百花王学園の支配人 作:匿名P
誤字の報告ありがとうございますm(*_ _)m
日夜が支配人になってから1週間ほどが経ち、毎日届く報告は全て蛇喰夢子によるものだった。蛇喰夢子はこの1週間で生徒会役員の皇伊月、西洞院百合子を破っていた。だが、西洞院百合子には結果は勝っていないとなっているが、内容を見ればどっちが負けたかは一目瞭然。そして、蛇喰夢子は西洞院に敗北したため3億1000万の借金を背負い、家畜となった。日夜は蛇喰夢子が家畜になったことで公式戦の権利を得て、また生徒会役員が喰われると予想をしているが、関係ないと思っていた。
生徒会役員という言葉が豆生田楓との会話を思い出させる。
「支配人。力を貸してください」
「え?」
唐突すぎる豆生田の発言に反射的に声が出る。
「支配人の力がどうしても必要なんです」
「なんで?」
「支配人もご存知だと思いますが、蛇喰夢子の脅威は広がりつつあります。蛇喰夢子に生徒会役員も負ける事態にまでなっています」
「そうだね。よく聞いてるよ」
「そこで蛇喰夢子を潰す計画を立てているんです。その計画に力を貸して頂きたいんです」
「力を貸して欲しい理由は分かったけど、その計画はどんなものなの?」
「蛇喰夢子と生徒会役員でギャンブルをさせます」
「え?生徒会役員同士で争ったら、余計に生徒会の威厳を下げるだけじゃない?」
「僕の目標のために生徒会役員を潰すことも必要なんです」
「目標って?」
「王になることです」
「つまり支配人になると?」
「ゆくゆくはそうなります。ですが、力を貸してくださいと言っている以上、支配人を狙うことはできません。なので、生徒会長の座をとることが今の目標です」
「そう、別にいいんだけどさ。まぁいいや。生徒会役員を潰す理由は相手を減らすためってこと?」
「はい。生徒会長になれる可能性があるのは、生徒会役員のみですから。1つしかない椅子を争うのであれば、相手は少ない方がいいですから。それに今、脅威となっている蛇喰夢子を潰せば生徒会内の評価も上がりますから」
「なるほどね。面白そうじゃん。いいよ、力、貸してあげるよ。生徒会役員と蛇喰夢子がギャンブルをやる場は作るよ。」
「本当ですか?」
「だけど、タダっていう訳にはいかない」
「金なら幾らでもあります」
「いや、金じゃない。楓自身に試練をやってもらおう」
「試練、ですか?」
「そう。試練の内容はお楽しみにしてて」
「分かりました…」
試練とは言ったが、その内容を未だに考えていない日夜は少し焦りが出てきているが、気にしないようにしている。が計画は、1週間後と言ってしまい、その1週間後にあっという間になってしまいそろそろ始めなければいけない。
「さぁ、始めようか」
蛇喰夢子が教室で鈴井涼太と話しているとき、夢子宛にダンボール箱が届いた。
「どうしたのこれ?」
「何も頼んではいないんですけどね」
そう言いながら、ダンボール箱を開けていく。
「ああ!何入ってるか分からないんだから、開けたら危ないよ!」
「いえ、私を危ない目に遭わせる気はないみたいですよ」
夢子がダンボール箱の中身を鈴井に見せる。その中には、紙袋が入っていた。夢子がその紙袋を開け、その中に入っているものを取り出す。
「これは…録音機でしょうか?」
夢子はその録音機に入っている音声を再生する。
「気持ち悪りぃんだよ!!」
その怒声とともに机からものが落ちる音が聞こえる。
「なんで私より汗かいてんだよ!!こっちは一生懸命やってんのに、なんでお前らの方が汗かいてんだよ!!」
音声はここで終了していた。その声の主は何かに怒っているようだったが、その声の主を鈴井は知っていた。
「これって、生徒会役員の夢見弖ユメミじゃないか?」
「誰ですか?それは」
「夢見弖ユメミは僕達と同じ2年生で生徒会広報をやっている傍ら、アイドル活動もやってる人だよ」
「それは凄いですね!ですが、なぜこんな音声があるのでしょうか?」
「それは分からない。けど、この声は夢見弖ユメミ本人だよ」
「なるほど…夢見弖さんからすればこの音声が公表されればアイドル活動は出来なくなってしまいますね」
「そうだね…その音声どうするの?」
「そうですね…」
そう言った夢子の目がある一点に止まる。そこには、
差出人 日夜 真
と書いてあった。それを見た夢子は
「私、決めました!夢見弖さんとギャンブルしたい!」
広報室を訪れた日夜は夢見弖に用があった。
「ユメミ、新しいイベントをやってくれないか?」
「支配人の頼みならなんでもやるよ!」
目を光らせながらそう答える。
「自由にやっていいぞ。ただギャンブルは入れてくれ。イベントのための費用や場所は確保する。」
「分かったけど、ギャンブルする相手は?」
「申し込んできたやつでいいんじゃないか?」
「そんな人いるかなー?私、生徒会役員だよ」
「いるんじゃないか?物好きが」
「夢見弖さん!私とギャンブルしましょう!」
夢子はライブが終わった夢見弖の控え室に駆け込んでくるなり、いきなりギャンブルの誘いをした。
「あなたは蛇喰夢子ちゃん?生徒会役員を倒すなんてすごいね!でも私はそうはいかないよ!」
夢見弖が自信に溢れた声で返す。
「それじゃあ何を賭けますか?」
「何を賭けるってお金しかなくない?」
笑いながら夢見弖が返す。だが、次の瞬間に笑っていた表情は消えた。
「そうですね…お互いの”全て”なんてどうでしょうか?」
そう言った後、制服から録音機を取り出し音声を流す。それを聞いた夢見弖は
