冒険者ギルドで依頼を受けた俺達は、依頼をこなすために王都へと向かっていた。その道中、九重八重という少女と知り合い、目的地が同じ王都であった為に共に旅をする事になった他、襲われていた貴族令嬢、スゥシィを助ける結果となった。そして襲撃で護衛の大半を失った彼女達を守る為に、俺は彼女の執事のレイムから護衛依頼を受けたのだった。
「さて。じゃあ早速だが、俺の部下を呼ぶ。少し待ってくれ」
「呼ぶ、と仰いますと?まさか今からこちらへ?」
「そうだ」
俺の言葉にレイムや護衛達は少し戸惑った様子だ。如何せん、今から護衛を呼ぶのでは時間が掛かるだろうと考えているのだろうが……。
俺はそれを一瞥しつつもiDROIDを取り出し、通信を開いた。更に分かり易いよう、通話内容のスピーカーを通して彼等にも聞かせよう。
「こちらスネーク。マザーベース聞こえるか?」
『こちらマザーベース。何か御用ですか?ボス』
「な、なんじゃそれっ!?は、箱から人の声が聞こえるぞっ!?」
iDROIDに驚くスゥシィを一瞥しつつ、通信を続ける。
「移動の最中、縁あって貴族令嬢の護衛をする事になった。しかし俺1人ではカバー出来る範囲にも限度がある。応援を寄越して欲しい」
『了解です。しかし、となると四輪駆動車を投入しますか?』
「いや。あれはまだ早い。マザーベースに騎乗可能な馬は居ないか?」
『ボスのDホースなら居ますが、それ以外の馬となるとちょっと……』
「そうか」
人員を投入しても、騎馬と徒歩では行軍スピードに差が出る。どうするか?と考えていると……。
「あ、あの」
「ん?何だ?」
生き残りの護衛の1人が声を掛けてきた。
「もし、良ければ仲間の馬を使いますか?襲撃を生き残ったのが、4匹ほど居ますので」
「そうか。……分かった」
どうやら馬の方は問題なさそうだ。
「今の会話、聞こえていたな?」
『はい』
「ならば馬に騎乗出来る奴を4人、完全装備ですぐに用意させてくれ。それと、今から物資の投下要請も出す。そちらも頼むぞ」
『了解ですっ!』
「よし、では通信終了」
通信を終えた後、更にiDROIDを操作し投下物資の、武器リストを映し出す。
今までは目立つのを避けて、隠し持ちやすいハンドガンを携帯していたが、これからは状況が分からない。なので、火力に優れた武装を届けて貰うとしよう。
『AM MRS-4アームズマテリアル多目的ライフル』。こいつにも戦場で何度も世話になった。その投下地点を設定。あとは近づいてくるのを待つだけだ。俺はiDROIDをしまう。が……。
「何じゃ何じゃっ!それは一体何なのじゃっ!?」
お嬢様がiDROIDに深く興味を持ったようだ。今も目をキラキラと輝かせながらこちらに詰め寄ってくる。
「これは、俺の仲間が創り出した遠距離で仲間と会話したりする、様々な機能を備えた端末だ」
「でっ!?でっ!?他に何が出来るのじゃっ!?」
「例えば、指定した座標に物資を届ける要請をすることが可能だ。あんな風にな」
「ふぇ?」
視界の端に見えてきた投下物資を指さす。すると、スゥシィだけでなく八重や護衛にレイムまでそちらに視線を向け……。
「おっ、おぉぉぉぉっ!」
「あ、あれは一体……っ!?」
目を輝かせるスゥシィ。対照的に驚き冷や汗を流す護衛やレイム、更に八重もだ。
そうこうしている内に投下地点まで運んできたパラシュートは焼失。大きなダンボール箱が落ちてくる。そして、俺はそこに近づくと、いつも通り中へ入り武器を手に入れる。
俺が入った、かと思うといきなり出てきた事で連中は驚いていた、と言うより理解が追いつかない様子で唯々、茫然としていた。
「凄い凄い凄いっ!空から箱が降ってきたのじゃっ!」
ただ1人、スゥシィは興奮気味だが。
