異世界はダイアモンドドッグズとともに   作:ユウキ003

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楽しんで頂ければ幸いです。


第2話 双子姉妹との出会い

俺は異世界へと転生した。そして俺はiDROIDのマップで確認した町に向かうため、1人街道を歩いていた。

 

残念ながら歩いていても人とは出会わない。やはり文明レベルの違いか。この世界の基本的な状況はiDROID内部の諜報班が調べたデータベースを閲覧して学習済みだ。

 

この世界の移動の基本は徒歩、或いは馬とそれを用いた馬車だ。移動に掛かる時間は車や航空機のある俺の前世や更に前世と比べて雲泥の差だろう。となれば、物流も俺達の世界とは雲泥の差の可能性が高い。

 

とは言え実物を見ないことには何とも言えんな。とにかく今は町を目指すか。

 

と、歩いていた時。

 

『接近者あり』

「ん?」

耳に入れたインカムから響く声。それはiDROIDの電子音声だ。素早く前後と周囲を見回すと、後方から馬車が向かって来た。

 

俺は念のため、気づきつつも前を向いて歩き出した。やがて馬車が俺の横を通り過ぎる。その間も、突然の奇襲を警戒していたが馬車は何事もなく俺の横を通り抜けた。

 

ホルスターに伸ばしかけていた手を引っ込めようとした時。何やら前方で馬車が停車した。何だ?と考えていると、馬車から降りた男が一目散にこっちへ向かってくる。それを見て、戻し掛けていた手をホルスターの方へと再び伸ばす。

 

「君っ!そこのダンディな君っ!」

馬車は凝った装飾だったので乗ってるのは金持ちか貴族かと思ったが、降りてきた奴も良い感じの服を着ている事から見て、どっちかだろう。

 

「……なんだ?」

俺は駆け寄ってきた中年くらいの男を警戒しながら声を掛ける。

「君っ!その服はどこで買った物なのかね?」

「ん?」

 

何でこいつは、俺に服の事を聞く?

「こいつは、俺の仲間から貰ったものだが、それがどうした?」

「その服っ!是非私に売ってくれないだろうかっ!?」

「何?こんなのが欲しいのか?」

「無論だっ!見た事も無いデザインに縫製の仕方も、全くもって分からないっ!これ程の一品を見た事は無いのだっ!どうだろうか!?」

「……」

 

この服にそこまでの思い入れがある訳じゃないし、いざとなればまた支援物資として届けて貰えば良い、か。

「良いだろう。相場が分からないので、どれほどの金を出すのかはそっちで勝手に決めてくれ。ただし、見た所こいつは相当珍しい服だ。流石に安く買いたたこうとしたら、取引を中止させて貰う。構わないな?」

「あぁっ!もちろんだっ!適正な価格で買う事を約束しようっ!」

 

「もう一つ。生憎今の俺にはこれ以外、町中で目立つ服くらいしか持ち合わせがない。いくつか服を見繕いたい。出来るか?」

「可能だよっ!私は衣類の店を経営しているんだっ!なんて事は無いっ!」

 

「よし。取引はとりあえず成立だ」

 

こうして俺はこの世界の男に服を売ることになった。

 

その後、俺は男の馬車に乗って共に目的地の町を目指す事になった。幸いと言うべきか、俺もこの男、『ザナック』も目的地は一緒だった。

 

それから馬車に揺られること数時間。俺たちを乗せた馬車は『リフレット』と言う名の町へと到着した。外壁を越えて町中に入る。

 

窓から見える町並みは、確かに中世を感じさせる物だった。やがて、馬車は一件の建物の前に止まった。店の上に看板がある。確か、あれだと……。

 

『ファッションキングザナック』。それが店名らしい。読めない訳ではないが、まだまだだな。

「ここがアンタの店か?」

「そうさっ!ここは私がオーナーをしている店、ファッションキングザナックだっ!さぁこちらへっ!」

時間は掛かるが、間違い無く読めている事をさり気なくザナックで確認しつつ、俺は中へと入った。

 

