異世界はダイアモンドドッグズとともに   作:ユウキ003

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更新が遅くなり大変申し訳ありません。最近は『カクヨム』という小説を書いて投稿すると、広告収入が得られるサイトをメインにしておりました。……まぁそれで生活できるレベルの収入を得られてる訳ではないんですが。

 とにかくこれからも時々更新していくので、よろしくお願いします。


第6話 治療行為

 謎の襲撃者を倒した俺たちは、襲われていた公爵家の令嬢、スゥシィを警護する事となった。王都へ戻る途中だったスゥシィとその家来であるレイムに雇われた俺はヘリ、ピークォドで部下を呼び寄せ、警護のチームを編成するとリンゼら、スゥシィらと共に王都へと向かった。幸い、道中において第2の襲撃は無かったものの、オルトリンデ公爵家にたどり着いた後、話をしていた俺たちはスゥシィの母が大病の後遺症で失明していた事を知る。そして俺の中にある無属性魔法への適正で彼女を治療できるか、試す事になった。

 

 

「こっちだ」

 今、俺とエルゼたちはスゥシィを連れたオルトリンデ公爵に案内され、屋敷の中を歩いていた。彼の妻、エレン夫人の居る部屋に向かっている。

 

「スネーク殿。こういってはなんだが、妻の、エレンの目は治せるのだろうか?」

「……本音を言えば、分からない」

「分からない?」

 

 俺の曖昧な答えに戸惑ったのか彼は聞き返してきた。

「スゥシィ嬢より教えられた効果通りなら、無属性魔法の『リカバリー』で何とか視力を取り戻す可能性はある。だが、失明してから5年という時間が流れてしまっている。軍医としての経験上、確証が無い現状では安請け合いは出来ない。という事だ」

「そうか。……ともかく、やれるだけの事を、やってみてくれ」

「あぁ。最善を尽くそう」

 

 やがて通されたのは一つの部屋。そこは薄暗く、部屋の奥にあるベッドの上に一人の女性が腰かけていた。あれがエレン夫人か。

「あら?お客様ですか?」

 

 夫人は足音で俺たちに気づいた様子だ。だが、やはりと言うべきかその視線は定まっておらず、今も何もない場所を見つめるばかりだ。夫人に公爵が説明し、スゥシィ嬢が隣に腰を下ろす。

 

「スネーク殿、頼む」

「あぁ」

 

 公爵の言葉に頷くと、俺は夫人の前で膝をついた。

「失礼します」

 そう言って、夫人の目元に右手を翳す。さて、上手く行くかどうか。

「『リカバリー』」

 

 俺が魔法の名を口にすると、右手から淡く白い光が放たれた。それを確認し、俺は後ろへ下がる。すると、しばし瞬き、やがて夫人の視線が公爵やスゥシィ嬢へ注がれる。

「見える、見えますっ!あなたっ!スゥッ!」

「あぁエレンッ!」

「母上ェッ!」

 笑みを浮かべ、ボロボロと涙を流しながらしっかり夫である公爵を見つめる夫人。公爵やスゥシィ嬢も大粒の涙を浮かべ、傍に控えていたレイムや、何故かエルゼたち3人まで泣いている。

 

「やったわねスネークッ!」

「あぁ、成功だ」

 治療できるか確証は無かったが、これでとりあえずは何とかなったな。俺は笑みを浮かべるエルゼの言葉に静かに頷いた。

 

 その後、公爵たちが落ち着いた頃を見計らって、念のため検査をすることにした。

 

「のぉスネーク。なぜ検査をするのじゃ?母上の目は治ったのであろう?」

「確かに視力は戻った。しかしだからと言って何も異常が無いと判断は出来ない。とりあえず、一通りの検査はさせてもらう。公爵も、構わないな?」

「あぁ。軍医だったという君の手で調べて貰えれば問題ないだろう。よろしく頼む」

「そうか。なら、早速だ」

 

 その後俺は、一通り夫人への検査を行った。ライトを当てて瞳孔の動きを確認したり、視界に何か違和感や異物が映って見えないかなどの問診。色のある物を持ってきてもらい、ちゃんと色の判別が出来ているかの色覚判断。離れた位置の指の数が見えるかなど、一通りの検査を行った。

 