それを一瞥しつつ、俺はMRS-4の様子を確認する。マガジンを外し、コッキングレバーを引いて薬室の内部を確認する。マガジンの残弾も確認し、セット。レバーを操作し、『カシャッ』と音をさせながら初弾を装填。箱に同梱されていた他の装填済みマガジンは、腰のポーチへとしまい込む。
さて、あとは仲間が来れば移動準備は完了するが……。
『ピピピッ!』
その時、iDROIDから着信を告げる音が響き、通信チャンネルを開いた。
「こちらスネーク。準備は出来たか?」
『はい、準備完了です。それとボス、一つ確認がありまして』
「ん?なんだ?」
『兵員の輸送と展開にピークォドを使うのはいかがでしょうか?』
「ピークォドか?なぜだ?俺のiDROIDからゲートを展開できるが?」
『はいっ。万が一のために、情報漏洩は少しでも控えるべきかと思いまして。ゲートの展開能力は、あまり使わない方がよいのではないかと思い』
「成程」
確かに仲間の言う通りだ。ゲートは、俺の知る限りこの世界とマザーベースをつなぐ存在。それを外部の者に知られる危険性は極力避けたいか。今の所それを知っているのはエルゼ達数人だけだ。……ここは仲間の意見を聞くべき、か。
「分かった。ならば近くにランディングゾーンに出来そうな場所はあるか?」
『はいっ。そこから西へ数百メートルの地点で、森の一角が平野になっています。そこであればピークォドが降下できますっ。iDROIDの地図データにマーカーをセットしておきましたので、参考までに』
「よしっ。ならばピークォドは人員を乗せ次第発進。ランディングゾーンで合流する。通信終了」
『了解っ!』
通信を終え、iDROIDをしまうとエルゼやお嬢様たちの方へと向き直る。
「ここから少し離れた地点に仲間がヘリ、あ~~。乗り物でやってくる。一度そちらに向かい、仲間と合流してから戻ってくる。お前たちはここで待っていてくれ」
合流は俺一人だけでいい、と思っていたのだが……。
「乗り物で来るのかっ!?それはいったいなんじゃっ!?見てみたいのじゃっ!」
お嬢様が目をキラキラと輝かせながら俺の傍ではしゃいでいる。どうしたもんか?とレイムへ視線を向けるが、奴は困ったように苦笑を浮かべるだけだ。 まぁ、正直な所傍にいてくれた方が守りやすい。それを考えれば仕方ないか。
「分かった。ならば俺から絶対に離れるな?」
「うむっ!」
「それと、念のためだがエルゼたちも来てくれ。いつまた、どこから襲撃を受けるか分からない」
「分かったわ」
3人を代表するようにエルゼが頷く。
「レイムは、護衛のそいつらとここに残っててくれ。傷はふさがっているが、今は休んでいろ。血も流しすぎているからな」
「分かりました。ならば、お嬢様の事、どうかよろしくお願いします」
「あぁ」
そう言うわけで、俺はエルゼたちとスゥシィお嬢様を連れて森の中を進んでいった。俺が周囲を警戒しながら戦闘を進み、後ろを歩くお嬢様の周囲をエルゼたち3人が固めている。
とはいえ、距離はせいぜい数百メートルだ。こちらの方が早くランディングゾーンの近くにたどり着いた。周囲を警戒しつつ、ランディングゾーンの傍の木陰に全員をしゃがませる。
周囲を一通り警戒した後、iDROIDを取り出しランディングゾーンを確認。よし、ここで間違いない。iDROIDをしまったその時、遠くから聞こえてきたそれは、ヘリの音だ。
「え?何?音が聞こえる?」
「獣の声、ではないでござるな?」
「でも、どこから?」
彼女達は皆、戸惑いながら周囲を警戒している。まぁ、無理もないか。やがてピークォドが目視可能な範囲まで近づいてきた。
「見えてきたぞ、音の正体はあれだ」
「「「「あれ?」」」」
俺が上空を指さすと、彼女達は異口同音の声を漏らしながら指の指し示す先へと視線を向け……。
「「「「えぇぇぇぇぇぇっ!?!?」」」」
絶叫した。まぁ無理もない。初見でヘリコプターを見ればな。