俺はすぐに試着室に放り込まれ、レザージャケットなどを脱いでいくのだが、終いには服だけでなく下着まで買わせてくれと行ってきた。ただし。

 

「ッ!?き、君っ!その腕はっ!?」

 

ザナックは俺の鋼鉄の左腕、バイオニックアームと頭部の角、体中の傷に驚いている。さっきまでは裂いた布のターバンモドキとグローブで隠していたが、着替えるときに見られてしまった。

 

更にザナックが驚いた拍子にカーテンを引っ張ってしまい、近くにいた従業員にまで見られてしまった。従業員たちの女も、息を呑んで驚いた様子だ。……だが、気にして等いない。

 

「……昔、少しやんちゃをしてな。この様だ」

 

そう言いながら俺は代わりに用意して貰った服に袖を通す。

「し、失礼しましたっ!お客様の体をそのっ!」

「気にするな。もう過去の話だ。この傷も、失った左腕も、全部俺が俺である証だ」

「は、はぁ…」

 

ザナックは俺の言った事に戸惑っているようだ。

 

「それより下着まで売ったんだ。良い値段にはなっただろ?全部でいくらだ?」

「そ、それでしたら金貨10枚くらいかとっ!」

「ふむ。それくらいか」

 

この世界の通貨については調べてある。銅貨10枚で銀貨1枚分。銀貨10枚で金貨1枚分となる。その金貨が10枚か。悪くは無い。

「よし。じゃあその値段からこの服の料金を引いてくれ」

「いいえっ!その必要はありませんっ!あれほど色々貰っている以上、そちらの代金は必要ありませんっ!代わりと言っては何ですが、また何か面白い服があれば私どもの所へ持ってきて頂けると嬉しいのですがっ!」

 

ふっ、成程。流石オーナーか。商人らしい。

「良いだろう。だがならもう一つ、追加であれを貰って良いか?」

そう言って俺が指さしたのは茶色のトレンチコートだ。

「構いませんが、よろしいのですか?まだコートを買うには時期的に早いと思いますが?」

「あぁ構わない。値段はいくらだ?」

「い、いえっ。こちらも無料で差し上げますっ」

 

と言う事で、俺は追加でサンドカラーのトレンチコートを手に入れた。裾の長さは膝より少し上くらいのトレンチコートだ。

 

俺はそれを服の上から羽織る。こいつを買った理由は簡単だ。腰回りに集中するホルスターやナイフケース、左腰のポーチを隠すためだ。服の上からトレンチコートを着ればそれらを隠せる。

 

左腕のバイオニックアームに関しては、革製の手袋を買っておいたので嵌めておく。袖も長いので、これと長袖の服でバイオニックアームは隠れた。

 

これで服はOKだ。それで最後に金を受け取る。確かに金貨10枚だ。っと、そうだ。念のため聞いておくか。

「すまないがこの辺りに宿屋はないか?」

「宿屋、ですか。でしたら店を出て右へ。しばらく言った所に『銀月』という宿屋が一軒ありますが」

「そうか。ありがとう」

これで宿屋の情報も得られた。これで、ここでの用は終わったな。

 

「それじゃあ、金も貰ったし俺は行く。世話になったな」

「えぇ。また何かありましたらおいで下さいませ。またのご来店をお待ちしておりますっ」

「あぁ」

 

そう言って俺は店を出た。

 

それから俺はザナックに貰った情報を元に銀月という宿を探し始めた。だが……。

 

「ん?」

 

ふと歩いていると、近くの小道の奥から微かに声が聞こえる。どうやら何か言い争っているようだ。……片方は女だな?

