ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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 【総合評価】100、ありがとうございます!


第一〇三話 坑道での休息

「…………誰?!」

「なんだ少年、俺のことを知らないのか? 不勉強な奴め!」

「知らんし……」

「ならば憶えておけ! 俺がッ、俺様が夜の帝王!! アァァァァァァァリックゥゥゥゥッ・ユリシィィィィィィィィズッ! だ!」

 

 お、おう……左様で……。

 

「ウル!? お前なんでここにいる!?」

「フハハハハハッ、そんなもの決まっておろう! 貴様らに俺様の最高にカッコいい姿を見せつけてほめたたえさせるためよッ!!」

「なんでもいい! アイツらを助けろ!」

「ハッハァッ! よかろう! 任せろ!」

 

 アーリック・ユリシーズと名乗った男は余裕そうな笑みを浮かべるとどこからともなく剣を生み出し、軽い調子でモンスターたちを一気に薙ぎ払った。

 

「す、スゲェ……」

「むッ!? そうだぞ少年! 俺は途轍もなく素晴らしく、偉大な男だ! そうッ、夜の帝王だからな!! 気軽にウルと呼べ! そして少年、お前の名前は?」

「ひ、ヒイラギです」

「ヒイラギ! 敬語は要らん! 間に合ってるし気持ち悪いからな!」

「お、おう……」

 

 なんというか……本当に凄いな。

 てかうるさくないのに声デカく感じるし……。

 

 ハッキリとした発音。

 普通ながらも堂々と真っすぐ発された声は不思議と大きく感じる。

 その自信の表れは呆気にとられると同時に尊敬もできた。

 

「待ってくださいよアーリックさぁんッ!」

 

 後ろの通路から複数の足音とともに少し高めの声が響く。

 短い茶髪の少女か少年かわからない容姿のその人物は大量の荷物を背負っていて、ともにやって来た者たちも同様に大きな荷物を背負っていた。

 そしてその姿には見覚えがある。

 ギルド内で何度か見かけているし、一部は会話をしたことすらある。

 つまりは開拓兵だ。

 

「ウルスラァッ! メンドイことは任せたッ!」

「またですか!?」

「頼りにしてるぜ!」

「……もぉ~~ッ!!」

 

 ウルスラと呼ばれたそいつは複雑そうな表情で一緒にやって来た開拓兵たちに軽く声をかけ、そしてその次に俺たちの方へと視線を向けた。

 

「えっと、簡単に言えば増援です。偵察の方がこの規模は長期戦になると言っていたので助力に来ました! 第二陣と代わるためにもうしばらく耐えてください!」

「ありがてぇっ!」

「マジか!?」

「お前らもう少し踏ん張りやがれ!!」

 

 死なない程度に残りの体力を吐き出しきるつもりなのか周囲の士気が一気に上がる。

 俺も気が楽になったからか、体力温存をあまり考えなくて良くなったからか一気に体が軽くなった気がした。

 

「よう、お疲れさん。お前の声結構遠くまで響いてたぜ」

「え……」

「バハハッ! 気にすんな、そういうこと言える奴は少ない。俺ら自身はやらねえし言わねえがそういうのは嫌いじゃないぜ? ま、それはそれとして笑わせてもらったがな、バハハッ」

「恥ずかしッ」

「恥じるな恥じるな。どんな考え持ってようがそれ貫いて生き延びりゃ勝ちってモンだ。だから強くなれ、そして今は俺らに任せて休め」

「……ありがとうございます!」

 

 笑い方がちょっと特徴的で、それで良い人だ。

 聞かれてたのは恥ずかしい……いや、恥じちゃダメなんだったな。

 最後までは誰にも結果はわからないし、誰かが失敗したとしてもその考え自体がダメって証明にはならない。

 この国じゃちょっと変わった考えを持っても誰も笑わないんだろう。

 だったら恥じちゃダメだ。

 戦線崩壊させかけたけど……それとこれとは別ってことで。

 

「お疲れ様、ヒイラギ」

「! おう。そっちこそお疲れ様、クアーク」

 

 お互いの無事を祝って拳を合わせる。

 

「……流石に探索後にまたやるってのはキツイなぁ」

「ね。もうヘトヘトよ」

「お互い汗で汚れまくりだ」

「血で汚れないだけマシよ。……って、なんだか手とか指先とかボロボロだけどどうしたの?」

「凍らせるために触ってたら摩擦でこうなったんだな」

 

 言われて気づいたが指先が酷く擦れている。

 度重なる接触で皮が捲れ、千切れ、血すらも滲んでいた。

 意識されたからか、少しずつジンジンと指先が痛みを訴える。

 

 っぁ~ッ、沁みる!

