百花王学園の支配人 作:匿名P
「俺の勝ちだな」
そう言いながら男がトランプのカードを場に広げる
「そうね…貴方の勝ちよ」
「それでは、明日から俺はこの学園の支配人として生活させてもらう」
「えぇ異論はないわ、貴方の好きにしてちょうだい
ただ、1つ質問してもいいかしら?」
「何だ?答えられる範囲でなら答えるが」
「貴方の目的は何かしら?
ギャンブルをしている時も、ずっと探っていたけれどまったく分からない。1つ分かったのは、貴方がギャンブルを心から楽しんでいるということぐらいね。」
「フッ…そうか?お前ほどではないと思うがな。
目的なんてものは何も無いぞ」
「嘘をつくのが上手いのね…まぁいいわ今回は許してあげる。明日からよろしくね
この2人は、あるものを賭けてギャンブルをしていた。日夜は負ければ、一生家畜となることを賭け、桃喰綺羅莉は負ければ、日夜を支配人として認めることを賭けていた。圧倒的に日夜の方が不利なのだが、この条件は日夜が自ら提示したものである。ここまでして、上へはい上がろうとしている日夜を見て、綺羅莉は面白いと思いながらも目的はなんなのかと探りをしていた。が、結局何も得ることは出来なかった。分かったのは、自分程ではないがギャンブル狂であるということのみだった。
そしてこの瞬間、
フゥーと息をついていた時、電話が鳴った。そして、日夜は誰からかかってきたかを確認せずに電話に出る。
「どうだ?順調に行ってるか?」
電話越しから、初老くらいの男が尋ねた。
「えぇ、順調に進んでいます。桃喰綺羅莉を下すことも出来ましたから。」
とサラリーマンのように報告を淡々としていく。
「そうか、もう桃喰綺羅莉を下したのか…
百花王学園を手に入れることは我々にとって大きいことだ。これからも慎重に頼むぞ」
「分かっています。では、これで」
そう言うと日夜は電話を切った。
「慎重に、か…」
そう呟いた声は、太陽が沈みかけている夕暮れの空へ吸い込まれていった。
もう6時か…と日夜はため息をつく。支配人という仕事は予想よりもキツいらしい。とはいえ、自分で言ったことなのだから終わるまでは帰る気はない。もう少し頑張ろうと意気込み、転校してくる生徒の資料を確認する。そこには
「蛇喰夢子…変わった名前だな。でも蛇喰はどこかで聞いたような…ここで時間を使うのはもったいないな後ででいいか」
気がかりがありつつもとりあえずは終わらせることに集中して、仕事を進めた。
やっとのことで仕事が終わり、自宅についてソファに座る。時計を見ると、時刻は10時を差していた。
「まじか…これからまだ他の仕事あんのに…」
彼は高校生ながらに会社を経営しており、いつもなら仕事が終わり一息ついているはずなのだが、支配人という仕事のせいでそれが無くなり多忙極まりない日々を生活することが決まり、日夜は絶望していた。
<綺羅莉側>
「どういうことだ!百喰一族の当主である貴様が負けるとは飛んだ恥晒しだ!」
「何をしたか分かっているのか?」
「百喰一族の汚点が!何故貴様が当主なんだ!」
と各方面のスピーカーから怒声が響き、和室に響き渡り反響している。そして、その声は全て綺羅莉へ向けられている。何故か、その理由は一目瞭然。日夜を知らない彼らから見ればただの一般人に百喰家の当主が負けたのである。その当主である桃喰綺羅莉に非難の声が浴びせられるのは当たり前だろう。
「あなた方は何も分かっていない
脳みそくらい使ったらどうかしら?それに彼を敵に回す気?痛い目を見るわよ。」
だが、当の本人はそんなのどうでもいいというような様子で、なんなら身内を煽る始末である。
「なんだと貴様!あれだけの失態をしておいて、反省もないのか?」
さすがに、分家の人間も怒りがヒートアップしてくる。
「彼がただの一般人な訳がないわ。
詰めが甘すぎる、だからあなた達は当主になれないのよ」
「何を言っている。彼のことは調べ尽くした。