『こちらピークォドッ!ランディングゾーンに到着っ!』
そうこうしているうちに、ピークォドはランディングゾーン上空へと到着。ゆっくりと高度を下げてくる。 そして、俺の後ろではプロペラの風が巻き上げる砂から顔を守るように4人がこちらに背を向けている。
それを一瞥し、警戒しつつも俺はピークォドの傍へと駆け寄る。同時に、機体のサイドドアが開き、すぐさま中から兵士たちが下りてきて周囲を警戒する。そして、全員が下りると一人がパイロットに向けてサムズアップを行う。ピークォドのパイロットもそれに答えるようにサムズアップをすると、ヘリは瞬く間に上昇、離脱していった。
そして、周囲を警戒していた兵たちはすぐさま立ち上がると俺の傍に駆け寄ってくる。
「ボスッ!お待たせしましたっ!」
「あぁ、よく来てくれた。だがここに長居するのは得策じゃない。さっきのピークォドの姿を見られている可能性もある。すぐに移動するぞ」
「「「「了解っ!」」」」
すぐさま兵4人を連れ、俺はエルゼたちの所へ戻る。
「待たせたな。部下と合流出来た。馬車のところまで戻るぞ」
そう言って指示を出したつもりだったのだが……。
「ちょちょちょちょっ!ちょっと待ってっ!さっきの黒いあれ何っ!?」
肝心のエルゼは混乱していた様子だ。リンゼと八重も、状況が分からないからかぽか~んとしている。あのお嬢様はというと……。
「なぁなぁスネーク!さっきのあれはなんじゃっ!?なんなのじゃっ!?」
とても瞳を輝かせていた。が……。
「説明は後だ。さっきのは目立つ上に音も大きい。伏兵が俺たちに気づいて寄ってくるかもしれん。今は馬車に戻るのが最優先だ。行くぞ」
そう言って俺が歩き出すと、彼女らが慌ててついてくる。
「あっ!ちょっ!せめてこの人たちの自己紹介はっ!?」
エルゼが慌てた様子でついてくる。
「後だ。ここは戦場だ。そんな悠長なことをしてる暇はない」
そう言って、俺は彼女らに有無を言わさず、馬車へと戻った。
「スネーク様、そちらの4名が?」
「あぁ。俺の部下で、今回の追加人員だ」
「な、成程」
ライムも見たことのない装備の4人組に、引きつった笑みを浮かべていた。
その後俺たちは、新たに『アルファ』、『ブラボー』、『チャーリー』、『デルタ』の4名を加え、馬車と馬でその場を離れた。
俺はお嬢様の乗る馬車の助手席に座り、周囲を護衛の騎士と俺の部下2名が固めている。豪華な馬車の後ろを付いてくるエルゼたちの馬車。最後尾は部下2人が後方を警戒しながら続いている。
夜もツーマンセルを基本として周囲の警戒をつづけた。が、これと言った襲撃もなく。俺たちは無事に王都までたどり着いたのだった。
「無事にたどり着いたか」
俺は見えてきた王都、『アレフィス』を見ながらも一度息を付いた。とは言え、油断は出来ない。王都内でも暗殺者が待ち伏せしている可能性がある。王都アレフィスに入っても、俺たちは周囲を警戒していた。
王都にも色々区画があり、一般市民が多く暮らす区画と、金持ちが暮らす、いわゆる富裕層が多く住む区画は壁で区切られていた。道中には検問所らしきものもあるが、レイムとスゥの姿を確認すると、即座に通された。流石は公爵家の娘と家令と言った所か。 それでも兵士たちは、自分たち以上に物々しい俺たちを目にして、不安と恐れを抱いているようにも見えた。 だが、俺たちに色々説明する義務はない。
やがて、俺たちは富裕層区画にあって、周囲と比べても尚大きな屋敷へとたどり着いた。
「ここが?」
「はい、オルトリンデ公爵家のお屋敷になります」
なんとも巨大な邸宅だ、などと思いながら俺はあまりに大きなへと目を向ける。
その後、アルファたち4人は一度外に待たせて、俺はお嬢様、レイム、それにエルゼたちと一緒に屋敷の中へと通された。入って早々、豪華絢爛な内装と無数のメイドが俺たちを出迎えた。 まるでどこかの王族にでもなったような気分だ。