「ふむ。どうやら視力は正常なようだ。極度に視力が落ちている様子も無いな。この分なら眼鏡などでの視力補助も必要ないだろう」

「そうか。ありがとうスネーク殿」

「ただ、念のためしばらくは屋内で生活した方が良いだろう。光に慣れていない中で無理に外出するのは、あまりお勧めしない。もしそれでも外出が必要なら、日傘やヴェールを使って目元を守った方が良いだろう。それと、少しでも違和感を覚えたらまた俺に連絡をくれ。生憎俺は専門家ではないが、部下に詳しい奴がいる。そいつに診させよう。それと夫人も。違和感を覚えたらすぐに公爵か俺に相談するように。病というのは発見が早いほど良い。悪化してからでは手遅れになる可能性もあるからな」

「はい。ありがとうございます、スネークさん」

 

 幸い、視力も戻ってそれ以外の問題も無し、という事で最後にそう言った注意や指示だけを伝えて、俺はエルゼたちと共に一旦部屋を後にした。

 

 今度は応接室らしい部屋に通された。

「スネーク殿、貴殿には大変世話になった。なんとお礼を言ってよいか」

「たまたま知り合った相手の問題を、偶然俺が解決できたからそうした。それだけの事だ。スゥシィ嬢の一件も、偶然の産物だからな」

「そうか。しかし、謝礼はしっかりさせてもらおう。レイム、あれを」

「はっ。かしこまりました」

 

 公爵が指示を出すと、レイムが銀盆に乗せて大きな袋を二つ。更に小さな箱を持ってきた。

「まずはこの袋を。スネーク殿を含めた君たち4人に対する、娘の警護への報酬だ」

 そう言って差し出された袋を受け取ったのだが……。

「ん?かなり重いな」

 思っていた以上に袋が重たかった。額を聞くべきか迷っていると、公爵が口を開いた。

 

「その袋の中には白金貨が40枚入っている。君たちで分けてくれたまえ」

「「「えっ!?!?」」」

 額を聞いたエルゼたちが驚いていた。しかし無理もない。確か……。

「白金貨と言えば、金貨のさらに上の物だろう?それを40枚も。良いのか?」

「娘の命に比べればこれくらい、どうという事はないよ。それに、人の命に値段は付けられない、というだろう?スゥが無事に帰ってきてくれたのだ。娘に何かあれば、いくら金を積もうと命までは買えない。だからこれは、そんな価値すら付けられない物、大事な娘の命を守ってくれた私からのお礼の気持ちだ。ぜひ受け取ってくれ」

「……分かった。ならば素直に受け取っておこう」

 

 ここまで言われては、拒否する理由もない。俺は素直に袋を受け取った。が、エルゼたちは額の大きさに驚いたまま固まっていた。

 

「さて、次はこっちだ。これはスネーク殿の部下への報酬と、加えて今後、スゥの護衛を頼みたい。中にはその前金が入っている。報酬として今の袋と同じ白金貨40枚。それに依頼の前金として白金貨40枚の、合計80枚だ」

「「「「えぇぇぇぇぇっ!?」」」」

 

 最初の袋の、更に倍の額にエルゼたちが絶叫している。しかしその反応を見るに、相当な額なのだろう。それだけ出されたのでは、こちらも答えなければな。

 

「分かった。なら契約は結ぼう。内容は身辺警護で構わないな?」

「うむ」

「ならば、こちらから後追加で16人、部下を配置しよう。4人一組を1つの小隊として、5つの小隊を編成。1つを予備の隊として、残りの4つの小隊にそれぞれ、スゥシィ嬢の身辺警護、屋敷の防衛、公爵の護衛、夫人の護衛をさせよう」

「ッ。構わないのかい?」

「大層な前金を貰ったんだ。それに見合う仕事はさせてもらおう」

 少し驚いていた公爵だが、俺の方は言葉通りだ。貰った金に見合う仕事をさせてもらうだけだ。

 

「そうか。改めて、ありがとう。とても心強いよ」

 

 公爵は満足そうに笑みを浮かべると立ち上がり、俺に握手を求めてきた。俺はそれに応じ、右手で握手を交わした。

 

 その後、公爵家のレリーフと俺たちの名前が彫られたメダルが渡された。これを持っていれば検問所は素通り、貴族の身分の者が使える施設も使え、更に言えば公爵家が後ろ盾になっている証だそうだ。これもまた、大層な物だな。

 

 ちなみにメダルには単語が刻まれており、俺のには『傭兵』と書かれていた。まぁその通りだからな。特に問題は無かった。

 