日夜 真 18歳 国籍は日本 両親は共働きで一人っ子 一人暮らし
全て分かっている。ただの
「その情報が本当なのかまで調べたの?」
「いつも頼りにしている人間からの情報だそ。間違っているはずがない。」
「そういうところよ。あなた達の弱さは」
そう言い放つと綺羅莉は立ち上がり、外へと出ていった。
<日夜側>
生徒会室へと向かう途中、集団で囲まれいじめのようになっている人達がいたが、そんなのはこの百花王学園では日常茶飯事のことである。そのため、気にすることなく素通りしようとした時
「あの人です!!」
いじめを受けていた女が日夜を指さし言った。
「ほう…てめぇかこいつらの肩代わりすんのは」
いかにもチンピラっぽい風貌の人間にガンを飛ばされる。
「ん?なんのこと?」
素っ頓狂な声をあげる。日夜が支配人だと分かれば、女もこんなことは言わなかっただろう。だが、日夜の希望で自分が支配人だということを全校生徒には伝えないで欲しいと言ってしまったため、ただの生徒にとって見れば、ただの普通の生徒なので都合良く女に使われてしまったのだ。
「なんのことじゃねぇよ!こいつらが借金返せないって言うから肩代わりするために呼ばれたんだろ!」
「はぁ?俺、その人達知らないし人違いだよ」
「嘘ついてんじゃねぇよ!!とっとと払え!」
「知らない人達の借金払うの嫌だし。それに借金肩代わりしてってお願いされて来るやつなんか1人もいないでしょ。」
「そう言って逃げる気か?無駄だぞ。払ってもらうまで帰さねぇ。」
「なるほどね。お前達、グルか。」
「何言ってんだてめぇ?グルな訳がないだろう。」
「いや、明らかにおかしすぎる。自分が取り立てをしてるやつのことを信じすぎてるし、何よりタイミングが良すぎる。俺の事を最初から狙ってたとしか言えないくらい完璧だった。」
「へぇー初めて気づかれたな。お前中々やるじゃねぇか。」
「まぁバレても、他の方法でもぎ取るだけだ。俺とギャンブルしろ。」
「最初から、そういえばいいのに…」
そう言うと日夜は誰かに電話をかけた。
「じゃあ頼む」
「あそこの賭博場でいいか?」
近くの賭博場に移動して、電話をかけた相手を待つ。
廊下から足音が聞こえ、そして扉が開く。入ってきた人物を見て、男は驚愕した。
「おまたせ〜」
やってきたのは、選挙管理委員会委員長の黄泉月るなだった。
「なんで選挙管理委員長がここにいるんだ?」
「なんでって、真君に呼ばれたからだよ」
「おい、俺がギャンブルする時は呼べって言ったのお前だろ。」
「だってそれ本気ですると思わなかったからさぁー」
「興味半分で言ったのかよ…」
「にゃはは、でも真君のギャンブル見てみたかったし丁度良かったよ。真君って意外と素直なんだね。」
「はぁ…まぁいいや。じゃあギャンブル始めようか。ディーラーは、もちろんるなだ。ゲームはそうだな、シンプルにポーカーでいいか?」
「あ、あぁ大丈夫だ。」
男は今の状況が飲み込めず、混乱しているが何とか言葉を紡ぐ。
「カードのチェンジは1回のみ、最低ベット額は1万円、ベット額の上限はなし、チップはここにある五百万円分のみ。降りる時は、その時点で自分がベットした額を相手に渡す。どちらかがマイナスになるまで続ける。そして、負けた場合、五百万円から自分が失った分を借金として負う。ルールはこんな感じでいいか?てか、お前からふっかけてきた勝負なんだから逃げるなんてないよな?」
煽りと威圧をまぜながら逃がす気はないと牽制する。
「もちろんだ。逃げる気なんかある訳がない。」
煽りを受け、軽く怒りが湧いてきているがここで潰せばいいと自分の気持ちを落ち着ける。
「じゃあ始めるよ〜」
黄泉月がトランプを取り出し、シャッフルを始めカードを配る。
「スリーカードだ!ハッ、また俺の勝ちだな。煽っといてそんなもんか?」
これで七ゲーム目が終わり、日夜は五十三万のマイナスを背負い一方的に負けている。