「スゥッ!」
「父上ッ!」
その時、前方の階段の上から一人の男性が駆け下りてきて、スゥシィへと駆け寄る。彼女の反応からして、父親か。 男は安堵した表情で娘のスゥシィを抱きしめた後、俺たちの方へと歩み寄ってきた。
「君たちが娘を助け護衛をしてくれた冒険者たちだね?」
「あぁ」
「であれば、礼を言わねばならんな。ありがとう。本当に、ありがとう」
そう言って男は頭を下げた。しかし身分の高い彼が頭を下げたからだろう。俺の後ろでエルゼやリンゼ、八重が驚いていた。が……。
「気にするな。頭を下げる必要もない。俺たちは彼女と一緒にいた家令に雇われただけの事。仕事を果たしたまでだ」
「そうか。であれば、当然報酬を支払わなければな。っと、その前に名前を聞いても?」
「俺は、傭兵組織ダイアモンド・ドッグズのリーダー、スネークだ」
「傭兵?という事は外に居る彼らは?」
「部下だ。襲われていた彼女達と合流したのは偶然だったんだが、警護を万全にするために呼び寄せ、ここまで護衛してきた」
そうだ。護衛と言えば……。
「あと、これを」
俺はポーチの中から小さな袋を取り出した。
「それは?」
「……戦死した7名の遺品だ」
「ッ、そうか」
男は俺の取り出した袋を、悲しそうな表情で受け取った。そして口を開き、中にあった血に汚れたペンダントを取り出した。
「……7名の、遺体は?」
「搬送は無理だったので、襲撃地点近くの平野に墓を作って埋葬してある。必要なら場所を教えるが、無理に遺族と対面させるのはおススメしない」
「と言うと?」
「……戦闘で大きな傷を負った者が殆どだった上、時間が経てば肉体は腐敗する。そんな状況で遺族と対面するのは、考え物だ。自分の夫や父、兄弟がそんな姿で眠っている所を、見たくない奴もいるだろう」
「……そうだな。ありがとう、スネーク君。遺族には、私からこれを直接届けよう。娘を守るために命を懸けてくれた、勇敢な者たちの遺品だからね」
「分かった」
「ともかく、娘を助けてくれた状況も聞きたい。どうだろう?お茶でもしながら話をしてくれないかな?」
「構わない。こちらも急ぎの用があるわけでもないしな」
「そうか。では、すまないがお茶の用意を」
「かしこまりました」
男はそう言って近くにいたメイドに指示を出す。
「っと、そうだ。まだ名前を名乗ってなかったね。私は『アルフレッド・エルネス・オルトリンデ』だ。改めて、娘を守ってくれた事、感謝する」
「あぁ」
俺は差し出されたアルフレッドの手を取り、握手を交わした。
その直後、俺たちはアルフレッドと共に屋敷の一角のテラスへ。アルファたちはとりあえず休んでおくように伝え、アルフレッドが別室を用意させたのでそちらで待機させておく。
で、そのテラスに向かう道中。
「ちょっと、ちょっとスネークッ」
「ん?」
後ろを続いていたエルゼから小声で声をかけれた。
「アンタ、ちょっとは敬語を使いなさいよっ。仮にも公爵家の相手なのよっ。それをため口ってっ。アタシ達の心臓に悪いんだけどっ」
「「うんうん」」
エルゼの言葉にリンゼと八重が小さく頷く。
「そうか、すまないな。もうこの話し方がすっかり染みついてしまっていた。まぁ、出来るだけ気を付けよう」
「お、お願い」
と、そんな事を言われつつもテラスに場所を移すと俺から公爵に状況の説明をした。
「そうか。君たちは王都に依頼で向かう途中、たまたま襲撃犯に遭遇したという事か」
「あぁ。本当に、偶然だった」
「であれば、君たちにその依頼を出した者にも感謝しなければな」
「そうか。ただ、本当に偶然と偶然が重なっただけだ。彼女、スゥシィ嬢の運がよかったのかもしれないな」
「うむ。……もし君たちが通りかからなければ、スゥは誘拐されるか、下手をすれば殺されていたかもしれない。そう思うと、背筋が凍る思いだ」