「これなに?」
低い声で夢子を問う。
「今日届け物で来たんですよ」
「差出人は誰?」
これも低い声で問う。
「それは秘密です」
軽く笑いながら返す。これに夢見弖はキレそうになったがなんとか抑えた。
「これを使って脅すつもり?」
声がさっきよりも明るくはなったが、それでも威圧するような声で再び問う。
「いえ。賭けましょう」
「は?どうゆうこと?」
まさかの返答に思わず素が出かけたが、なんとか持ちこたえる。
「私が勝てばこの音声を公表する、負ければ公表しない。しかし、これでは私にリスクがありませんので私が負ければ、私のことは夢見弖さんの好きにしてください。元々私は家畜なので、失うものが少ないのですがこれでいいでしょうか?」
自分にわざわざリスクを付けることに、夢見弖は驚いたが、それでも対等な条件なので夢見弖は
「いいよ!やろう!場所はこっちで用意するから、それまで待っててね!」
いつもの明るさを取り戻し明るく答える。
「分かりました!夢見弖さんとギャンブルできて嬉しいです!それでは待ってますね!」
そう言うと、部屋から出ていった。夢子が歩いていると前から、誰かが走ってやってくる。
「夢子!どこいたんだよ!放課後、一緒に食堂でスイーツ食べるって言ってたのに来ないから心配したよ」
息を切らしながら、鈴井が夢子に尋ねる。
「ごめんなさい。私から言ったのにすいません。でも、安心してください。私の身には何もないですし、嬉しいこともありましたから」
「嬉しいこと?何それ?」
「夢見弖さんとギャンブルできることになったんです!」
「え!!ほんとに言ってるの?」
「えぇ本当ですよ」
「なるほど…だから」
僕が一緒だとギャンブルを止められるから呼ばなかったのかと言いかけたが、これを言ってしまうと夢子の機嫌を損ねると思い、途中で黙ってしまった。
「どうされました?」
夢子はそれを逃さない。笑顔ではいるものの、その目は感情が無い目をしている。
「ベ、ベ別に関係ないよ」
焦りを隠そうとするが、夢子の感情の無い目を見て明らかに動揺した声を出してしまい、夢子の顔からどんどん笑みが消えていく。
「アハ、アハハ、アハハ」
薄ら笑いでその場をしのごうとする鈴井を見て、とうとう夢子の顔は無表情になった。
「大変申し訳ありませんでした」
鈴井は白旗を揚げ、夢子に謝罪の言葉と一緒に土下座をする。
「いえいえそんなことしなくてもいいですよ。さぁ、食堂に行きましょう!」
鈴井の土下座を見て満足したのか、食堂へと向かっていく足どりは軽かった。
「クソ!クソ!クソ!あの女!」
夢見弖が怒声を発しながら、床を踏みつける。
「ユメミ、落ち着いて!」
マネージャーが夢見弖をなだめる。そこへドアが開き、誰かが入ってくる。
「夢見弖、どうしたんだ?」
豆生田楓は部屋に入ってくるなり、そう尋ねる。
「なんでもないわよ!」
「何かあったようにしか聞こえないが?」
そう言いながら、ポットの近くに行き、コーヒーを淹れる。その際、不自然にしゃがむような仕草を見せたが、夢見弖とマネージャーはそれどころではなかった。
「ユメミが裏でファンに暴言を吐いた音声が何故か録音されてて、それを蛇喰夢子が持ってるのよ。それでギャンブルをしましょうと言ってきて負ければ、その音声を公表するって」
マネージャーが泣きそうになりながら、豆生田に伝える。
「そうか。だが、取り返せばいいだけの話じゃないか?ギャンブルで勝てばいい」
夢見弖に振り向き、簡単なことだというような顔で淡々と言う。
「それとも、ギャンブルで
挑発するように夢見弖に問う。
「負けるのが怖いわけないでしょ!じゃなきゃ、生徒会役員になってないわよ!」
「この際だ、企画してるイベントのギャンブルの相手は蛇喰夢子でいいんじゃないか?計画書さえ出せば支配人はすぐに場を作ってくれる。勝負は早い方がいいだろう?」
コーヒーを飲みながら夢見弖を促す。
「そうね。企画はだいたい考えてあるわ。見つからなかった相手も見つかったし、今日中には計画書は出すわ」
「そろそろだな。大仕事が」
「えぇ、それに蛇喰夢子という大物」
「じゃあ本番楽しみにしてるぞ」
そう言い残すと、豆生田はコーヒーが残っているのにもかからわず部屋を出ていった。
控え室から出た豆生田が向かった先は、会計室だった。そこで業務をこなしたあと、支配人室へと向かい、ノックをして室内へ入る。支配人室内は無駄なものが一切なく、棚にはファイルや書類がビッシリと入っている。慣れない支配人室にキョロキョロと目が動いてしまうが、それを抑え、目的の人物に声を掛ける。
「動き出しましたね。計画が」
そう言いながら、録音機を取り出し、音声を再生する。そこには、夢見弖ユメミが蛇喰夢子とギャンブルをするのを認めた音声が入っていた。
「そうだな。ちょうどさっき、ユメミが計画書を持ってきたよ。これで、全てが動き出し始める」
「どちらかが、潰れるのは確実。問題はどちらが潰れるかですね」
「いや、どちらかが確実に潰れるとは限らない」
「失敗するってことですか?」
「それもあるけど、
「別の人?」
「そう。例えば、楓とかね」
豆生田を指さしてそう言った。
「それはないですよ。それに蛇喰夢子は生徒会長とギャンブルしたがってますから」
「さぁね。それはどうだろう。絶対にないって思ってる時にそういうことって意外と起きるよ。不思議とね」
日夜が豆生田に忠告した声は重かった。