 

チラリと周囲を見回すが、俺以外に気づいた者はいないようだ。……念のためだ。行ってみるか。俺としても婦女暴行を見て見ぬ振りは出来ん。

 

路地裏に入り、声がする方へと足を進める。そして見つけた。相手の数は4人。女が2人、姉妹、双子か?似た格好と顔立ちの女たちが、何やらガラの悪そうな男2人と向き合っている。

 

話に聞き耳を立てていると、どうやらあの2人は水晶鹿の角とやらを男達に金貨1枚で売るつもりだったようだ。だが、男達は傷を理由に銀貨1枚で買おうとしているらしい。

 

女の方が取引を止めようとするが、男達は角を返すつもりは無いようだ。全く。

 

「いい歳した大人が、セコいんじゃないのか」

 

「「っ!?」」

俺が突然現れると、男達は驚いた様子で振り返った。気配を消すにはもう馴れた者。こんなゴロツキに気づかれる程、柔ではない。

 

「な、何だジジイっ!なんか文句あるかっ!?これは俺とこいつらの問題だっ!」

「他人の努力を安く買い叩こうとする連中がいるようだからな。……大人しくそれを彼女達に返して、失せろ。怪我をしたくなければな」

 

「な、何をっ!ジジイがっ!!」

男の1人が、ナイフを取り出した。

 

 

「やめておけ」

 

「「うっ!?」」

直後、俺は静かに、しかし殺気と敵意を込めて呟く。すると、男達は唸り、後退った。

 

実戦で、戦場で培ってきた殺気と敵意。それは、チンピラ如きを圧倒するのに十分だった。

 

「それを抜いて向かって来たが最後、これから始まるのは本当の殺し合いだ」

 

そう言って俺も腰のナイフケースからナイフを抜く。ナイフを片手に構える。

 

「悪いが、俺は殺し合いとなれば手加減はしない。さぁ選べ。ここで命がけで戦うか、それとも、それを置いて大人しく失せるか。……どっちだ?」

「「う、くっ」」

 

唸り、冷や汗を流す男達。

『ガンガンッ!』

更に、俺から見て奥に居た少女の1人がいつの間にか、大きなガントレットらしき物を嵌めて、威嚇するように打ち付け合っている。どうやら、やるとなれば彼女も戦う気のようだ。

 

数秒、男達は躊躇ったようだが……。

「クソッ!」

 

男は近くの地面に角を置くと、俺の脇を通って逃げていった。俺はそれを見送り、奴らが表通りに消えていくのを確認するとナイフをケースに戻し、置いてあった角を拾い上げる。

 

「大丈夫か?」

「えぇ。ありがとう」

そして、近づいてきた長髪の彼女に角を手渡した。

 

「助けてくれてありがとう。私は『エルゼ・シルエスカ』よ」

「ちょ、ちょっとお姉ちゃん。相手の人は年上みたいだし、ため口は……」

すると、もう1人、短髪の彼女が戸惑った様子だった。

 

「気にするな。そんな事に目くじらを立てる程柔じゃない」

そう言って俺は彼女を安心させようとしたが、どうやら男に慣れていないのか、少し戸惑った様子だった。

 

「ごめんなさいね、妹はちょっと人見知りな所があって。妹の『リンゼ・シルエスカ』よ」

「そうか。俺はスネークだ」

「スネーク、ね。改めてお礼を言わせてもらうわ、スネーク」

「気にするな。こっちから勝手に首を突っ込んだだけだ」

 

っと、そうだ。一応聞いておくか。

「あぁ、礼代わり、と言ったら何だが。この辺りにある銀月って宿を知らないか?丁度探していた所なんだが」

「あら?そうなの?だったら私達が案内するわ。丁度私達も銀月に泊ってるのよ」

「そうか。そいつはありがたい」

 

と言う事で、俺はエルゼとリンゼに案内され、銀月へとやってきた。さっそく受付に居る女性のところへ向かう。

「いらっしゃい。お食事?それとも宿泊?」

「宿泊で。料金は一泊どれくらいになる?」

「ウチは一泊、朝昼晩と食事付きで1日銅貨2枚よ」

成程、となると1ヶ月で銅貨60枚と言った所か。まぁ幸い金貨が10枚もある。銀月に泊るのは、当面大丈夫そうだな。

 