そう言って、難しい表情を浮かべる公爵。 そういえば、念のため伝えておくべきか。
「一応報告をしておくが、襲撃者の男を調べた。が、主犯に通じる証拠や書類などは分からなかった。念のため絵心のある部下に似顔絵を描かせてあるが、名前も分からない似顔絵だけで犯人の特定は難しいだろう。そこから更に依頼主の特定となるとな。仲介人を介して襲撃犯と接触していた可能性もある」
「そうか。すまないね、そこまで調べてもらって」
「気にするな。自主的にやった事だ。……それより、犯人の目ぼしは付いているのか?必要なら部下に言って怪しい人間を内偵させるが?」
「ほう?そんなことも可能なのかね?」
「俺の部下は優秀だ。そういった偵察や諜報の訓練も積んでいる。……それで?どうだ?」
「その申し出はこちらとしてもありがたいのだが、残念な事に下手人には心当たりがない。いや、正確に言うのであれば『多すぎて特定できない』、というべきかな」
「どういうことだ?」
「知っての通り、私の立場は現国王の弟、スゥは兄上から見れば姪っ子だ。そして、だからこそ兄上への脅迫のネタとして兄上を目の敵にする連中から見れば、スゥは絶好の目標なんだよ。加えて私は王の弟だ。私の存在を邪魔に思う者もいるだろうから、そちらの線も捨てきれない」
「……現王に敵は多いのか?」
「少なくはない、というべきかな。『ミスミド王国』、という国は知っているかな?」
「聞いたことはある。多種多様な、人に似た人ではない動物の特徴を持った人型種族、亜人の国だと」
ミスミドについては、俺も概要を知っていた。部下が調べた情報を閲覧したので、概要程度だが。
「そうだ。現王である兄上はミスミドとの同盟を考えているんだが、貴族の中には亜人を見下し、同盟に反対している者もいる。そういった類の連中が犯人の可能性がある」
「下手人の特定は難しい、か」
「残念ながらね」
そう言って息を付く公爵。どうやら敵は多いようだな。しかしこうなると問題の根本的な解決には至らないという事だ。
犯人を特定し逮捕なりなんなり出来なければ次の手に打って出てくる可能性もある。
「アルフレッド公爵、一つ提案があるんだが、良いか?」
「ん?何かね?」
「もしよければ娘であるスゥシィ嬢の護衛に俺たちダイアモンド・ドッグズを雇う気はないか?」
「何っ?本当かねっ?」
俺の言葉に少し興奮気味に問い返してきた。
「もちろん仕事である以上、報酬をお願いすることになるだろうが、正式に契約を結んでもらえるのならすぐに部下を完全武装でこちらに寄越そう。首謀者が捕まっていない以上、再び襲撃される恐れもある。それを考えれば備えは必要だ」
「もっともな言葉だね。しかし、構わないのかい?」
「俺たちは傭兵だ。必要とされるのならばそこへ駆けつけ、依頼を達成するために最善を尽くす。それだけだ」
「なんとも頼もしい限りだな、ありがとうスネーク君」
「仕事だからな。気にするな。とにかく、こちらはいつでも依頼を受ける用意がある。必要だと判断したのなら、いつでも相談に乗ろう。それと当面の居場所も良ければ教えるが?」
「それはありがたい。であれば、あとで話の席を設けさせてもらうとしよう」
と、話をしていると。
「父上」
「おぉスゥ」
先ほどまでとは違う、ドレス姿に着替えたスゥシィ嬢がやってきた。
「エレンとは話せたかい?」
「うむ。しかし、心配させたくないので襲撃された件は黙っておいたのじゃ」
そう話をして公爵の隣の席に腰を下ろすスゥシィ嬢。しかし。
「失礼だが、そのエレンというのは?」
「あぁ、私の妻でありスゥの母の事だよ。すまないね、恩人が来ているというのに顔を見せず」
「いや、別に気にしてる訳ではないが、何か問題でも?」
「実は、妻は目が見えなくてね」
目が見えない?失明しているのか?