 水が沁みるぅッ!

 

 汚れを洗い流すための水が痛みを加速させた。

 だがそれさえ済んでしまえばすぐ治せるから苦痛は一瞬で済む。

 

「繰り返せば硬くなるから我慢ね」

「ああ。……ああ、ヤベ、疲労と安心感で思考が働かん」

「流石に経験の浅いヒイラギには負荷が強かったみたいね」

「もう少し……イケると思ったんだが……情けねぇ……」

「そんなことないわよ。ヒイラギは自分にできることを精いっぱい頑張ってたじゃない」

「……見て、ないだろ……」

「ふふ、バレた?」

 

 前線で新種と戦っていたクアークが雑魚と戦っていた俺のことを見れるワケがない。

 知ることができたとして声だけだ。

 

「みなさ~ん、今から食事を作りますので少々お待ちを! ……それと手の空いている方は拠点の設営をお願いします!」

「……やれやれ、人使いの荒い――」

「アタシたちじゃないわよ。第二陣の中で今戦闘に出てない人に言ってるの」

「あ、そう……せっかく立ったのに」

「ふふっ、アナタは頑張ったんだから休んでても良いわよ」

「おぉ…………そういうクアークはどっか行くのか……?」

「ええ、少し、ね」

「そうか……行ってら~」

 

 トイレとかか?

 まあなんでもいい、もう、正直キッツイ。

 眠いし腹減ったし体力の限界だしで総合的に気持ち悪い。

 あれ、そういえばヘルベルトは……。

 ああ、あそこに……戦ってる間に仲良くなったのか?

 くそ……女侍らせやがって……。

 強いからか、強いからなのか?

 ……マユゲに会いてぇなぁ。

 ……ねむい。

 

「アタシも調理手伝うわよ」

「えっ、あっ、そんな! 今まで戦ってたクアークさんにそんなことをさせるワケには!?」

「良いのよ。早く食事を摂って早く寝る方が良いし、せっかくだから手料理の一つでも振舞ってあげようかって思ったの」

「……ああ、そういうことでしたか」

「……何よその反応」

「いやぁ、あの男の人も愛されてるなぁって思いまして。あの人ですよね、叫んでたのって」

「言っておくけどヒイラギとアタシは付き合っても結婚もしてないわよ?」

「えっ!? じゃ、じゃあ自分の女でもない相手にあんなこと言ってたってワケですか!?? ほえ~、どう考えてもなんというか凄いですね」

「変人よ変人。まあそこが面白いところなんだけどね」

「確かに変わってますね」

「そもそもヒイラギって特別強いワケじゃないし開拓兵になって一ヶ月ちょっとなのよ? なのに孤立したアタシたちを助けようとして……」

「私よりも後に開拓兵になったんですか!? それなのに助けようとするなんて……蛮勇とはいえ度胸ありますね」

「ま、アタシとしてはアタシたちだけで切り抜けられると誰も信じてなかったのが不満ね。そりゃ孤立しちゃったとはいえすぐにこのままだと死ぬって思ってたのよ?!」

「でも結構危なくありませんでしたか?」

「そりゃそうなんだけどさぁ。少しは信じて欲しいじゃない?」

「複雑ですねぇ」

「助けようとしてくれたのは素直に嬉しいし……」

「良いじゃないですか、私なんて助けてやるとか護ってやるとかそういうの全然言ってもらえないし、頼りにしてるって言われるのだってさっきみたいに軽い調子で……便利なサポーターとしか見られてないんですよ?!」

「ああ、ウルのことね。アイツって色々特殊だし自分勝手なヤツだけど思ってないことは言わないわよ? だから頼りにしてるって言えば本当に頼りにしてるって考えて大丈夫。まあ面倒なことを押し付けたあたり若干都合よく使ってもいるでしょうけど、信用されてると考えて喜びなさい。……ん? あれ? もしかして、そういうこと?」