「ならとりあえず1ヶ月ほど部屋を取りたい。生憎持ち合わせがこれしかないが、大丈夫か?」

そう言って金貨を一枚取り出し、テーブルの上に置く。

 

「大丈夫よ。ちょっと待っててね」

彼女からおつりを受け取る。

「あっ、それとここにサインを頂戴ね」

「あぁ」

 

俺は差し出された宿帳に、馴れないながらもこちらの文字で『スネーク』と書く。

「スネークさん、ね。はいこれ、部屋の鍵よ」

その後、宿の説明を受け、部屋の場所を聞き、鍵を受け取った。

 

 

その後、俺はエルゼ達と共に夕食を食べた。今は食後のお茶を飲みながら、話をしていた。

 

「それにしても、2人は何だってあんなガラの悪い連中と取引をしていたんだ?」

「ちょっとしたツテだったのよ。水晶鹿を倒して角を持ってたら、欲しいって言われて。でもダメね。ギルドを通さないとあんなトラブルに巻き込まれるし。まぁ、スネークでおかげで無事角は取り返せたから良いけど。……やっぱりギルドに登録した方が良いかしらね~」

「そうだよお姉ちゃん。明日にでも登録に行こう?安全第一、だよ」

 

ギルド、か。確か諜報班が調べたデータの中にあったな。個人の依頼とそれを受ける者を斡旋する仲介業者のような組織だったと。……そこでなら俺向きの仕事もあるか。

 

「なぁ、2人とも明日ギルドに行くのか?なら、俺も付いていって構わないか?俺もギルドに登録しようと思うんだが?」

「えぇ。良いわよ」

「助かる」

 

 

そうして、異世界に転生した俺の一日は終わった。2人と別れて部屋に戻り、銃のメンテナンスを行う。そしてそれが終われば、ベッドで横になる。やがてしばらくすると、睡魔が襲ってくる。

 

そして俺は目を閉じ、眠りに付いた。

 

 

 

~~~~~

『ボスッ!!』

 

「ッ!?」

 

突然頭の中に響いた声に、俺は目を開けた。そして、絶句した。目の前に広がるのは広大な海だ。そして足元に目を向ければ、見覚えのあるヘリパッド。

 

「ボスッ!」

「ッ!?」

また聞こえた声に振り返る。そこにいたのは……。

 

「お、お前達っ!」

 

かつて、共に戦い、共にダイヤモンドドッグズを育ててきた数多の仲間たちだった。

 

彼等が、戦友が、仲間が、そこにいた。

 

そして、『あの日』、俺が『隔離プラットフォーム』で、『この手で殺した仲間達』も、そこにいた。

 

「お前達、まで……」

 

「ボスッ!」

「お待ちしてましたっ、ボスッ!」

皆が俺の前に集まってくる。

 

……だが、俺はこいつらにボスと慕われて良いのか、疑問が脳裏をよぎった。

 

「ボス?」

「……お前達は、まだ俺をボスと慕ってくれるのか?」

「え?」

「……お前達だって覚えて居るだろう。あの日俺が、この手でお前達を、殺した」

 

「「「「「………………」」」」」

俺にあの日、撃たれた連中は黙り込んだ。その後ろで、他の奴らも緊張した面持ちだ。

 

「その上で聞きたい。どうだ?」

俺が問いかけると、皆、戸惑った様子だ。

 

「……確かに、あの時、死んだ事に不平や不満、憤りや悲しみが無いと言えば嘘になります」

 

そう答えたそいつを、俺は知っている。

 

「仲間が待ってます」

 

そう言って、俺の前で両手を広げたアイツだった。救助部隊の生き残り。一抹の希望。唯一の生存者になったかもしれない男だ。彼は真剣な目で俺を真っ直ぐ見つめながら語る。

 

 

「ですが、俺達はボスの言葉を聞いて、あなたをボスに選んで良かったと思って居ます」

不意に、彼とその後ろの連中が笑みを浮かべた。

 

「どういうことだ?」

「俺達には、あの時、死んだ時よりも後、自分達がどうなったのか記憶があるんです。燃え尽き、命を落とした俺達は、灰になった。でも、ボスがそこから俺達を『ダイヤモンド』にしてくれた」

「ッ」

 