「それは生まれながらの障害か?」
「いや。五年ほど前に大病を患ってね。何とか一命はとりとめた物の、後遺症で視力を失ってしまったんだ」
成程。そういうことか。
「魔法での治療は、されなかったんです、か?」
「無論行ったよ。国中の治癒魔法の使い手に声をかけた。しかし、無理だった。彼ら曰、怪我などの肉体の損傷は治癒する事は出来ても、病気などによる後遺症には効果が無いそうだ」
「成程。魔法も決して万能ではない、という事か」
とつぶやいていると。
「スネーク殿。何か手立てはないのでござるか?確か拙者とお会いした時、軍医だったと聞いたのを覚えているのですが」
「確かに軍医としての経験はあるが、流石に失った視力の回復となると簡単じゃない。それにどんな理由で視力を失ったのか、何が原因なのか。原因を特定したとしてそれを修復、もしくは取り除く術はあるのか。あらゆる情報を収集してからでないとそもそも判断が出来ない」
「そ、そうでござるか」
八重は俺の答えを聞くとがっくりと肩を落とした。
「ハァ、おじい様が生きておられれば……」
「ん?どういうことだ?」
その時聞こえた、スゥシィ嬢の言葉に俺は興味を惹かれ問いかけた。
「実はね、エレンの父上、つまりスゥの祖父は特殊な魔法の使い手だったんだよ。この魔法は、体の異常を取り除く事が可能だったんだが。そもそもスゥが一か月もの間、王都を離れていたのも何とかしてその魔法を身に着けようとしていたからなんだ」
「成程。それで祖母の屋敷に、という事か。それで?」
「スゥは何とか魔法を取得するなり、解明するなりと頑張ってくれているのだが、その魔法というのが無属性魔法でね。個人魔法とまで言われる無属性魔法はただ一人が使えると言われている者だ。今も類似した効果を持つ無属性魔法の使い手を探しているんだが……」
どうやら成果は思わしくないのか、公爵は項垂れスゥシィ嬢も悲しそうな表情を浮かべている。が、逆にエルゼ、リンゼ、八重の3人は驚愕の表情を浮かべていた。
「アルフレッド公爵、それについては一つ朗報がある」
「ん?なんだね?」
「どうやら俺は、様々な無属性魔法に適正があるようだ」
「……えっ!?」
俺の言葉に、数秒してスゥシィ嬢が反応する。俺は、残っていた茶を飲み干し、席を立った。
「その祖父が使っていた無属性魔法の詳細な情報を教えてくれ。それと、そのエレンという奥さんの所へ連れて行ってくれ。……これも何かの縁だ。やれるだけの事をやってみよう」
どうやら、まだ出来る事があるようだ。ここまで来たのなら、やれるだけの事をやろう。そうして、俺はエレンという女性の元へと向かうのだった。
第5話 END
感想や評価などしていただけるとやる気に繋がりますので、よろしくお願いします。