が、妙な胸騒ぎに繋がるカード達だ。

 

(そう言うのは選ばれた勇者とかの所で起こってくれ。オレは普通のカードバトラーだ)

 

寧ろヴィラン側として活動していたセンカが普通のカードバトラーかはともかくとして、そのカード自体が何かの兆候としか思えない。

……一度は世界を滅ぼす片棒を担いでしまった以上、自分は普通のカードバトラーで居たいのだ。

 

(それにしても、葉山の奴、また絡んできそうだな……)

 

取り敢えず、考えても仕方がない上に嫌な方向に考えが行きそうな所で、カードの事は思考の隅に追いやり、別の意味で面倒な葉山の事に思考を向ける。

 

センカが葉山に抱いている印象は、学校の人気者。

カードバトラーとして最弱などと言う汚名こそ背負っているが、世界チャンピオンの称号と、黙って居れば美少女の世界的バイオリニストと歌手の娘と幼馴染と言う関係である以上、人から羨まれる事には此処最近は嫌な意味で慣れているが、態々世界大会の時のデッキを研究してまでカードバトルを挑まれるほどの事だろうか?

そんな疑問が沸く上に、改めて大勢の前で叩きのめしたのだ。

何が理由かは知らないが、またバトルを挑まれるのは確定だろう。

 

(まったく、面倒なのに絡まれたな)

 

面倒な奴に絡まれたと思いながらの無意識で行ったセイバーのアタックで、ユウヤの最後のライブを容赦無く砕いて行く。

 

「あっ」

 

テーブルに突っ伏している友人の姿を一瞥すると、やってしまったかと言う感想が脳裏に浮かぶ。

 

「おーい、大丈夫か?」

 

「……強すぎだろ、お前?」

 

「強いって、一応、過去最低レベルとはいえ世界大会の優勝者だからな」

 

「……そりゃ、そうだ」

 

過去最低レベル。

全員が世界大会初出場のカードバトラーにより行われた世界大会。それがセンカの優勝した大会だ。

別に新人が過去の上位入賞者や優勝者を抑えた結果では無い。それならば逆に過去最高レベルと言えるだろう。

……だが、真実はそうでは無い。過去の世界大会の出場者が予選にさえ出なかった。過去の大会における最年少のバトラーで有っても。

故に初出場の者にチャンスが訪れたのだが、その結果から、そんな評価が下されてしまった。

 

(……今更ながら、本当に何でそんな事になったんだろうな)

 

気にしてはいなかったが、考えてみればわからない事だらけな一件だ。

だが、そんな事を考えても意味はないと考えてそこで思考を切り上げる。

 

ユウヤの愛用する青のデッキは何度か主軸とする戦術を変えているが、何度も危ないと思う点は多かった。

何故参加しなかったのかは知らないが、大規模な大会に出ても結構良いところまで行ける事だろう。

 

「っと、もうこんな時間か?」

 

ふと時計を見るとクリスとの約束の時間まであまり時間がない。

そう思うとデッキを手に取りショップを後にする。

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