 

 その後、公爵と護衛任務についていくつか話をして内容を詰めていった。アルファたち4人にはこのまま屋敷に残ってもらい公爵たちの護衛を続行。残りのメンバーについては後日合流、という事にした。

 

これでとりあえず全て終わり、最後はスゥシィ嬢やエレン夫人、公爵に見送られながら俺たちは公爵家を後にし、本来の王都に来た目的、つまり手紙の配達をして、返事を貰った。これで依頼は終了だ。

 

「さて、これでとりあえず俺たちの仕事は終わったな」

「そうね。これからどうしよっか?」

「とりあえず数日は王都で過ごすとして、その後はリフレットの町に戻るしかあるまい?この馬車も借りものだからな、返さなければ」

 エルゼの言葉に答える。が、そうだった。

 

「そうだ。八重」

「何でござるか?」

「お前はどうする?とりあえず王都に来るのが目的だったのだろう?」

「はい、当面の予定はそうだったのでござるが、一つスネーク殿にお願いしたい事があるのでござる」

「ん?なんだ?」

 

「以前助けて頂いた時もそうなのですが、スネーク殿は戦い慣れている様子。どうか拙者を鍛えて欲しいのでござるっ!」

 八重は真っすぐ俺を見上げながら真剣な表情をしていた。しかし……。

「鍛える、と言うが俺が教えられるとしたら、精々が近接格闘戦やナイフを使った戦闘術が関の山だぞ?俺と八重では戦闘で使う武器が根本的に違いすぎるしな」

 

 俺は、戦闘では基本的に銃を使う。CQCやナイフで戦う事こそあるが、刀をメインに戦う俺と八重ではバトルスタイルが違いすぎる。正直、教えられる事があるとは思えんが。

 

「それでも構わないでござるっ。スネーク殿の顔の傷などからしても、歴戦の戦士である事は想像に難くありませぬ。そんなスネーク殿の元に居れば、何かを学べる気がするのでござるっ!どうか、お願いいたすのでござるっ!」

 そう言って頭を下げる八重。

「………分かった、良いだろう」

「ッ!よろしいのでござるかっ!?」

「こうして出会ったのも何かの縁だ。ただし、俺からお前に、確実に何かを教えてやれる保証はないぞ?それでも構わないんだな?」

「もちろんでござるっ!」

 八重は笑みを浮かべながら頷いた。

 

 

 こうして、何の因果か旅の仲間に八重が加わる事になった。まぁ、エルゼとリンゼも彼女と一緒にまだ旅が出来る事を喜んでいるようだし、良かったと言えば良かったのだろう。

 

 

 翌日。俺たちは王都を観光していた。ちなみに早朝の内に、王都郊外にピィークォドで残りの護衛メンバーをピストン輸送し、今朝には公爵と出会い部下たちを紹介し、護衛を任せた。

 

 護衛部隊は全員戦闘班のメンバーの中から編成した。全員が銃火器、ライフルやピストルで武装している。それと、町中ではまさか迷彩服で動き回る訳にもいかないので、公爵に頼んで俺と似たような衣類を用意させた。

 

 大き目のコートを羽織れば服の上に来た防弾ベストやホルスター、ナイフケース、ポーチなどを隠せるからだ。スゥシィ嬢や公爵、エレン夫人が出かけるときなどは、この隠密スタイルで周辺警護を密かに行う予定だ。

 

 ともあれ、これで護衛部隊の方は準備が出来た。そして肝心の今は、というと。今はエルゼたちと町中を歩いていたのだが……。

「ん?」

 ふと、町中を歩いていると自然と挙動不審な人物に目が行った。それは狐の物らしい耳と尻尾を備えた獣人の少女だった。獣人については資料でしか存在を知らなかったが、王都ではそこそこ見かける。なのであの獣人の少女自体は珍しくないのだが、問題は彼女の行動だ。

 

 しきりに周囲を見回し、不安そうな表情を浮かべている。……迷子だな、見るからに。

「スネークさん?どうしたんですか?」

「あの子がどうかしたの?」

 俺が足を止め、獣人の少女を見ている事に気づいたのか、リンゼとエルゼが問いかけてくる。

「3人とも、あの子に声をかけてやってくれ」

「「「え?」」」

「しきりに周りを見回し、不安そうな表情を浮かべている。迷子か、そうでないにしても何か問題が起こっているのだろう。だから頼む」

「それは別に良いけど、なんでスネークが直接声を掛けないのよ?」

 

