百花王学園の支配人   作:匿名P

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新たなる刺客

 「どういうことですか?」

 

 俺は誰もいない廊下で電話相手に大きい声で尋ねた。電話相手は社長だ。恩人でもある人から信じられない事を聞いたのだ。

 

 

 「アルスを送るから生徒会長選挙からは引いてくれ」

 

 社長から生徒会長選挙は降りてくれと言われたのだ。俺の代わりにアルスを送るから何もしなくていいと。

 生徒会長選挙がこれまで順調だっただけに悔しい。社長的には支配人になっただけで十分だと思っているかもしれない。

 だから、休ませるという意味でアルスを送ってきたのかもしれない。

 

 

 「私じゃダメなのでしょうか?」

 

 「お前は十分に活躍してくれた。後はアルスに任せてあげてくれ」

 

 「ですが、アルスがしくじる可能性もあります。そのための保険としてでもダメなのでしょうか?」

 

 「アルスなら大丈夫だ」

 

 社長の意志は固いみたいだ。生徒会長はアルス、支配人は俺の二人で百花王学園を支配したいのだろう。

 社長の気持ちも分かるがこの案件は俺が引き受けたものだ。最後まで一人でやりたかった。

 それにアルスとは意見が合わないことが多く、苦手なタイプなのだ。

 

 

 「分かりました」

 

 「引き続き頼むぞ。余裕があればアルスに手を貸してやってくれ」

 

 「アルスは俺の手なんか借りないですよ」

 

 「相変わらず仲が悪いな」

 

 社長は苦笑いを浮かべたような声で言うと電話を切った。電話が切れ、真っ暗な画面になった携帯を数秒見た後、賭場場に戻った。

 やるせない感情を抱いて戻った俺の顔には感情が出ていたのだろう。杜和が少し目を丸くしていた。

 

 

 ――――――――――

 

 

 「なるほど。それは何とも言えないですね」

 

 「そうだろ。よりによってアルスだよ?」

 

 支配人室に戻る途中で杜和に電話の内容を話した。杜和は俺に同情してくれた。

 杜和は首を縦に振って、俺の言う事に相槌を打ってくれる。

 

 

 「アルス様と仲悪いですもんね」

 

 「アイツと俺は根本から違うんだよ」

 

 「仲良くなろうとしないのですか?」

 

 「今更無理だよ」

 

 アルスとは知り合ったときから仲が悪い。意見が合ったことは一度も無い。

 アイツとギャンブルしたことは何度もあるが、勝つためなら手段を選ばない奴だ。

 イカサマは当たり前だとしてイカサマを何重もやってきたり、人質まがいなことをしたりする奴だ。

 

 

 「その話は置いておいて、暇になったので業務やってくださいね」

 

 支配人室に戻ってくると杜和が自分の机から大量に積まれた書類を俺の机にドンと置いた。

 この量はヤバイって……生徒会長選挙から降りちゃったし、ギャンブルという言い訳が聞かない。

 まさか、杜和が社長に言って…………それは無いとも言い切れない。

 

 

 「これ本当に半分?」

 

 「はい。それくらいやってください」

 

 それくらいの量ではない気がするのは俺だけだろうか。いつも杜和に任せっぱなしだし面倒でもやるか。

 俺はノートパソコンを開いて、キーボードをカタカタと打ち始める。杜和もキーボードを打ち始めて、支配人室にタイピング音が響いた。

 

 

 黙々と作業をして2時間は経った。体を伸ばして、小休憩を挟む。杜和は俺の事など興味を持たず、未だに黙々と作業をしている。

 その様子を見て俺ももう少し頑張ろうと思い、パソコンに向き合った時支配人室の扉がノックされた。

 

 

 「ごきげんよう」

 

 「入っていいなんて言ってないけど」

 

 扉が勝手に開き、二人の人物が入ってくる。綺羅莉とその秘書である五十嵐清華だった。

 綺羅莉は笑みを浮かべながら、俺の机の前までやってくる。そのすぐ後ろを五十嵐がついている。

 杜和も作業を止め席を立ち、俺の後ろにやってくる。

 

 

 「あら、ごめんなさい」

 

 「で、何の用?」

 

 「確かめに来たのよ」

 

 「何を?」

 

 「あなたが本当に生徒会長選挙に降りたのかっていう事をね」

 

 「事実だよ」

 

 「なぜ?」

 

 「人には誰しも秘密があるんだ。それ以上の詮索は野暮じゃないか?俺だって出来るなら続けたかったさ」

 

 綺羅莉は笑みを崩さず、目を細めて品定めするように俺の事を見てくる。その目は冷酷とも獲物を狙っている猟人(かりゅうど)のようにも見えた。

 俺の言葉を聞いた綺羅莉は顎に手を置いて考えこむような仕草を見せる。

 

 

 「つまらなくなったと思ったけど……どうやらまだ楽しめそうね」

 

 「勝手にしろ」

 

 綺羅莉は顎から手を除け、何かを察したのか再び笑顔を見せる。

 相変わらず何を考えているのかが分からない。

 

 