男は、自分が一方的に勝っているという現状に酔い、日夜のことを煽り先程やられた分を返している。
「ベット、一万」
「レイズ、五万」
「フォールド」
「おいおい、逃げてたら勝てねぇぞ。逃げるなとか言っていて逃げてんのは自分じゃねぇかダセェなぁー」
男は笑みを浮かべながら煽りを続けるが、日夜は煽られても表情に悔しいという感情は出てこない。
「悔しすぎて、顔にも出ねぇかww惨めだなぁーーーww」
「続きだ。早くしろ。」
日夜の表情に変化はなく、言葉にも悔しいという気持ちは感じ取れない。
「ベット、五万」
男がいきなり勝負をかける。
「レイズ、五十万」
「良い手でも来たのか?まぁいい、レイズ百万」
男は、また勝てるだろうという慢心しここで日夜を潰そうと掛け金をはね上げる。だが、そんな気持ちは次の日夜の宣言で崩れる。
「レイズ、六百万」
「六百万なんて、今のお前のチップ数じゃ無理だろ」
若干震えながら、指摘をする。
「上限はないぞ。だから、六百万を賭けることは可能だ。」
確認するように黄泉月の方へ視線を送り、黄泉月は首を縦に振った。
「日よったか?ここで逃げるのか?」
日夜が畳み掛けるように煽る。
「逃げる訳ねぇだろ!コール、六百万」
「じゃあいくよ〜ショーダウン」
両者同時にカードを場に広げる。
「ストレートフラッシュ!俺の勝ちだ!…え?」
勝利宣言をするが、場のカードは男がストレートフラッシュ、日夜はロイヤルストレートフラッシュであった。
「ろいやるすとれーとふらっしゅ?なんで?」
男は状況が飲み込めず、頭が混乱している。
「慢心して、勝利を確信したお前の負けだ。」
そう言うと、ディーラーに判定を促すように視線を送る。
「日夜真の五百四十七万のプラス。よって、日夜真の勝ち!」
ディーラーの宣言を聞き、男は椅子にうなだれる。
「六百万の借金返済ちゃんとやれよ」
そう言い放つと椅子から立ち上がり、部屋を後にする。
「にゃは、やっぱり真君は強いねぇー」
「運が向いてただけだ。」
「その運が向いてるのが多いんだけどねぇ〜真君は。ところで何をしようとしてたの?」
「俺は確か…そうだ!生徒会室に行かなきゃいけないんだ」
「生徒会室?会長に何か用?」
「綺羅莉と少し話があるんだ。」
と話しているうちに2人は生徒会室よっての前についた。
「あら、何か用かしら?」
扉が開かれ、綺羅莉は入ってきた人物に尋ねる。
「話したいことがある。」
「そう、じゃあ清華、席を空けてくれるかしら?」
「分かりました会長。」
そう言うと清華と呼ばれた女は生徒会室を出ていく。同時に黄泉月も出ていく。
「それで話というのは何かしら?」
生徒会室に誰もいなくなったのを確認して日夜に尋ねる。
「明日1日学園を空ける。その間、学園を頼む。」
「そう、分かったわ。それだけかしら?」
「あと、明日から編入してくる蛇喰夢子を知ってるか?」
「蛇喰…懐かしい名前ね。何故そんなことを聞くの?」
「お前と同じで、喰という字が一緒だろ。だから、何か関係があると思ったがビンゴだったな。」
「そうね。さすが、勘が鋭いわね。でも、教えることはできないわ。」
「なぜだ?」
まさか教えて貰えないとは思っておらず聞き返す。
「なぜって、貴方は私に言っていないことがあるでしょ。」
「言っていないことなんてないが。何かあるか?」
「貴方のプロフィール見させてもらったわ。ただの普通の生徒になっているけれど、そんなはずがないわ。あの勝負強さ、戦略といい普通の人間が持っているものじゃないわ。完璧に偽装されてる。」
「偽装だなんて…そんなことはしてない。ごく普通の生徒だ。」
「貴方がその化けの皮を被っている限り、私も話すことはできない。」
「そうか…それは残念だな。
それより明日は頼む。」
「えぇ、分かっているわ。」
「明日…いないのね。調べようかしら?」
日夜が生徒会室を後にしたのを確認して、呟いた声は誰もいない生徒会室に虚しく消えていった。