~~~~

それは、スネークの選択だった。

 

声帯虫に汚染され、失意と絶望、無念の中で彼等は死んでいった。それを良く分かっているのは、他でも無い。手を下したスネーク自身だ。

 

だからこそ、彼等を、彼等だった遺灰を、ただ海に撒く事は出来なかった。それこそが、彼等にとっての永遠の別れ、『永訣』なのだから。

 

だからスネークはそれを拒んだ。

 

「俺達をダイヤモンドだと言ってくれた事。死しても傍に置いてくれた事。俺達はそれを、とても感謝しています。そしてまた、あなたの元で戦えるのなら、俺達の選択は決まっています」

 

仲間は、例え死んだとしても、多くを共にしてきた仲間だ。そして仲間を大切に思うスネークの思いが、彼等をダイヤモンドへと昇華させた。そしてその思いは、仲間たちを引きつけるカリスマ性となる。

 

「俺達はどこまでもボスに付いていきますっ!俺達の命は、この身はっ!例えもう一度死ぬ事があったとしても、どこまでも、例えダイヤモンドになろうともっ!ボスと共にっ!」

 

『『『『『『バッ!!!』』』』』』

 

 

~~~~

そう言って、皆、俺に敬礼をする。その姿勢は一切の迷いを感じさせなかった。そうか。ならば、俺から言うべき事は一つだけだ。

 

「分かった。ならばこれから、俺達はダイヤモンドドッグズとして、もう一度立ち上がる。みんなの力を、俺に貸してくれ」

「「「「「はっ!!!」」」」」

 

皆の敬礼に、俺も答礼を帰す。

 

そうして俺は、もう一度仲間を、ダイヤモンドドッグズという仲間たちを率いる事となった。

 

 

その後、仲間たちと少し話をした。

 

どうやら彼等の居るマザーベースはどこかの異空間に存在しているらしい。故に敵からの侵入は今の所ほぼ不可能だそうだ。更に俺は、かつての腹心であるカズやオセロットは居ないのか?と聞いてみたが……。

 

「実は、それに関してはミラー副司令から。『まだその時ではない』と」

「どういうことだ?」

「ミラー司令がいうには、『まだ俺やオセロットがあんたと会う訳には行かない。もっと人を集め、人との絆を繋げ、組織を多くし、ダイヤモンドドッグズが成長したらその時に会おう』、との伝言を預かっています」

 

「成程。分かった」

要は彼奴らと再会するためには、もっとマザーベースを大きくしないと行けないようだ。しかし……。

 

「絆を繋げ、と言うのはどういうことだ?」

「あっ、それだったらオセロット教官からも伝言が。どうやら、このマザーベースの各班のレベルアップには、これまでの人を集める事とは別に、人との絆が関係しているようです。何でも、多くの人と絆を深めればそれだけ班のレベルアップに繋がるとか、なんとか」

「……良く分からんな」

 

その後も、彼等と話をして現状の確認やお互いの立場の確認などをしておいた。

 

俺の状況は知らせた。

 

更にこいつらの現状も聞いた。もちろんこいつらの復活に神が関わっている事も、彼等は知っていた。

 

と、何だかんだと話していると、唐突に体を浮遊感が襲った。

「ぬっ?これは?」

「あっ!ボスっ!今ボスは眠ってる状況だったから、外とこっちじゃ時間の流れが違うんですっ!きっと意識が目覚めようとしてるんですっ!」

「そうか。うぉっ!?」

体が勝手に宙に浮く。そのまま上へと引っ張られていく。

 

「ボスっ!最後にこれだけっ!ボスのiDROIDに『移動用ワームホール』の発生装置が内蔵されてますっ!それがあれば、いつでもマザーベースに戻ってこられますっ!俺達は、いつでもボスの帰還を待ってますっ!