「うっ……そうです。実は開拓兵になったのもあの人に憧れてでして……一切気づいてもらえませんけど」

「ふふっ、そうでしょうね。アイツって普段は適当だけど女に関しては硬いから落とすのは大変よ? 一切こっちの意図を理解しないで、このアタシが諦めたくらいよ」

「クアークさんがですか!?」

「そ。軽い気持ちで手を出そうとして全然ダメだったの。すぐ色んな女に目移りする癖に相手の気持ちを一切汲もうとしないから長期間一緒に過ごせないってダメ男。お陰で当時仲良かった子とも仲違いしちゃって、散々よ。まあ誰が悪いって言われたらアタシになるから恨んではいないんだけどね」

「なるほど……ちなみにあの人の趣味とかってわかりますか?!」

「必死ね。そう、アイツの好きなトコ……なんだったかしら? たしか……そう、アイツは首筋と腕が好きなはずよ」

「首と腕、ですか?」

「一緒に食事にでも行ったときに相手にする店員が女だったら確認して見ると良いわ、キレイで滑らかな肌の店員に向く目が無駄に力強くなるから」

「私は……無理ですねぇ」

「あら、そう? キレイな褐色肌じゃない。アイツって人種とかは気にしないから獣人のウルスラでも大丈夫よ」

「本当ですか?」

「逆にダメなのは無駄に太ってる相手ね。曰く理由があるワケでもねえのに太ってるのはただのそいつの怠慢だ。頑張らねえ奴が俺様はこの世で一番くらいに大っ嫌いだ! って」

「な、なるほど。頑張ります」

「応援してるわよ、っと。もうできるわね」

「そうですね。こっちもそろそろできるのでもう大丈夫です。疲れてるのにありがとうございました」

「いいの、気にしないで…………さて、このグッスリさんを起こすのはちょっとかわいそうだけど何も食べずに寝るのはダメだし。ほら……起きなさい。食事、もうできるわよ」

「ぅ……」

 

 いかん、眠ってた。

 しょくじ、しょくじ……食……食……食事。

 ああ、まだそんなには時間たってないのか。

 

「寝てた」

「見たらわかるわよ……」

「そうか……」

「よだれ垂れてる……」

「んあ?」

「はあ……」

 

 クアークは俺の口元を手で拭う。

 少し食材の匂いがした。

 

「いつまで寝ぼけてるのよ」

「疲れてる時ってよほどの刺激がないとすぐには意識覚醒しないじゃん? 水、水――」

「キスでもすれば強い刺激になるかしら?」

「キス……キス? ……はい、起きました、大丈夫です。もう完全に起きてまーす」

「傷つくわよ?」

「勝手にどうぞ」

「胸でも借りようかしら」

「傷つかないでおくれ、俺も苦しくなってしまう」

 

 あい、サーセン。

 だから寝起きの頭をぺしぺし叩かないで。

 脳が、震えるッ。

 

「ちゃんと食べて、ちゃんと寝て、次の戦いに備えるわよ」

「了の解」




 アーリック・ユリシーズ:偉そうな態度を取るだけの実力を持つ開拓兵(一人称は俺様か俺)
             家名のユリシーズとはかつて多くの技術革新を行った一人の男の名前である
             鍛冶師フィランダー・プロミネンスや英雄ルイスと友好があり、彼らとともに打ち立てた偉業は今なお褪せることなく語り継がれている
             高いレベルの体術と練習すればどんな武装でも使いこなせる器用さを持ち、使用できる魔術も高等なもの、欠点はその言動と魔力量のみだが、その魔力量も多くないというだけで欠点として含めれるか微妙なほどで普通程度には有している
             学者の名家から生まれ、家族からは『考える筋肉』開拓兵仲間からは『戦える脳みそ』と言われる程度には武力知力共に高水準(その頭脳が人の感情の機微に使用することはできない)

 ウルスラ:アーリックに惚れた一五歳の少女
      熊の獣人で小柄かつ可愛らしいながらそれを裏切るようにそれなりに逞しい体格をしている茶髪褐色肌
      圧倒的格上のアーリックとパーティを組むために幾度となく頭を下げてストーカーに近い付き纏いをしたためウルスラの好意とは裏腹にアーリックからの認識は「なんかやけに必死に頼み込んできて付き纏ってくる変な奴」
      だがそれなりに行動を共にして信頼関係は築けていて、頼られてもいる
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