 「あなたとギャンブル出来る機会が無くなったのは残念だけど、お楽しみは最後に取っておくとしましょうか」

 

 「そう簡単には行かないと思うぞ」

 

 「そう。増々楽しみね」

 

 俺が挑発的に笑うと綺羅莉は呼応するように笑う。大変な困難さえ楽しみそうな奴だ。

 この学校で生き残りたいなら綺羅莉(こいつ)に勝ち続けなければいけない。

 面白い場所だな。ここ(百花王学園)は。

 

 

 「また会えるのを楽しみにしてるわ」

 

 「……」

 

 綺羅莉はそういうと支配人室を出て行った。最後の方のアイツは心無しか機嫌が良さそうだった。

 こういう奴を相手にアルスがどういう立ち回りをするか気になるな。

 俺は生徒会長選挙の行方に興味が湧いてきた。

 

 

 

 

 「ここが百花王学園か。面白そうだ」

 

 アルスが不敵な笑みを浮かべて百花王学園の正門前に立っていた。

 アルスはそういうと百花王学園の敷地へ踏み出した。

 

 

 ――――――――――

 

 

 「支配人、どうやら来たみたいです」

 

 「もう来たか。早いな」

 

 杜和が支配人室に戻ってくると新たな刺客(アルス)がやってきたと報告を受けた。

 思ったよりも早く来たな。前々から準備はしてたってことか。

 

 

 「どうなりますかね」

 

 「さぁ。ただ、カオスにはなるだろうね」

 

 「悪魔(アルス)はどう動くかな」

 

 日夜は笑みを浮かべて杜和にも聞こえない程の小さな声で呟いた。

 杜和も何か言ったのは分かったが内容は気にしなかった。

 

 

 ――――――――

 

 

 「簡単だなぁ。アイツ(日夜)の管轄だっていうからもっと手応えあると思ってたが……生ぬるいな」

 

 アルスは初日から賭場を賑わせた。初日だというのにランキングに名を連ねる程のチップを稼いでいた。

 見る見るうちに増えていくチップに他の生徒はザワめいていた。気付けば野次馬が周りを覆っていた。

 もちろん、それだけ注目を浴びれば強者から目をつけられる。

 

 

 「良かったら私とやらないか?」

 

 アルスが振り向くと車椅子に座った女とその車椅子を押している女がいた。

 アルスは品定めをするように二人を観察した。しばらくしてニヤッと笑った。

 

 

 「いいだろう。面白くなりそうだ」

 

 「私は等々喰定楽乃(ととばみてらの)だ」

 

 「俺はアルス。お手柔らかに」

 

 アルスが握手を求めて手を差し出したが無視された。アルスはやれやれと言った感じで両手を上げた。

 定楽乃はアルスの「面白くなりそうだ」という発言が頭に来ていた。快楽のためにギャンブルをする姿が綺羅莉と重なって見えたからである。

 知らない男と馴れ合う気が無いので握手も無視をした。

 

 

 「ここでは人目が多すぎる。場所を変えてもいいか?」

 

 「ご自由にどうぞ」

 

 「では、ついて来てくれ」

 

 アルスは席を立つと定楽乃の後を大人しくついていった。

 周りに集まった野次馬は定楽乃が通る道を素直に空けた。

 人の群れの中に出来た道を三人は堂々と闊歩した。

 

 

 「ここだ」

 

 定楽乃に連れられて辿り着いた場所は真ん中にお洒落な丸机と席が1つ用意されており、内装も西洋の高貴な建物にいるかのような絢爛豪華な装飾で彩られていた。

 アルスは1つだけ用意された席に着くと向かいに定楽乃が車椅子で移動する。

 

 

 「それで何をするんだ?」

 

 「それは彼女に決めてもらう」

 

 定楽乃はそういうと部屋の扉に視線を移した。アルスも釣られて扉に注目する。

 数秒後、扉がゆっくりと開き小さな女が入ってきた。

 

 

 「やっほー!呼ばれたから来たよー!」

 

 入ってきた人物は選挙管理委員会・委員長の黄泉月るなだった。アルスは高校生とは思えない体格のるなに目を疑った。

 定楽乃はるなが入ってきたのを確認するとアルスの方に向き直った。

 

 

 「あれー?君見ない顔だね」

 

 「今日転校してきたんだ。初めまして、アルスだ」

 

 「よろしくー私は黄泉月るな。選挙管理委員会の委員長をやってるよ」

 

 「ところで君さぁ……」

 

 「ンン」

 

 話が逸れそうになったところで定楽乃が口元に手を置き、咳払いをする。

 咳払いを聞いてるなはアルスに話しかけるのを辞める。

 

 

 (この子日夜君に顔、若干似てる気がする。気のせいかな)

 

 るなはアルスの顔を見ながらそんな事を考えていた。

 

 

 「今回のギャンブルは私がディーラーを務めるよ。気になるゲームはヒット&ブローだよ」

 

 「異議なし」

 

 「俺も」

 

 定楽乃は目を閉じて真剣な表情で答えるが、アルスは笑みを浮かべながら答えた。

 アルスの笑みは純粋な笑みでは無く、悪魔のように邪悪さを含んでいた。

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