「分かったっ!」

 

彼奴らにも聞こえるように大声で答えた直後、俺の意識は途切れた。

 

 

「っ」

そして俺は現実世界で目覚めた。一瞬、さっきまでのは夢か?と疑ったが夢ではないようだ。ベッドを立ってテーブルの上に置いてあったiDROIDの傍に、置いた覚えの無い、見覚えのあるダイヤが、仲間たちの『メモリーズダイヤ』が置かれていたのだから。

 

俺はそれを手に取り、小さく笑みを浮かべてからポケットへとダイヤを入れるのだった。

 

「行くぞ」

 

俺は小さく呟き着替えると部屋を出た。これから先の旅は、仲間たちと共に行くのだから。

 

それから、俺はエルゼたちと朝食を取った後、ギルドへと向かった。

 

ギルドに付いた俺達は、そこで『冒険者』としての登録を行い、説明を受けた。冒険者にはランクがあり、受ける依頼にも難易度に応じた受注制限が掛けられている。まぁ、当たり前だろう。

 

そうして説明を受けたあと、個人を識別するギルドカードを受け取り、俺達は早速依頼を吟味し始めた。今朝も念のため、少しこちらの世界の言葉を勉強していたので読めなくは無いが、如何せんこの辺りには詳しくない。しかも俺達は冒険者ランクが黒。駆け出しだ。受けられる依頼にも限りがある。

 

「スネークはどう?何か良いの見つかった」

「いや。未だに吟味している所だ。この辺りの地理が殆ど分からんからな。そっちはどうだ?」

「それならこんなの見つけたわ」

そう言って依頼書の一枚を指さすエルゼ。

 

彼女が指さしているのは、討伐系の依頼書だった。東の、森。魔獣、狼?これを5匹、か。

「討伐。狼を5匹もか。お前達だけで出来そうなのか?」

と、聞いてみたが、2人はどこかキョトンとした。

 

「ん?どうした?」

「あ、えっと、どうしたって、スネークは一緒に来ないの?」

「なに?俺もか?しかし、俺が一緒に行ったら分け前が減るだろう?良いのか?」

「別に気にしないわよ。それに、折角一緒に冒険者になったんだし、どうせなら最初は一緒の依頼を受けてみようかなって思っただけよ。スネークはどうする?」

 

ふぅむ。同行の誘いか。こちらには断る理由も特にないし、構わないか。

「分かった。なら一緒に行かせて貰うとしよう」

「OKっ!じゃあ決まりねっ!」

 

こうして俺は2人と一緒に初依頼を受ける事になった。

 

とは言え準備は必要だ。2人はギルド近くの武器屋で、エルゼは足を保護する脚甲。リンゼは銀のワンドを購入した。

 

しかし、俺の持ち物で使えそうなのはグレネードが4。あとはナイフと麻酔銃のウインダージャだけだ。討伐系の依頼を考えれば、ウインダージャは不要だろう。しかし町中で補給を要請しても目立つだけなので、町を出て少ししてから補給を要請する事にした。

 

「2人とも、少し待ってくれ」

「ん?」

「どうかしましたか?スネークさん」

足を止めて振り返る2人。

「悪いが少しだけ時間をくれ。5分もいらない」

 

そう言って俺はiDROIDを取り出した。

「それは?」

取り出したiDROIDに興味津々のリンゼ。だが俺はそれを無視してすぐさま端末を起動し、メニューを開く。

 

「えっ!?」

「何それっ!?」

空中に浮かぶディスプレイに2人が戸惑っている。俺はそれを後目に、1つの武器を要請した。

 

ディスプレイにマップが表示され、俺の位置を示すマーカーの近くを投下ポイントに指定する。それが終わると、iDROIDを腰に戻した。

 

「ちょっとスネークッ!何今のっ!?それ何っ!?」

