ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「大丈夫か?」
「ええ」
「ちょっと待て、今治す――」
「それは後でね」
「え?」
「説明するのに便利だからよ」
「……あッ、クアークなのに傷ついてる!?」
クアークが僅かながらも怪我をした。
その事実に驚きを隠せない。
「ふむ? それほどまでに驚くということは実力以上に怪我をしたらおかしいということか。つまり【絶対防御】【超速再生】【不死身】などの固有能力の中でも特殊な能力持ちということだな」
「そう、たしか許容範囲内ならありとあらゆる攻撃が無効化される固有能力だったはず」
「できることをわかりやすく簡単に説明すればそうなるわね」
「なるほど。たしかにその傷は驚異の証明には充分だろう」
あまりこういう傷ついてる姿ってのは好きじゃないから早く治したいが仕方ないだろう。
幸い掠り傷程度だし。
「ちなみにそれは攻撃を受けた部分の一部がそうなったのか? それとも避けたけどギリギリ受けてその部分が傷になったのか?」
「直撃はしなかったわよ。避けたんだけど避けきれずに掠めちゃったの」
「なるほど。治りきらなかったワケじゃなくて純粋に防御力を突破された感じか」
直撃していれば命が危うかったという事実に遅いながらも肝を冷やす。
そして無事という事実に安堵し、相手をしたゴーレムたちのことを詳しく聞いた。
「ふぅっふう、外寒いッ」
「確かに風が少しあって寒いわね」
「僕としては普通の環境に戻って来れて心地良いがね。麻痺していたとはいえ解放されると通常の環境の素晴らしさが身に染みてわかるよ」
「言われてみれば身体が軽いな、全体的に」
坑道内で感じていた束縛感にも似た重苦しさ。
外に近づくにつれてそれは薄らいでいたが、外に出た途端明確な解放感がある。
それは強烈な向かい風の中は知っている時に突然向かい風がなくなる、そんな感覚だ。
「てかあれってさ、報告して調査して~って日を置くのか?」
「すぐよ」
「こんな時間に人集まるか?」
空を仰げば僅かに欠けた臥待月。
街は眠らないが世は暗い。
「……って、あ、そうか。そういえばこの街って常に誰かしらいるんだっけ?」
「そういうこと」
「ふむ、やけに活気ある街だとは思っていたがそういうことだったか」
どうやら知らずにいたらしいヘルベルトに軽くノースミナスのことを解説しながらギルドへ向かう。
すると
視線を集める理由はないはずだ。
三人ともおかしな行動はしておらず、クアークがパーティを組んでいるのは周知の事実。
ヘルベルトはフードを被っていて怪しいには怪しいが開拓兵では多くはないが珍しくもない。
……なんでだ?
クアークが逆ハー作ってるとでも思われてるのか?
そういえば確かに視線がクアークに……ああ、そういう。
チラリとクアークの顔に目を向けるとようやくそこで注目の理由に気づく。
さっき言っていたようにクアークが怪我をすることは基本的にないのだ。
そんな人間が僅かとはいえ怪我をした状態で帰ってくれば注目されるし何事だとも心配する。
「よう……って、どうしたんだその面!?」
「ああ、ちょっとヤバめのヤツと遭遇しちゃったのよ。で、その報告とみんなで倒しましょうって相談しに来たの」
「ヤバめ……五五か?」
「ええ」
男の大声で向き、クアークの怪我で加速していた注目は五五という単語で一気にどよめきだす。
が、それは刹那的なモノで。
開拓兵としてこの場のほぼ全員が状況を朧気ながらに理解しているのか即座に静まり、理解していない開拓兵も周囲に影響されて状況は理解できずとも空気感は理解した。
「強化されてるたぁ聞いていたが……そんなにヤベエのか?」
「普通の、見たことあるのが相手なら一緒に組んでる開拓兵歴一ヶ月と少しのヒイラギでも倒せたわ。けどその中に三種、アタシでも見たことのないタイプのゴーレムが混じってた。そいつにやられちゃったのよ」
「新種だと!?」
何かの間違いではないかと、一人の男がこの街周辺に出るモンスターを記した図鑑を持ってくるがクアークはハッキリと首を横に振り、周囲の開拓兵たちは即座に考察とクアークからの情報精査を行う。
質問に対して即座に返答するクアーク。
瞬く間に作戦が立てられ、俺の理解が追い付かないまま話が進んでいた。
やべぇ……今どういう話してるのか全くわからん。
単語単語はわかるのに会話のテンポが速すぎて全員のセリフを脳内で映像化できんぞ……。
みんな、特に中心で話し合ってる人たちは全員理解できてるってことだよな?