「いや、こんな顔面傷だらけで髭面の男がいきなり声をかけてきたら、ただでさえ不安なのに恐怖で逃げ出すんじゃないかと思ってな」

「「「た、確かに」」」

 

 自分で言うのもなんだが、俺は強面だからな。下手をすると泣かれるかもしれん。3人もそれが分かったのか、納得した様子で頷くと彼女に声を掛けた。俺はそれを少し離れた所から見守っていた。

 

 が、やがてエルゼがヒラヒラと俺を手招きした。なので慎重に近づいていく。リンゼと八重が話を聞いている近くで、エルゼから小声で話しかけられた。

「どうやらスネークの読み通りみたいね」

「と言うと?」

「あの子、『アルマ』って言うみたいなんだけど、やっぱり迷子みたいなのよ。連れの人とはぐれちゃったみたいで。事前に合流する場所を決めてたらしいんだけど、それも分からないみたいで」

「そうか。その合流場所については聞いたか?」

「えぇ。ルカって名前の魔法屋らしいわよ?」

「成程。少し待ってくれ。調べてみる」

 

 ここは往来のある場所だが仕方ない。俺は懐からiDROIDを取り出すとマップを開いた。マップには諜報班に属する部下たちが集めた情報が記されている。どこにどんな店があるかなどもな。

 

「ッ、あの方は?」

 その時、狐の獣人らしい少女が俺に気づいたようだった。

「あぁ。あの人はスネークさんと言って、私たちの冒険者仲間なんですよ」

「とても頼りになる人でござるよ」

 

 アルマという少女と話すリンゼ、八重の会話を聞きつつ、iDROIDのマップを調べていくと。

「ん、あったぞ。ルカという魔法屋だ」

「え?ホントスネーク?」

「あぁ」

 

 エルゼの言葉に頷きつつiDROIDをしまう。

「俺が案内するから、3人は彼女と一緒に付いて来てくれ」

「分かったわ」

 

 場所が分かれば問題ない。俺が先頭を歩き、アルマを連れた3人が後ろに続く。しばらく歩いていると、前方に目的の店が見えて来た。そしてそのすぐそばで、アルマと同じような耳と尻尾を持った女性が不安そうに周囲を見回していた。もしや?と思ったのも束の間。

 

「お姉ちゃんッ!」

「ッ!アルマッ!」

 

 案の定だったか。アルマは俺たちを追い越して、その人物へと走り寄って行った。彼女の方もアルマに気づいて笑みを浮かべると走って来たアルマを抱きしめた。

「もうっ、心配したのよ……っ!?急にいなくなるからっ」

「ごめんなさいお姉ちゃんっ。でもエルゼさんやスネークさんに連れてきてもらったのっ!」

 

 アルマがそう言うと、姉らしい女性が俺たちに気づいた様子でアルマを放し、深く頭を下げてきた。

「この度は妹が大変お世話になりました。なんとお礼を言って良いか」

「気にしないでくれ。たまたま迷子になっていた彼女を見つけて、放っておけなかったから助けただけだ。それではな」

「あっ!せめてお礼にお茶でも」

「必要ない。ほんの人助けだ」

 

 踵を返して歩き出した俺は彼女に背を向けたままそう言いつつ、いらんと言わんばかりに手を軽く振る。そして、エルゼたちも一言二言言うと俺の後に続いた。

 

 

 その後、女性陣の要望もあって王都での買い物を付き合った。相変わらず女性の買い物は量が多いな。などと考えながらも、彼女達の荷物持ちなどをしてやった。

 

 買い物も終わり、とりあえず俺たちは王都を出発した。ある程度王都を離れれば、俺が無属性魔法の本で見つけた、離れた地点を一瞬で移動する『ゲート』という無属性魔法を試すつもりだ。

 

 それと、王都に居る護衛部隊のメンバーは全員が俺の物とは異なるiDROIDを装備していて通信が可能になっている。いざとなればゲートやピィークォドですぐに駆け付ける事も出来るだろう。

 

「王都でも色々あったものだな」

 

 俺は馬車の荷台で揺られながら、遠ざかって行く王都を見つめつつそんな独り言をこぼすのだった。

 

     第6話 END




楽しんでいただければ幸いです。

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