興味津々といった様子で目を輝かせながら俺に詰め寄るエルゼ。

「す、凄いです……っ!もしかして、スネークさんって凄い人、なんですか……っ!?」

リンゼもリンゼで、かなり興奮しているようだ。

 

「凄い人、かどうかは俺自身も分からんな。それと、こいつは俺の力の一端、と言った所だ」

「力の、一端?」

そう言って首をかしげるエルゼ。

 

「今は依頼の最中だからな、それ以上の事は話せない。まぁ、いずれ詳しく話す事があるだろう」

と、2人と話をしていると……。

 

「おっ、来たようだ」

「「え?」」

近づいてくる気配に気づいて空を見上げる。2人もそちらに目を向ける。

 

見るとパラシュートとボックスがこちらに向かって来ていた。そして、俺達の近くに落ちるダンボール箱。

 

「「えぇぇぇぇぇっ!?」」

突然の事に2人が驚いている中、俺はダンボール箱の傍に寄ると、中に入って投下された武器を回収した。するとダンボールが自然消滅する。

 

俺が投下を頼んだのはハンドガン、『AM D114』。こいつもウインダージャと並んで世話になった殺傷系ハンドガンだ。グレードは2。サプレッサーを装備している。装弾数は、7発。予備のマガジンを含めて弾数は56発。一匹に10発も使う事は無いだろうから、これで足りるだろう。それに、いざとなればウインダージャが使える。幸いポーチに余裕があったのでそちらにしまいこんだ。

 

「待たせて悪かったな。こっちは準備完了だ。さぁ、行くぞ」

そう言って俺は、ぽか~んとする2人を追い越すように歩き出す。

 

「あっ!ちょっとぉっ!」

「わわっ!待ってよお姉ちゃんっ!スネークさんっ!」

慌てて付いてくるエルゼとリンゼ。

 

その後、たどり着いた東の森。その中を進んでいくと……。

iDROIDが反応した。それは付近に敵の接近を知らせるものだ。と、同時に肌がヒリヒリとした感覚に襲われる。これは、長年戦場で戦ってきたからこそ分かる。『敵意』だ。それが徐々にこちらへ近づいてくる。

 

「止まれ。何か近づいてくる」

俺が声をかけると、2人とも足を止め臨戦態勢だ。どうやらそこそこの実戦経験はあるらしいな。2人の姿を横目に確認すると、俺もD114を抜き、構える。

 

『『ババッ』』

直後に草木の影から飛び出してくる何か。飛び出してきたのは黒い影。数は2匹。それは一角狼の名の通り、額から角の生えた狼のような存在だ。そして角は討伐の証として持ち帰られなければならない。となると、頭の付近を撃ち抜いて角を粉砕してしまう訳にもいかない。

 

『パスパスッ!!』

サイレンサーで小さくなった銃声が響き、俺の狙い通り弾丸は一角狼の喉の辺りを貫いた。撃ち抜かれ地に伏す2匹の一角狼。

 

『パスパスッ!パスパスッ!』

倒れた2匹に追い打ちでそれぞれ2発、たたき込んでおく。これで6発。残りは薬室の1発だけだ。そこから俺はすぐさま、タクティカルリロードを行う。

 

こうすることで、不意の攻撃にも即座に対応出来る。

 

すると、更に4匹の一角狼が飛び出してくる。動きは狼らしく素早い。が……。

『パスッ!パスッ!パスッ!パスッ!』

この程度造作も無い。かつて高速に動き回るスカルズを相手にしていた事に比べればっ!

 

放たれた弾丸が連中の胴を射貫く。痛みに倒れる一角狼。だが完全に倒した訳じゃない。

俺は振り返り叫ぶ。

 

「今だっ!トドメを刺せっ!」

「っ!わ、分かってるっ!」

「はいっ!」

 

俺が声を上げると、少し呆けていた2人が動き出した。

「このぉぉぉぉぉっ!」