トップ勢レベル高すぎねえか?
開拓兵としての圧倒的歴の差に驚愕。
俺にしては珍しく芽生えていた自信があっと言う間に崩れ落ち、だが代わりに高揚と羨望が湧き上がっていた。
いつか俺もあの場に立ちたい、と。
そしてまだ見ぬ遠征の領域へと踏み入るのだ。
そう考えると最ッ高に胸が高まり、ニヤけが止まらない。
「何をしているのだね、君は……」
そうしているとヘルベルトから声がかかる。
性格的に俺があの場に混ざりに行かないのが不思議なのだろう、俺の顔を覗き見て、呆れたような声音でそう呟いた。
「いやさ、ワクワクするじゃん?」
「何にだね」
「こうして街の危機があって、もしかしたら死者も出てるかもしれない時に不謹慎かもしれないけどさ……みんなで力を合わせて強大な敵に立ち向かうってのがなんか嬉しくて」
「……というよりも君は戦うのが楽しみなだけだろう」
「ま、それもある。あの肌から芯まで突き刺すようなスリルは……最ッ高に生きてるって感じがする」
「ふッ、それは僕も理解できる。他を喰らい、他に喰らわれる、その刹那の感覚というのは得も言えぬ快感があるのだ」
多分前の世界で、日本でこんなことを言えば狂人扱いされるのだろう。
けれど、俺は、それでも、戦いが好きだ。
本質を受け入れた『獣』として戦い、そして本質に抗う『理性』を持ち、矛盾を尊ぶ『人間』として生きる。
それが今のところの俺らしい生き方というヤツだ。
「
「確かに我々は魔術至上主義ではあるが、それは魔術が一番と思っているだけでそれ以外を蔑視しているワケではない。何かが優れているということとそれ以外が劣っているというのが決して結びつかないのは子どもでもわかることだ」
「そうだな。……ところで
「普人種とそう大差はない。我々は老化が遅いだけで成長自体は通常速度で行われるゆえおおよそ肉体の成長が止まる一六ほどが成人とされる」
「なるほど」
じゃあマユゲってアレで成長止まってるのか……。
胸はデカくて背は低いって、かなり特殊だなぁ。
まあ本人はそこまで気にしてないみたいだったし良いけど。
「でもまあ、なるほどな。こういう考えもいるにはいるのか」
「自分だけだと思って不安だったのかねぇ?」
「……揶揄ってくれるな」
「こんな世界なのだ、戦いを楽しむ者がいるのは当然のことだ。戦いを憎しむよりはよほど健全だとも」
「そうなのか?」
「そもそも生物とは基本的に戦い、奪い、殺し合うことで生き残るモノだ。そこに意思がある限り真に平和な世界などなく、戦いは起こる。もしそれを無視して戦いから目を背ける者がいるとすればそれは自分の本質を見失っているに過ぎないからね」
「本質……人間は生物で、生物としての本質は戦うこと、か」
もし博愛主義者にそう言ったらなんとも争いが生まれそうな言葉だ。
まあそうなったらその時点で排他的、博愛主義者は主張に自ら穴を開けることになるだけだろうけど。
「お~い、二人とも! アンタらも戦うんだからちゃんと話聞きなさいよね!」
「あいよ」
「ああ」
さてさて、ちょっとばかしこの街を護る戦いをしてきますか。
判断基準の中心が魔術ではあるものの良いモノは『良い』、悪いモノは『悪い』と認識してそれを判断する際はあまり色眼鏡を掛けません
ただ一度「こうだ」と判断するとその対象には長期的に色眼鏡が掛かることが多いです
そしてそれ故に相手のことをロクに知らず、ロクに知ろうともせずに差別する普人種に嫌気が差して引きこもったという歴史的背景があります
ヒイラギが仲良くできたのは見た目は普人種とほとんど同じながらも異世界人だからです
この時代、
ちなみに作者は人間の本質を矛盾ゆえの美しさと認識しています
セリフと行動が一致しない人間という種族が基本的には自分含めて嫌いですが、それゆえにここまで発展したのもまた事実
そのためその矛盾含めて生物としての美しさとして認識しているワケですね