魔法使いの夜、■の夢 作:no w here
車の無機質なエンジン音が、醒めぬ街へと風を切る。ガラス越しに見える水滴はバンパーによって容赦なく左右へと流されるにも関わらず、諦め悪く灰に染まった天蓋から降り立ち再度ガラスを湿らせた。
それを助手席よりぼんやりと見やり続ける。手元にあるのは冊子1つ、誰かの手書きのそれを、眠れないが故に身に付いた夜目を利かせて読み進めていく。
「…大丈夫かい?」
橙の髪を短く切った女性が眼鏡越しに此方を伺う。その言葉に、俺は頷く事も首を振る事も儘ならない。冊子に連ねられていた事実に言葉は愚か、自我でさえまともに機能していないから。
―――駄目みたいね。その言葉が運転席の女性の口から呟かれた。
冊子を持っていた部分が、赤く滲む。濡れたそれに書かれていた文字が水性の筆記用具或いは筆で書かれた墨汁で無かったことが唯一の幸運。
書き連ねてある文字は、俺に対して一切の優しさなど無く―――これが現実だ、そう言わんばかりに心を切り崩していった。
暫く冊子を読み進めていると、小さく響くブレーキ音。
冊子には手を出さず、自身の手に直接生気のある手が触れられる。その手が緋色に染まるのを見て、漸く俺は女性の方へと目を向ける事が出来た。
「君の事情を、私は知らないが。その姿のまま、君を放っておくことはできない。…もう直に師も走り出す季節にも拘らず、あんな場所で雨に打たれ続けてたんだ、体も冷えるだろう。一度、身だしなみを整えると良い」
俺はその言葉に、何となく従う。…座った座席は随分と汚れてしまっていた。
「…すみません…」
「?」
彼女は俺の言葉に首をかしげる。
「…汚して、しまって」
「…あぁ、それについては仕方ない。ハンカチは持っていたが、君のそれを拭き取るにはあまりにも
席を立ち、彼女の
「…それ、でも」
「―――厳しい事を言うようだけど、これを君がどうにかすることはできるかい?」
…口を噤む。どうしようもない、その無力感に
「…そういう事だ、今、君に出来る事は身だしなみを整える事。早く家に入りなさい、
―――例え、草木も眠るこんな時間だとしてもね。
その言葉に気付き、急ぎ足で彼女の言葉に従おうとして。座席の傍に置いた
「忘れ物はないね?浴室は玄関から入って、手前から二つ目の扉だ。君の背丈は目算で分かるから、手早く服を仕立てよう。…ああ、お礼は言わなくてもいい。
「…彼女、からの?」
頭を上げる。「ああ」と肯定の言葉に失われていた筈の自我―――特に抱え込んでいた悲壮が、嚇怒となって彼女へと向けそうになり―――ぶちりと、自身の掌から肉を爪で断つ音が響く。
「…彼女は、こうなる事を予想していてね。実に2年前―――彼女と大学の同期のころから、"私が居なくなった後の君の事を任せたい"と言われ続けていたから」
彼女とは一昨日迄手紙のやり取りもあったけれど、最後の一文に"忘れてないよね?"と付け加える始末さ―――その、