エルゼの拳が、ヨロヨロと起き上がろうとしていた一角狼2匹を続け様に殴り飛ばす。

 

「『炎よ来たれ、赤の飛礫、イグニスファイア』ッ!」

更に、リンゼの放った魔法らしき物が別の2匹を焼き払った。

 

これが魔法か、と思いつつ周囲を警戒する。しかし、これで撃ち止めのようだ。周囲に敵の気配は感じない。

 

「……どうやら6匹だけだったようだな」

俺は周囲を警戒しつつもう一度タクティカルリロードを挟む。

「2人とも、怪我は無いか?」

周囲を警戒しながら声を掛ける。が、2人とも何やらぽか~んとした様子で俺を見つめている。

 

「ん?どうした?エルゼ、リンゼ?」

「あ、え、えっと。ごめんなさい。ちょっと、改めてスネークの武器が良く分からなくて、戸惑ってたのよ」

「……あぁ、そう言う事か」

エルゼの言葉に一瞬、思考をめぐらせた上で気づいた。さっきの武器屋もそうだが、銃はこの世界で普及していない。いや、そもそも銃という概念が存在していない可能性もある。そんな彼女達が銃を見て驚くのは当然だ。

 

「スネークさんの使ってるそれ、って。どんな武器なんですか?」

「早い話、爆発する粉で小さな鉄の塊を発射する武器だ。放った塊が相手の体を貫通しダメージを与える。そう言う武器だ。形や用途も色々あるが、こう言った武器を総じて『銃』と呼ぶ」

「銃。……それが、スネークさんの武器、なんですね」

「そうだ」

 

俺はリンゼに答えながらD114をホルスターに戻す。

 

「それより、依頼は完了したんだ。さっさと証拠の角を回収して町に戻るぞ。血の臭いに釣られて他の魔獣が来た場合、そいつらと戦う事になるぞ。だが、依頼はあくまでも一角狼の討伐だ。これ以上戦っても無駄に体力を消耗するだけだぞ」

「それもそうねっ!リンゼ、ちゃっちゃと回収してリフレットに戻るわよっ!」

「う、うんっ!」

 

その後、俺達は協力して証拠の角を回収。依頼は5匹だが、一匹多く倒してしまった。換金出来ないか分からなかったので、とりあえず6匹目の角も持ち帰った。

 

その道中。

 

「ねぇスネーク」

「ん?何だ?」

「スネークって、もしかして元々兵士か何かだったの?」

 

『ピクッ』

 

エルゼの問いかけに眉を一瞬動かしながらも平静を装う。

「それがどうかしたのか?」

「あ、えっと。なんて言うか。そんな不思議な武器を持ってるし。チンピラを威圧感だけで撃退しちゃうし。それに何か、顔とか傷も凄いし。……なんて言うか普通の人って感じじゃなかったから。どうなのかな~って思って。あっ!答えたくないなら別に良いんだけどっ!」

 

「そうか。……まぁ別に隠している事でもない。確かに俺は元々兵士だ。いや、今も、と言うべきか」

「どういうこと、ですか?」

 

「色々あってな。以前はとある人の部下をしていた。だが、今は自分で組織を率いる立場になった」

「あっ!もしかしてさっきの箱を送ってきたのっ!スネークの仲間なのっ!?」

「あぁ。そうだ」

 

「その組織、なんて言う名前なんですか?」

 

リンゼの問いかけに、俺は足を止め、振り返り答えた。

 

「≪ダイヤモンドドッグズ≫。それが俺と仲間たちの部隊の名前だ」

 

それだけ答えると、俺はもう一度歩き出した。

 

その後も、色々聞いてくるエルゼとリンゼに適当に受け答えをしながら俺達はリフレットへと戻った。

 

俺のこの世界での初仕事は、何とも簡単だったな、などと思いながら。

 

     第2話 END




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